お隣さん家に忍び込む『Hello Neighbor』売上が50万本を突破、そのうちSteam版の売上は“一番低かった”。明暗を分けたのは市場かレビューか

 

インディーゲーム『Hello Neighbor(ハローネイバー)』の売上がトータル50万本を突破したようだ。Steam Spyの管理人でありEpic GamesのスタッフでもあるSergey Galyonkin氏が、パブリッシャーであるtinyBuild GAMESから直接得たデータを報告している。

https://twitter.com/galyonkin/status/960179358156705793

『Hello Neighbor』は、お隣に住むおじさんの家にこっそり侵入し、おじさんの警戒をかいくぐりながら秘密を解き明かしていくホラーステルスゲームだ。PCとXbox One向けに発売されている。おじさんには学習型のAIが搭載されており、プレイヤーよく通るルートをマークしたり、使用した侵入経路に罠を仕掛けるといった独自の行動を見せることが同作の特徴となっている。プレアルファの段階から、隣の家に侵入するというコンセプトや攻略の自由度がユーザーを惹きつけ、ゲーム実況界隈でも人気を博していた。50万という数字は、そうした人気がそのまま売上に直結したのだろう。そしてさらに興味深いのはその売上の内訳だ。

Galyonkin氏によると、同作がもっとも売れたのはXbox One版。ついでパッケージ版。次に公式HPより直売のPC版、Steam版と続く。Xbox One版はSteam版より“はるかに”売れたと報告されている。Steam版がコンソール版をはるかに下回ったほか、プレアルファ版を発売していたので普通の直売よりは人気があるとはいえ、公式HPの直売よりも売れなかったというのは、少々ショッキングな結果でもあるだろう。

恐ろしくも、どこか哀れさを見せるおじさん

『Hello Neighbor』は発売前よりゲーム実況者を中心に人気を博したと前述したが、一方で発売後はその人気との温度差を見せるように不評レビューが多く投下された。主な理由は、自由度が高いがゆえに生まれたバグやパズルの練り込み不足、アピールポイントであったAIの単調さや攻略の難解さなど多岐にわたる。それらを含めて、期待していたようなゲームではなかったという評価が目立っている。

Steamレビューにもそうした評価が反映されており、アップデートもあり現在はやや持ち直したものの、レビューが730件以上投稿され総合評価は「賛否両論」。ユーザー評価は芳しいとは言えないものになっている。ちなみにSteamSpyによると、『Hello Neighbor』の売上は約7万本だ。ではXbox Oneのストアにて同作が好評であるのかというと、そういうわけでもない。580件以上のレビューが投稿されレビューステータスは5段階中3.2。こちらも高評価も多いが低評価が目立つ。ほかのtinyBuildの作品はおおむね4以上獲得しているので、『Hello Neighbor』の低評価が際立つ。

両プラットフォームともに同様の評価が下されているものの、Steamレビューにおいては右下部分に真っ赤なMetacriticスコアが表示されている。この数字のインパクトはなかなかに強烈だ。ほかにもValveは長年Steamレビューの改善に取り組み続けていることもあり、そうした意味ではSteamが“よりレビューが売上に影響を及ぼすプラットフォーム”と考えてもいいだろう。

辛辣な批評と真っ赤なメタスコアが目に入る

もしくは市場の問題が関係しているとの見方もできる。Steam Directが解禁されて以来、Steamではとにかく大量の作品がリリースされている。ニンテンドースイッチにおいてインディーゲームが多く売れているのと同様に、Steamほどリリースタイトルの多くないコンソール機が売上に勝ることは不自然ではない。Xbox Oneにおいては『Cuphead』がすでにスマッシュヒットしているほか、『PUBG』もSteam版に負けじと数字を伸ばしている。ある程度知名度のあるインディーゲームという前提ならば、Xbox OneのマーケットがSteamに匹敵する、もしくは勝る規模ということも十分に考えられる。

くわえて、Steamはタイトルを多くリリースしつつ、キュレーターによりユーザーに合ったゲームを発見してもらうシステムを採用している。レビューの評価が低くキュレーションに比較的引っかかりづらい『Hello Neighbor』に関しては、評価の低さが影響してマーケットでも埋没するという負の連鎖に陥っている側面もあるだろう。

『Hello Neighbor』はニンテンドースイッチ版とPlayStation 4版が発売されるとの噂が浮上しており(関連記事)、それらが発売すれば売り上げは上乗せされるだろう。ただ、ゲーム実況人気に引っ張られたタイトルであったが、その追い風は今やみつつある。現在では同作の実況動画は著しく減っており、コミュニティの熱が冷めていっているのはTwitchの実況者数からも垣間見える。50万本という偉大な数字に到達してもtinyBuildが大々的に発表しないのは、そうした危機感や懸念が関係しているのかもしれない。