ボリビア政府、フランス大使館に抗議。『Ghost Recon Wildlands』での麻薬カルテルが同国を支配しているとの表現巡り


イギリスの大手メディア「ロイター」の報道より、ボリビア政府がフランス大使館へと『Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands』の表現を巡り正式に抗議していることが明らかとなった。ボリビア政府はまず外交交渉での解決を望んでいるが、法的な措置を取る権利を保有していることも書状で伝えつつ、フランス政府に介入するよう要請しているという。

『Ghost Recon Wildlands』は、世界各地の困難な任務を米国の特殊部隊「ゴースト」たちが解決していくUbisoftの「ゴーストリコン」シリーズ最新作だ。今作では南米ボリビアを舞台に、巨大麻薬カルテル「サンタ・ブランカ」との戦いが描かれる。ゲーム内のあらすじでは、ボリビアは当初サンタ・ブランカと争ったものの最終的には服従しており、政府機関や警察は同カルテルと手を結び、同国は南米とアメリカ・メキシコを結ぶ一大麻薬生産・経由拠点となったと伝えられている。

『Ghost Recon Wildlands』

現実のボリビアにはアンデス山脈が通っており、そしてアンデス山脈では長年にわたり「コカの葉」が生産されてきた。この「コカの葉」は確かに「コカイン」の原料ではあるが、「コカの葉」自体はアンデス山脈の先住民の生業として、またコカ茶などの嗜好品として定着してきた歴史もある。それゆえにボリビアと麻薬の関係性については、「確かにコカの葉は作られており、それがコカインの生産につながっているものの、歴史的・文化的な背景もある」という複雑な背景を生みだしている。

この背景を見て今回の抗議が正しいのかどうか、明確な答えを記すことは非常に難しいが、コカの葉の生産が歴史的・文化的なものであると近年主張しているボリビアにとっては、『Ghost Recon Wildlands』での描写は確かに許しがたいものとなるのだろう。コカの葉の生産業者の生まれであるモラレス現大統領は、同国においてコカの葉の生産は認めているものの、アメリカと麻薬取引の防止に務める署名をしており、コカインの精製などは禁止し、実際に生産量は減少しつつある。一方でボリビア政府が麻薬密輸に関わっているのではないかと疑う米国麻薬取締局「DEA」とは対立関係を築いており、ボリビア政府が2008年に国外退去をDEAに命じたり、2015年にはDEAが長年にわたりボリビア政府を麻薬密売で調査していたとの報道もあった(参考リンク: 南米ニュース)。

2015年にはローマ法王フランシスコがボリビアをおとずれ、コカの葉を使用したお茶を飲んだことが話題となった。コカの葉は茶として飲んだり、噛んだりすることで、高山病対策になると言い伝えられている 参照元リンク&画像: ロイター

『Ghost Recon Wildlands』は3月7日からリリース予定。ゲーム中で「ボリビア」という国名は明確に使用されており、キャラクターたちの会話・通信シーンも豊富なことを考えると、発売前に修正することは難しいだろう。