カートゥーンアクション『Cuphead』に似た、iOS向けの巧妙なダミーゲーム現わる。あまりの酷似ぶりにユーザーも混乱

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カートゥーンアクション『Cuphead』を巧妙に模造したダミー作品がリリースされたことが話題を呼んでいる。『Cuphead』といえば、そのビジュアルと音楽、絶妙な難易度のゲームデザインが好評を博し、発売から2週間で100万本以上を売り上げたタイトルだ。そうしたヒット作である宿命か、モバイル向けに大量のダミーゲームが作られていた。

代表的なダミーアプリ「カップヒーロー」は、本件とは無関係。

しかし今回リリースされたダミー版『Cuphead』は少々事情が違う。まずタイトルが『Cuphead Brothers』でも『Mugmans』でもない。ストレートに『Cuphead』とつけられている。デベロッパー名も「StudioMDHR Entertainment Inc(本家のスタジオ名はStudioMDHR)」。さらには「studiomdhrgames.com」なるドメイン(本家StudioMDHRとは無関係)のホームページも用意されており、その徹底ぶりがうかがえる。容量は1.8GBで、価格は500円。実際に起動してみると、それらしきオープニングが始まる。メディアに情報が出ていない状況でこちらを見れば、ゲリラ配信が始まったと考えてしまう可能性はありえる。最近『Life is Strange』や『INSIDE』といったタイトルがiOS向けに配信された状況を考えるとなおさらだ。こうした経緯もあり、ユーザーやメディアを巻き込んで『Cuphead』のiOS版がリリースされたと騒がれたわけだ。

しかしながら、模造されたのはあくまで“ガワ”のみであったようだ。この点については、何人かのYouTubeユーザーはこのダミーゲームの動画をYouTubeにてアップロードしているのでそちらを参考にしたい。たとえば、最初のステージである「Run&Gun」では序盤こそは本編のままのようにも見えるが、敵の動きおよび判定がかなりアバウトだ。判定が生命線である『Cuphead』においてこうした部分がいい加減であることは、ゲームプレイを著しく低下させる。繊細なゲームバランスをコピーすることは不可能であったようだ。またHau5test氏は本作を「5ドルでも買うに値しない」と酷評。前述した判定要素に加え、かなり無理のあるバーチャルパッド操作、オープニングから変わることのない音楽、ボケボケのアニメーションなどを批判している。

しっかりと近くで見ればその違いがわかるものの、本編の素材を余すことなく抜き取り巧みに模造されているのも確かで、ユーザーが誤解してしまうのも無理はない。情報は錯綜し、「ダミーであるだろうけど、本物にも見える」という疑心暗鬼を抱くユーザーが相次いでいた。こうした事態を深刻にみてか、StudioMDHRみずからこのiOS版の存在を否定する声明をあげている。

「『Cuphead』の偽物のアプリがiOSにあるようですが、それは詐欺です。この詐欺製品を一刻も早く削除してもらうために取り組んでいます!」この発言から間もなく、この疑惑のアプリはApp Store上から姿を消した。

しかしながら、今回の『Cuphead』のダミー製品の一件は、どこか不気味さを感じさせる。URLやデベロッパー名など準備周到であるのみならず、本編の素材がアプリにガッツリ使われている点。ビジュアルだけでなく、アニメーションも酷似している。当たり前であるが、『Cuphead』のような作品のビジュアルはアセットで購入できるものではない。同作の開発にはUnityが使われているが、同エンジンで作られた作品は容易にぶっこ抜きできるようには設計されていない。

海外メディアTouchArcadeは今回の件について、このダミーアプリ開発者がフルゲームのデータを保持していたという点を指摘。「従業員にゲームデータを盗まれた」もしくは「StudioMDHRと移植会社がもめ、移植会社が悪用した」という可能性を提示している。このふたつの案には具体的な根拠がないものの、そう勘ぐってしまう不気味さが確かにある。ただ、iOSのアプリ開発者であるBenjamin Mayo氏がWhoisなどを用いて今回のダミーアプリの公式ホームページ所有者を調査したところ、『SPINTIRES』『Gang Beasts』のダミーアプリの公式ホームページを保有していることが判明。内部犯ではなく、ダミーアプリの常習犯の仕業と考えたほうがいいだろう。

『Cuphead』は、もともと建設会社で作業員として働いていたMoldenhauer兄弟がビデオゲームとカートゥーン愛をこめて作られ、大成功をおさめたタイトルだ。人気タイトルを手がけたデベロッパーとなったStudioMDHRを付け狙う影がさらに増えていくことだろう。すでに次回作の構想も考え始めているMoldenhauer兄弟には、こうしたトラブルに煩わされることなくゲーム開発に専念し、さらなる良作を生み出してほしいところだ。

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