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ド直球王道ボーイミーツガールなADV『イハナシの魔女』を今こそ遊んでみよう。核にあるのは「違う人間同士が、どうすれば一緒に生きていけるのか」という問い
『イハナシの魔女』は、直球のボーイミーツガールでありつつ、“異邦人”である光とリルゥの二人の関係を通じて、価値観が違う人間同士が、どうやってともに生きていくかという問いを投げかける作品だ。

Steamでは日々数多くのゲームがリリースされている一方で、個人や少人数チームによる国産タイトルには大作の話題に隠れながらも、独創的なアイデアや強いこだわりを持つ作品が少なくない。本連載「見逃してない? 国産Steamタイトル発掘録」では、同人・インディーゲームを中心に、国産Steamタイトルを毎回1本ずつピックアップして魅力を伝えていきたい。
沖縄の離島で巻き起こる魔女とのボーイミーツガール
連載第11回となる本稿では、同人サークル・フラガリアのビジュアルノベル『イハナシの魔女』を紹介。本作はフラガリアが制作したビジュアルノベル第2弾で、10~15時間ほどでクリアできる作品だ。2022年8月にPC向けにリリースされ、ケムコよりNintendo Switch 2、Nintendo Switch、PS5、PS4、XBOX Series X|S、XBOX One向けにも配信中。
物語の主人公は幼少期に両親を亡くし、養育者の叔母一家に見捨てられた高校生・西銘光。突然「祖父を頼れ」と沖縄の小さな離島「渡夜時島」へ送られた光は、祖父の家が空き家であること、叔母とも連絡が取れないこと、転校先の学校に自分の名前が存在しないことを知り、居場所を失ってしまう。途方に暮れて夜のサトウキビ畑を彷徨う中で出会ったのが、不思議な民族的衣装に身を包み、自らを魔女だと名乗る少女・リルゥだった。リルゥは魔法を使える存在である一方、人間社会の常識には疎く、生活力も皆無。光とリルゥは衝突を繰り返しながらも、祖父の家で共同生活を始めることになる。

序盤は慣れない島暮らしの出来事を中心に、ドタバタコメディ色の強いシナリオが展開。本作は「プロローグ」「アカリ編」「保険販売員編」「リルゥ編」の全4章構成で、上京を夢見る島の少女・赤摘明や、仕事がうまくいかない保険販売員・比嘉紬といった人物との交流を通して、渡夜時島で暮らす人々の姿が描かれていく。物語が進むにつれてシリアスな展開が増え、「渡夜時島」に隠された秘密や、リルゥが島へやって来た目的が徐々に明らかになり、少年と魔女のボーイミーツガールという表面的な設定だけでは語れない物語へと変化していく。
『イハナシの魔女』で興味深いのは、光とリルゥが最初から互いを理解できる関係ではないことだ。光にとってリルゥは、現代社会の常識を知らない不思議な少女。リルゥからしても、光もまた自分とは異なる世界に生きる人間であり、彼が当たり前だと思っていることが理解できない。二人は一緒に暮らすなかで何度も衝突するが、原因は単純な性格の不一致ではなく、そもそも二人が物事を判断するときの前提自体が違っているのだ。だが光は両親を亡くし、育ててくれた叔母一家からも見捨てられたことで、自分の居場所を失っている。渡夜時島にやって来た彼は島の外から来た「よそ者」であり、リルゥもまた日本の外からやって来た存在だ。つまり二人は異なる価値観を持つ者同士であると同時に、どこにも馴染めない異邦人同士なのだ。

だからこそ、二人の関係は「相手を自分の価値観に合わせる」方向には進まない。リルゥが人間社会を理解していく一方で、光もまたリルゥと接することで、自分が当然だと思っていたことを見直していく。相手を理解するためには、自分の側も「当たり前」だと思い込んでいたことを見直さねばならない。こうした構造はフラガリアが掲げるスローガン「価値観を変える」という、作品づくりのコンセプトとも重なっているように思う。
人間にはどこで生まれるのか、誰に育てられるのか、人生に何が起きるのか、本人の努力だけでは変えられないものが多く存在する。それでも与えられた状況のなかでどう生きるのかは、自分で選ばなければならない。アカリや紬の物語も含め、本作では登場人物たちがそれぞれ自分の人生について考え、周囲から与えられた価値観と自分自身の望みとの間で揺れ動く。そのためリルゥとの出会いをはじめ、渡夜時島で出会った人々との交流が、光に「自分はどう生きたいのか」を考えさせる時間になっている。

『イハナシの魔女』は、沖縄の離島を舞台に魔女というファンタジーを取り入れた王道のボーイミーツガールでありながら、核にあるのは「違う人間同士が、どうすれば一緒に生きていけるのか」という問いだ。異なる価値観を持つ誰かとの出会いによって、自分自身の当たり前まで変わっていく過程が描かれているからこそ、物語を最後まで見届けたとき、光とリルゥの関係だけでなく、渡夜時島で出会った人々の生き方まで含めて、プレイヤー自身の生き方を少し見つめ直したくなる作品だと言えよう。
『イハナシの魔女』は、PC(Steam/DLsite/BOOTH)/PS5/PS4/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/XBOX Series X|S/XBOX One向けに配信中。
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