ベテランゲーム開発者が、「続報のない新作ゲームはせめて新映像を出して」との不満に反論。“無理に新映像を出す”方がむしろ大変

ベテラン開発者が「長らく音沙汰のない新作なら、せめてトレイラーを出すべき」といった考えに反論をおこなっている。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは6月3日、情報番組「State of Play – 2026.6.3」を配信し、さまざまな新作の発表や続報告知をおこなった。傘下スタジオの作品としては、『Marvel’s Wolverine』の新映像や『Marathon』の新シーズンなどが紹介されたほか、『God of War Laufey』が発表された。

一方でNaughty Dogが手がける『Intergalactic: The Heretic Prophet』(以下、Intergalactic)については、“続報が告知されなかったこと”を批判するユーザーの声も一部みられる。今回はそうした批判的な意見に対し、Naughty Dogに在籍していたこともあるベテラン開発者が反論をおこなっている。

*2024年12月公開のトレイラー


開発期間6年目の期待作

『Intergalactic』はNaughty Dogが手がける完全新作だ。舞台となるのは数千年後の未来。プレイヤーはバウンティハンターのJordan A. Munとして、辺境の惑星Sempiriaからの脱出を目指すことになる。ただSempiriaからの脱出は過去600年間誰もなし得ることができなかったそうで、彼女はあらゆるスキルと知恵を駆使して脱出を試みるという。

本作は2020年に開発がスタートし、2024年12月に発表。一方でその後ほとんど続報はなく、発売時期も公表されていない状況が続いている。そんな本作については「State of Play – 2026.6.3」でも続報がなかった。このことを受けて一部からはPlayStation向けに数々のヒット作を送り出してきたNaughty Dogが、今や“ベンチ入り”とも言える状況だという指摘もおこなわれている。同スタジオの作品は2020年6月発売の『The Last of Us Part II』以来、開発中止されたマルチプレイ作品を除けば(関連記事)、リメイク・リマスターが中心となってきた。そのぶん『Intergalactic』の開発に集中しているとみられるものの、“新たなトレイラーさえ”公開しないことでスタジオの存在感が薄れていること、あるいは開発の進捗や体制などを懸念する見方だろう。

一方でそうした「長らく音沙汰のない新作なら、せめてトレイラーを出すべき」といった考えに、ゲーム開発者のDel Walker氏が真っ向から反論をおこなっている。同氏はRespawn Entertainmentのほか、Naughty Dogでもキャラクターアーティストを担当。その後はWildlight Entertainmentにて『Highguard』のプリンシパルキャラクターアーティストを経て、現在はRockstar Gamesの共同設立者Dan Houser氏が設立したAbsurd VenturesでAAAタイトルのリードキャラクターアーティストを担当している。英国映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA)の委員会メンバー兼審査員なども務めている、業界歴10年以上のベテラン開発者だ。

Walker氏は、AAA級のゲームスタジオがトレイラー制作にリソースを回すとなれば、ゲーム本編を集中的に開発するイテレーション(反復)作業の期間が実質的に約4か月失われることになると説明。新作を待ち望んでいるのであれば、スタジオがトレイラーを無理に作ればかえってゲーム本編の完成が遠のくことを示している。

Walker氏によると、トレイラーの制作については「ホテルの建設中に、工事の最中に完成した部屋を一室見せてほしいと頼まれるようなもの」だという。同氏はゲーム本編の完成度が高ければ高いほどトレイラー制作に必要なリソースは少なくなるとしているものの、開発途中であれば大きなコストを要するのだろう。トレイラーといえども見せる部分は“完璧”に仕上げる必要があり、ユーザーが想像するよりもはるかに時間がかかる作業になるとのこと。

トレイラーや開発者によるデモプレイなど、ショーケースイベントでは新情報と共に開発中の映像が公開されることも一般的だ。さりげなく披露されることも多いものの、開発段階によっては制作にかなりのコストを要することもうかがえる。また作品によってはそうした機会に向けて、バーティカルスライス(部分的に絞って完成度を高めた試作)が用意される例もある。“完璧”に見せるために、ゲーム本編の開発とは別の工数がかかるわけだろう。


“無理”のない開発のためにも

ちなみにNaughty Dogは過去に『The Last of Us Part II』の開発当時を振り返る公式ドキュメンタリー動画「Grounded II: Making The Last of Us Part II」を公開している。このなかではメディア向けのデモ版と並行してトレイラーの制作をおこなうことが開発終盤に決まり、“無理だと思う”ようなスケジュールで進行していたことが語られていた。

そんなNaughty Dogでは過去に継続的な長時間労働、いわゆるクランチの文化があったことを経営陣が認めており、結果スタッフの燃え尽き症候群や相次ぐ離職などに見舞われていた(関連記事)。一方で、2021年にはスタジオ内で進行管理面の改善もおこなわれていることが報道されており、上述した動画でも「慣行を終わらせ、今後クランチをなくすことを目標にしている」との方針も語られていた。

しかしNaughty Dogが心機一転して手がける『Intergalactic』においても、発表時のトレイラーの制作では一部のチームが長時間労働をおこない、その後社内レビュー用のデモ版制作の際には大半のスタッフに残業が要請されたことも報じられていた(Bloomberg)。勤務時間に一定の上限を設けるようにする指示もあったそうだが、やはりトレイラーなどの制作が開発途中で必要になることは、開発チームに負担がかかることもうかがえる。そのためその後長らく新たな映像が明かされていない背景には、スタジオが無理のない範囲でゲーム本編の開発に注力している可能性もある。

開発初期に発表がおこなわれるタイトルについて、長年続報がないまま待たされるといった状況には、ユーザーからしばしば不満の声が上がることも少なくない。開発・販売元としてはあえて早期に作品を発表する狙いもあるようだが(関連記事)、発表後の速やかな発売、あるいはゲームプレイ映像などの継続的な情報発信を望む声も根強く見られる。ただ“新しい映像が披露されるだけでも安心できる”といったゲーマー心理とは裏腹に、トレイラーの制作にはユーザーが想像する以上に重い負担がかかるようで、開発者とユーザー間で認識のすれ違いも生まれているのかもしれない。

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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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