PS5/PS4では、2024年度はSIEファーストパーティの「既存大型タイトルの新作」の発売予定はなし。『ゴッド・オブ・ウォー』級のリリースは2025年度以降へお預け

 

ソニーグループは2月14日、2023年度第3四半期の連結業績を発表。このなかで、ゲーム&ネットワークサービス分野の来年度(2024年4月〜2025年3月)の展望を説明し、SIEファーストパーティによる既存大型タイトルの新作リリースを予定していないことを明らかにした。


ゲーム&ネットワークサービス分野の2023年度第3四半期の業績について、PS5の販売台数は820万台となり、累計販売台数は5000万台を突破。また、『Marvel’s Spider-Man 2』の累計実売本数が2月4日時点で1000万本を突破し、PC向けを含む『Marvel’s Spider-Man』シリーズの総実売本数が5000万本を超えたことも報告された。収益面で大きな貢献となっているとのこと。

このほか、12月のプレイステーション全体の月間アクティブユーザー数は、過去最高となる1億2300万アカウントを記録。当四半期の総ゲームプレイ時間も前年同期比13%増となり、主要なユーザーエンゲージメント指標は大きく伸⻑したという。この背景としては、PS5本体の普及拡大に加え、サードパーティの基本プレイ無料タイトルのヒットの影響が言及されている。またネットワークサービスについては、PS Plusの会員数が前年同期比で若干減少したものの、上位サービスへのシフトや価格改定の影響などにより、売上は前年同期比11%増とされた。


発表ではさらに、ゲーム&ネットワークサービス分野の2024年度(2024年4月〜2025年3月)の展望についての、現時点での見方も説明された。このなかではSIEのファーストパーティタイトルについて、引き続き質の高い作品の制作とライブサービスゲームの開発に注力するとし、大型タイトルの開発が進行中であると報告。一方で2024年度においては、既存大型タイトルの新作リリースを予定していないことが明らかにされた。

既存大型タイトルとは、発表によると『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』や『Marvel’s Spider-Man 2』のようなタイトルを指すとのこと。PlayStation Studiosが手がけるそうした大型シリーズ作の続編やスピンオフタイトルなどは、2024年度には発売せず2025年度以降に予定しているということだろう。

どこからが“大型タイトル”に当てはまるのか基準がはっきりしないが、ソニーは来年度のソフトウェア売上や自社制作ソフトウェア収益は減少すると見込んでおり、少なくとも売り上げを大きく牽引するようなタイトルの発売はないと受け取れる。ただ言葉どおりであれば、新規IPであればPlayStation Studiosによる大型タイトルも発売される可能性はあるかもしれない。また、先日発表されたリメイク版『Until Dawn-惨劇の山荘-』のように、ファーストパーティタイトル以外をSIEが販売する取り組みは来年度も続けられそうだ。

ゲーム&ネットワークサービス分野の来年度の展望についてはこのほか、PS5本体の販売台数が、来年度以降は緩やかに減少していく見込みであることも報告。この点については、コンソールサイクルの後半に入ることもあり、収益とのバランスをより重視した販売の最適化を進めていくためと説明された。一方で、サードパーティのソフトウェア売上については、拡大したPS5のインストールベースと高いユーザーエンゲージメントにより、緩やかに拡大する見込みとのこと。

また、質疑応答にてソニーグループ代表執行役社長COO兼CFO十時裕樹氏は、PS5本体においてはチップシュリンクによる恩恵がなかなか得られず、PS4やそれ以前の世代でおこなったようなコストダウンは難しいと説明。そのため販売戦略としては、以前のようなディスカウント販売をするのではなく、収益性・ユーザーエンゲージメント・販売台数のバランスを取っていくとした。

十時祐樹氏


なお、SIE社長兼CEOのジム・ライアン氏が今年3月に退任することを受けて、十時氏は今年4月1日付でSIEの暫定CEOに就任予定。また、昨年10月にSIE会長に就いている。今回の質疑応答にて同氏は、これまでにグループ内のスタジオを訪問してきた印象として、自分たちの責任範囲で最適化してやっているが、全体の成長やサステナブルな利益の創出、マージン(利ざや)を上げていくことに、どのように繋がっているのかへの理解が必ずしも深くないとし、組織としての大きな問題であると述べた。

またSIE傘下のゲーム開発会社・Bungieの近況については、スタッフのモチベーションが高く、ライブサービスへの知見も素晴らしいものがあるとコメント。ただビジネスの観点では、お金の使い方や、開発スケジュールにおけるアカウンタビリティ(会計説明責任)の果たし方には改善の余地があるとした。

このほか、ゲーム&ネットワークサービス分野における利益率の改善に関して十時氏は、先述したようにPS5本体のコストダウンが難しいなかでは、ファーストパーティタイトルに原動力を求めたいと述べる。そして、ファーストパーティタイトルは、かつてはPS本体を売るためのマーケティングツールとしての側面が強かったが、今後は“強いタイトル”をPS向けだけでなく、PCなどにも展開していくことがマージンの大きな改善に繋がるとし、積極的に追求していきたいとした。

ちなみにSIEが販売するPC向けタイトルとしては、先日リリースされた『HELLDIVERS 2』が大きな人気を獲得。また、3月22日には『Horizon Forbidden West Complete Edition』が発売予定となっている。