『NAtURAL DOCtRINE』 ある「高難易度」の形

ここ最近、家庭用ゲーム機むけにリリースされるSRPGは、今や『ファイアーエムブレム』のような安定感ある伝統芸能か、既存のキャラクターを使用したいわゆるキャラゲーの延長のようなタイトルが大半であったように思う。『NAtURAL DOCtRINE』はそんななか久々に現れた「システム重視」の新作SRPGであり、個人的に大きく注目していたタイトルだ。制作は角川ゲームス。

本稿は2014/4/27時点での最新バージョンである「Ver1.03」時点での内容であることをご留意いただきたい。


行動権を奪い合うバトル

 

まず本作のバトルシステムについて少し掘り下げる。本作はターンベースのSRPGだが、ターンの取り扱いが少々変わっている。まず原則として「敵味方で素早さ順に行動順を決定後、交互に1体ずつユニットを操作してゆき、最終的に両軍のユニットが行動終了したらターン終了」というルールである。このとき人数配分が偏っている場合、たとえば自軍4の敵軍10だった場合は、お互い4人目までは交互に動かし、その後余った敵軍の6人が連続で行動してからターン終了となる。システム上人数が多ければ基本的に有利だ。

ターンの行動権を変更する方法がいくつか用意されており、まず「行動権の消費前に撃破されたユニットの行動順は、そのターン中は穴埋めされない」というシステムがある。たとえば、次に行動する敵軍のユニットを今の自軍の行動権で撃破できれば、撃破されたユニットの行動権はスキップされ、敵軍の行動なしで自軍に行動権が戻ってくる。これを利用して敵の行動順にうまくユニットを撃破できれば、行動権をずっと維持することも出来る。

 

画面上部にズラリ並んだ行動順。敵の人数が多いので、後半はずっと敵のターンになっている。
画面上部にズラリ並んだ行動順。敵の人数が多いので、後半はずっと敵のターンになっている。

 

行動権のシステムでもう一つ、本作の目玉である「連携システム」が存在する。行動権は最終的に「スキル使用」「待機」のいずれかで終了することになるが、いま操作しているユニットがスキルを使用した際、そのスキルに応じた連携範囲のマスに「連携効果」が発生し、範囲内にいたユニットは通常ターンと同じように行動することが可能になる。連携時には複数人同時に攻撃できるので火力の向上につながったり、連携したキャラとされたキャラの距離に応じて攻撃スキルにプラス倍率がかかったりと様々な恩恵が得られる。

 

三角形で囲んでボコるの図。行動権を使ってしまうため仕留め損なうと一気に不利になる。
三角形で囲んでボコるの図。行動権を使ってしまうため仕留め損なうと一気に不利になる。

 

良いことずくめなように見える連携だが、もちろんデメリットが存在する。連携に応じたキャラはそのターンの行動権が消費され、次ターンの行動順も通常より後ろに回されてしまう。いわば「行動順の前借り」というわけだ。その代わり、連携の発動に「そのターンの行動権の有無」は関係ない。たとえば同じユニットに対して2回連携効果を発動させられれば、2回めの連携行動の分は丸儲けになるし、敵の目の前で行動終了してしまったユニットに対して、次の順番のユニットで連携を発動させ、そのユニットに行動権を付与して後方に下げるといったテクニックもある。

本作の魅力は上述のシステムを駆使して行動順を管理し、行動権ができるだけ自軍に有利になるように考えをめぐらせる、パズルゲームに似た楽しみである。とくに序盤~中盤までは自軍は原則的に数的劣勢に立たされ、それをバトルシステムをフル活用して覆していくステージが大半であるため、システムの習熟はなかば必須といえる。一方で、本作のこうしたシステムは全て敵軍も使用可能なシステムであるため、迂闊に行動したら行動権が戻ってこないままユニットが死んでしまったということも起こりうる。そんな劣勢の中、敵軍に行動順を渡さずに封殺した時の「してやったり感」は本作独自のものだ。

 


「難易度」の形

 

このように行動順管理をメインにすえたバトルシステムには見るべきところがあり、私自身大変楽しめたのだが、バトルシステム以外のところに多くの問題を抱えている。

まずテンポが悪い。イベントやボイスのスキップが不完全、攻撃時のモーションがゆったり目であることなど理由はいろいろ挙げられるが、完全なイベントスキップの不在がやはり大きい。本作は途中までの短くない期間、ゲームオーバー条件が「自軍のユニットの誰か一人でも撃破されること」で固定されており、本作の敵軍AIは「その行動順で出せる最大火力を出す」という点については非常に優秀であるため、ちょっとした采配ミスや、イベント敵増援の不意打ちなどでじつによくゲームオーバーになる。ゲームオーバーになるとセーブポイント・あるいは中間チェックポイント(セーブポイントではない)からのやり直しで、セーブはワールドマップ画面でしか出来ないのでイベントをまた見せられることになる。それが長いイベントだったりしたらもう最悪だ。

 

ゲーム序盤、比較的事故死率の高いマップでの一幕。台詞は飛ばせてもモーションが飛ばせず、テンポが悪い。
ゲーム序盤、比較的事故死率の高いマップでの一幕。台詞は飛ばせてもモーションが飛ばせず、テンポが悪い。

 

ゲームオーバーになるのはプレイヤーが悪い、というのはたしかにそうなのだが、本作の難易度の付け方は割と悪意がこもっており、無情な敵増援イベント、突然の全体攻撃、バトル中に同時進行する特殊イベントの手順を間違えて即死などのいわゆる「初見殺し」が大量に散りばめられている。知っていれば死なないが、知らなければ事前対策が取れずにそのまま崩れてしまうというギミックがかなり多く、死んだら戦闘の最初からで途中セーブもなしというゲーム的な事情も相まって非常に理不尽に感じてしまう。

こうしたドッキリ芸で無理やり難易度を上昇させているのは、本作の難易度は本質的にはそれほど高くないことに起因する。バトルシステムこそ面白いが、実のところ本作のバランスは悪い。プレイしているとだいたい2時間程度で「壁役を置いて後ろから銃で撃ちまくる」のが最適解だと気づいてしまう。そして、やり直しの面倒臭さを考えると、これ以外の戦法を採用するのが心情的にも困難になる。そのうえ本作は敵のステータスを見ることが出来ないため、どうしても及び腰な戦略に流れてしまいがちだ。

ゲーム側もそれがわかっているのか、前述のドッキリ系初見殺しの他にも、護衛系のステージを挟むなど守備一辺倒で解決できないステージも出してはくるのだが、こちらもやることが「常に引きこもる」か「壁役を歩かせながら引きこもる」に変わるだけで焼け石に水。

こうなってしまうのは、この戦法を敵AIが崩せないことも大きいだろう。先程も触れたが、本作の敵AIは最大火力を出すことに長ける。本作は中盤まで誰か死んだらゲームオーバーなので、ゲームのルールに噛み合ったAIではある。しかし本作における最大火力とは全軍で連携を出すことであり、それはつまり行動権の大部分を放棄するということで、それに耐えうる壁役が出てきてしまったら、本作の敵に純粋に「敗北する」要素はほぼゼロになってしまう。そして壁役は割と序盤からそろってゆく。

 

バトル中の攻撃モーションもわりと無視できない感じで長い。こうしたちょっとした長さが積もり積もってストレスになってしまう。
バトル中の攻撃モーションもわりと無視できない感じで長い。こうしたちょっとした長さが積もり積もってストレスになってしまう。

 

そのためか、本作のマップデザインは徹頭徹尾「数の暴力」である。システム的に数が多ければ多いほど有利になるが、敵軍のユニット数をひたすら増量することで連携の起点を増やし、火力の倍率をさらに上昇させることで無理やり難易度をあげようとしている。だが敵の数が増えれば増えるほど、引きこもっている時間が長くなるだけでで取りうる戦法に変わりはない。「死んだら敗北」である以上、これ以外の戦法の本作は許容していない。これはゲームオーバー条件が「自軍ユニットの全滅」に変更されるゲーム終盤でも変わらない。死んだキャラはロストしてしまい復活しないため結局リセットすることになるからだ。

残念な点といえば作品全体を覆う不親切さもそのひとつ。たとえば漫然と本作を遊んでいては、先述した「安定戦法」はおろか、そもそも本作のコアである「行動権の管理」というゲーム内容にすらたどり着けずに終わってしまうだろう。本作のチュートリアルやマニュアルには、それに至るための導線が全くといってよいほど用意されていないからだ。確かに操作方法は教えてくれるが、ゲーム内容については一切教えてくれない。それなりに複雑で、かつ直感的というわけでもない本作のバトルシステムでこの突き放し方は酷というものだ。実際にゲームを遊んで色々考察や解析をしてほしいという意図があったかもしれないが、そういう楽しみ方をするには本作のテンポはあまりに重すぎる。

そういう意味では本作の難易度は「高い」と言える。それはSRPGとしての難易度ではなく「本作を楽しむための難易度」という意味だ。システム習熟のための壁が高い。1マップをプレイするための壁が厚い。どのマップでも1度はイベントなどでの事故死を考えなければいけない溝が深い。意図的に難しく作られたところと、単に作りが悪いだけという部分、全てまとめてプレイヤーに牙を剥いてくる。本作はウンザリという感情をすべてのプレイヤーに届けてくれることだろう。

本作は発売からすでに3度の更新パッチが配信され、最新バージョンであるVer1.03でも「バトル中のチェックポイントの追加」「難易度イージー時の難易度の引き下げ」「敵の思考時間の短縮」が実施された。開発側なりに本作の問題点を改善していこうという姿勢は伺える。実際Ver1.02の「敵ターンの大幅な短縮」は大きく、現バージョンのテンポは発売時のバージョンに比べればかなり改善されたのだ。未だに重い本作のゲームテンポではあるが、引き続き改善されていく可能性はある。

ただ、肝心のSRPG部分の導線の無さ、取れる戦術の少なさについては今のところ手付かずのままだ。難易度イージーの難易度は下げられたが、そもそも本作のSRPGとしての問題点は難易度にあるわけではない。バトルシステムの複雑さに見合わない、システムを学習できないチュートリアルやマニュアルの作り。そしてバトルシステムを活かしきれていないマップデザインに問題があるわけで、闇雲に難易度を下げたところで本作のバトルシステムを理解できるわけではないし、そこから魅力を感じ取ることも無い。

 


次があれば

 

本作のバトルシステムの輝きは、ユニットのまったくそろわない最序盤が頂点である。数的不利、質的不利を思考で覆す快感が確かに存在した。しかし、システム理解が進むにつれ、ゲームが進むにつれ、ユニットがそろうにつれ、本作の戦略の奥行きのなさに気づいてしまい、その輝きは急速に失われていってしまう。私にはそれが非常にもったいなく感じた。バトルシステムに見るべきところはあるのに、マップデザインが・単純な敵AIが・鉄板戦法の存在が・テンポも操作性も悪いインターフェイスが、輝きをあっという間に曇らせてしまった。

本作のバトルの難易度はけっして高くない。安定した戦法が存在する以上それは確かだ。しかしながらゲームを遊ぶする難易度は高い。重要な事を一切説明しないチュートリアル、理不尽な初見殺し、テンポの悪いインターフェイス、攻略の自由度の無さと単調さなどで、相当数のプレイヤーがふるい落とされてしまうだろう。せっかくのバトルシステムを活かすだけの作りこみを本作は備えることが出来なかった。

それが備わるのが今後の追加パッチか、それとも次回作かは分からないが、私自身は本作の動向にもうしばらく注目しておきたい。敵のターンのあまりにも無茶な長さはパッチで改善されたし、最初の数マップは本当に面白かったのだ。このゲームシステムが最初から最後まで十全に発揮されたらどのようなゲームになるのか、私は是非見てみたい。

しかしながら、現時点での本作は作りの粗い実験作以上の評価にはなりえない。確かに単なる高難易度でも、理不尽一辺倒でもない、プレイヤーに隅々まで負担を強いる新しい高難易度の形がここにはある。ただ、こうした作りの粗さを開き直って押し付けてくるタイプの「高難易度」というのは概して面白くはないのだ。そして本作もまた、このパターンから逃れることはできていない。

なお、本作はシステムを楽しむべきタイトルであり、シナリオはあくまでオマケというか、蛇足である。どうも描きたい場面から無理やりイベントシーンやシナリオを起こしていったようで、無い方がマシだとすら断言できる。なのでそこに期待してはいけない、ということだけ最後に触れさせていただく。

 

先の見えない扉を開ける緊張感など、本作独自の真っ当な魅力があるのは間違いないのだが……
先の見えない扉を開ける緊張感など、本作独自の真っ当な魅力があるのは間違いないのだが……
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Rokurou Eyama
ビデオゲームとアメコミとバイク(盗難被害遭遇済)をこよなく愛する30台前半。レトロゲームも最新ゲームも等しく同じ大切なプレイ対象である。 幼少期に出会った『マーブルマッドネス』の衝撃でビデオゲームに目覚め、なぜか実家に転がっていたMSX2+に親しみ、バーチャルボーイに立体視の未来感を植えつけられゲーム人格が形成されていった。STGからRTSまでどんなジャンルも遊んでみるが女の子がいっぱい出てくるゲームは苦手。

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