『Dead by Daylight』テストサーバーで殺人鬼やシステムに大規模調整。開発チームの意図と見解もあわせてチェック

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日本時間4月24日、『Dead by Daylight』Steam版においてPublic Test Build(以下、PTB)が公開された。PTBとは定期的に実施される大規模アップデートの前にテストを目的として公開されるもので、データが保存されない代わりに新バージョンをいち早く試し、フィードバックを行うことができる。

今回のPTBは、新キャラクターであるプレイグ・ジェーン・そしてアッシュの登場後のゲームバランス調整に主眼を置いたものとなった。本記事では主な変更点をまとめ、Behaviour Interactiveの開発チームがこれらの変更を行った理由を公式生放送からチェックしていく。

※なお、本記事では執筆時点のPTB最新バージョン2.7.0aを基に記載する。今後の本実装とは差異がある可能性があることをご了承いただきたい。

 

ゲーム終盤に命をかけた制限時間追加『Endgame Collapse』

本PTBで実装された新システム「Endgame Collapse」(エンドゲーム・コラプス、以下コラプス)は、一言で表すと「脱出ゲートを開けたあと、2分後に生存者が全員死亡する」というショッキングなシステムだ。画面上部に残り時間を示す赤いバーが表示され、生存者の焦燥感を煽る。協力的な生存者プレイヤーはゲートを開けたあともフィールドに留まり、殺人鬼に追われている仲間をアシストしたり、吊られている仲間を救出したりしに行くことが多い。コラプスの実装によりこれらの行動に“見切りをつける”ことが必須となった。

コラプスの残り時間がゼロになると、地中から突然エンティティが現れ生存者を刺し貫く。回避手段はない。

とはいえ、殺人鬼側としては脱出ゲートを開けられた時点で、生存者を見つけても追いついて瀕死にさせるまでの間に確実に逃げられてしまう「安全地帯」が大きく広がることになるため、コラプスを戦術の中心に組み込むことは難しい。しかし、ゲーム最終盤で威力を発揮する「呪術:誰も死から逃れられない」や「血の番人」と組み合わせることで生存者が仲間を救出できる猶予を狭めることができるだろう。なお、コラプスには他にも細かいルールが存在するため、列挙する形で紹介する。

・コラプスのタイマーは、いずれかの生存者が瀕死
・またはフックに吊られている間は進み方が遅くなる。
・生存者が残り1人となったとき、ハッチが必ず開く。(現在は発電機2台の修理が必要)
・殺人鬼は開いているハッチを閉めることができる。ハッチを閉めると残りの発電機は全て封印されて修理できなくなり、ゲートが通電して開けられるようになり、コラプスが開始する。そのかわり、ハッチに飛び込もうとする生存者を捕獲するアクションは削除。
・殺人鬼は通電しているゲートを開けることができる。殺人鬼がゲートを開けた場合でもコラプスは発動する。
・ゲート通電後(発電機を必要台数修理後)に発動するパークは、コラプス発動と同時に、修理済み発電機の台数に関わらず発動する。

 

コラプス実装の目的はゲームルール上の問題解消と新しいエキサイトのため

PTB開始から数日後の4月25日、開発チームが生放送を行い、PTBで実装された変更に関する説明を行った。コラプス担当のゲームデザイナーであるGuillaume Bourque氏は今回の実装の理由について「1マッチの時間が極端に長くなったり、ゲームを人質に取る行為が発生したり、殺人鬼と生存者が1対1となって脱出の希望がなくなったりする状況は以前から改善したいもののリストの中に入っていた。それらの状況を回避することが目的であると同時に、新しいエキサイトとゲームプレイを追加するためだ」と語っている。

 

殺人鬼の悩みの種、ハッチ上のお見合いや生存者の「残業」が不可能に

Bourque氏が語ったゲームルール上の問題は、殺人鬼を悩ませてきた問題と直結する。まず、ハッチ上の“お見合い”だ。『Dead by Daylight』では、基本的に生存者が残り1人かつ発電機が2台修理されている状態だと脱出ハッチが開き、1人となった生存者に最後のチャンスが与えられる。殺人鬼は生存者がハッチにたどり着く前に瀕死にさせるか、生存者がハッチに飛び込もうとする瞬間に捕まえることで生存者を全滅させることができ、生存者は殺人鬼が近くにいないときにハッチに飛び込むことで発電機を全て修理せずとも脱出することができる。しかし、これには大きな問題があった。「殺人鬼と生存者ともに勝敗を決することができずハッチ上にたどり着いたらどうなるか?」という点である。

生存者は自らハッチに飛び込むと殺人鬼に捕獲されてしまうため、動かない。殺人鬼も生存者を攻撃すると攻撃後の硬直の間にハッチに飛び込まれてしまうため、攻撃しない。「手を出した方が確実に負ける」という状況が生み出され、完全なジレンマ状態となってしまっていた。このハッチ上でのお見合いはほぼ全てのプレイヤーが経験したことがあるだろう。今回実装されるコラプスにより、殺人鬼はハッチを閉める、生存者はとにかく飛び込むことで「先に動いた方が勝ち」という仕様に切り替わるため、今後このようなことは起こらなくなる。

他に、生存者が発電機を直し、ゲートを開けたあともフィールドに居座ってポイント稼ぎに奔走する、俗に“残業”と呼ばれる行為もコラプスの実装により不可能となる。殺人鬼にとって生存者がマップ各所の発電機を直していくのは生存者を見つける大きな手がかりとなるが、それが終わっても脱出を試みず、無秩序に動き回る生存者を補足するのは至難の業だ。悪意あるプレイヤーの一存で無為にゲームを引き伸ばされることがなくなるのは朗報と言える。

 

殺人鬼リージョンに大規模な調整

次に、能力に大きな変更が入った殺人鬼リージョンを紹介しよう。主な変更点は以下のとおりだ。

・移動速度を標準殺人鬼相当に変更 (4.6 m/秒)、脅威範囲を24→32mに変更
・特殊能力「愚連の狂乱」:
→移動速度を5.0 m/秒に変更
→発動中は血痕が見えないように
→攻撃を空振りすると効果が終了するように
→通常時に生存者を攻撃したときの能力ゲージ喪失を100→50%に変更
→効果時間を6→10秒に変更
→チャージ時間を15→20秒に変更
→終了時のめまい時間を3→4秒に変更
→能力ゲージが満タンでないと使用できないように
→パレット飛び越えにかかる時間を0.9→1.35秒に増加
→窓枠飛び越えにかかる時間を0.9→1.1秒に増加
→既に深手状態の生存者を更に能力で攻撃してもタイマーが減らないように
・特殊能力の変更に合わせ、アドオンの効果を調整

一言で表すと、移動速度が上がった代わりに特殊能力が弱体化したということになる。これについて、同じく公式生放送での解説を紹介する。

 

開発コンセプトにそぐわず「理不尽キラー」と化したリージョンに決別

これらの変更について、リージョン担当のゲームデザイナーであるEthan Larson氏より詳細な理由が語られた。

リージョンはもともと高速移動により複数の生存者を負傷させることが得意な殺人鬼としてデザインされたものの、結果的に高速移動で1人の生存者を集中狙いするのが得意な殺人鬼となってしまった。集中狙いをされた生存者がどのように感じるかは理解しているので修正しようとしたが、リージョンは「相手にすると非常に鬱陶しいが、使うと大して強くない」という現状があり、純粋な弱体化は問題を悪化させるだけだった。そこで、「能力を使うと生存者側に対抗策がない」「1人を集中狙いするのが簡単すぎる」「深手状態にした生存者を視界に入れず追跡する仕様の悪用」という問題をそれぞれ解消することにした。

■能力を使うと生存者側に対抗策がない
現在、愚連の狂乱を使用したリージョンに対する生存者の対抗手段はほぼ存在しない。パレットや窓枠を挟んでも飛び越えられて距離を詰められ、攻撃を回避できたとしてもすぐに連続攻撃される。この点はリージョンが攻撃を空振りすると効果が終了すること、血痕が見えなくなること、パレット・窓枠の飛び越え時間が遅くなること、めまいが長くなることで対策した。

■1人を集中狙いするのが簡単すぎる
現在のリージョンは生存者を見つけると“愚連の狂乱を発動して攻撃”を4回繰り返すだけでターゲットを瀕死にすることができる。通常の殺人鬼と比べると2倍の回数が必要だが、その間は前述の通りパレットや窓枠をほぼ無効化できるため、生存者側に有効な対抗手段がない。この問題は、既に深手状態の生存者を攻撃してもタイマーが減らないようにする、能力ゲージが満タンでないと使用できないようにする点で対策した。

同時に、複数の生存者を狙いやすくするため、愚連の狂乱の効果時間を伸ばし、移動可能距離を伸ばすことで愚連の狂乱のもう1つの効果である他の生存者の探知を使いやすくした。移動速度がそのままだと移動可能距離が極端に伸びてしまうため、移動速度を少し落とした。

■深手状態にした生存者を視界に入れず追跡する仕様の悪用
現在、リージョンが能力を使って生存者を深手状態にすると、その生存者が殺人鬼に追われている間(つまり、チェイス判定中)は深手状態が進行しない。しかし、深手状態になった生存者とあえて距離を離したり、背中を向けながら血痕をたどり生存者を追いかけたりするとチェイス判定がなくなり、生存者は足を止めて深手を治療するか為す術なくそのまま倒れるかという選択肢しか残らないという仕様の悪用が問題視されていた。この問題は深手状態が殺人鬼の脅威範囲内で進行しないようにすることで対策した。

 

結果的にリージョンは「少し強化」、今後更に改善を検討

Larson氏は、「他にも変更のアイデアがあったが、“あまりにも素晴らしすぎる”ためボツになった」とも語った。開発チームが調整を検討するときは「使う方は楽しく、使われる方も楽しい」という殺人鬼・生存者双方の満足度を重視しており、このボツとなったアイデアは殺人鬼としてプレイする側は楽しいが、生存者にとって楽しくないため不採用にしたとのことだ。今回の調整もリージョンをトップ殺人鬼まで強化することが目的ではなく、現状と同レベルに留めるか強化することを理想としており、プレイテストを経た結果「少し強化されたと感じる」という見解が示された。愚連の狂乱の能力は控えめとなったが、移動速度の上昇がそれを補って余りあるということだろう。リードコミュニティマネージャーのNot_Queen氏は「仕様変更と同時に、今までと違うプレイスタイルが必要となる」とも補足している。また、コミュニティから寄せられた質問への回答と同時にPTB後の調整予定についても語られたため、いくつか紹介する。

・“パレット・窓枠の飛び越え時間が非常に遅く感じる”という懸念点については、実際の変更値は10~15%程度であり、アニメーションが動きと一致していないために生じている視覚的な“気のせい”である。今後アニメーションを同期させる必要がある。

・“攻撃を空振りすると愚連の狂乱がキャンセルされる”という仕様がPlayStation 4版・Xbox One版におけるコントローラーの操作性に与える影響については、今後Steam版との戦績の開きを見て再調整を検討する。

・愚連の狂乱の仕様変更に伴う獲得ブラッドポイントの調整は、増加が検討されたが、調整が必要だと決断するまでに至らなかった。今後データをモニターし、他の殺人鬼と比べてブラッドポイント獲得のパフォーマンスが落ちていることが確認できれば調整を行う。

・今後、通常時にパレットでスタンさせられても愚連の狂乱のゲージを失わないようにする予定。

 

コラプス実装・リージョン調整の巻き添えを受けた殺人鬼ピッグは再調整が決定

今回のPTBの目玉となる変更はコラプスの実装とリージョンの調整だが、唐突に能力が変更された殺人鬼がいる。ピッグだ。変更内容は以下のとおり。

特殊能力「逆トラバサミ」:
・「発電機が修理されたとき」のみタイマーが始動するように
・始動していない逆トラバサミはゲート脱出時に作動しないように
・チェイス中ではなく、脅威範囲内でタイマーが停止するように

1番目・2番目の変更は、逆トラバサミとコラプスが重複するシチュエーションを減らすものだ。コラプス発動前に始動していた逆トラバサミは有効なままだが、コラプス発動後に装着されたトラバサミは全く機能しなくなる。コラプス担当のBourque氏曰く、コラプス発動後2分の間に、逆トラバサミを装着した生存者に殺人鬼の目から逃れながら逆トラバサミを解除させ、脱出を試みさせるのは「強すぎる」ことが調整の理由とのことだ。本実装後は、発電機の修理が完了するまでに逆トラバサミを使い切るようなペース配分を行う必要があるだろう。

3番目の変更は、リージョンで問題視された“仕様の悪用”と同じ理由だ。生存者に装着した逆トラバサミが始動すると、チェイス中以外はカウントダウンが進む。つまり、チェイスをあえて発生させないようにすることで生存者側に対抗手段がなくなってしまう。ピッグはもともと移動速度が早く、逆トラバサミ自体も発動による即死効果より発電機修理の遅延を目的として使われることが多かったためこのような戦法は効率が悪く、問題視されることは少なかったが、リージョンの能力にメスが入れられると同時に対策された形だ。

しかし3番目の変更により、
①ピッグはタイマー停止中の生存者がわかるため、チェイス中でないのに突然タイマーが停止した=自分の脅威範囲内にその生存者が入ったという探知能力として使えてしまう(パーク「囁き」のような能力がついてしまう)
②脅威範囲内に留まれば逆トラバサミは永遠に起動しないため、逆トラバサミの主な目的である発電機修理の遅延効果を果たさなくなることが多い

という新たな問題が発生してしまった。これらの問題について、今後3番目の仕様はロールバックし、今まで同様チェイス中のみタイマーが停止するようになる予定であることが発表された。

 

日本時間5月3日よりBP2倍イベント開始、統計データ公開も

PTB開始から間もない日本時間5月3日から5月7日まで、全プラットフォームで獲得ブラッドポイントが2倍となる恒例のBP2倍イベント「ブラッドハント」が開催されることが発表された。また同日にはゲーム内の統計データ公開やDiscord上でのライブ討論会が予定されている他、プレイヤー満足度アンケートも実施中であり、コミュニティとのコミュニケーションを今まで以上に強化しようとしていることが伺える。

『Dead by Daylight』は、日本国内向けにSteamおよびPlayStation 4で配信中だ。

【UPDATE 2019/5/2 20:40】
BP2倍イベントが、日本時間5月3日午前9時から開始されることが公式フォーラム上で発表された。新たに登場したプレイグ・ジェーン・アッシュを含むキャラクター達を一気に成長させるチャンスなので、ゴールデンウィーク後半は『Dead by Daylight』に費やすのもいいのではないだろうか。

【UPDATE2 2019/5/2 23:00】
BP2倍イベントの開始時間が日本時間5月3日午前3時に変更された。

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