株式会社xeen(ジーン)は3月20日と21日、インディーゲームイベント「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2026」(以下、TIGS)に出展。同社の若手クリエイターチャレンジプロジェクト「じ~んず」のもと、社員たちが制作した作品を試遊展示した。本稿では、数多くの開発実績を誇るxeenが取り組む「じ~んず」の正体を、同社のキーマンたちに訊いた。また、別記事では実際にそれらをプレイして感じた意外な手応えをレポートしている。

xeenは、大阪に拠点を構えるゲームデベロッパーだ。アーケードゲーム開発のほか、『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』など名だたるタイトルの開発に協力してきた。デベロッパーとして実力と実績を積み重ねてきたxeenが今回、新たに始動したプロジェクトが「じ~んず」だ。

「じ~んず」はインディーゲームレーベルであり、同社の若手クリエイターを対象としたチャレンジプロジェクトだという。新人社員を中心に、「繰り返し楽しめるプリミティブなゲーム」をコンセプトとして開発。若手メンバーの主体性や、会社全体の開発力・プロジェクト推進力の強化などが狙いとのこと。一方で「若手と言い張ればベテランも参加可」とされていたり、開発タイトルの試遊の機会も今回がほぼ初だったりと実情はベールに包まれていた。

今回のTIGSで「じ~んず」は、4タイトルを出展。そのうち3タイトルを実際に試遊してみたところ、実績豊かなxeenらしい、「繰り返し楽しめるプリミティブなゲーム」とのコンセプトに恥じない確かなクオリティのゲーム体験を楽しむことができた。しかし、このプロジェクトの実態はなんなのか、なぜ「小規模ゲーム作り」を始めたのか。xeenにて本プロジェクトに携わる取締役・開発本部長の秋山惟行氏、経営企画本部の山下実之氏から訊いた「じ~んず」についての深い話をお届けする。


「じ~んず」ってなに?

──改めまして、「じ~んず」とは、一体どういった取り組みなのでしょうか。

秋山惟行(以下、秋山)氏:
まず大まかには「とにかく何かやってみよう」という、挑戦としての試みです。発端としては、弊社で「遊びの基本に立ち返る」という意味でアナログゲームを作っていこうという動きが持ち上がりまして、若手社員たちが「是非見てください!」と提示してくれたアナログゲームがすごく面白かったんです。それなら「ちゃんと作ろうよ」ということで、ビジネスとして売ろうというよりは、まずは一度ある程度完成させてみようと。

秋山氏:
それを取引会社さんなどいろいろなところに配ってみたりだとか、学校に提供したりだとか、そういった機会を作って「自分たちが作ったものにどんな反応があるか」を実際に確かめてみよう、という流れがひとつですね。

若手社員などが自発的にゲームを作って「会社としてこのタイトルをどこかで出せませんか」と働きかけてくるケースもあります。『BESTACK』がそういったタイトルで、若手社員が熱意をもって開発していました。そういった、社員が熱量をもって取り組んでいるタイトルをちゃんとユーザーに見せられる場を作りたい、といった意図があります。

『BESTACK』

秋山氏:
あとは、会社として認知度を向上させたり、それが新しい社員の採用などさまざまな面に繋がったり、といった狙いを「じ~んず」ならいっぺんに叶えられるのでは、という取り組みですね。

山下実之(以下、山下)氏:
AUTOMATONの弊社過去インタビューでもありましたが、社員が「やりたい」という挑戦を否定することがない、そういった弊社の風土を体現するようなプロジェクトですね(関連記事)。

──「じ~んず」の「くり返し楽しめるプリミティブなコンテンツ開発」というコンセプトはどのように定まったのでしょうか。

秋山氏:
昨今ではゲーム市場もすごく大きくなってきていて、デベロッパーとしてxeenが受ける仕事についてもそれなりの規模になってきています。海外発の作品や、まるで映画のような大型ゲームも数多くあるなかで、もう一度「ゲームってなんだっけ?」という基本に立ち返ってもよいのではないか、という考えからコンセプト・方針が決まりました。


経験と実績があるのに小規模なのは、“泥臭くやる”xeenらしさ

──xeenといえば百戦錬磨のデベロッパーというイメージがあったので、なぜ「大型の自社開発タイトルを作るぞ!」といった展開でなく、こうした小規模な作品群を展開するのか疑問でした。

秋山氏:
弊社はずっとデベロッパーとして活動してきているので、ほかのメーカーさんのようにパブリッシングの経験値がほとんどないんです。なので、いきなり大層な旗を掲げて「インディーゲームに参入します!」といった動き方をすることに疑問がありました。なので、「マイペースに、まずは一歩ずつ泥臭くやっていきますよ」という姿勢も込みでxeenとしてではなく、「じ~んず」という新たな看板を掲げてこのプロジェクトを展開しています。

大型タイトルの展開もできたらいいなとは思いますが、身の丈に合わないことをしても、みんながしんどいだけなので……。ほかのメーカーさんが簡単そうにやっていることでも、自分たちがそれを当たり前に出来るかというと難しいので。まずは自分たちが積み上げてきたものを、違う方向に向けてみよう!という発想ですね。

山下氏:
あと今回の取り組みについては、まずは開発者が直接お客さまの声を聞ける機会をつくりたいなと。今回、出展タイトルを実際に開発した社員がイベントブースに立って、お客さまから「面白かったです」「発売や配信しないんですか?」といった反響を直接聞けることも、よかったなと思います。

山下氏

秋山氏:
そういう機会ってなかなかないんですよ。アーケードゲームの開発業務では、ゲームセンター実地でおこなうロケーションテストがあって、プレイヤーの生の声を聞けたりもするんですが……。コンシューマーゲームの場合でも作品が出てからでないと反響はわからないですし。それから弊社は他メーカーさんの開発協力などが多いので、「自分たちだけで作ったものがどう評価されるのか」を直接知れるのはなかなか貴重な経験だったと思います。

弊社内でも「じ~んず」の取り組みをやりたいという声も増えていますし、こうしたイベントに参加してリアクションを見たりだとか、直接反響を受けられるというのは活性化にも繋がっています。今日が初のイベント出展ですが、やってよかったと思いますよ。


「面白いモノ」が先にあり、届けるための「じ~んず」

──BESTACK』と『ぷちトイ◒リフレクト』を遊ばせていただいたのですが、個人的に「Steamで売ってたら買う」というくらいの仕上がりでした。

山下氏:
ぜひ作った本人にそう伝えてあげてください!

秋山氏:
『ぷちトイ◒リフレクト』については、部内での社員育成の一環として、エンジンを使って1からゲームを作ってみようという取り組みから派生しました。元々は本当にシンプルなゲームだったんですが、「これはカタチになるんじゃない?」という感触がありました。そこで、イベントに向けてデザイン担当の若手社員なども参加してもらって、外に出せるように体裁を整えたという流れで。

秋山氏:
なので、「こういったプロジェクトを立ち上げよう!」という姿勢よりは、そうした弊社の文化をちゃんと会社の進む先に繋げていきたい、という思いですね。

山下氏:
そうですね。今まで特段意識してこなかった、言語化してこなかった弊社の文化が、かたちになったのが「じ~んず」というプロジェクトだと思います。「じ~んず」という名前のもと、プロジェクト主導で立ち上がったわけではなく、「こういうことをやってみよう」「まずはこういたイベントに出してみよう」という出発点から「じ~んず」が生まれたかたちですね。

やはりイベントに出展すると、この取り組みをやりたいと言ってくれた社員たちの目の色の変わり方、輝き方がすごくて。まだイベント終わっていないのに反省点の振り返りをしてくれる社員もいて。他にも「今回の結果はこうだったけど、どう評価すればいいか。もっとコンテンツとして盛り上げるために必要なことを考えたい。」など自発的に持ち込んでくれるのがすごく嬉しかったです。コンテンツの面白さを突き詰めて改善サイクルを回すのはさすが開発者だなと。それだけでも、このプロジェクトを通して成長や変化があったのかなと思います。

秋山氏:
まだまだ未熟ではありますが、まず「デベロッパーであること」や「きちんといいものを作れる体制や、実績を整えていく」という土台があった上で、許される範囲でのチャレンジを少しずつやっていきたいです。

──「じ~んず」は若手クリエイター育成プロジェクトとしつつ、「若手と言い張ればベテランも参加可」とのことですが、実際のところはいかがでしょう。

秋山氏:
はい、大丈夫です。たまたま、「じ~んず」に繋がる活動をしていた社員が若手中心だったというだけで。なので、実をいえば「若手だけでプロジェクトを構成しよう」とは思っていません。実際、今回参加している中には50歳を超えているベテランも居たりします。どちらかといえば、会社のチャレンジという枠組みでやるにあたって「まず1年生からやらせてください……」という方針です。

山下氏:
「ジーンという会社自身がこの領域において若手である」というイメージですよね。

秋山氏:
さきほど「百戦錬磨」と言っていただきましたけど、我々としてはあまりそういった認識がないので……。「すいません、まずは見習いからやらせてください」というイメージですね。

秋山氏:
実は「自分にもやらせてほしい」と伝えてくれる社員も何人か出てきていますから、プロジェクトに繋がっていったらいいなと思いますね。でも、我々はあくまで開発者なので……。地に足がついた開発が出来た上で、プロジェクトにチャレンジできるかどうかが大事だと考えています。そこはブレるつもりはないので。

──出展タイトルそれぞれがかなりの完成度となっていましたが、開発期間としてはどの程度でしょうか。

秋山氏:
ゲームだけでいえば、1年といった期間をかけて細く長く開発してもらっているかたちです。たとえば『BESTACK』については、自分たちが知らない間にかなり作り込まれていて。元々部内で「作品を作ってみて、かたちになったら会社のサイトにちょこっと載せる」といった相談はあったらしいのですが……。自分としてはいきなり「見てください!」と来た感じでした。「えっ、もっと早く言ってーや!」という。

一同:
(笑)

──実際に社員の皆さんがゲームを持ち込んできた際には、どういった社内フローでプロジェクトの一部になるのでしょうか。

秋山氏:
それはケース・バイ・ケースですね、「この承認フローで社内施策を進めます!」といったことを決めているわけでもありませんし。というより、決めたところで上手くいかないのではないかと思います。なにか面白いものを作って持ってきてもらった時に、紋切り型の手続きではなく「じゃあこれをどう進めるのがいいのか」と考える方がよいと思っています。

人の育成も同じですが、ひとつひとつの作品にとってなにがベストかを、それぞれに考えていくという。今後もそうしたスタイルでやっていくと思います。それに、あまりガチガチに承認フローを決めてしまって、折角作ったものを見せづらくなるのも凄くイヤなので。体裁ばかり気にするようになってしまいますし。モノを作って持ってくるもよし、企画書で持ってくるもよし、アイデアレベルでの相談でも大丈夫です。実は今回出展したのも一部で、今後もタイトルは増えると思います。

──もちろん、作る以上は商品として売上を回収できるに越したことはないと思いますが、そういった部分はあまり重視していない?

秋山氏:
それについては“両方”だなと思っています。会社という組織としては、作ったものが商品になって、それがお金として入って来るのが理想ですが……。そこを最初に考えてしまうと、それはそれで違うという感覚があります。まず、そういった動きができる経験値が我々には無いんですよ。ビジネスとしてゼロからなにかを生み出すことについては、経験値がない。

なので、さきほども触れたように「モノが先にあって、それをどう届けていくか」というアプローチがあるのと、実際にモノが出来たときにさまざまな展開ができる土台を企業として作っておくことが前提になっています。軸足をどこかに固定するのではなく、いろんなところに触れていくかたちにできればよいと思っています。

今回は試遊しそびれたものの、『プログラミングバトル ~スーパータンクウォーズ~』も会場を盛り上げ好評を得ていた

──「じ~んず」の作品について、リリース計画などが進んでいるものはありますか。

秋山氏:
リリース計画までは正直まだ到達していなんですよ。「作品は出来上がっているけど、どうしようか?」という段階です。お客さまがどんな反応をしてくれるかもわからず、今回のTIGS出展で実際にどういうリアクションをいただけるのか確かめたくらいで。ほかのパブリッシングもしているメーカーさんだと、市場調査をしたりニーズを調査したりだとかしますが、そのノウハウも我々はもっていませんから。

仮にですが、調査会社に「うちで作っているものの需要はどうだろう」といった調査を依頼してレポートが上がってきたとしても、単に「そうなんだ」という感じじゃないですか。イベントだけでなくYouTubeでもなんでもいいんですが、やはりユーザーの生の声を聞けることは大きいですよね。ほかのメーカーさんと同じことは自分たちにはできないので、自分たちは自分たちの理解しやすい、学びやすいやり方で、かっこよくはないかもしれませんが、一歩ずつ進もうと思っています。


無限のアイデアを、制限内に落とし込むのがゲーム

──現在「じ~んず」はプリミティブなコンテンツを軸にシンプルな作品を展開していますが、スケールの大きい面白い企画を提示された場合はどうでしょうか。

秋山氏:
「面白い」となれば全然アリですね。その企画が長大すぎるのであれば、「どうすれば実現できるか」という方向に考えますね。半ば冗談のような話なのですが、堀井雄二さんが『ドラゴンクエスト』を作ったり、坂口博信さんが『ファイナルファンタジー』を作ったりした時、きっと頭の中にあったビジョンは『The Elder Scrolls V: Skyrim』のような世界だったと思うんですよね。

「ああ、こんなことがしたい!」と思いつつ、当然あの当時のスペックではそのビジョンは実現できない。そこを工夫してプレイヤーにさせたい体験を実現しつつ、当時の技術で見つけた落とし所があのかたちなんです。長大な企画が来た場合も、方法としては同じ考え方で、「この完成図を目指そう!」ではなくて、「頭の中にある楽しさをどう実現するか、どこを抽出するか」と我々にできる範囲でかたちにすることを考えます。可能であれば丸ごと作ってしまいたいですが。

山下氏:
そうですね、ゲーム自体が遊ぶデバイスの制約があるものなので、その中でどう頭の中の楽しさを実現できるかを模索するのが重要だという話をよく社内でもしています。。

──おふたりが「じ~んず」でゲームを作るとなったら、どのような作品を作りますか。

秋山氏:
いやもう、それだと多すぎて答えられない!

一同:
(笑)

秋山氏

秋山氏:
作ってみたい作品を挙げ始めたら、もう山程あるので難しいですよね。ゲーム開発には必ず制約があって、たとえば「期間は半年です、予算は1000万円です」といった縛りの中であれば、作りたい作品も絞り込めるんです。その縛りを無くしたなかで無制限にやっていいよと言われたら……。逆に縛りがないと作れないですよね、そういう体になっちゃってるから(笑)。ゲームというのはそういう制約のなかで生まれてきたコンテンツなので。

うーん……。ホラーゲームもやってみたいし、ゾンビゲームもやってみたいし、群像劇もやってみたい。ふわっとした話ですが、現代日本を舞台にしたゲームは一度作ってみたいと思っています。『龍が如く』や『ペルソナ』、あと時代設定は少し昔ですが『サイレントヒルf』といった作品がありますけど、意外とそこにフォーカスした作品は多くないじゃないですか。今はすごく日本のカルチャーも世界に認知されていますし、そこはもっと掘り下げる意義があるんじゃないかと。

山下氏:
自分は元々ゲームクリエイター出身ではなくて、グループ会社のNTTドコモ(*)から出向しているので、新鮮な目線でゲームデベロッパーの皆さんを見させていただいてます。なので、皆さんの作っているものすべてが楽しそうに見えて「そこに自分も加わらせてくれ!」というのが正直な気持ちですね。無限に楽しそうなアイデアが湧いてくるのを見ていると、その中から作ってみたいものを一つに絞るというのは難しいです。0から作るというよりは、今出展しているゲームをより多くのお客様に遊んでもらうために、なんでもやっていこうと気持ちです。

*xeenはNTTドコモのグループ会社。

──「じ~んず」について伝えたいこと、読者へのメッセージはありますか。

秋山氏:
xeenという会社の雰囲気や、若手を中心とした社員たちの活躍といった部分を見ていただきたいですね。本当にそれだけが目的なんです。派手なことも華やかなこともなく、ひたすら「面白いことをどうやったらうまく実現できるか」と、今後もそういう会社であれればいいですね。

イベントなどで是非「じ~んず」の取り組みを見ていただいて、会社の雰囲気だったり、作っているゲームだったりを好きになっていただいて、ブランドとして応援していただけることが一番うれしいです。今はこうして小規模にやっていますが、何年後かには「当初は、あんなに小さくやっていたよね」となってくれるといいですね。また、頑張ったことに報いる会社でもあるので、そういった部分を見ていただければと。

山下氏:
こうしたイベントには今後も継続的に出展していきます。そこでブースに来ていただいた皆さんに「xeenでは、やりたいと思ったスタッフが自発的にこういうゲームを作れるんだ」ということを肌で感じていただきたいです。xeenという会社の文化を体現したプロジェクトとして見ていただければ。この文化を見たゲームクリエイターで、弊社で働きたいと思っていただけた方の応募も大歓迎です。

またイベント会場では、皆さんの声をストレートに聞かせてください。ぜひ皆さん会いに来て、声を聞かせていただいて、「じ~んず」の雰囲気を肌で感じてください。とにかく皆さんとコミュニケーションさせていただき、皆さんの声を拾って、より面白いゲームを作って、届けたいという思いです。

今回のインタビューでは、「じ~んず」の狙いのみならず、xeenに浸透した「面白いモノづくり」重視の社内文化もうかがえた。今後もxeenは同プロジェクトのイベント出展をしていくとのことなので、作品に触れる機会を見逃したくない方はxeen公式サイト公式Xアカウントもチェックしてみてほしい。なお別記事では、実際に「じ~んず」の出展タイトルをプレイして感じたクオリティの高さ、手応えを詳細にレポートしている。

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