ウクライナの『S.T.A.L.K.E.R. 2』開発元、ロシア系グループによるハッキング&脅迫被害を報告。しかし「戦禍にくらべれば脅迫など怖くない」と怯まず


GSC Game Worldは3月13日、自社従業員のウェブサービスアカウントがハッキング被害を受けたと報告。ロシア発のとあるSNSコミュニティが、犯人であると主張していると伝えている。開発中の新作『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl(以下、S.T.A.L.K.E.R. 2)』のデータ流出も示唆されている。

GSC Game Worldは、ウクライナを拠点とするゲーム開発会社だ。同社はオープンワールドサバイバルFPS『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズを手がけたことで知られている。また、同社は現在シリーズ新作『S.T.A.L.K.E.R. 2』を開発している。同作開発については、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、一時は戦争終結までの開発中止も発表された。しかし後には開発元より、開発継続中である旨も伝えられた。2023年の発売を目指し、戦禍の只中にもかかわらず引き続き開発が進められている。


GSC Game Worldは今回、本作公式Twitterアカウント上にて、従業員が受けたというハッキング被害について報告。ロシアのSNS上のグループが、犯人であると主張していると伝えた。発表によれば、ハッキングされたのは業務に利用するアプリケーションのアカウントと見られ、『S.T.A.L.K.E.R. 2』の未発表データもハッカーの手に渡ったようだ。さらに該当のハッカーは、そうしたデータを盾にGSC Game Worldを脅迫しているとのこと。

一方で、GSC Game World側は「脅迫されたのは今回が初めてではない」として毅然とした態度を示している。同社は1年以上前から継続的にサイバー攻撃や脅迫などを受けており、個人情報をターゲットとしたハッキングといった試みもあったという。しかし、同社は「我々はウクライナ企業です。多くのウクライナ人が経験しているのと同様に、破壊された家々や、失われた命や、愛する者の死など、脅迫よりずっと恐ろしいことに直面しています」とコメント。「我々を脅迫や恫喝しようという試みは無意味です」として、犯行側の思惑をばっさりと斬り捨てている。


また、GSC Game Worldは続く発表のなかで、もしも『S.T.A.L.K.E.R. 2』のリーク情報がネット上に存在しても、視聴や拡散は控えてほしいとファンに呼びかけ。そうしたリーク情報は開発のはるか前の段階の素材かもしれないとして、公式リリースを待つように伝えている。

今回のGSC Game Worldの発表の以前には、ロシアのSNSであるVKontakte上で「『S.T.A.L.K.E.R. 2』の大量のデータを入手した」としてGSC Game Worldを脅迫する投稿が発生。一部コミュニティの注目が寄せられていた。そちらではGSC Game Worldに対する要求として「ロシアとベラルーシに対する態度を改めること」「本作公式Discordサーバーにおける、自らへのBAN処分を解除すること」などがあげられていた。今回GSC Game Worldはハッカーの出自について明言していないものの、このVKontakteでの脅迫投稿を指している可能性が高いだろう。

なお、同じくウクライナ拠点のゲーム企業としては、Frogwaresが戦禍のなか新作の開発に取り組んでいる。同社はロシアによる発電所を狙った攻撃などに起因して、ウクライナで停電が頻発している状況について報告。新作『Sherlock Holmes The Awakened』の発売延期を伝えていた(関連記事)。現地ゲーム会社は、当然のことながら想像を絶する苦境の中ゲーム開発に取り組んでいる。「戦禍に比べれば、脅迫など恐ろしくない」としたGSC Game Worldの毅然とした態度もうなずけるだろう。なお同スタジオの一部は、一年ほど前からチェコに移って活動しているとのこと。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、PC(Steam/GOG.com/Epic Gamesストア)/Xbox Series X|S向けに2023年に発売予定だ。Xbox Game Pass向けにも提供される。