『RiME』開発者がコピーガード「Denuvo」導入の賛否にコメント、「クラックされたら解除する」

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パズルアドベンチャーゲーム『RiME』を手がけるTequila Worksは、同作に採用しているコピーガード「Denuvo」に対して一部で否定的な意見があることについて、もしプロテクトが突破されたらすべてのプラットフォームを対象にゲーム内から「Denuvo」を削除するとコメントした。あくまでもコピーガードが役目を終えた後に解除するという運営方針を伝える内容に過ぎないが、この対応が逆に反対派の怒りを増したばかりか、一部メディアを中心にユーザーへの挑戦状と解釈され物議をかもしている。

 

コピーガードを解除するタイミングは自由

「Denuvo Anti-Tamper」(以下、Denuvo)は、オーストリアに拠点を置くソフトウェア会社Denuvo Software Solutions GmbH(以下、Denuvo社)が開発した改ざん防止技術。ゲームソフトを特定のユーザーアカウントと紐付けることでコンテンツの無制限な利用を規制するデジタル著作権管理(通称DRM=Digital Rights Management)とは異なり、SteamやOriginといった既存のDRMプラットフォーム自体を保護するようデザインされている。デバッグ作業や逆行分析、実行ファイルの改ざんを防ぐことで、DRMをバイパスできないようさらに強固な守りを提供するのが目的だ。そのため、DRMを組み込まれていないゲームに対しては何ら意味をなさない。これまで発売日を待たずして違法コピーがインターネット上に蔓延するPCゲームの“割れ”事情に革命を起こした実績から、世界最強のコピーガードと賞賛されてきた。

一方、「Denuvo」が搭載された商品は買わないと主張するコピーガードに否定的な消費者が存在するのも事実で、Tequila Worksが『RiME』に「Denuvo」を導入したことにも賛否の声があった。これを受けて開発者の一人Darius氏は、Steam内の専用スレッドにてコメント。同作にコピーガードを採用した経緯や、今後の運営方針について説明した。「RiMEはユーザーそれぞれが雰囲気を楽しむ体験です。ゲームがクラックされればそれらすべてを台無しにしてしまう恐れがあります。私たちは本来のクオリティを保つためなら何でもしたいという想いで尽力していますが、もちろん完全無欠なものなど存在しません。そうは言っても、もしRiMEがクラックされてしまった場合には、既存のプラットフォームでアップデートを配信してDenuvoフリーのバージョンをリリースすることを約束します」。

この対応にコピーガード反対派はユーザーに対する侮辱であると憤慨。一部の海外メディアは、開発者の物言いがクラックしてみろと言わんばかりの挑戦状のように受け取れると報道した。そもそもPCゲームにコピーガードを施す真の意義は、クラッカーたちに破られるまでの時間を可能な限り引き延ばすことであり、パブリッシャーにとって最も重要な初期セールスを海賊版の脅威から守りきるまでが「Denuvo」本来の役割に過ぎない。そのため発売から一定期間が経過したタイトルから「Denuvo」を削除するか否かは、完全にパブリッシャー側の判断に委ねられている。そのタイミングを「ゲームがクラックされた時」と定めるのはTequila Worksの自由である。

 

“Denuvo Challenge”と揶揄される背景

それでは、何故ここまで一部ユーザーの反感を買ってしまうのか。その背景には、堅固なプロテクトが逆に作品のクオリティを貶める要因になるという指摘がある。以前、ポーランドのゲーム開発スタジオFlying Wild Hogは、同社の新作『Shadow Warrior 2』にコピーガードを導入しなかった理由を明かし、「決して不正コピーを容認するわけではありませんが、今のところ消費者に害を及ぼさずに止める手立てがないことは事実です。Denuvoを導入するということは、さらなる資金を投入してまで正規ユーザーにとってのゲームクオリティを下げることを意味します」と説明していた。つまるところ、違法コピーの不在が本当にセールス増加へ繋がるかどうかは議論の余地がある一方で、コピーガードの実装に費やす資金や労力は確実にゲームクオリティとのトレードオフになるからだ。(関連記事:一部の開発者がコピーガードを導入しない理由とは、海賊版の流通は本当にゲームの売り上げへ影響するのか

事実、かつて「Denuvo」が中国のクラッカー集団を休業の憂いに陥れた安全神話はすでに崩壊している。昨年8月に発売から半年に渡り守られ続けてきたPC版『Rise of the Tomb Raider』の海賊版がインターネット上に出回ったことを皮切りに、『INSIDE』や『DOOM』をはじめ、「Denuvo」を採用したゲームタイトルが次々とプロテクトを突破された。カプコンのシリーズ最新作『BIOHAZARD 7 resident evil』にいたっては発売からわずか5日で防壁の突破を許している。先日には、Denuvo社がクライアントと交わしたメールの内容や一部実行ファイルといった社内の機密情報を誤って公式サイト上に公開してしまうという騒ぎがあった。漏えいした情報による大きな被害は報告されなかったが、痛い敗北を経験した直後だっただけに完全な泣きっ面に蜂である。

今回、Tequila Worksはコピーガードの有効期限をクラックされるまでと定めただけであり、ユーザーに叩きつけられた“Denuvo Challenge”といった他意がないことは確かだろう。一方ではコピーガードを信頼しないデベロッパーが、違法コピーによる売り上げへの影響などクッキーの欠片がこぼれ落ちるようなものという見解を示しているように、「Denuvo」の存在意義はあくまでもメーカー側が何をもって有益と判断しているかという基準の一つに過ぎない。コピーガードに多額の資金を投入してゲームクオリティを多少犠牲にしたところで、端から著作権を気にしない不正ユーザーからリターンが得られる保証はないことは事実だが、Tequila Worksへの批判が単なる不満のはけ口に思えてならない。

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