前回の記事に引き続き、HAL×PLAYISM プロジェクトとして制作されたタイトルを講評していく。本稿で取り上げるのはHAL名古屋で制作されたタイトルである。
なお、本稿で紹介・講評するタイトルは、いずれも現状では一般公開未定となっている。予めご了承頂きたい。
以下が、タイトル50音順の各タイトルの簡単な概要と講評である。適宜スクリーンショットも交えさせていただく。
BladeSmith
■紹介
100種類超の武器を制作できるアクションRPG。プレイヤーはローグタイプのダンジョンを探索し、敵を倒して武器の素材である「魔石」を収集し、新しい武器を次々と作成していくのが目的。
ダンジョン内は見た目こそローグタイプだがターンやレベルアップの概念は無く、純粋なアクションゲームとなっている。
■講評
おそらく武器を100種類用意しようとした時点で力尽きたのだと思うが、アクション部分が完全に未完成なのが厳しい。
ダンジョン脱出手段が10階層ごとにしか出現しないのにプレイヤーの途中回復手段が無く、魔石をほどほどの数集めて階段にかけ込むだけのゲームになっている。
敵と戦闘して自分の HP を削る見返りが魔石以外に無いので、どうしてもこのようなマラソンプレイになる。アクションゲームとしての出来を磨かなければ、せっかく用意した武器の数々も人の目に触れることが無いのではないだろうか。
KeySlide☆Music
■紹介
典型的な音ゲーと言える。サウンドに合わせて現れるノーツが、判定ラインに重なった瞬間にボタンを押してポイントを稼ぐ。
■講評
正直なところ未完成甚だしいように見受けられる。何よりBGM以外に演奏音、背景、演出が一切ないというのは音ゲーとしてというか、もっとそれ以前の問題ではないだろうか。
黒一色の画面、ノーツと判定だけを凝視してポチポチとボタンを押していると、何とも言えない無常感にかられてくるのは確かであるが、そういう類の覚醒を促す目的でこのゲームが作られたわけではないはずだ。
Riddle
■紹介
ルービックキューブのようなパズルと一人称アクションを組み合わせたタイトル。プレイヤーはルービックキューブのように配置された「部屋」を動かして通路を連結し、パズルが終わったら一人称視点で実際にゴールを目指す。
■講評
映画「キューブ」を思わせる部屋の構造と移動要素。パズル画面を動かすたびに一人称画面の視点がぐるぐる回るのは一瞬だけ面白いが、如何せん「ぐるぐる回して部屋を繋げて終わり」な風情が強く、一人称画面が存在する必要性をあまり感じない。
パズル画面の操作性や、回転に対する部屋移動の因果関係もクセが強く、部屋の回転演出も長めにとってあるので、演出の物珍しさがイライラに転じるまでの賞味期限は非常に短い。もしかしたら先のステージには部屋そのものにギミックがあり、部屋が回転するという演出に意味を持たせていた可能性があるが、私にはパズルとしての難易度が高く感じてしまった……。
Tank-1
■紹介
200台の戦車が一斉に走る上方見降ろし型レースゲーム。プレイヤー、敵車ともに主砲を発射して他車を妨害、ないし破壊することが出来る。プレイヤーはキャタピラさばきと主砲を武器に、最後尾スタートからの一着を目指す。
■講評
200台がもみくちゃになって走る様は一瞬だけ面白いが、数が多すぎて進路が妨害されまくり、トップに立てるかどうかが既に運ゲーと化しているように思う。このもみくちゃが面白いのかもしれないが、これはストレスが先に来てしまうのではないだろうか。
主砲で敵車を排除したくてもあまり連射が効かないので焼け石に水。走りそのものの爽快感や射撃して敵を吹き飛ばす爽快感というのもあまり演出できておらず、全コース1回試すほどの魅力を感じる事が出来ない。単なるコースレイアウト以外に何かコースに変化が欲しかったところか。
Tia
■紹介
左クリックで壁や敵との間に「ライン」を繋ぎ、その状態で SPACE を押す事で「超引力」が発動し、ラインを引っ張る事が出来る3Dアクション。
超引力でラインを引っ張る際、繋がっているのが壁なら自キャラが壁に向かって飛んでいき、繋がっているのが敵なら自キャラの方に引き寄せる。自キャラは超引力の間のみ攻撃アクションを繰り出す事が出来るので、敵との距離と攻撃アクションを繰り出すタイミングの見極めが重要となる。
規定数の敵を倒すとボスが出現し、ボスを撃破することでステージクリア。
■講評
基本的にラインに使用制限がなく、その気になれば天井や壁を飛び回る事も出来て動きは楽しいのだが、肝心のバトルがいまいち。
攻撃システム上基本的に1度に1体しか相手に出来ないのに、1ステージあたりの撃破数ノルマが99体というのはやりすぎではないだろうか。敵の出現ペースや内容にもメリハリがあまり感じられず、途中で眠くなってしまう。
「特定の方向からしかラインが繋がらない敵」「まず壁にぶつけてからでないと攻撃が通らない敵」など、敵にはそれなりのバリエーションが用意してある。にもかかわらずゲーム展開が退屈なのは、やはり長すぎる1ステージが原因のように思う。もう「少し出し惜しみしない」ゲーム作りを目指してみてほしい。
コアブレイカー
■紹介
迫りくる魔物から、ユニットを配置して城を防衛するシミュレーションゲーム。
いわゆる「キャッスルディフェンス」と呼ばれるタイプのゲームで、サイドビューのフィールドに「戦士」「弓兵」「魔法使い」の3種類のユニットを適宜配置して、迫りくる鎧の魔物の撃破を目指す。敵の攻撃箇所を指定できる事が特徴で、脚部・胴体・頭部のどこを狙うかによって攻撃の効果が変わってくる。
■講評
クリアはしたものの、未だにルールがよくわからないタイトル。
こちらの攻撃に対するリアクションを敵が取らないので、どこを狙うと有効なのか、そもそも本当に攻撃が効いているのか大変わかりづらい。というかわからない。画面上確かに攻撃が当たっている事は当たっているのだが、それが「効いている」というサインがほとんどない。しばらく遊んでいると唐突に「敵の両腕が外れて落ちる」という演出が入るので、それでようやく「何か効いてはいるらしい」というのは分かるものの……。
ゲームルールもまだ練り込みが足りないようで、上記の「効き具合がわからない」という点も併せて、直接攻撃できない「戦士」の存在意義を感じない。こいつを置いて一瞬だけ足止めするより、ダメージ覚悟で弓兵と魔法使いを置きまくった方が効率的に見える。そのため戦士にユニット制限を割く理由を見いだせない。
ユニットがやられることにペナルティは無いし、ユニットがやられてもやられた分だけノータイムでまた補充できてしまう。
こうしたゲームは単なるパワーゲームになってしまうと魅力はない。ゲームルールについてもっと考えてみてほしい。
サラウンドアタック
■紹介
マウスで「光の玉」を囲んで消すパズルアクション。
ステージ内に点在する三色の光の玉を、マウスドラッグで引ける線で囲んで消してゆく。囲んだ光の玉の数や組み合わせに応じて、画面上部の「壁」が崩されてゆき、全て崩しきるとステージクリア。線を引くのに使用するエネルギーがなくなるか、時間経過で画面下部からせり上がってくる「迫る壁」にマウスカーソルが触れるとゲームオーバー。
■講評
安直に「ステージ全体を囲めば良いんじゃね?」という攻略はできないように光の玉の効果が配されている(光の玉を3色巻き込んだ際の効果が弱い)のは良い。冒頭数ステージの光の玉の初期配置もうまい具合に恣意的に作ってあり、光の玉を囲む際の組み合わせと効果を段階的に紹介する導線が作ってあって好感が持てた。
初期配置以降の光の玉の出現がランダムなため、そこである程度まとまった壁の崩し方をしないと間に合わなくなって詰むというのも、個人的には良く出来たバランスだと思う。
一方で、あまりにもゲームが淡々と進むのが気になる。このゲームの盛り上がりどころはどこだろうか。余計な色を巻き込まないようにと線を引くのにそれなりに神経を使う反面、それが報われたと感じる瞬間が殆どない。
ステージごとの変化も少なく、せいぜい光の玉が可動するようになる程度で、どうしても「もう1回遊びたい」というような魅力を感じないのも事実。ステージを進めるという動機をもう少し引っ張ってくれる要素が欲しい。
講評とは少々離れるが、ゲーム内容的にマウスで遊ぶのはしっくりこないように思えた。「モノを囲む」という操作一本で引っ張るのであれば、ペンタブレットなどで遊んだ方が良いゲームかもしれない。マウスでこういう小さいモノを正確に囲むのはこれでなかなか難しいからだ。
チップラネット
■紹介
自由度の高いタワーディフェンスゲーム。プレイヤーはマナというコストを支払って、地(防御)・水(回復)・火(攻撃)・風(マナ促進)のカードを使ってユニットを召喚し、襲い来る敵からマナタワーを守る。
カードは5枚までしか持つ事が出来ず、補充されるカードも完全ランダムなので臨機応変な対応を求められる。同じカードは3枚まで重ねて使う事ができ、配置方法によってユニットが合体すると言った要素もある。
■講評
如何せんタワーディフェンスとしてのルールがまとめられていない。敵の出現場所とユニットやタワーの配置場所がこうまで離れている意図は何だろうか。
敵キャラが出現場所からタワーを一直線に目指してくるため、最短距離以外の配置エリアの存在が丸ごと死んでいる。攻撃手段が火のカードしかないせいで、結局のところ「如何に火のカードをツモるか」というパワーゲームに集約されてしまい、ゲーム内容に奥行きが感じられない。最終的にダメージ効率勝負になるのがタワーディフェンスの常とはいえ、このゲームはそれまでの過程にあまりにも変化が無さ過ぎる。
まずは他のタワーディフェンスゲームをいくつか遊んで、内容を分析してみるべきではないだろうか。このゲームにはまだゲームルールが足りていない。操作方法は分かるが遊び方が、タワーディフェンスとしての楽しみ方がわからないのだ。
モノを売って、世界が回って
■紹介
勇者軍、魔王軍を相手取って商売を行う経営シミュレーション。
勇者軍と魔王軍の満足度、軍の方針を参照しながら、塔の中に店舗を配置。その拡張や縮小をしながら利益と満足度を獲得し、塔をより大きくしてゆく。
■講評
ゲーム全体が未完成……というか機能不全に陥っているように思う。両軍の状況や方針、満足度といった数値は確かに表示されたり変動したりというのは見えているのだが……。
というのは、ゲーム的にもとりあえず置けるだけ店を置いていくプレイで特に困る要素が無く、店舗の拡張も容易で、データを一切見なくてもゲームが回ってしまうのだ。両軍の状況というのが、店舗の収益や客入りといった要素に跳ね返ってくるという手応えが感じられない。
また、UI の使い勝手が正直言って残念過ぎる。やる事が多い SLG というジャンルなのに、UI の使い勝手が非常に悪い。歯車を模したメニューを、マウスホイール操作で動かすというのは確かに視覚的には面白いかもしれない。ただ、SLG において UI の見た目など二の次、三の次でよい。
正直なところ、私には慣れてもなお面倒なだけの UI としか感じられない。UI にストレスを感じる SLG はどんなに内容が良くても見向きもされないだろう。マニュアルに操作上の注意事項が小さく書いてあったりするが、そういうところは極力ゲーム側で吸収するようにすべきなのだ。
死して屍拾うのも有り
■紹介
方向キー+ジャンプボタンのシンプルな横スクロールアクション。ただひたすら右につきすすみゴールを目指す。
特徴的なシステムとして「ゴースト」というものを用意している。プレイヤー死亡時の数秒間の動作が「ゴースト」としてその場にとどまるようになっており、再度その場所を訪れた際に、その動きをワンボタンでトレースする事が出来るようになっている。
これだけでは単にもう1度死ぬ動きをするだけなのだが、トレース中に任意のタイミングで(トレース元がジャンプ中であっても)トレースを中断してジャンプすることができ、前回よりも楽に仕組みを抜ける事が出来る……といったギミックが仕込まれている。擬似的に2段以上のジャンプを可能としているわけだ。
■講評
安易なリワインド機能ではなく「落ちたらステージ頭からやり直し」という緊張感は維持しつつ、リトライを楽にするアイデアとしては良く出来ていると思う。私は好きである。
ただ、レベルデザインがアイデアと噛み合っていないように思う。復活しない「落ちる足場」を妙に多用しているあたりに、どうにかしてゴーストを使わせようとする意思が透けて見えるが、そのせいで「その気になれば一発で突破できる」というレベルデザインがストレス要素になっている。
例えば穴を2つ超えた先にゴールがあるとして、その穴はどちらも「乗ってすぐに落ちる足場」をシビアなジャンプで渡っていかないといけないというデザインになっているとする。これはこのゲームにも良く見られる構成である。 この時、1つ目の穴をノーミスで切り抜け、2つ目の穴で失敗して落ちたとする。プレイヤーはステージ最初からやり直すことになるわけだが、1つ目の穴の足場はもう無いので、ゴーストを作るために1つ目の足場で落ちて死ななければならない。死んだらまたステージ最初からだ。
この「ワザと死ぬ、死ななければならない」という行為にかなりストレスがたまる。1度のミスのために都合3回ステージを歩くことになるわけだから。一方で、このストレスも含めて意図したゲームデザインというのであれば、それはそれで貫徹しても良いだろうとも思う。
埋葬る
■紹介
ゾンビを主人公としたゲーム。迫りくる追手に火炎放射機で焼かれないように気をつけながら地面に穴を掘り、最終的に自分が地面に埋まる事でゲームクリアとなる。
■講評
名古屋の困ったちゃん。おそらくタイトルを捻り出すことに全身全霊を費やしてしまったと思われる。
確かに操作は分かる。ゲームの目的も分かる。ゲームオーバーとゲームクリアも明確だ。だが敵キャラの左向きのポーズすら用意されていないというのはどうした事だろうか。
右向きのまま左に移動して、右向きのまま火炎放射のエフェクトが左向きに出るので尻から火が出ているように見えなくもないが、これはひょっとして高度なギャグなのだろうか。
このタイトルに関しては、ゲームから何も感じる事が出来ない。何をどう楽しんでほしいか、そうした意図が全く伝わってこない。できればこのゲームを作った方に、このゲームの楽しみ方を教えてほしい。
憑依の式神
■紹介
自分からは攻撃が出来ないという特徴を持つベルトスクロールアクション。代わりに敵キャラを一体「式神」として配下に置き、これを利用して敵を倒してゆく。
「攻撃の被弾時に反撃する」「リリースすると爆発する」等、敵の種類ごとに式神にした時の特性が違うので、要所で敵キャラの捕獲とリリースを繰り返し、先に進んでゆく。
■講評
アイデアは理解できるが、ジャンルにベルトスクロールアクションを選んだ理由を見いだせない。敵への攻撃手段が、原則的に「式神で敵の攻撃を反射する」であるため、敵が攻撃してくるまでの待ち時間が多く、テンポが非常に悪い。
「敵の攻撃を溜め込んで、自爆寸前にリリースして爆発」などのトリッキーな攻撃を繰り出すことも可能だが、爆発後は丸腰になってしまったり、そもそも爆発の当たり判定が怪しくて敵にうまく当たらなかったりと首を傾げる要素が多い。
敵味方のダメージ表現を体力ゲージの増減だけで表現しようとしており手応えが無く爽快感が皆無で、やっと自爆攻撃を出せたかと思ったら当たり判定に裏切られて敵が無傷など、ストレスが溜まるばかりで報われる場面がないように思う。
正直、ベルトスクロールでこれをやらなければいけない理由はないように思う。完全サイドビューなら同じルールでも違う手応えがあるように思うのだが、まず「面白いベルトスクロールアクション」が、なぜ面白いのかというところを研究してみてはどうだろうか。このゲームにかけているものを、そちらのゲームは持っているはずだ。
以上が、HAL名古屋からのタイトルである。
次回はHAL大阪で制作されたタイトルについて講評を行なってゆく。また、全タイトルをプレイしての講評もそちらで述べさせていただくので、よろしければご覧頂きたい。