Activision Blizzardの買収に向けて、現在各国の規制当局による審査に臨んでいるマイクロソフト。英国においては、競争・市場庁(Competition and Markets Authority・以下、CMA)が調査結果を報告している。一方マイクロソフトは、CMAの調査結果に反論する声明を発表。その中で、Xbox Game Passにまつわる興味深い主張を展開している。The Vergeなどが伝えている。
マイクロソフトは今年1月18日、総額687億ドル(約10兆787億円・現在のレート)というゲーム業界最大規模の金額にて、Activision Blizzardを買収することについて両社間で合意したと発表。業界大手メーカーを傘下に収める巨額買収となることから、反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れがないかなどについて、各国の規制当局による審査が現在進められており、買収を完了するにはその審査通過を待つ必要がある。
CMAは10月12日、今回の買収についての調査結果を発表。マイクロソフトによるActivision Blizzard買収が、コンソール、サブスクリプションサービス、およびクラウドゲーミングサービスにおける市場競争を阻害する可能性に懸念を示した。一方でマイクロソフトは、CMAの発表に反論する声明をメディアを通して明かしたようだ。海外メディアThe Vergeにてシニアエディターを務めるTom Warren氏がその内容を伝えている。
Warren氏が投稿したマイクロソフト側の声明と見られるスクリーンショットでは、CMAの懸念が「見当違い(misplaced)」であるとの主張が述べられている。続けて声明では、マイクロソフトが市場競争を阻害しないとする主張が続いた様子である。そうした中でマイクロソフトは、ゲームサブスクリプションサービスGame Passについても言及したようだ。
マイクロソフトは声明で、Activision BlizzardのタイトルをGame Passに導入予定であることに言及。その理由については、ゲーマーに利益をもたらし、Game Passの価値を高めるためであるとした。また今までサブスクリプションサービスにタイトルを提供していなかったActivision Blizzardのタイトルの、供給拡大にもつながると説明している。つまり、Game PassにActivision Blizzardのタイトルが加わるのは、独占ではなく幅広いゲーマーへの提供機会を増やす試みであるとの説明だろう。
一方でマイクロソフトは、ソニーがPlayStationからGame Passを「ブロックした」と主張。Game PassがPlayStationで提供されていないのは、そのためであると説明している。つまり、ソニーがマイクロソフトからのGame Pass提供の申し出を断ったという主張だろう。いわば“ライバルプラットフォーム”へのGame Pass事業展開の試みがあったという点も興味深い。また同声明では、たとえGame Passの提供がなくとも、PlayStationユーザーは『Call of Duty』(以下、CoD)シリーズをPSで購入できるとも述べている。
ちなみにGame Passの他プラットフォームへの展開に関しては過去に、マイクロソフトのゲーム部門CEOでXbox事業を率いるPhil Spencer氏が言及していた。同氏は2021年8月に、海外メディアGamesRadar+へのインタビューに対して「(Nintendo Switchなどの)クローズドプラットフォームは、Game Passのようなサービスを望んでいない」と発言。その背景には、PSプラットフォームへのGame Pass展開の不調もあったのかもしれない。
なお『CoD』シリーズを含むActivision Blizzardの人気タイトルの今後についても、Spencer氏が言及していたことがある。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)とActivision Blizzardの既存の契約に基づいて、買収完了後も『CoD』シリーズ作をPSプラットフォームに提供する方針であることが明かされていた(関連記事)。一方でそうした発言には、SIE社長兼CEOのJim Ryan氏が苦言を呈した(関連記事)。Ryan氏によれば、既存の契約期間終了後のPSプラットフォームへの『CoD』の展開は、3年間に限るとの提案をSpencer氏から受けたとのこと。
一方、今回の声明でマイクロソフトは『CoD』シリーズのPSプラットフォームへの展開継続を、「商業上必要不可欠」であるとも述べている。PSプラットフォームからの同シリーズ引き上げは収益上のリスクになるとも伝え、早期引き上げに否定的な姿勢を示しているようだ。『CoD』シリーズのPSプラットフォームでの展開は、既存の契約終了後も継続されるのかもしれない。
【UPDATE 2022/10/13 22:25】
『CoD』シリーズの今後のPSプラットフォーム展開について追記
CMAがマイクロソフトのActivision Blizzard買収に対し懸念を示していたことは、かねてより報じられていた。今回の調査結果発表により、その詳細が明らかとなったかたち。Activision Blizzardは英国において、北米に次いで2番目に多くの従業員を抱えているという。大規模なActivision Blizzard拠点を巡る、マイクロソフトとCMAとの“争い”の行方が注目される。