『ホグワーツ・レガシー』主人公、闇の戦闘狂として定着する。違法呪文乱発、人を火薬樽にして爆破、命の価値軽めな魔法の世界へようこそ

 

ホグワーツ・レガシー』において、本作の主人公の振る舞いがネットミーム化し浸透しているようだ。というのも、本作主人公は暴力や殺人を気軽におこなうなど、恐ろしい言動を見せるためだ。殺戮慣れした戦闘狂扱いされているわけである。


『ホグワーツ・レガシー』は人気小説・映画「ハリー・ポッター」シリーズを題材としたゲームだ。プレイヤーは5年生として、ホグワーツ魔法魔術学校に入学。授業や探索に励みつつ、世界をめぐる大きなしがらみに巻き込まれていく。本作では分身となるホグワーツ新入生をキャラメイク可能。新たな環境や突然の危機に戸惑いつつも、徐々に戦いに慣れて成長していく姿が描かれる。

冒頭においては「死を目撃したものにしか姿を見ることができない」とされるセストラルが馬車馬として登場。その馬車がドラゴンに襲撃されるなか姿をあらわし、「主人公が初めて死を目撃した」という衝撃的な演出となっている。人の突然の死などと無縁のはずの主人公が、恐ろしい戦いに巻き込まれる物語となる。……はずなのだが、どうも主人公が暴力に慣れすぎており、言動も冷酷で“闇寄り”のかなり危ない人材なのでは、との印象がプレイヤー間で浸透しネットミーム化しているのだ。


Redditの本作コミュニティでは主人公の怖めの言動を取り上げる投稿がしばしば見られる。たとえば、「こうなったのはランロクのせいだからね(You only have Ranrok to blame.)」とのセリフがひとつだ。こちらは主人公が敵を倒した際に、本作の敵役であるランロクを引き合いに出して吐き捨てるセリフとなっている。

このセリフを取り上げた投稿では、死の呪文アバダ・ケダブラを容赦なく人に放ち、即座のすべての罪を「ランロクのせい」と転嫁するような主人公の言動が揶揄されている。殺人の罪悪感に耐えかねてとも解釈できるものの、「恨むならお前らの親玉を恨め」との旨の捨て台詞は、たしかにいささかハードボイルドが過ぎるだろう。

そもそも本作にはちらほら「心躍る魔法の世界」にしてはやや暴力性の強い要素も見られる。本作物語のキーとなり、主人公含む操れる者も希少な「古代魔法」は、アクションとしては必殺技的な立ち位置だ。そのため、敵をボロ雑巾のように地面に叩きつけるなど殺意の塊のような挙動をする。危険な自然の力であるためか、主人公の残酷性の発露かはわからない。ほかにも、引き寄せの呪文アクシオや吹き飛ばしの呪文デパルソを利用し、敵を崖などから突き落とす血も涙もない戦法を、国内外ユーザーが報告している。とはいえこちらはプレイヤーの嗜虐心の発露だろう。

また、戦闘で特定の条件をクリアする「決闘の技術」システムでは、「燃えている敵を痛めつける」なる課題が登場。こちらは英語版では「Torture a burning enemy(燃えている敵を拷問する)」として、解釈にもよるものの日本語より恐ろしげなニュアンスとなっている。なお、この課題については、燃えている敵に対して人に極度の苦痛を与える呪文「クルーシオ」を放つことでクリアとなる。

しかし、そもそもクルーシオを人に放つこと自体が本作の世界観ではかなり“闇”寄りのおこないなのだ。というのも、クルーシオは「磔の呪い」と呼ばれ、程度によっては発狂するほどの痛みを対象に与える、常人であれば使用をためらう呪文である。また原作においては、クルーシオの効果をしっかりと発揮させるには「敵の苦しむ姿を楽しむくらい、本気でかけなければならない」との旨が語られている。『ホグワーツ・レガシー』主人公が無造作に放つクルーシオは随分としっかり効果を発揮しているように見える。そういった才能があるのだろう。

さらには、クルーシオは「許されざる呪文」の1種でもある。前述の死の呪文アバダ・ケダブラおよび人を支配下におく服従の呪文インペリオとあわせて使用を禁じられており、この3種の呪文は原作「ハリー・ポッター」シリーズの時代では、人間相手に放つと終身刑となるご法度だ。しかしながら、本作では呪文が3種類とも登場。特にペナルティなく利用できる。オープンワールドゲームとしては『グランド・セフト・オート』シリーズより悪行へのペナルティが軽い印象だ。プレイヤーがこうした呪文を濫用すれば、原作などでも忌避される「闇の魔法使い」の振る舞いそのものだろう。


ほかにも本作主人公は、ステルスプレイで敵を石化させてまわったり「変身術で敵を爆薬樽に変えた上で別の敵に投げつける」などあまりにも殺戮慣れしている節がある。以前、本作に関連して「薩摩ホグワーツ」なるワードが流行し、パワー型戦闘狂めいたホグワーツ生のネットミームが氾濫していた(関連記事)。それも、「主人公の殺しや暴力へのハードルが、どうも低い」という印象と噛み合ったためかもしれない。

また、原作「ハリー・ポッター」自体も、恐ろしい悪意やキャラクターの死、そして壮絶な戦いがしっかりと描かれる作品でもある。その点を考慮すれば『ホグワーツ・レガシー』のテイストは原作をしっかり継承しているといえるだろう。魔法の世界は、振り返ってみれば元からわりと血生臭かったわけだ。そんな本作の世界で、できるだけ非暴力的に振る舞ってみるのもよいだろう。ただし、本作のシステム上自然とひどい暴力中心のプレイになりがちではある。

『ホグワーツ・レガシー』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/ PS5/ Xbox Series X|S向けに発売中。PS4/Xbox One向けには5月5日発売予定、Nintendo Switch向けには7月25日発売予定だ。