PS5『Marvel’s Wolverine』開発者インタビュー。『Marvel’s Spider-Man』の経験を経て作ったのはジェットコースターの冒険。展開と60fpsと暴力で描いた「ウルヴァリンらしさ」

『Wolverine』開発の意図やリニア設計への挑戦、ゴア表現との向き合い方とこだわり、SIEファーストスタジオ同士の横の繋がりなど、本作開発の背景について幅広く話を聞いた。

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ソニー・インタラクティブエンタテインメントは『Marvel’s Wolverine』(以下、Wolverine)を9月15日に発売予定だ。対応プラットフォームはPS5。CEROレーティングはZ。

本作は『Marvel’s Spider-Man』(以下、Spider-Man)シリーズを手がけたInsomniac Gamesの最新作だ。マーベルのスーパーヒーローである「ウルヴァリン」ことローガンが主人公となる。仲間のミュータントが次々と拉致されていく絶望的な状況で、ローガンが自身の暗い過去の秘密を解き明かそうと奔走するオリジナルストーリーが描かれるという。

そんな『Wolverine』は、『Spider-Man』シリーズからは作風が一転。ニューヨークを舞台とするオープンワールドゲームだった過去作とは違い、カナダ・日本・マドリポールなど世界各地を巡る、リニアなストーリー体験を楽しむ作品となっている。バトルにおいても、ウルヴァリンの鋭利な爪による容赦のない一撃とそれによる出血や欠損が描かれるなど、壮絶な戦いを彩るゴア表現が盛り込まれている。なおSIEによると、本作の日本語版は、海外版と比較して発売時点で暴力表現のレベルに調整・変更は行われていないとのことである。

引き続きマーベルヒーローを題材としつつも、本作は『Spider-Man』とは作風の違いを強く感じさせる。Insomniac Gamesは一体なぜこのような変化に踏み切ったのか。今回弊誌は、本作のシニアプロジェクトディレクターを務めるJess Reiner-Reed氏にインタビューを実施。『Wolverine』開発の意図やリニア設計への挑戦、ゴア表現との向き合い方とこだわり、SIEファーストスタジオ同士の横の繋がりなど、本作開発の背景について幅広く話を聞いた。

世界を旅する物語

──『Spider-Man』とは異なり、本作はオープンワールドから離れてより一本道に近い体験になっています。リニア型ゲームを作るうえで、どのようなことに重点を置きましたか?個人的には、ミッションごとにフィールド環境がめまぐるしく変わるので驚きました。

Jess Reiner-Reed氏(以下、Jess氏):
そうですね、『Spider-Man』はニューヨークを中心としていて、オープンワールドのゲームプレイのために一つの街をじっくり作り込みました。スパイダーマンも「フレンドリーな地元のヒーロー」として街を知り尽くしていて、道行く人とハイタッチするような存在でしたよね。

一方のローガンはジェットコースターのように、目まぐるしく場所が移り変わる冒険に乗り出すことになります。世界中を旅させるのはローガンのキャラクターにも合っていると感じましたし、ローガンをさまざまな場所に連れていけることに我々自身もわくわくしました。カナダや日本、ジャングルの奥地、そしてMarvelの架空の都市マドリポールまで、さまざまな土地が登場します。

──Jessさんが個人的に気に入っている、おすすめの場所やシーンはありますか?

Jess氏:
気に入っているシーンはいくつもあり、たとえばローガンが雪の中を歩いて自分の山小屋にたどり着くセクションはお気に入りです。あの場面ではアーティストたちが存分に腕を振るって、有機的な質感のロケーションを作り込むことができたんです。木々などさまざまなテクスチャを実際に撮影して作り、地に足のついたリアルな感触を目指しました。

とはいえ、やはり一番好きなのはマドリポールです。『Spider-Man』で描いたニューヨークとはまったく違う空気感の、Marvel独自の世界を探索できるので、特にお気に入りの場所になっています。ほかにもいくつかまだ未公開の好きなシーンがあるのですが、ネタバレになってしまうのでこの辺りにしておきます。

60fpsとリアルな環境の両立

──個人的な感想ですが、一度しか出てこないアートアセットの種類が多くてリッチな作りだと感じています。ボリュームもありますし、Insomniac Gamesがこれまで手がけた中でも屈指のアセット量を要するタイトルだったのではないかと想像します。アートチームが本作に取り組む上で、意識していたことを教えてください。

Jess氏:
『Spider-Man』と比較しますと、スパイダーマンはビルの間を高速で飛び回りながら街を駆け抜けていきます。しかしローガンはもっと重厚で地に足のついたキャラクターなので、プレイヤーは各ロケーションをじっくりと観察することができます。そのためアートチームとしては、本作ではロケーションをしっかり作りこんで、それぞれがまったく異なる雰囲気を持つようにしたいと考えていました。

たとえば日本では、雨の日特有の薄暗さと、そこに差し込む光を意識して制作しました。一方カナダの荒野で雪が降り始める場面では、また違う雰囲気を演出しています。チームは各ロケーションにリアリティと生命感を持たせるために、細部まで丹念に作りこみました。こうした取り組みにより、どの場面もとても美しく仕上げることができたと思っています。

──先ほど「木々を撮影した」とおっしゃっていましたが、実際に現地へ足を運んで取材をおこなわれたのでしょうか?

Jess氏:
はい、アートチームは日本にも渡航して、さまざまな写真を数多く撮影しています。写真は参考資料として活用したり、複数の写真から3Dモデルを生成するフォトグラメトリを利用してアセットにしたり、加工してテクスチャにしたりと、いろいろな方法でゲーム内に取り入れました。できるだけ多くの「リアル」をアートワークに落とし込もうとした結果です。

PlayStation.Blogにこの現地取材について記事が掲載されていますので、興味があればぜひご覧ください。 私自身はこの取材旅行には行けなかったのですが、個人的に何年か前に日本を訪れたことがあり、またいつか訪れたいと思っています。

──ぜひ来ていただきたいです。次の質問ですが、『Spider-Man』シリーズでは実現が難しかったけれど、本作で取り入れた挑戦的な機能はありますか?あればぜひ教えてください。

Jess氏:
『Wolverine』でまず取り組んだのは、美しいグラフィックと60fpsの滑らかな動きを両立させることでした。これは開発の初期段階からずっと重視していた点で、通常版のPS5とPS5 Proの両方で、60fpsでの滑らかな戦闘を実現できるよう取り組んできました。これは開発を通じて磨き上げて達成した、技術面での大きな挑戦だったと思います。

もう一つ挙げるとすれば、環境エフェクトですね。ゲーム全体に「地に足のついた」感覚を持たせることを意識しました。たとえば、血がローガンや敵に付着すると服に跡が残ったり、濡れ具合が変化したりします。泥が付くこともありますし、水たまりを歩いたり雨に打たれたりすれば、そうした汚れは自然と洗い流されていきます。プレイヤーには、ローガンや他のキャラクターたちが、本当にその環境の中にいると感じてもらいたかったんです。

特に血みどろの戦いのあとではキャラクターの衣装や、壁や、雪の上などにしっかりと血の跡がこびりつきます。これは過去作以上に力を入れた部分で、戦いのあとに「服はあちこちが破れ、あたりには敵の死体が散乱し、鮮血が飛び散っている」という、激闘の余韻を感じてもらえるようにしたかったんです。

「ウルヴァリン」を忠実に描く

──血の跡もそうですが、本作はInsomniac Gamesの作品のなかでもかなりゴア表現に力を入れた作品となっている認識です。これは最初から方針として一貫していたのか、途中から表現を強めていくことになったのか、どちらでしょうか?

Jess氏:
そうですね。過去作で言うと『Resistance』シリーズもアメリカではM(成人向け)レーティングの作品でしたが、『ラチェット&クランク』や『Spider-Man』とはかなり方向性が違うのは間違いありません。

『Wolverine』の最初のトレイラーを公開したとき、多くの人が聞いてきたのが「コミックと同じくらい過激になるのか」という質問でした。私たちはそこに対して、はっきり「はい」と答え、キャラクターに忠実であろうとしていることを伝えたかったんです。

『Wolverine』の企画を立ち上げた当初から、このキャラクターはコミックやテレビ、映画で描かれてきた姿に忠実であるべきだと考えていました。今回ここまで暴力表現に踏み込んだのは、ローガンというキャラクターをしっかりと描くためです。彼は容赦のない人物であり、そこに嘘はつきたくありませんでした。ですから『Wolverine』では物語も暴力表現もより成人向けのトーンにするというのは、かなり早い段階で決まっていました。

とはいえ、ローガンは暴力を特別に好んだり、ことさら残虐にふるまったりするタイプの人物ではありません。彼は必要なことをやるだけです。ただ彼には鋭い爪があり、仕事は素早く終わらせるため、結果的に暴力的に見えるのです。

また、本作には複数のアクセシビリティ設定があります。血の表現はオフにすることができますし、切断表現のようなものについても、通常のゲームプレイではオフにしたり、カットシーンではモザイク処理したりすることができます。そして英語版では、過激な罵り言葉を含まないようにすることもできます。私たちはこうしたオプションを用意することで、キャラクターに忠実でありつつもさまざまな人がこのゲームをプレイし、ストーリーや冒険を楽しめるようにしたいと考えました。

──ゴア表現におけるこだわりを具体的に教えてください。血が飛ぶ、血が残るといったところについてはお話がありましたが、そのほかにもゴア要素でこだわった点はありますか?

Jess氏:
チームが特にこだわった表現の一つに、「斬撃」と「銃撃」で傷の見え方を変える、という点があります。ローガンが撃たれた場合と斬られた場合とでは体に残る傷がまったく違いますし、攻撃の種類によって切り傷の入り方も変わります。また、体の前面だけでなく背中側のダメージ表現にも力を入れました。アクションゲームではたとえ前から攻撃を受けている場面でも、プレイヤーは自身のキャラを後ろから見ていることが多いからです。

目標は「血を目立たせること」ではありません。目標はあくまで、爪を持つウルヴァリンとしての真実味がある戦いを実現すること、そして血や傷もまた、容赦のない戦闘の自然な一部として感じられることでした。衣装ごとにダメージの見え方も変わるように作っていて、スーツを切り替えるとそれぞれ違ったダメージ表現が実装されています。

──デフォルトの衣装が「みんながイメージするウルヴァリン」だと思いますが、スーツを着替えて遊ぶのも楽しそうですね。

Jess氏:
ええ、ぜひ他のスーツも試してみてください。このゲームでは衣装はすべて見た目だけのコスメティック要素になっていますので、性能は気にせずに好きな格好で遊び続けることができます。カウボーイハットが気に入ったならずっとかぶっていてもまったく問題ありません。ただ新たなスーツをアンロックすると着用しなくても体力の上限が増えていくので、見た目を変えるつもりがなくても衣装を集める価値はあります。

──ローガンの台詞はとても「ウルヴァリンらしい」と感じましたが、それ以上に印象的だったのが、相手によって会話の雰囲気や距離感が大きく変わる点です。それぞれのキャラクターとの間に長い歴史があると自然に感じられますが、台詞や人間関係をどのように作り上げていったのでしょうか?

Jess氏:
開発の初期段階から意識していたことの一つに、ローガンはあまり多くを語らないタイプのキャラクターだということがあります。だからこそ、彼が他のキャラクターとどう関わるかによって、その個性が浮かび上がってくるんです。セイバートゥースとミスティーク、あるいはジーン・グレイに対する話し方は、それぞれまったく違います。プレイヤーはその違いを通して、少しずつ彼らの関係性を知っていくことになります。皮肉っぽいユーモアを見せるときやセイバートゥースに向かって怒鳴るときなど、場面ごとの話し方や反応の仕方にはかなり時間をかけて取り組みました。キャラクターのさまざまな側面を描くうえで、そこは本当に重要なポイントでした。

ライティングチームは本当に素晴らしい仕事をしてくれましたし、これまで複数のタイトルを一緒に作ってきたMarvel Gamesとのパートナーシップにも助けられました。彼らはキャラクターを誰よりも深く理解していて、私たちと話したり脚本を読んだりしながら、「この状況でローガンならどう反応するか」を一緒に考えてくれました。

またローガン役を演じたLiam McIntyreが本当に素晴らしいパートナーでした。彼自身ビデオゲームが大好きで、最高のウルヴァリンを作りたいという思いを強く持っていましたし、一緒に仕事をするのがとても楽しい人でした。それがゲームにもしっかり表れていると思います。

他スタジオとの交流と『Spider-Man』シリーズからの継承

──PlayStation Studiosは、物語主導の高品質なゲームを作ることで名高いスタジオがいくつかありますよね。本作を開発する上で、ほかのスタジオから学んだ要素はありますか?ワールドワイドスタジオ間の交流があるのか、どういった影響を受けているのか知りたいです。

Jess氏:
ええ、ソニーのファーストパーティスタジオ間では日常的に知識を共有しています。複雑な技術的課題にぶつかったときや、これまで試したことのない挑戦をするときには、他スタジオに相談することもよくあります。そういう意味でのコラボレーションは活発です。

またInsomniac Gamesの開発者も、Marvel Gamesの仲間たちも、大のゲーマーばかりです。なので個人的にソニー・ファーストパーティのタイトルをプレイして「『The Last of Us』のこの部分がいい」とか「『Uncharted』のこの場面が好きだ」といった話を普段からしています。もちろんソニーのタイトルに限らず他社の作品も遊んで、刺激を受けています。

ただ『Wolverine』では、自分たちの『Spider-Man』シリーズでうまくいった部分にも目を向けました。キャラクターやゲームデザインが違っても、受け継ぐべきところは受け継ぎたかったのです。たとえば滑らかな戦闘ですね。『Spider-Man』の戦闘は評価が高かったので、『Wolverine』でもそれを実現したいと考えました。また『Spider-Man 2』のサンドマン戦は人気でしたので、本作でも映画をプレイしているような派手な見せ場を作りたいと考えました。さらにストーリーテリングについても、自分たちの『Spider-Man』シリーズでの経験をどう『Wolverine』に活かしてプレイヤーの感情を揺さぶるか、常に考え続けていました。

つまり、私たちは過去に自分たちが手がけたゲームから学びつつ、他のスタジオの作品をプレイするのをいつも楽しみにしています。今年発売されたタイトルにも、早く遊びたいのにまだ手をつけられていないものがたくさん溜まっています(笑)

──そんなInsomniac Gamesは、大作規模のゲームを早いサイクルでリリースし続けていますよね。またワーク・ライフ・バランスにも気を遣っていると聞きます。早いサイクルで大型タイトルを作り続けるコツはなんでしょうか?

Jess氏:
確かに『Wolverine』は私たちにとって5本目のPS5タイトルになります。考えてみるとすごいことですね。ですがコツがあるかは分かりません。コツがあるなら私が教えてほしいくらいです(笑)

私たちはゲームの品質と、開発者一人ひとりの生活の質とのバランスをずっと大切にしてきました。もちろん、誰もがプレイしたいと思えるような素晴らしいゲームを作る必要はあります。しかしそれと同時に、それを作っている一人ひとりをきちんとケアし、品質と生活のバランスを保つことも同じくらい大事だと考えています。Insomniac Gamesのチームが本当に協力し合っているのは間違いありませんし、そんなチームを心から誇りに思っています。

それでも、ゲームをリリースする秘訣が何なのかは私にもわかりません。みんな本当に懸命に働いていますし、発売まであと1週間というところまで来て、なんだか現実感がないくらいです。秘訣がわかったら、真っ先にみなさんにお伝えします(笑)

──ありがとうございました。

『Marvel’s Wolverine』はPS5向けに9月15日に発売予定だ。

[聞き手:Anthony Thompson]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]
[執筆・翻訳・編集:Akihiro Sakurai]

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