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今年2022年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第3弾。年末最後の企画となる本稿では、1年の総括として各ライターの個人的なゲーム・オブ・ザ・イヤーを紹介する。2022年も数多の素晴らしいゲームが発売された。そのうち、ライターごとの個人的なベスト作について語ってもらった。

『ローグ・レガシー2』

――プレイヤーの納得感を生む丁寧な仕事

開発元・販売元:Cellar Door Games
対応機種:PC/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch


『ローグ・レガシー2』は、メトロイドヴァニア要素のあるローグライト・アクションゲームだ。プレイヤーはとある一族のひとりとなり、モンスター蔓延る広大なランダム生成ダンジョンの攻略に挑む。道中で死んだ場合は、それまでに獲得した強化要素を失い最初からやり直し。ただし、前回プレイで得たお金や資源は持ち越され、恒久的なアップグレード要素のアンロックに消費できる。ローグライトゲームによくあるシステムである。

そのうえで、多彩なゲームプレイが導入されている点が本作の魅力のひとつ。キャラクタークラスが15種類あり、それプラスアルファの数の武器が存在する。それぞれ攻撃アクションが大きく異なり、強みを引き出す立ち回りが求められる。また、本作ではキャラクターに特性がランダムで付与。いろいろとヘンな特性が多いなか、ダメージを受けた際の無敵時間がなくなったり、自分の周囲以外は真っ暗になったりなどゲームの難易度が上がるものも。これらの要素の組み合わせによりゲームプレイ全体が毎回ガラッと変わるため、ずっと飽きさせない。難易度が上がる特性には、獲得するお金にボーナスが付くのも上手いバランスである。

本作の魅力をもうひとつ挙げると、己のスキルをもって試練を乗り越えていく楽しさがある。前提として、本作ではリスクとリターンの管理が重要。たとえば、道中ではバフ効果を得られるレリックをランダムで獲得できるが、一定以上装備すると体力の上限値が大きく減ってしまう。こうした、キャラクターの強化や報酬と死ぬリスクを天秤にかける場面は、ほかにも数多く存在。本作は基本的に難易度が高めのため、リスクを甘く見るとすぐに死んでしまうだろう。とはいえ強化も報酬も欲しい。ギリギリの判断のうえ、リスクを取って飛び込むヒリヒリ感がたまらないのだ。

ここまで難易度の高さを強調したが、だからといってプレイヤーを突き放すのではなく、むしろ納得感に繋がる仕組みがバランス良く取り入れられている点も評価したい。先述したリスクとリターンはそのひとつ。ほかにもたとえば、特に強い敵にはどういった強化が施されているか頭上に表示される。情報を提示し、あとはプレイヤーの判断に委ねるという、プレイヤー主導のゲームプレイを意識していることがそこかしこから感じ取れる。本作はそうした丁寧な仕事が重ねられているからこそ、満足感の高い作品に仕上がっているのだと感じさせてくれる。
by. Taijiro Yamanaka 



『Raft』

―― “漂うこと”の正しさ

開発元:Redbeet Interactive
販売元:Axolot Games
対応機種:PC


今年は水際対策も徐々に緩和され、親族・恋人・友人に再会するために遠出するという忙しい一年。過去数年に体感した医療業界のひっ迫とした状況での忙しさとは、また違った忙しさを感じる年であった。そんな中で「まったりとしたゲームはないだろうか」と考えていた矢先にやってきたのが、『Raft』の正式リリースだ。

『Raft』は小さなイカダに乗り、流れてくるゴミを拾い集めながら生活していくサバイバルクラフトゲーム。本作は今年の正式リリースと併せて最終章が配信され、難破船・海底遺跡・沈没都市・雪山などの新たなランドマークがストーリーに深く関わる内容として追加された。筆者は早期アクセスの頃からプレイしていた友人と再び大海原へと繰りだすことに決めた。新たに追加された島々への道中では友人と駄弁りながら素材を集め、新大陸に到着すれば共に探索する。建築要素や素材集めという“緩”、そして新大陸探索という“急”。本作はこの“緩急”の付け方が絶妙なゲームなのだ。

緩やかな資材集めという時間、そして新大陸での設計図の発見。それらを繰り返していくと、ストーリー中盤にはさまざまなサバイバル要素を半自動化することが可能となる。飲料水を洗浄してくれる電気洗浄機や、エンジンに使うバイオ燃料精製装置などがその類だ。これらの装置は液体・燃料用のパイプを繋げることで半自動化が可能となるのだが、パイプの繋げ方にもセンスが必要となる。パイプは設置しようとすると、どうしてもスペースを取ってしまう。パイプを繋げて利便性を持たせながら、外観的にも美しくイカダ全体をまとめあげるにはプレイヤーの建築スキルが問われるのだ。これを不自由と感じる人もいるかもしれない。しかし、サバイバルクラフトゲームにおいて「不自由こそが創造力を生み出す」と筆者は思うのだ。繋げては取り外し、広げては縮小する。それらを繰り返して試行錯誤する穏やかな時間は格別である。

イカダは漂うだけでも、資源は止め処なく流れてくる。その材料を拾い集めながら、次の冒険に向けて友人と旅支度をする。他愛もない会話をしながら、ただ漂うだけの時間。それは“充電期間”なのだろうと考えさせられた。ただ流れに身を任せ、漂うだけであっても、徐々に次の大きな冒険への準備を進める。慌ただしい日々のなかでの充電期間として、少しぐらいは“漂って”みても良いではないか。そんなことを思い出させてくれた、『Raft』を個人的なGOTYとして推したい。
.by Mayo Kawano



『エルデンリング』

――集大成であり通過点。慣例ながら特異点

開発元・販売元:フロム・ソフトウェア
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S


「思ってたより変わっていないな」というのが本作に対する私の第一印象だった。死にゲーというコンセプトにソウルシリーズをベースにしたシステムデザイン。「探索とボス戦」という強み。『エルデンリング』は万人受けを目指して制作された作品ではなく、ゲームというキャンバスの上に、まだ見ぬ世界を描いた作品でもない。ただただ、今回も同じように、ファンの愛に応え、期待を越えた作品である。本作はソウルシリーズより続く、表現したい理念や、ユーザーに提供したい理想的な体験の追求。絶え間ない試行錯誤の末に掴み取ったイデアの一端にすぎない。

フロム・ソフトウェアが手掛けたARPG作品において初の試みとなる「オープンフィールド」とそれに関連するシステムの導入は、これまでに類型作品が積み上げた「あやしい場所を探索するとほぼ必ず報酬が手に入る」「秀逸なボス戦」という強みをシンプルに増強し、リニアなゲーム構造を採用していたことによって生じていた欠点を消失、カバーするものである。また、戦闘における有効打の増加はRPG要素の拡充を狙ってのことであり、従来の要素をよりパワーアップする施策という点で、オープンフィールドの導入と目的は同じと言える。これらの試みは確かに成功しているものの、ソウルシリーズから続く現在までの道程から考えると、道を外れて革新的なことをやっているわけではない。特にナラティブに関する要素、遊び方はほぼそのまま、昔からまったく変わっていない。

だが変化を望まれる世界で、十数年変わらず同じイデアを追求し続けた求道者たる姿勢が、ほかと比較した際、結果として異端に映り、オープンワールドを採用したアクションRPGの常識を打ち破ることになった。定点移動をさせるサブクエストや拠点の襲撃、ランダムイベント、目立つランドマークや明確なストーリーラインを用意せずとも、プレイヤーは広大な世界を自発的に旅し、誰かに出会い、自らを物語ることが出来るのだと証明した。涓滴岩を穿つ。変わらないままに世界を変えたのだ。本作とその制作チームに、モノづくりにおける理想形の1つを見たような気がした。同時に、行き着く果てが観たいとも改めて強く思わされた。本作を踏み台にして、彼らは新たな作品作りに向かっていくのだろう。集大成であり通過点。慣例ながら特異点。そんな『エルデンリング』に私は2022年個人的ゲーム・オブ・ザ・イヤーの冠を捧けたい。
by. Takayuki Sawahata 



『ライブアライブ』

――蘇る傑作

開発元:スクウェア・エニックス/ヒストリア
販売元:スクウェア・エニックス
対応機種:Nintendo Switch


筆者が『ライブアライブ』を初めて遊んだのは、Wii Uのバーチャルコンソールでだった。現在も第一線で活躍している作家陣がデザインしたキャラクターたち、短いながらも心に残る物語、そしてそれらが一つに収束していくカタルシス。『ライブアライブ』の作品としての魅力は原作が発売された1994年から語り尽くされているだろうから、ここで多くを綴ることはしない。筆者が2022年の個人的GOTYにHD-2Dリメイク版の『ライブアライブ』を選ぶ理由は、この最高のタイトルを、Nintendo Switchという多くのゲーマーが遊びやすいハードで、しかも原作の魅力を損なわずにリメイクしてくれたということに尽きる。

発売当時に遊んだ経験こそないものの、Wii Uで本作を遊んだ筆者はライブイベントに顔を出すくらいの大ファンとなった。しかし、友人知人に本作を“布教”するのには相当難儀していたのである。原作『ライブアライブ』はスーパーファミコンのタイトルだし、筆者が遊んだバーチャルコンソール版はWii Uとニンテンドー3DSでしか遊ぶことができず、現行機ではプレイすることができないのだ。誰かにこの作品を遊んでほしくとも、そもそも相手にプレイ環境がないことが多かった。だからこそ、HD-2Dリメイク版が発表されたときは歓喜したものだ。これでやっと多くの知り合いと『ライブアライブ』の話ができる!と。

わずかな不安はあった。リメイクの結果、原作と別物になってしまうタイトルも世の中には少なからずある。しかし、発売当日にHD-2Dリメイク版『ライブアライブ』に触れた瞬間にその懸念は綺麗に吹き飛んだ。記憶どおりのオープニング。スーパーファミコン版にはなかった3Dの立体感があるにもかかわらず、確かにあの日遊んだとおりのマップ。キャラクターのイメージにぴったりの声優陣。あの日夢中になって遊んだ『ライブアライブ』がパワーアップして帰ってきてくれた。それだけで感極まって、いかにこのリメイクが素晴らしいかを家族に語り聞かせながらプレイをした。

それでいて、本作はただ原作どおりのリメイクというわけではない。随所随所にオリジナル版からアレンジが加えられていて、そのどれもが遊び心満載のものだった。新たなエンディングの追加のほか、戦闘中のボイス演出も本当に豪華だった。SF編のロード画面には戦慄したし、ブリキ大王のテーマが影山ヒロノブ氏のボーカルで蘇ったのには驚いた。新たなプレイヤーを呼び込むだけでなく、ずっと応援してきたファンに対しても感動を与えてくれたリメイクだったように思う。少し欲張ったことを言うならば、PCでも遊べるようになってくれるともっと嬉しい。2022年の個人的GOTYである本作を、いつまでも多くの人におすすめしたいからだ。
by. Aki Nogishi 



『オーバーウォッチ2』

――龍神の剣を喰らった

開発元・販売元:Blizzard Entertainment
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch


ネットミームとして「龍神の剣を喰らえ!」という台詞は知っていても、実際に喰らったことはなかった。前作をほとんどプレイしていない筆者は、初めて龍神の剣を喰らったとき、感動すら覚えた。

本作は、タンク・ダメージ・サポートの3つのロールに分かれて戦うことが最大の特徴である。明確に役割が決まっているなかで、オブジェクトの押し引きやエリアの取り合いなど、さまざまなモードで勝利を目指していくのだ。

筆者が特に気に入ったのは「チーム同士の戦い」を強く感じるところにある。仲間同士で互いを気にかける感覚は、『VALORANT』などのタクティカルシューターよりも、『FF14』のダンジョン攻略や『LoL』などのMOBAに近い。アビリティを組み合わせて、その効果を最大化しても良いし、敵の攻撃に合わせてカウンターするのも良い。目まぐるしく変化する戦場の中で、最適解を見つけ出し、思い通りのプレイができたときの楽しさは、他のシューターで味わうことはできないものだ。そのうえで、シューター特有の「どんでん返し」が映える。華麗な照準合わせで敵を殲滅するほか、絶体絶命の状況で丁寧な立ち回りを決めてチームを救うなど、シューターにおけるさまざまな「上手い」が織り交ざり、本作をより楽しくしていく。

ヒーロー(キャラクター)によって、がらりとプレイスタイルが異なるのも面白い。標準的なアサルトライフルを持つ「ソルジャー76」や、敵からエネルギーを吸収して味方を回復する「モイラ」、サポートなのにタンクのようなシールドを持っている「ブリギッテ」など、個性豊かなヒーローそれぞれに“極め甲斐”がある。筆者は特に、攻撃的なスタイルが許される「モイラ」がお気に入りで、敵に茶々を入れるような立ち回りもしつつ、随所で味方の回復やカバーなどを入れ込み「仕事したなあ」と満足感に浸るのが好きだ。

今年は『VALORANT』のeスポーツシーンで、日本チームが世界3位まで上り詰め、世界中のトップチームが日本に集結する「Masters Tokyo」の開催が決定するなど、シューター界における日本の存在感が高まってきた。『Apex Legends』が人気を博してから『VALORANT』の台頭を経て『オーバーウォッチ2』に至る今、ストリーマーの存在も手伝って、日本におけるシュータージャンルへの意識もまた、最高潮を迎えているように感じる。

『オーバーウォッチ2』の競技シーンが盛り上がるかはさておき、初心者層の厚い今のうちに、是非プレイしてほしい。
By. Sakutaro Okano 



『スプラトゥーン3』

――思いどおりにいかない楽しさ

開発元・販売元:任天堂
対応機種:Nintendo Switch


筆者はゲームが好きだが、淡々とプレイをするタイプの人間だと自負している。対戦格闘ゲームを好んでプレイしているが、あまり熱くはならない方だ。しかし、『スプラトゥーン3』は久々に心を動かされる、熱くなるゲームだった。

筆者が本作で熱くなっているのは、ほかのプレイヤーと協力してシャケを倒すモード「サーモンラン NEXT WAVE」(以下、サーモンラン)だ。初めこそレギュラーマッチやバンカラマッチで高みを目指そうと、ギアの厳選を頑張っていた。しかし、今では正直サーモンランしかプレイしていない。『スプラトゥーン3』をしゃぶり尽くしているとは言えないかもしれないが、それでも筆者は本作を個人的GOTYに選出したい。それだけサーモンランが面白すぎるのだ。

オオモノシャケを倒して金イクラを規定数納品する。サーモンランは、ただそれだけの簡単なお仕事だ。そして、ただそれだけなのに、うまくいかないのがサーモンランなのだ。うまくいかないときにさらに連続でバイト失敗を重ねてしまい、思わずイライラすることも。しかし、イライラしながら次のバイトをはじめてしまう。次こそはうまくいくと信じてだ。

本作のサーモンランは、調子良く進めていても自分、あるいはチームメイトのミス1つで状況は大きく変わってしまう。ヘビに追い詰められたり、カタパッドのミサイルを受けたり、タワーのレーザーに狙われたり、シャケを処理しきれずに圧死したり、コウモリの雨を甘く見て溶けたりと、不意のミスでイライラしたことは数え切れない。

チームメイトの振る舞いに思わず怒ってしまうこともある。不用意に海岸線へと突っ込んでシャケの餌食になる味方。そして、それを救おうと奮闘して次の餌食になる味方。近場のカタパッドやタワーを無視してどこかに行ってしまったり、納品コンテナからはるか遠い場所でモグラを倒したり、例を挙げればキリがない。思いどおりにいかない展開に、イライラも増える一方だ。

「イライラしてばかりで何が面白いの?」と疑問になるところだが、なかなかうまくいかないところが面白いのだ。おそらくだが、大半のプレイヤーが「味方が連携をとってくれない」「アイツのせいで失敗した」と思っているだろう。筆者もその1人だ。しかし、味方のせいにしてばかりではいられない。今は味方に左右されずにクリアできるよう、日々研鑽を積んでいる。そんな熱くなってゲームと向き合う楽しさを改めて思い出させてくれた『スプラトゥーン3』に、個人的GOTYを贈りたい。
by. Koutaro Sato



『イハナシの魔女』

──00年代の郷愁を刷新する、最新のボーイミーツガール

開発元:Fragaria(フラガリア)
販売元:Fragaria/Seikei Production
対応機種:PC


『イハナシの魔女』は、沖縄の離島を舞台とした、超王道のボーイミーツガール作品である。本作の主人公・西銘光は、幼い頃に両親を亡くし、叔母の元で都内の学校へと通っていた。高校1年生のある春の日、光は叔母から祖父の家で暮らすように言われ、人口1000人にも満たない沖縄の離島「渡夜時島」へ引っ越すことになる。しかし光が渡夜時島へ辿り着いてみると、祖父は海外へ移住しており、叔母とも連絡が取れない。叔母一家の夜逃げにより、光は天涯孤独の身となっていたのだ。祖父の家に入ることすら出来ず、途方に暮れる光。ひとまず野宿をしようと、光がサトウキビ畑へ足を踏み入れると、そこには小屋を建ててハブを焼く少女リルゥがいた。光は不思議な出会いをきっかけに、異なる常識を持つ自称魔女と共同生活を送ることになる。渡夜時島に伝わる奇妙な風習と、隠された秘密。リルゥの操る異界の魔法と、謎めいた彼女の目的。光たちのささやかな日々は、やがて大きな闇へと飲まれていく。

本作は1本道のノベルゲームであり、ジャンルは王道のボーイミーツガールとなっている。すなわち少年と少女が出逢い、同じ時間を過ごし、結末へと向かっていく。そんな様子が文章と演出で描かれるわけだ。テキストは簡潔で読みやすく、キャラクターたちには愛嬌があり、つい応援したくなる。サトウキビ畑でのハブを焼く少女との出逢いや、『モバマス』風の演出など、勢いのあるコミカルなシーンも存在。本筋では伝奇を交えたストーリーが、十分なディテールをもってシリアスに描かれる。フルボイスに対応しており、彼らの演技も作品に彩りを与えているが、システムやゲーム的な遊びの部分ではオーソドックスそのもの。奇抜なギミックやアイデアに頼らず、真っ直ぐなストーリーで勝負している。裏を返せば目を見張るような仕掛けや、新しい遊びはないわけである。しかし、作品にはそれぞれの目指すカタチがあり、『イハナシの魔女』は王道のボーイミーツガールというコースを全力で走りきった。媒体に沿って、全力で物語を磨き上げたことに賛辞を送りたい。

2022年現在、世界はコンテンツで溢れかえっている。無料のスマホ向け作品やVTuberの配信、サブスクリプションサービスなど、例はいくらでも。冗長で薄味なコンテンツをすぐに切っても消化が追いつかず、動画を見ながらゲームをしているなんてプレイヤーも少なくないだろう。令和の世では、密度の重要性が増していると思うのだ。その点、本作は長編ノベルとしては短い10時間の中で、少年と少女の青春を最後まで描いている。背景を十分に用意しながら、ボーイミーツガールに不要な部分は削り落とし、濃密なストーリーが展開。無駄を省いてテンポよくシーンを進めつつ、不足を感じさせない。2022年らしい密度をともなった、最新のボーイミーツガール。彼らの輝かしい日々を、ずっと見ていたくなるような作品だった。
by. Keiichi Yokoyama 



『Vampire Survivors』

――やめたくても、やめられない

開発元・販売元:poncle
対応機種:PC/Xbox One/Xbox Series X|S/iOS/Android


早期アクセス配信開始以降、その余りある中毒性から「電子ドラッグ」と比喩された本作。本年には幾度ものアップデートによってユーザーのささいな不満すら次々に解消し、筆者が思い描いていた「完成品」を遥かに凌駕するかたちで正式リリースを迎えた。

正式リリースまでの歩みを振り返ると、本作に含まれる中毒性は早期アクセス配信直後から目を見張るものだったといえる。ゲームをプレイしたが最後、攻撃ボタンすら無い簡易的な操作性や「30分間生き残る」という単純明快なルールによって、いち早く通り抜けたい「ゲームプレイに必須な知識を蓄える過程」をすっ飛ばし、誰しもが一瞬にして圧倒的物量の敵を圧倒的物量の弾幕で駆逐する一騎当千の爽快感が得られる劇薬を処方される。レア宝箱獲得時のギラギラとした演出は大量のドーパミンを放出させ、プレイヤーをひたすら高揚感を求める“サル”に変えるのだ。やめたくてもやめられない。その中毒性は圧倒的な高評価を呼び、その評価を目にして「カートに入れる」ボタンに手を伸ばした者も少なくないだろう。はたまたとあるライブ配信画面から滲み出た甘く危険な香りに誘われた者もいるかもしれない。そうして国内においても、数多くのサバイバーが瞬く間に誕生していった。

そうした最中、開発元であるponcleは、ユーザーの熱気が冷めやらぬうちにと大規模なコンテンツ改良と拡充を実施し続けた。キャラビルドが完成しきったゲーム後半の惰性的な時間に対しては、ゲームスピードを上げる時短ルールを追加することで改善。成長させ甲斐のない武器には進化武器の実装というかたちで存在感を高め、加えて新たな武器やキャラクターを導入することでビルドパターンを拡充。数多くの追加要素を「ゲーム内実績」というかたちで見せることでプレイ意欲を高めつつ、実績としては見えない“あえて隠された追加要素”も用意することで、プレイヤーの探究心をくすぐることにも抜かりがない。そうしたアップデートの頻度は正式リリースに至るまで低下することなく、マンネリ化を感じ始めた頃には次の新たなコンテンツがやってくる。結果として、絶えずゲームプレイに新鮮味をもたらしてくれたのだ。

本作を語るうえで外せないのは販売価格だろう。早期アクセス配信時は300円。圧倒的物量のコンテンツが追加された正式リリース版に至っても販売価格は499円である。さらにいうと、先日配信されたDLCも199円と破格的。コンテンツ内容からすればもう少し価格を上げてもいいのでは、と感じる方も少なくないのではないだろうか。先のDLC配信開始の際、価格設定に関してponcleは「本編と同じように適切な価格である」とコメントしている。類型作品がひしめく現在、筆者がいまだ本作を愛してやまないのは、作品がもつ中毒性を極限まで高め続け、真摯にユーザーと向き合うponcleの謙虚な姿勢が垣間見えるからだ。今後も中毒性あるコンテンツが追加され続けることに期待を寄せつつ、本稿をもって開発元に対する感謝の気持ちを示したい。
by. Tetsuya Yoshimoto 



『Ghostwire: Tokyo』

――この街を再現してくれてありがとう

開発元:Tango Gameworks
販売元:Bethesda Softworks
対応機種:PC/PS5


地方から東京に移り住んで4年が経つ。東京は本当に、いつでも、どこでも、人が多い。街は常にせわしなく、その裾野には取り残されたような住居がひしめき合う。いびつで、雑多で、息が詰まる。そうした東京に対する負の感情を、このゲームはもっともロマンティックなかたちで昇華してくれたように思う。

タイトルの通り、本作の舞台は東京だ。黒幕によって、周辺地域の人々は一瞬にして消失。マレビトと呼ばれる異形が街にあふれだす。主人公は謎の男“KK”と共に、マレビトたちとの戦闘に立ち向かう。消失した20万人の魂と、黒幕にさらわれた主人公の妹を取り戻すためだ。

本作最大の魅力は間違いなく、独自の世界観にある。舞台となる渋谷とその周辺地域の出来はすばらしく、「現代日本を舞台にしたゲーム」としては情報量・雰囲気ともにトップクラスだろう。その再現度の高い渋谷の街を、顔のないマレビトたちが闊歩する。各地の電話ボックスは霊の転送機に改造されており、コンビニでは猫又が出迎えてくれたり……と、本作には東京に対する「こうだったらいいのにな」のロマンが大量にちりばめられているのだ。古典的な妖怪から、ネット上の都市伝説まで、日本のプレイヤーになじみ深いオカルトを広く盛り込んだ“おもてなし”になっている。これらのおもてなしや、日常と非日常の隣接感は十分に楽しめた。「現代日本のオカルトを再構築する」という取り組みと、それを高水準で達成しているビジュアルは評価に値する。

ナラティブ面においては、死者や妖怪とのやり取りが繰り返し描かれる。そこで提示される価値観は、いずれも筆者にとって違和感なく受け入れられるものであった。プレイを通じて異文化に触れる体験を提供するのもゲームの魅力だが、本作には「慣れ親しんだ文化が提示され続ける」という独自のプレイフィールがある。ゲームが提示するカルチャーに対して、プレイヤーが擦り合わせる必要が少ないゲームは、かくもスムーズなのかと驚いた。

実のところ、本作よりも完成度の高いゲームにはいくつか心当たりがある。本作は戦闘面の単調さも含め、すべての要素が素晴らしいゲームであるとは言い難い。しかしながら、本作の描く東京は確実に筆者の心を癒し、ワクワクさせてくれた。筆者自身の感性にもっとも触れた作品として、本作を今年のベストゲームに推したい。
by. Aya Furukawa



『TUNIC』

――Secret Legend

開発元:TUNIC Team
販売元:Finji
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X/S/Nintendo Switch


自分の今年のGOTYは『エルデンリング』である。それはもう議論の余地もないほどに。狂ったようにプレイしたし、最高の体験だったので、正直GOTYどころかGOML(Game of My Life)をあげてもいいくらいだ。それはそれとして、今回は『TUNIC』の話をしたいと思う。なぜか?

前述のように、今回は何も考えずに『エルデンリング』の記事を書くつもりだった。迷いはなかった。しかし、締め切り数日前、各ライターが選んだタイトル一覧を眺めていて『TUNIC』がないことに気付いてしまった。このままだとAUTOMATONのGOTY記事は『TUNIC』の名前がないまま掲載されることになる。それで良いのだろうか?『TUNIC』ほどのゲームが?それは……そんなことが許されるのだろうか?自分は悩んだ。そして悩み抜いた結果、今この原稿を書いている。

『TUNIC』の開発者たちは、ゲームが好きすぎる。自分が大好きなゲームを全部組み合わせたゲームを作れば、面白いに決まっているだろう……明らかにそういう思想で『TUNIC』を作っている。往々にしてこういった「欲張り」なゲームは焦点のぼやけた作品となりがちであり、『TUNIC』もその例には漏れず終盤にかけてかなりゲーム内容が急ターンする。また、『ゼルダの伝説』風のマイルドなアクションパズルを期待した購入者に最初からゴリゴリのソウルライクをぶつけるため、今年発売のゲームの中で『エルデンリング』の次に途中離脱率が高い(≒投げた人が多い)というデータもある。そんなややとっ散らかった作品でありながらも、その芯を貫く作り込みとゲームへの愛は本物だ。ビリビリと伝わってくる。

そもそもひとつひとつの要素は十分に洗練されていて、単純なソウルライクゲームとして見ても『TUNIC』は十分すぎるほどの出来だと思う。しかし本作が真に評価されているのはそのアクションパズルゲームとしての側面、その狂気的なまでの作り込みだ。発売から半年ほど経ってから、『TUNIC』の開発者たちが明かした開発理念のひとつに “Content for no one”というものがある。つまり彼らは、別に誰にも気付かれないままでも良いという前提でゲームを、ディテールを作り込んでいたのだ。公式の攻略本に書かれるまで見つからないような隠し要素に溢れていた90年代まで逆行しているようなコンセプトであり、現代的なゲームデザインの潮流からは外れているだろう。

買った人全員に、ゲームを100%楽しんでもらう。現代のゲームをひそかに蝕むアクセシビリティの呪いに、どうしても窮屈さを感じてしまう瞬間はある。だからこそ“Content for no one”には少し痺れてしまった。『TUNIC』にはとてもではないが一人では気付けないようなもの、自力では解けないであろうものが存在する。でもそれでいいのだ。自分で全部は見つけられないからこそ、見つけられたものの価値も増す。誰向けでもないコンテンツから、たまたま自分が見出したものの輝きを楽しむような、そういうゲームとの向き合い方もたまには悪くはないはずだ。
by. Mizuki Kashiwagi 



『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』

――サブクエストの理想形

開発元:Santa Monica Studio
販売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
対応機種:PS4/PS5


筆者はゲームをプレイする際、横道にそれて遊びがちだ。ダンジョンでは“正解ルート”を避けようとするし、気に入ったゲームではメインストーリーのクリアまでにサブクエストを遊びつくす。じっくりと長くゲームを楽しめる一方で、そうした遊び方では“ストーリーそっちのけ”で遊んでいる意識が生じていた。何らかの使命を帯びていながら無関係な部分に時間を割く際には、罪悪感を覚えることもあった。

『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は、そんな筆者の遊び方を許容してくれる。本作はストーリー主導のゲームながら、サブクエストも豊富に存在。北欧神話における九つの世界「九界」を舞台に、それぞれの世界の特色や伝説を描くクエストが用意されている。そして、そんなサブクエストの攻略へと誘導するセリフが、ゲームの進行中に都度盛り込まれているのだ。すぐに主目的に向かってもいいし、サブクエストに向かってもいい。小さな要素ながら、サブクエスト攻略を許容するセリフの存在は筆者の“罪の意識”を和らげてくれた。

各サブクエストの内容も味わい深い。まずサブクエストの多くでは、前作からのキャラの関係性の変化が描かれている。あるクエストでは、主人公クレイトスが息子のアトレウスを冒険に誘う形で展開。これは前作にて、幼いアトレウスがクレイトスを冒険に誘っていた点と対照的だ。ほかのサブクエストでもキャラの人間関係の変化が細やかに描かれており、遊べば遊ぶほど彼らへの理解が深まる。サブクエストを遊ぶうちに、前作から続く物語は筆者の中でさらに厚みを増していった。

そして本作のサブクエストの多くには、「過去への恐怖」や「親子」といった、主人公クレイトスの内面に深く関わるテーマが盛り込まれている。それらはメインストーリーに関係するテーマでもある。サブクエストの結末を見るたびに、クレイトスの行く末もさらに気になる。横道にそれても、自然と本編に引き戻される作りとなっていた。

本編からシームレスに繋がり、本編では描き切れなかった要素が盛り込まれ、本編への感情移入を強める。本作ではいずれのサブクエストにも、コンプリートのために攻略する徒労感はなく、遊んでよかったと思える充足感があった。素晴らしいサブクエストの数々と、それらによって深みを増すメインストーリー。大ボリュームで充実した体験を届けてくれた本作を、個人的なGOTYとしたい。
by. Hideaki Fujiwara



『エルデンリング』

――王家墓所から、黄金樹までの25年

開発元・販売元:フロム・ソフトウェア
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S


筋金入りのフロム・ソフトウェアファンとして、真っ向から『エルデンリング』を褒めさせていただく。筆者のフロム・ソフトウェアとの出会いは約25年前、同スタジオ初作品『KING’S FIELD』を、発売からやや間があいて遊んだのが最初だった。同作はアクションRPGである。当時小学生だった筆者が魅了されたその味わいは、制作陣の変化にもかかわらず『ダークソウル』シリーズなど同スタジオの諸作品を経て、『エルデンリング』に受け継がれている。

というのも、『KING’S FIELD』や『SHADOW TOWER』シリーズから『エルデンリング』に至るまで、同スタジオのRPGの主人公たちはキャラクター性が希薄、あるいはプレイヤー自身が設定できる仕組みが基本だ。作品によってはしっかり設定が用意されているものの、『エヴァーグレイス』といった一部例外を除いて、プレイ中意識することはあまりない。一方で、一般的なRPGでは、主人公のキャラ付けはしっかりなされがち。美形であったり、性格に特徴があったり、あるいは特別な血筋や出自がしばしば強調されたりなどだ。そのキャラ付けが、筆者にとって没入の障壁となる。自由度の高い『The Elder Scrolls』シリーズでさえも、設定の味付けが濃く、どこか他人事と感じるふしがある。

そうした見せ方が悪いわけではなく、あくまで方法論の違いではある。主人公の設定をしっかり固めるからこそ、実現できるゲーム体験もあるだろう。ただ、「主人公たちが苦境を突破するのを見る」のではなく「自分が主人公となり苦境を突破する」体験こそ、筆者が25年間愛し続けているフロム・ソフトウェア作品に期待する魅力だった。

そして『エルデンリング』で、その魅力はさらに底上げされた。広大なオープンフィールドの導入が大きな要因だろう。初代『KING’S FIELD』では、王家墓所なるダンジョンのみが舞台だった。後のシリーズ作品ではさまざまなロケーションが描かれ、『ダークソウル』シリーズなどでは多彩なエリアの繋がりもあった。しかし、その繋がり方はどこか“あいだ”がなく、各エリア間のコントラストが強いテーマパーク的な配置でもあった印象だ。

しかし『エルデンリング』では、広大な狭間の地に、ゆるやかなグラデーションを描きつつすべて配置されている。強化されたエリアとエリアの間の文脈が、黄金樹まで“自分で歩む”道のりが、かつてない冒険への没入感をもたらしてくれる。25年前の王家墓所から追いかけ続けた道が、狭間の地にて、ファンとしてもっとも見たい景色に繋がったのだ。
by. Seiji Narita 



『エルデンリング』

――もはや人生の1ページ

開発元・販売元:フロム・ソフトウェア
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S


人生は、楽しさと苦しさの繰り返し。楽しいことがあれば苦しいこともあり、苦しいことが続いていくなかでまた小さな楽しいことと出会う。これは生まれてから、今を生きる日まで、ずっと続くサイクルである。その中でゲームは、楽しいイベントに属するだろう。ゲームをしている時間は、楽しい時間。しかし僕が『エルデンリング』について思い出すのは、苦しいことばかり。

地下墓で執拗な不意打ちを受けて死んで、コントローラーをぶん投げたこと。何度も倒せないボスを前に、遊ぶのをやめようとしたこと。同じ場所で同じ死に方をしすぎて、自分に本気で失望したこと。英雄墓が嫌すぎて、マップでカーソルが合うだけで気分が悪くなったこと。ためこんだルーンを失って20分放心したこと。『エルデンリング』を遊ぶと、苦しいことばかり思い出す。

苦しかった。この世界にはわからないことが多すぎて、怖いことが多すぎて。けれど、楽しかった。失いたくないものを抱えながら、未知の場所を開拓していく。何もかもわからないから、たくさん失敗体験をして。いろんなことに慎重になって。だからその場所を攻略した時はとんでもなく気持ちよくて。わからないことが、怖いことがこんなに楽しいと知らなかった。新しいエリアに着いた時や地図が広がっていく時の鼓動の高まりは忘れられず。いつの間にか没入していて抜け出せない。ゲームを遊んでいていつの間にか夜明けが近づいていたことも多くて。『エルデンリング』をしている時、間違いなく自分は編集者ではなく褪せ人だった。

今年もたくさんゲームが発売され、面白いゲームは山ほどあった。しかし『エルデンリング』はもはや自分の中では「今年遊んだゲーム」という枠を超えて「2022年の思い出」という、人生におけるひとつの思い出として心に刻まれている。『エルデンリング』を思い出すことは、自分にとって学生時代を思い出すような感覚に近い。

こんなにゲームで嫌な思いをしたことがなかった。こんなにゲームでストレスを受けたことがなかった。嫌いなところや気に入らないところは無数にある。嫌いなゲームとすら言えるかもしれない。一方で、世界の仕組みを知って、嫌がらせが無数にあることを知ってなお、今遊んでも没頭してしまう。こんなに自分の心をぐちゃぐちゃにしてくれるゲームに出会ったことはない。数年後、過去を思い返した時に2022年は『エルデンリング』を遊んでいた年として覚えているだろう。苦しみと怒りと呆れ、悲しみと苛立ちと、そして喜び。そんなたくさんの感情を僕に与えてくれた最高のゲーム、『エルデンリング』にゲーム・オブ・ザ・イヤーの冠を贈りたい。
by. Ayuo Kawase

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