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Steam Frameレビュー。Steamの「VRゲーム」と「VRじゃないゲーム」を遊べるヘッドセット、しかしスタンドアローンでは力及ばず
Steam Frameをレビューしていく。Steam Frameの特徴は「VRゲームをプレイすること」と「VRでないゲームをプレイすること」を両取りしようという、他メーカーには見られない設計思想だ。

2026年9月15日、VALVEよりVRヘッドセット『Steam Frame』の発売が告知された。日本ではKODOMOより販売される。価格は256GBモデルが税込19万9980円、1TBモデルが税込24万4980円。Steam Frameは世界最大手のPCゲームプラットフォーム「Steam」の公式VRヘッドセットで、Steam公式のVRヘッドセットは3機種目、前モデルから6年ぶりの新型となる。
Steam Frameの特徴は「VRゲームをプレイすること」と「VRでないゲームをプレイすること」を両取りしようという、他メーカーには見られない設計思想だ。順を追って説明していく。まずはハードウェアの所感から。

・開封とハード所感
今回、KOMODOから「Steam Frame本体」と「エルゴノミクス拡張セット」、別途周辺機器を提供いただいた。
・開封のプロセス
箱にあるSteam Frameを取り出し、USB Type-C接続で充電しながら電源をつける必要がある。ACアダプタが付属しているが、Steam Frame以外のものでも充電可能。ヘッドセットの中で言語と時刻、Wi-Fi設定を入力したら、手元のスマートフォンに入っているSteamアプリと連携。ログインの項目にSteamFrameの欄が追加されているので、それをタップすれば連携完了。

・本体
筆者がSteam Frameに対して感じた最初の印象は、そのコンパクトさ。Meta Questがすべてのパーツをヘッドセットの接眼部に収めているのに対して、Steam Frameは「後頭部を固定するパーツ」と「バッテリー」を一体化させたものを背面に回しており、そのぶん顔面のパーツの体積や重量が減っている。

PICOシリーズも背面にバッテリーを回す設計だが、PICOはヘッドセットを頭に固定するパーツがすべてプラスチック製なのに対し、Steam Frameはゴムバンド製といった違いもある。Steam Frameは総重量が440g、Meta Quest 3は515g、PICO 4 Ultraは580gであり、Steam Frameは現行のスタンドアローン型VRヘッドセットとしてトップレベルの軽さだ。

ただし、コンパクトすぎてメガネが入りづらい。メガネ用のスペーサー(頭とヘッドセットの距離を少し離すパーツ)を入れてもまったくメガネが入りやすくならないので、大きいメガネを使っている人はSteam Frameにメガネが入らないかもしれない。コンタクトレンズを使うか、小さめのメガネを用意するか、もしくはSteam Frame用のレンズを製造する業者が発売後に出てくるのに期待するか。手段は考えておこう。

・コントローラー
VRのモーションコントローラーはグリップつきのゲームコントローラーを左右に分割したような形状になっていることが多く、Steam Frameもその例に漏れない。プレイヤーの両手の位置や動きを取得するだけでなく、親指や人差し指でボタンやスティックの入力も可能だ。Steam FrameのコントローラーはMeta Quest 3のものより少し大きいが、握り心地はほとんど同じ(筆者は手が大きいほうなので、手が小さい人にとっては大きすぎるかも?といった疑念はある)。VRモーションコントローラーを使った経験があれば、すぐに馴染めるだろう。


Steam Frameのコントローラーは「他のVRコントローラーと比べてボタン数が多い」「スティックの位置が他のVRコントローラーと逆の位置(他VRコントローラーのスティックは親指の外側だが、Steam Frameはスティックが親指の内側にある)」という差異があるが、既存のVRゲームをプレイするうえであまり大きな問題にはならない。例えるなら、任天堂・XboxとPSでゲームコントローラーのボタン配置が異なるものの、本質的にはどちらを使っても操作に支障はないようなものだ。

・エルゴノミクス拡張
今回のレビューではVALVE公式のエルゴノミクス拡張セットも同梱されていた。このエルゴノミクス拡張セットには「頭の真上につけられるベルト」「ヘッドセットと鼻の隙間を埋めるカバー」「コントローラーをプレイヤーの手にしばりつけるベルト」が封入されている。Steam Frameは標準だと頭の側面だけをゴムバンドでしばりつけるが、真上のベルトを追加でつければ側面を強くしばらずにヘッドセットを頭にかぶせることができる。ゆったり被りたい人には必需品。
「ヘッドセットと鼻の隙間を埋めるカバー」について、VRヘッドセットは大なり小なりゴーグルをかぶっても目と鼻の間にゴーグルの外が見える隙間ができてしまい、没入感が阻害される要因ともなりうる。Metaではこういった鼻の隙間のカバーに「鼻が高い人用」と「鼻が低い人用」が別々に用意されているのだが、Steam Frameの鼻カバーについてはそういった情報は現時点でない。日本人の平均的な顔では、エルゴノミクスセットの鼻カバーをつけても隙間を塞ぐことは難しく、実用的ではないかもしれない(現に筆者は鼻カバーをつけても隙間をふさぐことができなかった)。
「コントローラーを手にしばりつけるベルト」について、これは「コントローラーを持たなくても落とさなくなる、握らなくても持てる」というメリットがある一方、「ベルトを外さないとコントローラーを離せなくなる」というデメリットもあるので、これが「便利グッズ」かは人によると筆者は考える(筆者はこれがなくてもいいと思う)。標準のコントローラーに手首にくくりつけるためのストラップは同梱されているので、それをつければ安全対策としては十分。

エルゴノミクス拡張セットが必要かどうかは、Steam Frame本体を購入してから考えても遅くはないだろう。
・OSとユーザーインターフェース
Valveは2022年からValve製品のUI「BigPicture」を刷新、共通化しており、Steam DeckやSteam Machine、Steam Frameはほぼ同じUIをしている。このUIはValveの製品を持っていなくても一般のWindowsのPCからでも利用できる(Steamのウィンドウ右上にあるモニターのアイコンをクリックするとBigPictureモードが始動)。また、一般のPCでSteam VRを使う際にも、すでにこのBigPictureモードは搭載されている。そのUIにSteam Frame本体の設定をいじる項目が追加されたものが、Steam FrameのUIだ。

このUIはユーザーがSteamで所持しているゲームを探して選ばせることに特化しており、ゲームの管理と起動には過不足ない。文字入力などが必要になった際は、両手のコントローラーをポインター代わりにして空間に浮かぶ仮想キーボードの文字をクリックして文字を入力する必要がある。ただ、今回判明した不具合として、Steam FrameのBigPictureで日本語のキーボードを使うと何を入力しても強制的に「123456……」と数字の羅列になってしまうものがあった(この不具合はSteam DeckとSteam Machineでは見られない)。不具合の修正があるまでは、英語のキーボードを使うのがいいだろう。
・Steam Frameを特徴づける「3つの機能」
基本的にVRヘッドセットの役割は「VRコンテンツをプレイすること」だが、Steam Frameは三つの機能を持っている。Steam Frameを買う場合は、以下の三つの機能のどれをどう使うかにかかっている。
・PCに接続して使うVR
Steam Frameの使い方としてもっともスタンダードなのは、ゲーミングPCに接続して、SteamVRのコンテンツを体験することである。ゲーミングPCに入っているVRゲームとかVRChatほかVR対応メタバースとか、VR化MODを入れたPCゲームとかを動かすのだ。Steam FrameはSteam公式のデバイスなので、特別な手段もなくそのまま動かすことができる。Steamで無料で入手できるVRドライバー「SteamVR」をPCにインストールしていれば問題ない。
実はValve公式のVRデバイスで無線接続に対応したのはSteam Frameが初めてであり、有線ケーブルでのPCへの接続は開発者モードのみでサポートされる(公式ドキュメントより)。ほかのVRヘッドセットでは無線LANのルーター経由でPCとVRヘッドセットの通信が行われるが、これはVRの通信の膨大なデータ量が要因でPCとの接続がふいに途切れてしまうリスクがあった。Steam Frameは付属品の専用ドングルを使うことで、VRヘッドセットの無線接続を無線LANだけでなくドングルの専用の帯域に通信を分散し、これまでのVRヘッドセット以上に安定したPCVRの無線での動作が可能となる。なお、このドングルは使わなくてもPCへの無線接続は可能。

Steam FrameでPCのVRコンテンツを動かした感想としては、特に違和感なくそのまま使える。VALVE公式でないVRデバイスではPCのVRを動かすためにいろいろなステップが挟まって時間がかかるものだが、Steam FrameでSteamのゲームソフトを選べば自動的にPCと連携してPC VRコンテンツがすぐに起動でき、なかなかにストレスフリー。なお、Steamで購入していないVRゲームを起動するオプションも用意されているので安心。
・Steam Frame単体で動作するVRゲーム
Steam FrameはゲーミングPCにつないでPCのVRコンテンツを体験するだけでなく、PCに接続せずとも単体でPCのVRゲームを起動できる。一般的なスタンドアロン型のVRヘッドセットはそれ専用に作られたVRゲームのみ動かすことができるので、PCのVRゲームを公式の機能として動かせるのはこれまでのVRヘッドセットになかった特徴だ。
一部のSteamのVRゲームはValveからSteam Frameでの動作認証を受けており、Steam Frameで快適にプレイすることができる。なお、PCのVRゲームを動かすだけでなく、Steam Frame専用にチューニング、ビルドされたVRゲームも開発者が配信可能である。実際、ほとんどの動作認証タイトルはSteam Frame向けに新たにチューニング、用意されたものだ。

・Steam Frame単体で動作する非VRゲーム
Steam FrameはVRでないゲームを起動、プレイすることもできる。VRコントローラにはゲームパッドと同じようにボタンやスティックが配置されているので、そのままボタン操作でゲームをプレイできるし、あるいはVRのモーションコントローラーのポインティングをマウス操作代わりにすることもできる。これを使えば、椅子やベッドに寝っ転がりながら仮想スクリーン上で片手でPCゲームをプレイする、といったことも可能。

また、左手でスティック操作をしながら右手でポインティング操作をするFPS/TPS向けのハイブリッドな操作スタイルも実現できるし、既存のゲームパッドをSteam Frameに接続して、普段通りにプレイすることも可能。なお、仮想スクリーンの解像度は標準で1280×720で実行されるが任意の解像度に変更可能であり、アスペクト比率は16:9だけでなくSteam Deckと同様の16:10にも設定可能。
・よい点
Steam Frameのなによりも優れている点はValve公式のVRヘッドセットということであり、既存PC VRゲームとの互換性も担保されていて、SteamVR公式のサポートが続くことが確定している安心感がある。また、アイトラッキング技術が消費者向けのメジャーなVRデバイスに標準で搭載されるのは2022年のMeta Quest Pro以来のことで、アイトラッキングを標準搭載したVRヘッドセットを求める需要にとっては、Steam Frameはうってつけだろう。
また、意欲的な機能が盛りだくさんなのも技術的に評価したいポイントだ。スマートフォン向けのチップでPCのゲームを動かす技術は今後にわたって重要になるもので、Steam Frameのための技術投資が将来的にさらなるVALVEのデバイスに還元されることだろう。

・懸念点
Steam Frameをスタンドアローンとして使う場合、全体的に挙動が不安定である。レビュー時点ではリリース前ということもあってしょうがない面があるものの、PCにSteam Frame専用ドングルを挿しているのにSteam FrameからPCのVRゲームをスムーズに起動できないことがあった。むろん筆者のPCの環境がたまたま相性が悪かったのかもしれないが、ストレスなく起動できるという売り文句が正確かどうか、筆者は確証が持てない。
また、PCのVRゲームを動かせる機能についてだが、これを動かすにはSteam Frameのスペックが足りない。よほどシンプルなビジュアルかつ最適化されたPC向けのVRゲームでもない限り、Steam FrameのPC VR互換モードで解像度もフレームレートも十分に動かすことは困難を極めるだろう。

筆者が試した限り、Steam FrameのPC VRの互換モードでスムーズに動いたのは『Beat Saber』と『Rez Infinite』のオリジナルのワイヤーフレーム風のモードぐらいで(『AreaX』はもう処理が追いつかない)、SteamのVRゲームをいくら持っていてもSteam Frame単体で快適に動くVRゲームは片手で数えられるほどしか見つからないはずだ。さらにいえば、ValveがSteam Frameでの動作を確認したタイトルでさえ、そもそも起動できないことが相次いだ。

Steam FrameでVRでないゲームを動かす機能についても、有用だとは言い難い。2022年発売のSteam Deckよりもスペックが低いことは覚悟の上だったが、Steam Deckで起動できたゲームがSteam Frameだと起動できないことが相次いだ。
例えば、『エルデンリング』はSteam Deckだと動くが、Steam Frameだとアンチチートに引っかかって起動できなかったし(おそらくx86からarmにバイナリを変換するプロセスがチート判定にひっかかっている)、『バイオハザードレクイエム』や『RED DEAD REDEMPTION 2』は起動すらしないし、『FINAL FANTASY XV』を720pの低画質で30fpsで動かすのがやっとであり、それでも不安定だ。まず2Dアートの軽量なインディーゲームか、3Dの大作であれば10年以上前のゲームでないとまともに動かない(『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』や『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』は快適に動いた)。

何より残念なのは、このスペックとパフォーマンスでValveが「『Half-Life: Alyx』が動く」と開発者インタビューで言ってしまったことだ。たしかに動いてはいるのだが、ゲームが動くことと快適に遊べることは別物であり、少しでも視界が動くたびにブレて残像が見える状態を「快適に遊べた」とは筆者は口が裂けても言えない。Steam Frameに搭載されているチップがあと1~2世代は進んでいればちゃんと動いたであろうに、この状態で「『Half-Life: Alyx』が動いた!」と宣言してしまったのは、残念である。

幸いにも、Steam Frame購入者には『Half-Life: Alyx』のコピーが無料で配られるとのことなので、もし本作未経験であればきちんとしたゲーミングPCにつないでプレイしてほしい。なお、有志が作ったModが製品化された『Half-Life 2: VR Mod』はSteam Frameで非常に快適に動くので、せっかくなら『Half-Life 2: VR Mod』を試していただきたい。Half-Life 2を所有していれば無料でダウンロード可能だ。
なお繰り返すように、懸念でお伝えしたスペック不足はSteam Frameスタンドアローンで使用した上での評価であることは留意されたい。
・誰のためのデバイスか
Steam Frameは、ゲーミングPCでSteamVRを使うためのデバイスとしてはよい手段である。もしあなたがVRは基本的にPCのコンテンツを利用していて、手持ちの古いVRヘッドセットから買い替えたいとか、いまちょうどPCのVRコンテンツにだけ興味があるとか、アイトラッキングつきのVRヘッドセットが欲しいとかを考えているなら、Steam Frameは選択肢として十分に考慮すべきだ。
しかし、まだMeta Quest 3やPICO 4 Ultraを持っているとか、ゲーミングPCを持っていないがVRを始めたいといった場合……つまりスタンドアローンでの使用を考えている場合は、Steam Frameの優先度はあまり高くない。なぜなら、ゲーミングPCがない状態でのSteam Frameが活用できる状況はほとんどなく、解像度や視野といったハードウェアの面だけ見ればMeta Quest 3やPICO 4 Ultraと大差があるわけでもない(ただしアイトラッキングを除く)。
「Steam Frame本体でVRゲームが動く」だとか「Steam Frame本体でVRじゃないゲームも動く」といった面は、Valveにとっての将来への技術的な投資の意味合いが強く、それらの機能を体験するためにSteam Frameを買う価値があるかというと、これもないだろう。あくまで「Valve純正の無線PC VRヘッドセット」という点に価値を見出すかどうかが、購入のカギとなる。
・補足:Arctus Vision Camera
今回、Steam Frameのレビューにともない、Steam Frame用の周辺機器「Arctus Vision Camera」も提供いただいた。これはSteam Frameにカラーパススルーと立体映像撮影カメラの機能を追加する周辺機器である。Steam Frameは前面に機能拡張用の端子があり、Arctus Vision CameraをSteam Frameの前面に挿入することで利用することができる。

2020年以降、ヘッドセットがPCから離れて独立して動くようになってからヘッドセットに「パススルー機能」というのが追加された。もともとはヘッドセットが周囲の空間や立ち位置を認識するためのセンサーとしてヘッドセット前面にあるカメラから周囲を撮影するというものだったが、「せっかくヘッドセットが周囲の映像を撮影しているなら、人間がヘッドセットを被ったまま外を見れたら便利なのでは」ということで機能が人間向けにも解放される。
あくまでヘッドセットのセンサーの機能としてはモノクロで十分だったが、2022年のMeta Quest Proからパススルー映像がフルカラーで見れるようになったことで人間にとっての利便性が向上。2023年のMeta Quest 3、2024年のApple Vision Proでは周囲の光景とCGを合成するMixed Reality(複合現実)機能が大々的にアピールされた。
一方、Steam FrameはあくまでVRゲームのためのデバイスであり、Mixed Realityのためのフルカラーのパススルーは搭載が見送られることとなった。とはいえ、一部のユーザーのニーズに応えるためにも、周辺機器としてフルカラーのパススルーに対応することとなったのだ。詳細は同時公開の開発者インタビューを参照してほしい。

このパススルーカメラがどれくらいの精度かといえば、スマホの画面に映っている画像と文字を識別できるぐらいである。しかし、ピントが合わない距離だと読めないので万能ではないし、Meta Quest 3のカラーパススルーに慣れていると、今更驚くような機能というわけでもない。
ただし、Arctus Vision Cameraは立体映像を撮影するためのステレオカメラがついている。これはMeta Quest 3にはないが、Apple Vision Proには搭載されている機能だ。実際に目の前にある光景を立体で録画、再生できるのだ。元からサンプルの立体映像がある程度収録されているので、いろいろと楽しみはある。

また、Arctus Vision Cameraを利用すると『Arctus Vision Gaussian XR』も付属する。Gaussianとは、立体空間を点群(色つきの点の集合体)として保存、再現する技術であり、実際にこの世界のどこかで撮影された家や景色に入り込んだような体験ができる。こちらもMeta Quest 3でガウシアン技術を用いた空間についてほぼ同じ体験ができるが、「Meta QuestやApple Vision Proを利用する気はないが、XRの先進技術は試してみたい」というモチベーションがあれば試してみる価値はある。

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