『Samorost 3』が3月24日に発売決定、無料ブラウザゲームから始まった超現実主義が織りなす癒やしの系譜

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チェコのインディーゲームデベロッパーAmanita Designは、ポイント&クリックアドベンチャー『Samorost 3』の最新トレイラーを公開し、発売日が3月24日に決定したことを明らかにした。2011年に発表され、昨年には京都で催されたインディーゲームの祭典「BitSummit 2015」にも出展されたタイトルで、当初は2015年内のリリースを予定していた。2003年の無料ブラウザゲームである初代『Samorost』に始まり、2005年に同社初の商業タイトルとしてリリースされた『Samorost 2』に次ぐ、癒し系シリーズ第3作目が満を持して再び不思議な世界観を解き放つ。

 

始まりは学生時代の無料ブラウザゲーム

『Samorost』は、Amanita Designの創設者Jakub Dvorský氏が大学在学中だった2003年に制作したポイント&クリック形式のパズルアドベンチャーゲーム。小惑星に住む小人の精霊“宇宙ノーム”が、自分の住処に迫り来るアステロイドの軌道を逸らすべく探索に向かうという小さな冒険を描いている。なお、タイトルはチェコ語で、独立した立場をとる知識人を表す“マーベリック”を意味する。画面をクリックして謎を解くだけのシンプルなメカニックと、15分から30分でクリアできる短いボリュームとは対照的に、シュールレアリズムを体現するユニークな作風と、一度聴いたら耳から離れない幻想的な音楽が大いに脚光を浴びた。その独創的な世界観が高く評価され、2003年の「Top Talent Award」にノミネートされたほか、翌年には国際デジタル芸術科学アカデミーから優れたウェブサイトに贈られる「Webby Awards」(ウェビー賞)の候補にも挙げられた。本作は公式サイトにて無料でプレイできる。

2005年には、続編『Samorost 2』が、Amanita Design初の商業タイトルとして、WindowsやOS X、Linux向けにリリースされた。本作では、エイリアンに愛犬を誘拐された“宇宙ノーム”が遠い惑星へ旅立つという救出劇を描いている。物語は二部構成で、エイリアンの本拠地に乗り込んで愛犬を救出するまでの第1部は、公式サイトに公開されている体験版でも無料でプレイできる。第2部は一難去ってまた一難。自宅がある小惑星へ帰るまでの苛酷な道のりが待っている。全編を収録したフルバージョンは5ドルで購入可能。前作に引き続き好評を博した『Samorost 2』は、「SEOUL NET FESTIVAL 2006」でベストウェブ作品賞に輝いたほか、「Flashforward Film Festival 2006」ではオリジナルサウンド部門で受賞。翌年には、「IGF 2007: Best Web Browser Game」に選出されたことに加えて、前作でノミネート止まりだったウェビー賞を見事獲得した。なお、2009年12月からは、Steamでも販売されている。日本での価格は600円。

 

5年の開発を経てスケールを増した超現実主義

『Samorost 3』に登場するストーリーブック
『Samorost 3』に登場するストーリーブック

最新作『Samorost 3』は、さかのぼること2011年に開発中であることが発表された。昨年、「BitSummit 2015」に出展された際には、4年間ベールに包まれていたゲーム内容の詳細が明らかになった。過去の2作品と同様に、本作でも自宅小惑星への飛来物がきっかけで物語が幕を開ける。開発者であるJakub Dvorský氏いわく、ある日どこからともなく降ってきた謎の楽器を拾った“宇宙ノーム”が、その不思議な力に誘われるままに重大な秘密の渦に巻き込まれていくという内容だ。また、これまで至極シンプルだったゲームメカニックは大幅に進化しているとのことで、同社が2009年以降にPCのみならずコンソールやタブレット、スマートフォン向けに発売した『Machinarium』に近いものになるという。相変わらずテキストは一切表示されず、ストーリーの全てがアニメーションと音響効果だけで語られる癒やしテイストはそのままに、よりインタラクティブな要素が増えることが期待できる。

気になるゲームボリュームは、7つの惑星を舞台に自由な星間移動をデザインしていることが示唆するように、従来のシリーズとは比べ物にならない長編になることが想定される。販売価格が19.99ドルと、2作目のおよそ4倍であることからも、10数分程度でクリアできる代物ではないことがうかがえる。さらに特筆すべきは、シリーズで初めてHDビジュアルに対応している点だ。これまではフルスクリーンにしても上下が黒塗りされたコンパクトなゲーム画面に収まっていたが、最新作では画面いっぱいに描画されるという。また、スクリーンショットやトレイラーから確認できるように、グラフィックやアニメーションに更なる磨きがかかっていることも忘れてはならない。発表から5年近くを費やした賜物といえるだろう。

『Samorost 3』は、3月24日からPCおよびMac向けに、公式サイトをはじめ、Steam、GOG、Humble Store、Mac App Storeで販売される予定。なお、24.99ドルの「Cosmic Edition」には、ゲーム本編に加えて、デジタルアートブックとオリジナルサウンドトラックが収録されている。仕事のストレスでイライラしたり、失恋のショックでクヨクヨしたり、苦心惨憺の日常に嫌気がさした時は、超現実主義の世界観が織りなす“宇宙ノーム”の小さくも壮大な冒険が、疲れきったあなたの心を癒やしてくれるに違いない。そこでは誰しもがマーベリックになれるのだから。

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カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。