AmazonのMMO『New World』開発陣がコミュニティの挑戦状を受ける。「難しすぎる、自分でクリアしてみろ」との要求に挑む開発チームの命運は


AmazonのMMO『New World』にて、「コミュニティからの挑戦状を開発陣が受ける」という一幕があったようだ。本作では、エンドコンテンツを中心とした難易度上昇に伴い、開発者に実際にプレイさせようという署名運動が起こっていた。挑戦を受けた開発チームの命運やいかに。
 

 
『New World』はAmazon Games Orange Countyが開発し、今年9月29日に配信開始したMMORPG。配信直後は90万人を超えるSteam同時接続者数を集め、華々しいデビューを飾った。しかし、ゲーム内経済が破綻寸前になったり、度重なる騒動もあったりを経て、プレイヤー人口の減少を招くこととなった。とはいえ、現在でも毎日ピーク時には10万人前後が遊ぶ人気を保っている(SteamDB)。そして、コミュニティの不満も多く寄せられる本作で、先ごろまた一悶着があったのだ。

発端となったのは、現地時間11月18日に実装された大型アップデート1.1「Into the Void」だった。同アップデートでは、多数の要素が追加され、数々の不具合や問題点の修正/改善も実施された。しかし、コミュニティからは批判の声も出ることとなった。その原因は、エンドコンテンツを中心とする難易度上昇だ。アップデート配信後、海外掲示板Redditの本作コミュニティ/r/Newworldでは、エンドコンテンツにあたるゾーンがソロでは到底手出しできなくなったとの意見が投稿された。

難易度上昇に不満をもつプレイヤーは多かったようだ。現地時間11月27日には、本作公式フォーラムにて「開発メンバーに、高難易度エリアであるMyrkgardをプレイさせよう」という署名運動が立ち上がった。同スレッドで開発側に突きつけられたのは「Myrkgardの西門から東門まで、ボス含むすべての敵を倒して走破しろ」とする要求だった。つまり、開発側が難易度バランスを把握しているかどうか訝しみ、「クリアできるもんならしてみろ」と試す内容である。もはや署名という名の挑戦状だ。12月中旬にかけて同スレッドには600件以上の署名が集まり、記事執筆現在で2900以上の「いいね」が寄せられている。
 

 
コミュニティの反響は大きかったものの、開発側からの反応はしばらく無かった。ところが、12月18日に配信された本作公式のアップデート動画で、実際に開発陣でMyrkgardに出陣した旨が発表されたのだ。本作ゲームディレクターのScot Lane氏が、胸を張って「挑戦しました、数日後には動画をアップロードします」と告げている。しかし、「どうだった?」と聞かれた同氏はすぐさま「装備も弱かったし……」とやや弱腰に。そして、12月21日には挑戦の様子を収めた動画が公開された。

今回Myrkgardに挑戦した『New World』開発メンバーは、上述のScot Lane氏を含む10名。開始後から和気あいあいと調子よく進んでおり、画面に映る開発陣は操作も手慣れている様子だ。雑談も挟みつつ、みんなで作ったゲームを共に楽しむ時間が続いていた。開始40分頃までは。パーティーがCorrupted Breachと呼ばれるアクティビティに突入した所から、雲行きが怪しくなり始めたのだ。次第と「オーマイガー!」などの悲鳴があがるようになり、倒れる仲間が続出。やがて劣勢になり、開発陣はあえなく全滅に追い込まれてしまった。

再度挑戦を試みるも、パーティーメンバーが敵MOBを多数引き連れてきたためか、あえなく返り討ちに。画面には「時には降伏こそ最善の選択です」とのテロップが出て、開発陣の挑戦は失敗に終わった。自ら「たしかに難しい」と証明する結果に終わってしまったわけだ。降伏に追い込まれた、本作ゲームデザイナーZach Holm氏の悲しげな苦笑いが印象的だ。
 

 
しかし、開発陣の苦闘は無駄ではなかったようだ。YouTubeコメント欄やSNS上では、この動画を好意的に受け止めるファンの意見も投じられている。開発陣が身をもって難しさを体感している姿を見て、胸がすく思いのしたプレイヤーもいることだろう。一方で、「5人向けのアクティビティも10人でプレイしている」「難易度緩和後に挑戦している」との指摘などもなされている。事実、現地時間12月16日には本作向けに、エンドコンテンツを中心とした難易度低下を含むアップデートが配信されている。今回の動画がいつ収録されたかは定かではない。しかし、難易度緩和後だとすると、もう少し調整が必要なのかもしれない。
 

 
『New World』に限らず、開発者が自社ゲームをどのように遊んでいるかというのは、多くのユーザーにとって興味深い内容だ。MMO開発者が自社ゲームを遊ぶ姿を発信している例としては、スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーXIV』プロデューサー/ディレクターである吉田直樹氏が挙げられる。同氏は自らがゲーム内でプレイヤーと遊ぶ「吉P散歩」という配信企画を実施しており、時には高難度コンテンツにも共に挑戦し、プレイヤースキルを見せている。また、同作イベントである「ファイナルファンタジーXIV デジタルファンフェスティバル 2021」のメッセージボードでは、開発陣の多くがゲーム内での「心のメインジョブ」を記述している。開発者が自社ゲームを遊んでいる姿を積極的に発信することは、ユーザーからの信頼度にもつながるだろう。

こうした傾向が開発にどういった影響をもたらすかは、一概にはいえない。しかしながら、今回の『New World』開発陣チャレンジへの好意的な意見を見るに、開発者が自社作品をプレイする姿に好感を覚えるプレイヤーは多かったようだ。今回の『New World』開発陣の挑戦は失敗に終わってしまった。難しさが身にしみた開発陣により、今後またエンドコンテンツの難易度が調整されるかどうかも見どころだろう。