ゲームの字幕の有無に「業界標準」は存在するか?『Spyro Reignited Trilogy』の字幕をめぐる議論は思わぬ方向へ

『スパイロ・ザ・ドラゴン』の初期三部作を、Unreal Engine 4を用いてリメイクに近い形でリマスターした『Spyro Reignited Trilogy』が11月13日に海外向けに発売された。『Spyro the Dragon(スパイロ・ザ・ドラゴン)』『Spyro 2: Ripto’s Rage!(スパイロ×スパークス トンでもツアーズ)』、そして日本未発売の第三作目『Spyro: Year of the Dragon』を含んだトリロジーは、『クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり!』のNintendo Switchへの移植を担当したToys for Bobが手がけており、現代向けに蘇った美しいグラフィックで『スパイロ・ザ・ドラゴン』の世界を冒険できる。

UKIE/GfKによる11月17日付のイギリスの週販チャート(パッケージのみ集計)では『Fallout 76』を抑え一位に輝くなど、大ヒットを記録した『クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり!』に続く快調なスタートを切っている。美しいグラフィック、原作を丁寧に蘇らせたクオリティなど、ゲームの内容部分は上々の評価を獲得している一方で、とある部分について不満の声があがっている。第一作目『Spyro the Dragon』に「字幕のオプション」が存在しないことだ。

『Spyro Reignited Trilogy』では、個性豊かなキャラクターが登場し、フルボイスでカットシーンが展開される。ただし、第一作目では、彼らが喋るセリフは原則的にテキストでは表示されない。さらに、オプションにはsubtitle(字幕)に関する項目が存在しないという。音声を聞いて、その内容を把握することになる。この仕様に疑問を抱いたGamepittは、販売元であるActivisionを取材した。

Activisionは、トリロジーを作る上ではToys for Bobとともに、原作を尊重し、できるかぎりオリジナル版の魅力を維持した作品にすることを心がけていたという。また、今作ではスタジオが過去に対応したことがない言語にもローカライズしたとも話す。字幕に関する業界標準は存在しないものの、開発スタジオとActivisionは、ファンたちのゲーム体験、特に異なる能力を持つ人々のためのアクセシビリティを重要視しており、その必要性について今後も注視していくと語った。

Activisionの言い分としては、字幕が存在しなかったオリジナル版の作風を尊重し、今作でも字幕をつけなかったが、要望の多さによっては、追加する可能性あるというものだろう。あくまで前向きな返信であり、原作に字幕があった第二作目と第三作目は同じく字幕がついていることから、原作に準拠したという言い分は筋が通っている。ただし、検討した上で字幕をつけないという判断を下したと示唆していることにより、顰蹙を買っていると考えられる。

海外メディアのKotakuは「カットシーンで字幕がないのはクレイジー」と一刀両断。DualShockersは、米国での聴覚障害者の人口調査データを引用し、相当数存在する彼ら/彼女らを無視しているとActivisionを批判している。ただ注意したいのは、これらの批判は、聴覚障害者に配慮していない点と、「字幕に関する業界標準は存在しない」と言ってしまった点が、混ぜ合わさってしまっていることだ。Activision自体は原作準拠であるがゆえに字幕を用意していないと語っているように、蔑ろにする特別な意図はないように感じられる。前向きな検討をしている同社を厳しく批判するのは、やや気の毒かもしれない。ただし、字幕に関する業界標準は存在しないという発言は、いくらかプレイヤーの認識と異なるだろう。

海外タイトルの日本語字幕はもちろんのこと、国産タイトルでも日本語音声が含まれていても、日本語字幕が存在するものがほとんどだろう。ゲームの発売における多言語ローカライズが標準化していることもあり、いずれの段階でセリフなどをテキスト化するプロセスは求められるはず。その中で、あえて字幕を表示させないタイトルは、そうそう見つからないはずだ。アクセシビリティの専門家であるIan Hamilton氏も、字幕を含めることは間違いなく業界の標準であるとコメント。VlambeerのRami Ismail氏もAAAタイトルにとっては、字幕は標準的なものであると投稿。字幕がないタイトルが存在していたとしても、決して業界の標準ではないだろう。「業界標準は存在しない」の一言によって、Activisionが聴覚障害者を蔑ろにしているような印象が独り歩きし始めていることは否めない。

なお、厚生労働省「身体障害児・者実態調査」によると、平成18年時点で日本の聴覚・言語障害者は18歳未満と以上をあわせて約36万3000人。聴覚障害者は29万1800人国内にいるといわれている。なんらかの障害を抱えていなくとも、字幕が存在すれば一般ユーザーにとっても、セリフの読解が楽になるだろう。字幕はあるに越したことはないといえる。Activisionは、『クラッシュ・バンディクー ブッとび3段もり!』でも、冒頭のオープニングなどのカットシーンにて字幕を用意していなかったようであるが、それもまた「原作準拠」にこだわった結果だという可能性もある。Activisionは『Spyro Reignited Trilogy』について前向きな検討をしているようなので、今後アップデートによって字幕が追加されることを期待したい。

ちなみに、『Spyro Reignited Trilogy』の日本発売については依然として告知されていない。マイクロソフトストアでは日本語のゲーム説明文が記載されているが、レビュー欄では日本語が入っていないことが報告されているので、購入する際には注意してほしい。

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