「名探偵ピカチュウ」撮影監督が実写版ソニックとの違いを語る。撮影の手法に注目

 

「名探偵ピカチュウ」の撮影監督ジョン・マシソン氏がNewsweekに「名探偵ピカチュウ」と「ソニック・ザ・ムービー」の違いについて説明した。氏は「ソニック・ザ・ムービー」より「名探偵ピカチュウ」のほうが“優れている”と思う理由についても述べた。

セガの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を原作とする実写映画「ソニック・ザ・ムービー」の予告編が公開された。ここで公開されたソニックの姿は、原作の印象と大きく異なっており、YouTubeのトレーラーは5月4日時点で高評価が31万件に対し、低評価が54万件と否定的な意見が多い。これをうけて同作の監督がTwitterでソニックのデザインを変更する旨を述べている。一方、5月3日に公開された同名のゲームを原作とする「名探偵ピカチュウ」は、レビュー集積型サイトRotten Tomatoesのトマトメーターは70%(5月4日時点)おおむね好意的な評価を受けており、リアルでふわふわなポケモンの姿も好評なようだ。

マシスン氏はこれまでに2回アカデミー撮影賞にノミネートされている撮影監督。代表作は「グラディエーター」、「LOGAN/ローガン」など。氏はNewsweekにたいして「ソニック・ザ・ムービー」の撮影監督のオファーを受けていたことを明かし、氏の撮影した「名探偵ピカチュウ」が、ソニックのような見た目にならなくて良かったと思っていると述べた。さらに「二つの映画の見た目のみについて言うならば、「名探偵ピカチュウ」は「ソニック・ザ・ムービー」より優れているとマシソン氏は続けた。

「ソニック・ザ・ムービー」に関してはソニックのデザインについて不満が語られることが多いが、マシソン氏は撮影方法の違いによる映画の見た目に注目しているようだ。氏は二つの映画の決定的な違いとしてデジタルカメラの色のコントラストの問題を指摘した。「名探偵ピカチュウ」はフィルムで撮影されているのに対して、「ソニック・ザ・ムービー」はデジタルカメラで撮影されているからだ。氏は、デジタルカメラの撮影では、青やシアンのような色を正確にとらえることができず、特に赤色は「うるさい」ものになると説明。ただ、「ソニック・ザ・ムービー」のソニックは撮影にCGで描かれたもので、この指摘はソニックの青色の体については当てはまらないかもしれない。あくまで画面の完成度についての指摘ととらえたほうがいいだろう。

またマシソン氏は、多くのスタッフとPCを通して製作された映像に撮影監督の個性を出すことは難しいとし、デジタルカメラで撮影された映像には作家性が見て取れないと、デジタル撮影に否定な意見を述べた。同時にマシソン氏は、デジタル撮影を使用する撮影監督としてロジャー・ディーキンス氏を例にあげ、デジタルで撮影された映像に必ずしも個性がないわけではないことを補足している。ロジャー・ディーキンス氏は「ブレードランナー 2049」でアカデミー撮影賞を受賞した撮影監督。2011年頃からデジタル撮影を使い続けている。現在ハリウッド映画の80%以上はデジタルカメラで撮影されており、フィルムを使い続けるクリエイターは少数派であることも留意したい。

「ブレードランナー 2049」より

マシスン氏はデジタルカメラと伝統的なフィルムという文脈からソニックとピカチュウの実写映画の違いを指摘した。しかし「ソニック・ザ・ムービー」は製作中の映画だ。画面のルックはともかく、映画全体の完成度について現段階で評価するべきではないだろう。一方でNerdistは、「名探偵ピカチュウ」がフィルムで撮影されたことを踏まえつつ、「名探偵ピカチュウ」のビジュアルは驚くべきもので、コンピューターで生成されたキャラクターたちに温かみをあたえ、ノワール的な雰囲気を補強していると同映画のビジュアル面を高く評価している。マシソン氏のねらいは、評論家にも届いているようにも見えるだろう。「名探偵ピカチュウ」が実際にどのようになっているのかは、映画館で確かめてほしい。