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謎の怖い会社「株式会社闇」はなぜホラーゲームも出し始めたのか。オフィスも怖いの?心霊体験は?中の人&『たろうくん』開発者に訊いたら、めっちゃフレンドリー
「怖いものを作るが、正体は謎」といったイメージをもたれがちな株式会社闇の思惑と実態、そしてYAMI GAMESの方針と活動について、闇のスタッフと本作開発者らに訊いた。

株式会社闇(以下、闇)のゲームブランドYAMI GAMESは8月28日、『たろうくんはいってきました』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)。本作はYAMI GAMESから展開されるホラーゲーム第一弾となっており、ホラーコンテンツ制作で知られる闇のゲームパブリッシング分野進出の端緒だ。「怖いものを作るが、正体は謎」といったイメージをもたれがちな闇の思惑と実態、そしてYAMI GAMESの方針と活動について、闇のスタッフと本作開発者らに訊いた。
『たろうくんはいってきました』は、BeforeHomeWorksが開発するホラーゲームだ。本作でプレイヤーは、怪しい動画配信サイトを通じて、失踪したインフルエンサー「タロー」が撮影したとされる動画を閲覧。「最後まで再生できず、もし最後まで見てしまうと恐ろしいことが起きる」と噂されるその動画の結末を追うことになる。ブラウザを模した画面と一人称視点操作パートを切り替えつつ、メタ的な視点で「タロー」の恐怖を追体験していくのだ。

そして闇は、数々のホラーコンテンツを送り出してきた会社だ。同社の「怖すぎる公式サイト」が話題となったほか、ゲームや映画のWebプロモーション、ホラーアトラクションの開発、「行方不明展」といったイベントの企画・主催などを手がける。幅広い分野で恐怖を振りまいてきた同社ながら、ゲーム分野へは意外と踏み出していなかった様子。なぜ今回、YAMI GAMESとして新たにゲームパブリッシング事業を展開することになったのか、話をうかがった。
──自己紹介をお願いいたします。
藤田翼(以下、藤田)氏:
闇で、ゲームブランド「YAMI GAMES」のプロデューサーをやっています、藤田です。よろしくお願いします。
松明氏:
合同会社BeforeHomeWorksの松明と申します。本作では企画とシナリオとプログラムと、あとマップとモーションなどを担当しています。よろしくお願いします。
T氏:
同じく合同会社BeforeHomeWorksのTです。本作では、基本的にはプログラムとUI周りをメインで担当しています。よろしくお願いします。



「闇」と「YAMI GAMES」とは何か
──「株式会社闇」自体が、「怖いけど正体がわからない」というイメージをもたれがちだと思います。どのような思いで活動をしている会社なのでしょうか。
藤田氏:
弊社は、「闇」という名前の通り、ホラーを中心としたエンターテインメントを作る会社です。社訓は「『怖いは楽しい』で世界中の好奇心を満たす」というもので、おそらく弊社立ち上げの頃から掲げられています。その考え方をベースに、ホラーというジャンルの中で、ただ怖いだけでなく「怖さと楽しさの両立」を意識してエンタメを作っている会社です。
──闇の社内は、やっぱりおどろおどろしい雰囲気なのでしょうか。
藤田氏:
めちゃくちゃカラッとした、「シンプル雑居ビルオフィス」という感じです。あとは映画事業部が制作した「特殊な生首」が置かれていたりとか、変なものが置いてあるくらいですね、自分は慣れてしまいましたが。

── 闇とYAMI GAMESが怖いものにこだわるのは、なぜなのでしょう。
藤田氏:
会社全体は置いておいて、YAMI GAMESに関しての話となりますが……。ホラーゲームって、いまゲーム配信なども盛り上がっているなかで、プレイヤーが驚きやすい、リアクションしやすい分野だと思います。そうした「人が驚いてるところ」って、めちゃくちゃ面白いじゃないですか。「自分よりびびっている人とお化け屋敷に行くと、自分はぜんぜん怖くない」といったような。そうした風に、独りでやるとすごく怖いゲームも、みんなで遊べば楽しさの方が勝つんじゃないかと思っていて。
そうした面で、個人的にはホラーゲームは人の感情を動かしやすいジャンルじゃないかと考えています。ホラーを送り出す側としては、そこが楽しさだと思いますし、作品に触れる人が驚いたり笑ったりしてくれる反応が自分にとってのモチベーションですね。
──YAMI GAMESの立ち上げのきっかけは。
藤田氏:
自分が闇に入社したのが2年ほど前だと思うのですが、それ以前はゲーム業界でタイトルの運営に関わり、続いてVTuberの会社にてプロデューサーとして配信業界に携わっていました。闇に入る前のゲーム関連業務は「既存のものをしっかり守る」といった方針の仕事が多く、一方で個人的には「新しいIPをゼロから育てる仕事をしたい」と思っていました。
自分が入社した当時の弊社は、受託業務中心のところから「行方不明展」などを経て、ちょうど「自社の作品で会社を大きくしていこう」という方針転換のタイミングでした。映画事業など複数立ち上がるなか、自分が思ったのは「大事なのを忘れてる!なんでゲームをやらないの」ということで。ゲーム市場が大きく、ホラーゲームだけでも成り立っていることを企画・提案し、事業化することになりました。

ゲーム業界での経験もありますし、配信業界での経験からは「配信者は、題材となるゲームを盛んに探している」という状況がわかっていました。そういう点でいえば、ホラーゲームはきちんとプロモーションすれば、注目してもらえる環境が整っている、ポテンシャルのあるジャンルだと思い提案しました。また、最近ではゲーム業界以外の事業者さんによる、インディーゲームのパブリッシングへの参入も増えました。そうした状況を見るに、異業種でも、その会社独自の力を活かしてパブリッシングを事業化できるのは?との考えもあります。
──YAMI GAMESは、どのようなコンセプトでどんな作品を送り出していく予定ですか。
藤田氏:
基本的には、小規模開発のインディーゲームを、開発者さんたちと協力してパブリッシングさせてもらう方針です。今後YAMI GAMESとしての実績が積み上がれば、大きめのデベロッパーと組むかもしれませんが、尖った個人開発者の作品も引き続き届けたいと思っています。とにかく、このホラーゲームというジャンルのなかで「何かをやりたい」と思っている開発者たちの作品を、どんどん展開していきたいです。
──闇の作ったコンテンツ自体にも、ややゲーム要素が含まれていたりします。闇自体がホラーゲームを作れそうな雰囲気もありますが……。
藤田氏:
自分も新しめのスタッフなのですが、闇全体の歴史でいうと、ちょっとしたウェブゲーム的なものはありつつ、ゲーム要素のあるものってそんなに作られていないんですよね。なのでYAMI GAMESも会社にとって挑戦的な領域になっています。それから、闇はプロデューサーやディレクター系、いわゆる企画マン的なスタッフが多い会社でして。まずは外部のデベロッパーと一緒にゲームをきちんと送り出して、実績づくりをするところから始めている状況ですね。
『たろうくんはいってきました』の中身について
── 『たろうくんはいってきました』の主人公、タローは「いかにも配信者にいそう」なキャラクターだと感じます。トレイラーでは実写のタローも登場しますが、キャラ付けやモデルなどはどのように決まったのでしょうか。
藤田氏:
実のところ、実写の方のタローは後付けといいますか……(笑)BeforeHomeWorksによるプロトタイプの時点で、すでにタローというキャラクターが存在していました。実写のタローについては、キャラクターを演じている声優の梶田大嗣さんに「実写も演じてもらえませんか」というお話をして快諾いただきました。服装などもタローに合わせてみたところ、「タローにかなり近くなったな」という感じで。なので、元からタローというキャラクターがあったところに、後から実写のコンセプトPVを制作したかたちですね。
松明氏:
本作を開発しているUnreal Engineの機能に、人間キャラクターを作れる「MetaHuman」という機能がありまして。それを使ってのゲーム開発を検討した際に、日本人の主人公をどのようにデザインするか考えました。そこで、「自分が“アンチ”になれるようなデザインのキャラを作ろう」というかたちで、タローくんが生まれました。

──人によって感じ方は違うと思うのですが、タローは「なんかイラッとするな」というキャラな気がします。これは意図的でしょうか。
松明氏:
はい(笑)意図的に「ウザいと思ってもらえたらな」と考えてキャラ付けしています。配信者さんなどの反応を見てみると、反発もあるかな……と思いきや「ウザいけど気に入った」という反応もあり、嬉しかったです。
──本作は「配信者が配信していた動画を見る」という構造になっていますが、これをさらに配信者が実況プレイ配信をするようなシチュエーションも想定していますか。
松明氏:
そうですね。当初は、自分がシナリオを書く時のこだわりとして「なぜこのストーリーがこうなったか」というリアリティの部分について納得しないと書けなくて。そのため、設定として「動画配信で投稿された」というかたちを考えました。で、そうすると配信者さんはプレイ中にいろいろツッコミしてくれるだろうな、ツッコミしやすいような感じを出そうか……と考えて作り上げていきました。
──開発はどのように進めているのでしょうか。
松明氏:
完全リモートで進行しています。Tとは元々専門学校からの同級生なのですが、別々の会社に入社しました。5年くらい勤めた後、一緒に相談して独立したかたちです。居住地もまったく別々なのでリモートが中心で、基本はそれぞれ独立して開発を進めつつ、週に1回は通話を繋げて雑談しながら開発を進めています。
──開発中特に苦労した部分や、こだわった演出はありますか。
松明氏:
苦労した部分としては、内容の物量の多さと、プロトタイプからほとんど作り直している点ですね。仕事をしながら半年くらいかけて作ったものを、10日くらいで作り直したり……。セリフやイベントシーンなどを含めると、個人制作の開発規模としてはなかなか珍しい物量を盛り込んでいるのが苦労した点です。こだわりとしては、Webページを模したUIなどの部分なので、担当したTから話してもらいます。
T氏:
このゲームには「オチの部分でやりたいこと」があったのですが、その表現をするにはメタ的な演出が必要でした。その演出を実現するにあたっては、平面的なUIなどの表現が多くなってくるんですけど、プロトタイプの段階では唐突に出てきたUIに対してプレイヤーが置いてけぼりになってしまう部分がありました。
そこで、その演出のUIをどうやってプレイヤーにとって馴染みのあるものにするか……と考えて、本作では「Sirabele(シラベル)」という検索エンジンをシステムとして取り入れています。触ってもらうとGoogleっぽい……(笑)というか検索エンジンらしい挙動になっていると思います。ゲームシステム上もよく触り、現実世界でも普段から使うものという点で、プレイヤーに馴染み深く感じてもらえるようこだわりました。

松明氏:
『たろうくんはいってきました』というタイトルにもこだわりました。最後までプレイすると、“たろうくん”が「行ってきた」のか、それとも別の意味なのかわかります。
藤田氏:
このタイトルも二転三転ありました。元のタイトルが権利などの関係で変更を余儀なくされ、自分と開発チームのお二人で何時間も話し合って……案を出し合って決めました。タイトルがすべて平仮名なのも、そうすればダブルミーニングになると気づいた自分が「これで行かせて!」とお願いしまして。思いの外、ユーザーの皆さんもこの表記がどっちの意味なのかと盛り上がってくれたようで。ちなみに、作中表記の「タロー」は動画配信者としての名前、「たろうくん」は一個人としての名前、という意味もあります。
──ほかに、デモ版を遊んだプレイヤーなどからの反響はありましたか。
藤田氏:
発売前からいろいろな配信者やYouTuberの方に遊んでいただいていて、その状況自体が予想外というか「こんなに遊んでくれるんだ!」とポジティブに受け止めています。本作を遊んでいただいている方はだいたい目を通しているんですけど、「ギャグかと思いきやちゃんと怖いぞ!」といった反応があったりして、感触のよい意見を多くいただいてるんではないかと。
──プレイ中に流れるコメントなども絶妙な仕上がりですが、こちらはどちらが書かれたのでしょうか。なにか参考にしたものはありますか。
松明氏:
そうしたコメントやシナリオ、検索で出てくるWebページも含めて自分が担当しています。開発中には、好きなホラーゲーム実況者の動画を作業中にずっと流して、「こういう風に反応するんだ」といった様子を参考にしていました。

──本作を開発するにあたって、ゲームに限らず影響を受けた作品はありますか。
松明氏:
わりといろいろな映画・ゲーム・小説・音楽などから影響を受けています。ゲームだと『佐藤さん暇つぶしチャット.exe』といった作品の影響を受けています。映画や小説では「近畿地方のある場所について」や「イニシエーション・ラブ」などですね。それから、御縁があって以前に京都の貴船神社に行きまして、その奥宮本殿の真下には「龍穴」とされている竪穴があるらしいんです。言い伝えとして「その穴に大工が大工道具を落として、龍を怒らせて死んでしまった」といった話があり、その影響も受けていますね。
YAMI GAMESと一緒にゲームを作ってみて、どう?
──今後、YAMI GAMESはどんなクリエイターと、どのくらいのスパンで作品を送り出していく予定ですか。
藤田氏:
まずは『たろうくんはいってきました』に続く第2弾タイトルの『報連喪症候群』(開発は合同会社ウィザードトータスゲームス)を、来年を目標に発売できるよう鋭意開発していくことですね。具体的な数は言えないのですが、複数のゲーム開発企画をデベロッパーと相談しつつ進めています。来年には何かしら新しい発表ができるようにしたいですね。
──皆さんの雰囲気を見ていると、YAMI GAMESと開発陣の距離感もかなり近そうに感じます。
藤田氏:
ほかのパブリッシャーさんがどういうやり方かはわからないのですが、近い距離感で開発チームへのアドバイスといった手助けができるようにしています。「闇」というブランドからパブリッシングするからには、「ただ販売します」という姿勢では意味がないので。ゲーム開発者さんの視点だけではなく、私がこれまで培ったノウハウで我々が手助けするべきところとして、プロデュース視点でどうプレイしてもらうか等といった部分をアドバイスしています。ありがちではないホラー体験を作るために、距離感を近づけて開発に寄り添っていますね。

──開発チームのお二人にとって、藤田さんはどんな印象でしょうか。
松明氏:
あくまで仕事上の関係ではありつつ、いろいろとフランクに接してくれて、なかなか作業がしやすかったです。
T氏:
僕らは元々ゲーム会社で働いていたんですが、仕事の取引先となると気を使って、意見も言いづらいことが多かったんです。一方で今回は、僕らのやりたいことをやらせてもらった感じがしています。気兼ねなく「これやっていいですか?」といったことが言いやすい環境だったと思います。
──ちなみに皆さんは、「本当になにかヤバいことが起きた」という体験はありますか。
藤田氏:
自分は霊感がまったくないので、闇でもゲームに関係するような「ヤバい体験」はしたことはないですね。
松明氏:
旅行がてら、洞窟のロケハンに行ったんです。その行程で富士急ハイランドのお化け屋敷「戦慄迷宮」に入りまして、お化けの人とすれ違うたびに手を振ってたんですよ。その帰り道に音楽のサブスクアプリが勝手に起動して、聞いたことがない音楽が流れ始めて……。曲名には「またね」と表示されていました。
T氏:
開発中の体験なんですが……。松明さんのPCが7月の中旬くらいに動作不良を起こしまして、スケジュール的にギリギリなのでヒヤヒヤしました。原因も不明だといわれて。
藤田氏:
……本当の「怖い話」だ。間に合ってよかった。

──読者の皆さんにメッセージをお願いします。
松明氏:
『たろうくんはいってきました』発売中なので是非遊んでください!
T氏:
本作は、僕らがBeforeHomeWorksとして独立して、初めてリリースする作品となります。弊社公式XなどのSNSの更新もおこなっていきますし、今後もいくつかやりたいことがありますので、よろしければチェックしていただけると嬉しいです。
藤田氏:
まず『たろうくんはいってきました』を是非遊んでいただきたいです。ホラー特区!とTGSもお越しください。そして、闇と一緒に作品を、特にホラーゲームを作りたいと思ってくれたゲームクリエイターさんは、闇公式の募集ページからご応募いただければと思います。たとえばBeforeHomeWorksのお二人もそうした感じなのですが、「技術力はあるけど広報力が不安……」といったクリエイターさん、「闇からホラーゲームを出す」ということにブランド力を感じて下さる方は是非。
──ありがとうございました。
『たろうくんはいってきました』は、PC(Steam)向けに発売中。9月11日までは、リリース記念セールとして40%オフの900円で配信中だ。
■「たろうくんはいってきました」
Steam:https://store.steampowered.com/app/4595220/
公式サイト:https://gotaroukun.games.yami.net/
■YAMI GAMES
公式 X:https://x.com/YAMI_GamesDeath
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