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恋愛ビジュアルノベル『恋に落ちるしかなかった』には100時間以上プレイしたユーザーのレビューも散見される。ジャンル的に珍しいほど長時間プレイされている秘訣は何なのか。

Xsoが2025年4月19日に正式リリースした恋愛ビジュアルノベル『恋に落ちるしかなかった』が、現在も熱烈な支持を集めている。対応プラットフォームはPC(Steam)で、Steamユーザーレビューには100時間以上プレイしたユーザーのレビューも散見される。ジャンル的に珍しいほど長時間プレイされている秘訣は何なのか。開発者に話を訊いた。
『恋に落ちるしかなかった』は、百合ビジュアルノベルゲームだ。ある日事故に巻き込まれ「1年以内に運命の人を見つけないと呪いによって死ぬ」と告げられてしまった主人公が、突きつけられた運命と真実の愛に翻弄されていく。2026年4月26日には、後日談が描かれた無料DLCの配布と日本語ローカライズを含めた大型アップデートもおこなわれた。

本作の主人公の顔望舒(イェン・ワンシュー)は、インターンや大学の卒業をひかえる女子大学生だ。プレイヤーは主人公として、攻略対象である4人の女性キャラクターと交流をしながら、やがてひとりの女性と恋に落ちていく。人懐っこい幼馴染のライバー、たおやかな学友会の会長、クールな同級生の双子の姉、そして企業「ユニバース」の厳格な管理職といった個性豊かで魅力的な女性たちは、主人公に興味津々ながらも、どこか秘密や心の闇を隠している。
本作では、登場人物がそれぞれ心の内に矛盾や葛藤を抱えながらも、徐々に心を通わせていく過程が、美しいビジュアルアートとともに描かれている。また、本作の音声は中国語のみとなっているが、キャラクターの感情が声を通してよりリアルに伝わると、ボイスの演技にも高い評判が集まっている。中国語がわからない場合でも、声にのった感情は伝わるため、言語を超えた表現を楽しむことも可能だ。

本作は正式リリース以降、高評価を獲得し続けており、本稿執筆時点でSteamユーザーレビュー3102件のうち95%が好評とする「圧倒的に好評」の評価ステータスを得ている。ユーザーレビューには、プレイ時間が100時間を超えるプレイヤーも多く、中には2700時間を超えるプレイヤーも存在する。ビジュアルノベルとして、特筆すべきほど熱烈な支持を受けているといえるだろう。また百合恋愛ゲームとして、成人した大学生や社会人をメインとしている点でも珍しい本作がいかにしてヒット作となったのか。このたび弊誌は本作の開発チームXsoにメールインタビューを実施し、好評の要因や日本での反響などをうかがった。

──現在、『恋に落ちるしかなかった』はSteamでは3000件を超えるレビューがあり、「圧倒的に好評」ステータスを得ています。レビューではプレイ時間が100時間以上のプレイヤーも多く、2700時間を超えるプレイヤーもいます。こうした反響をどのように考えていますか。
Xso:
率直に言って、その数字を見たときは驚きと同時にとてもありがたい気持ちになりました。『恋に落ちるしかなかった』は、すべてのエンディングやコンテンツを含めて一通り遊ぶと、通常12〜15時間ほどかかります。ですから、プレイ時間が100時間を超えている方は、おそらくこのゲームを10回近く遊んでくださっている計算になります!(笑)
開発者として、これほど多くのプレイヤーの皆さんが何度も物語を遊び直してくださるとは、正直想像もしていませんでした。これほど長い時間をこのゲームとともに過ごしていただけていることに、心から感動しています。そして、皆さんから寄せられる愛情と応援は、私たちのチームにとって何より大きな励みになっています。
──開発チームから見て、本作がこれほど長時間遊ばれている理由は何だと思われますか。
Xso:
私たちは、その最大の理由は、プレイヤーの皆さんがキャラクターたちに深い愛着を抱いてくださったことだと考えています。実際に、「キャラクターたちが大好きで、まだ別れを告げたくないから何度も遊んでいる」という声をたくさんいただいています。さまざまなシーンや会話、物語の細かな描写をもう一度楽しめることも、繰り返しプレイする魅力の一つのようです。
また、『恋に落ちるしかなかった』には12種類のエンディングが用意されており、プレイヤーの選択によって会話の分岐が変わり、キャラクターたちの新たな一面が見えてきます。さらに、何度もプレイして初めて気づけるような細かな演出や伏線も数多く散りばめられています。ですから、プレイするたびに新しい発見を楽しんでいただければ、と願っています。
──かなりの好評が集まっておりますが、セールス面ではどれくらい手ごたえがありますか。本作の成功で開発チームの皆様のモチベーションや生活面に何か変化はございましたか。
Xso:
百合ビジュアルノベルというニッチなジャンルの中では、『恋に落ちるしかなかった』は比較的成功を収めた作品だと考えています。商業的な成果も、私たちが当初想像していた以上のものとなりました。チームにとって初めての作品だったこともあり、この結果は私たちにとって大きな励みになっています。
一方で、この経験を通して、インディーゲーム開発がいかに困難なものかも身をもって学びました。開発の過程では予想外の困難に何度も直面し、そのたびに世界中のインディーゲーム開発者の皆さんへの敬意はますます深まりました。ゲームを最後まで完成させ、世に送り出すということ自体が、並々ならぬ努力と献身を必要とする大きな偉業なのだと実感しています。

──4月の大型アップデートで本作は日本語対応を果たしました。ローカライズで苦労したところはありますか。また、あえて大変な日本語ローカライズを用意したきっかけはなんでしょうか。
Xso:
最も大きな課題の一つは、日本語の一人称や二人称、そして敬称の扱いでした。それぞれのキャラクターがどのような話し方をするべきかについて何度も話し合い、キャラクターらしさを損なわず、日本のプレイヤーの皆さんにとってもできるだけ自然に感じられる台詞になるよう、たくさんの時間を費やしました。
また、プログラミングやUIの調整を中心に、技術的な課題にも数多く直面しました。それでも最終的には、すべてを無事に乗り越えることができました。この場を借りて、チームのメンバー全員、そしてテストプレイに協力してくださった皆さんにも心から感謝を伝えたいです。皆さんの支えは、本当にかけがえのないものでした。
日本語ローカライズを決めた理由については、実は多くの方が想像するよりずっとシンプルです。私たちはX(旧Twitter)で、「次に対応してほしい言語は何ですか?」というアンケートを実施したところ、日本語が最も多くの票を集めました。プレイヤーの皆さんの熱意に応えたいという思いから、日本語ローカライズに挑戦することを決めました。
──アップデート後の日本での反響はどうでしょうか。もしよければ、プレイ人数が何倍に増えたかといったデータを教えていただけますとありがたいです。
Xso:
全体として、日本のプレイヤーの皆さんからの反応はとても好意的でした。温かい感想やレビューを数多くいただいており、日本からこのゲームを知ってくださる方も着実に増えていると感じています。数字の面でも、日本語対応アップデート以前と比べて、日本のプレイヤー数は約320%増加しました。ただ、それ以前の日本でのプレイヤー数は比較的少なかったため、現在でも日本のプレイヤーが全体のユーザーに占める割合は、まだそれほど大きくはありません。
このたびのインタビューをきっかけに、より多くの日本のプレイヤーの皆さんに『恋に落ちるしかなかった』を知っていただければ、とても嬉しく思います。
──レビューでは、登場する女性たちの不完全さや、人間関係のリアルないびつさが印象に残ったという声もありました。キャラクターの心理描写においてこだわった部分はありますか。
Xso:
キャラクターを制作する際に、私たちが最も重視したのは、それぞれが抱える内面的な葛藤です。私たちは、単に「善人」や「悪人」として描かれたキャラクターでは、どうしても平面的な印象になってしまうと考えています。そこで、一人ひとりが複雑な感情や矛盾、そしてそれぞれの悩みや葛藤を抱えた人物になるよう意識しました。
私たちが考える、本当にプレイヤーの心に響くキャラクターとは、完璧な人物ではありません。それぞれが自分自身の内なる葛藤と向き合い、困難を乗り越えながら、物語を通して成長していく……そんなキャラクターこそが、プレイヤーの皆さんの心に残る存在になるのだと考えています。

──本作を開発した経緯として、市場に百合恋愛シミュレーションビジュアルノベルがあまりなかったことを挙げられていましたが(公式Q&Aより)、日本では一定の人気のあるジャンルかと思います。本作が影響を受けた日本の百合作品やビジュアルノベルはありますか。
Xso:
もちろん、日本の百合作品は大好きです。ただ、百合ビジュアルノベルよりも、実際には百合漫画や百合アニメに触れる機会のほうが多くありました。『恋に落ちるしかなかった』の開発にあたって、直接的なインスピレーションとなった特定の日本の百合ビジュアルノベルはありません。特に強い影響を受けた作品を挙げるとするなら、幾原邦彦監督の「少女革命ウテナ」と「ユリ熊嵐」です。
──百合恋愛ゲームの市場において、大学生や社会人がメインの作品はそう多くはないと感じます。今回、大学生や社会人の恋愛を描こうと思われたきっかけは何でしょうか。
Xso:
私たちは以前から、大学時代という人生の時期に強く惹かれてきました。大学時代は、まるで人生の岐路に立っているような時期だと感じています。一方では、まだ若さゆえの純粋さや未熟さを残している一方で、少しずつ大人として社会へ歩み始める時期でもあります。この時期は、未来への不安に満ちていると同時に、無限の可能性や夢を思い描ける時期でもあります。だからこそ私たちは、思春期から大人へと移り変わる、その狭間にある時期ならではの恋愛を描きたいと考えました。
──本作では、前世や転生といったファンタジーな要素と、現代社会の問題といった現実的な要素が世界観として登場します。開発において、ふたつの世界観をどのように深めていきましたか。
Xso:
正直に言うと、最初から壮大で複雑な世界観を作ろうと考えていたわけではありません。私たちはまず、キャラクターたちを作ることから始めました。それぞれのキャラクターには、固有の性格や背景、そして歩むべき人生があります。そのうえで、彼女たちの魅力を最も引き出せる物語や世界設定はどのようなものかを考えながら、作品を形にしていきました。
私たちにとって、「前世」や「転生」といったファンタジー要素は、あくまで物語を語るための手法の一つです。過去や運命がどうであれ、登場人物たちは最終的に、自分自身の人生における成長や選択、そして現実の課題と向き合わなければなりません。だからこそ、私たちはファンタジーとリアリティを別々の要素として捉えてはいません。どちらも、私たちが描きたかったキャラクターと物語を支えるために存在しているのです。

──Nintendo Switchを含めた、ほかプラットフォームへの移植が計画されているとのことですが、これらも日本語ローカライズ対応は予定されていますか。
Xso:
もしNintendo Switch版を無事にリリースできることになれば、より多くのプレイヤーの皆さんにお好みのプラットフォームで『恋に落ちるしかなかった』を楽しんでいただけるよう、日本語対応も含める予定です。ただし、Switch版については現在、複数のパブリッシングパートナー候補と協議を進めている段階で、まだ計画段階にあります。PC向けのリリースと比べ、コンソール向けにゲームを展開するには、技術的な最適化、プラットフォーム認証、開発スケジュールの調整、その他さまざまな技術面・ビジネス面での課題があります。
そのため、現時点では発売時期をお約束することはできず、また移植版が必ずリリースされることを保証することもできません。多くのプレイヤーの皆さんがSwitch版を楽しみにしてくださっていることは、私たちも承知しています。正式にお伝えできる情報が決まり次第、皆さんに共有していきます。辛抱強くお待ちいただいていること、そして変わらぬ応援を寄せてくださっていることに、心より感謝いたします。
──本作のヒットは、グローバルな百合恋愛ゲーム市場において意味を持つものだと思います。今後の展望や、野望のような大きな目標がありましたらお聞かせください。
Xso:
私たちには、これから先どのような未来が待っているのかは分かりません。それでも、『恋に落ちるしかなかった』が世界中の多くのプレイヤーの皆さんに届いたことを、心からありがたく思っています。もしこのゲームがこれからもプレイヤーの皆さんの心に響き続け、何年経っても覚えていてもらえるような物語になれるのなら、それだけで私たちにとってはかけがえのないことです。
──ありがとうございました。
『恋に落ちるしかなかった』はPC(Steam)にて配信中だ。
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