Global Sites
ゲームの「ボス戦」ってなんで面白い?手強い?実は役割いっぱい、ゲームデザイナーが解説するボス戦が担う“重要な役割”
今回の記事では「ボスの面白さ」の秘密に迫ってみる。ボスはどういった要素と構造を持つのか、どういう時にボスの面白さを感じるのか……。解説する。

こんにちは。ゲームデザイナーのヌヌヌだ。普段はゲーム会社でゲームデザインの仕事をしている。その傍らで寄稿するコラムである。
突然だが、常日頃ゲームを楽しむ読者諸君なら、誰しも記憶に残るボスがいることだろう。巨大で恐ろしくてカッコいいボス……物語のクライマックスに登場する憎いボス……何度も何度も負け続け、ついに撃破したボス……そう、多くのゲームにはボスが登場する。
記憶に残るボスがいれば、そのゲーム自体も記憶に残る。そのボスとの戦いが面白ければ、ゲーム自体も面白いと感じていたはずだ。「面白いゲーム」とは「面白いボスがいるゲーム」なのかもしれない。いずれにせよ、ボスはゲームの評価に関わる重要な要素だといえよう。
今回の記事では「ボスの面白さ」の秘密に迫ってみる。ボスはどういった要素と構造を持つのか、どういう時にボスの面白さを感じるのか……記事を読み終えた後、読者諸君には是非お気に入りのボスについて考えを巡らせてみてほしい。では、始めよう。
ボスとはなにか、その役割
ボスの面白さについて考える前に、ボスとはなにかについて考えてみよう。ボスはどういった要素で構成されていて、どういった役割があるのか。それを問うことで、ボスの面白さを生み出すために必要な部品や構造が見つかるはずだ。
結論から述べよう。ボスの役割は端的に言えば「門番」だ。プレイヤーの進行を阻む憎くて強いやつ、それが門番であり、ボスの役割になる。
さらに門番の役割は2つある。1つ目が「試練」で、2つ目が「守護」だ。
「試練」とは、プレイヤーの技量を推し量る「これまで学んだことの成果確認」だ。持てる力を使ってうまく突破できるかを問うてくる。また、「守護」とは「先に待つ報酬を守ること」である。ボスが行く手をさえぎるのは、報酬をとられまいと邪魔しているわけだ。
このようにボスは「門番」であり、「試練」と「守護」の2つの役割を持っている。
ボスの役割「試練」
さて、「試練」と「守護」のうち、まずは「試練」について考えてみよう。
繰り返しになるが、「試練」とは「現在の実力で先に進めるかを問う」ことを意味する。その時点で学んだことが正しく発揮できるか、よく理解していない技術はないかという「学習確認」に加えて、プレイスキルはどの程度のうまさを持っているかという「技量確認」を問うている。
仮に銃を扱うゲームに当てはめるなら、射撃手順やリロード方法、UIの見方などの習得を問うのが「学習確認」で、迫ってくる敵をどれくらいうまく倒せるかを問うのが「技量確認」になる。どちらも「学習」という括りではあるが、前者が「理解していればボスを倒せる」のに対して、後者は練習による「プレイスキル向上によってボスを倒せる」ようになる点が異なっている。
それまでに学んだことを確認する「学習確認」のボスを多く採用しているのは任天堂のゲームだろう。たとえば『スーパーマリオ オデッセイ』の第2の国である「ダイナフォー」のボス「マダム・ブルード(以下「マダム」)」はコースの道中で覚えた「ワンワン」のキャプチャー技術を利用する。
プレイヤーはコースの道中で黒くて丸い鉄の犬「ワンワン」と遭遇する。ワンワンはマリオが一定範囲内に入ると飛び掛かってくるものの、鎖に繋がれていて移動距離に限界がある。このワンワンに「キャプチャー」と呼ばれるアクションで乗り移り、限界まで引っ張ってからパチンコの要領で遠くのものを破壊するのが基本操作となる。実際のコースでは「橋を倒す」「壁を壊す」といった破壊手段として学習する。
ボスである「マダム」との戦いでは「ワンワンの操作方法を正しく学べていたか」が問われる。「マダム」が連れている黄金のワンワンは事前に登場したワンワンと基本性能が同じだが、支柱である「マダム」が自由に移動することで少しだけ避けづらくなっていたり、マリオに向かって突撃してくる頻度を高くすることで難度を上げている。とはいえ、やることはコースの道中と同じで、ワンワンを引っ張って放して「マダム」にぶつけるだけだ。事前に学んだことが素直にボスに活かせる形になっている好例だろう。
別の例を挙げてみよう。フロム・ソフトウェアが開発したチャンバラアクション『SEKIRO』(以下、SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE)の最序盤に登場する中ボス「侍大将・河原田直盛」も学習確認型のボスになっている。

『SEKIRO』の2大学習要素と言えば敵の攻撃を無効化する「弾き」と無効化できない危険な攻撃の予兆である「危」のシグナルだ。河原田直盛と遭遇するまでも雑魚敵から緩やかに学ぶことができるものの、はっきりと門番として試練を課してくるのは河原田直盛が最初だろう。プレイヤーはここで『SEKIRO』の基本である「弾き」と「予兆(危)」が問題なく習得できているかを問われることになる。河原田直盛を撃破できれば基本の学習は終了、このあとはより難度が増した強敵が待ち受けている。
河原田直盛はいわばチュートリアルボスだ。学習確認型のボスはチュートリアルとセットで登場することが多い。同じフロム・ソフトウェアのタイトルである『アーマード・コア6』の序盤に登場するヘリコプターのように、高難易度のゲームでは技量も合わせて問うこともある。さらに『エルデンリング』ではまだゲームに慣れていないうちに、その時点で持ちえない技量を要求する強敵「ツリーガード」と遭遇させるという恐ろしい配置も行っている。『エルデンリング』を購入するプレイヤーは、フロム・ソフトウェアの作品を遊んでいるだろうから、いまさら手加減無用、学習無用ということなのかもしれない。
それでは次は試練のうち「技量確認」型のボスに話題を移そう。技量確認型のボスの代表格と言えば『ロックマン』シリーズが挙げられる。

『ロックマン』シリーズは1987年に発売された第一作目から、最新作である『ロックマン11』が発売された2018年まで続いている長寿シリーズだ。本記事の掲載時点では最新作である『ロックマン:デュアル オーバーライド』が発売予定になっている。
『ロックマン』シリーズは多くのユニークなシステムが組み込まれているが、好きなステージを自由に選べる「ステージセレクト」、倒したボスの攻撃を獲得できる報酬システム、そしてステージの最後に「ボス部屋」が待つステージ構造の3つがとくに有名だろう。
プレイヤーが好きにステージを選べる「ステージセレクト」だが、自由と引き換えにプレイヤーの学習結果を予測するのが難しくなっている。ステージ攻略順によって、知っていること知らないこと、できることできないことが変化するからだ。そのため『ロックマン』シリーズではステージごとのギミックを毎回新規に覚えることになる。もちろん、基本操作である「移動してジャンプして撃つ」を軸としているので全く異なる遊びを学ぶわけではないが。
ステージの最後には「ボス部屋」が待ち受けている。部屋の入口はゲートで塞がれており、ゲートを開くとボスが派手な演出と共に登場する。ボスとはここで初めて出会うため、当然攻略法は知らないし、何も学習できていない。『マリオオデッセイ』のような「学習確認型」と異なり、純粋に「プレイスキル」が問われる。すなわち「技量確認型」の典型である。順調なステップアップなど生ぬるい、今ここで覚悟を見せろというわけだ。
「技量確認型」の″学べない・学んだことが使えない”パターンは一見問題がありそうだが、実際はメリットが多い。ボスがステージと断絶された「完全な新規要素」であるため、新鮮な驚きと、それを待つ期待感がある。ボス自体が報酬なのだ。
こうした「技量確認型」のボスは『ロックマン』シリーズだけでなく先に挙げた『SEKIRO』などを開発したフロム・ソフトウェアでも同じく採用されている。フロム・ソフトウェアが送り出すゲームの特徴は優れたレベルデザインや世界観だけでなく、「次々と投入されるボスたち」である。他のゲームに比べてボスが多い、多すぎると言っても過言ではない。荒れ果てた地を彷徨うプレイヤーたちの主なモチベーションは「まだ見ぬボスとの戦闘」だ。
「技量確認型」のボスはうまく作れば存在自体が報酬であり、ゲーム全体の核となる。極論を言えば、ステージは不要だし、レベル上げといった成長サイクルも不要だ。プレイヤーのスキルだけが「正しく実感できる形で」蓄積されればいい。
古くは『Titan Souls』があり、最近では『ルビナイト』に代表されるボスラッシュゲーは「技量確認型」のボスを中心にゲームデザインした事例だ。


余談ではあるが、過去の記事で『ホロウナイト: シルクソング』のチェックポイントの配置バランスについて取り上げたことがある(該当記事)。今回のボスの話と照らし合わせると、『シルクソング』のボスは『ロックマン』と同様に「技量確認」型のボスだ。ボスとの戦い自体が報酬であり、学習するにはボスとの戦いを繰り返すしかない。
しかし、『ホロウナイト: シルクソング』のボス戦はチェックポイントが遠いため「報酬まで距離」があり時間がかかる。かつ道中のアスレチックはボス戦の学習に寄与しない。開発者はボス戦のクールダウン、他の道の探索余地、また道中含めてボス戦の流れであることを意図していたと思うが、プレイヤーの実感としては余計な時間にも感じられたのかもしれない。
ボスの役割「守護」
ボスには「試練」以外の役割がある。門番として「報酬を守る者」、それがボスのもう1つの役割である「守護」だ。ボスは強敵であり、ゲーム進行上の大きなストレス源でもある。ストレスであれば緊張と緩和、緊張と解放が必要だ。つまり大きな報酬が無ければ割に合わず、モチベーションも維持できない。
というわけで、ボスは報酬とセットであることが多い。事前に報酬の存在をチラつかせてからボス戦を挟む場合もあれば、ボスを倒して先に進むと報酬を発見する場合もある。順序はゲームによって様々だが、ある程度ゲームになれてくると「ボスを倒せばいいことがある」程度の期待は持つようになるし、ゲーム側も応えてくれるのが常である。
それに「ボスを倒せばゲーム・物語が進行する」のも立派な守護である。報酬は何もレアな装備品やアイテムだけではない。ゲームクリアを目指すプレイヤーにとって、倒せばゲームが進行するのであれば、ボスは守護者として機能している。
さて、ボスの守護という機能をうまく使っているタイトルを挙げていこう。1つ目は『スーパーメトロイド』だ。

『スーパーメトロイド』は「部屋同士が繋がった広大な空間を探索&アンロック」していくメトロイドヴァニアの代表格……というより始祖的なタイトルとして有名だ。主人公であるサムス・アランを操り、未知の惑星を探索しつつ、自身の装備をパワーアップして探索エリアを広げていく。
探索している道中は怪しげな敵性生物が多数登場するが、ときおりユニークな存在、ボスが登場する。ボスの登場は特徴的な地形によりうっすら存在が示されているが、多くは唐突に始まる。
ボスに対して事前準備できることと言えば体力とミサイルの補充程度で、ボスのタイプで言えば「技量確認型」になる。ただし、探索主体のゲームなので、ボスの強さはほどほどで、どちらかというと探索の中のアクセントとして機能している。
『スーパーメトロイド』のボスが「守護」の役割として優れているのは、撃破後にメイン報酬としては「探索エリアの拡大」がありつつ、少し探索した先に「新しい装備品」が配置されている点だ。ボスを倒したら即報酬があるのではなく、あくまで探索した結果としてパワーアップが待っている。
この構造により、報酬の発見があくまで「自力の探索による偶然の産物」になっていて「驚きと嬉しさ」を演出している。すぐに褒めるのではなく、ちょっと焦らす。新しいエリアの探索は緊張する瞬間でもあるので、偶然の発見がとても嬉しくなる。
ゲームデザインで重要な「緊張と緩和」にちょっとした手を加えることでより深みを出す、これが『スーパーメトロイド』におけるボスの凄さだ。
『スーパーメトロイド』がボスとの偶発的な遭遇を演出した好例だとすれば、ボスと報酬を限りなく近づけた、というより合体させてしまった事例がある。それが『エンダーリリーズ』だ。

『エンダーリリーズ』は力なき少女リリィを操作するソウルライク寄りのメトロイドヴァニアだ。似たタイトルとしては『ホロウナイト』、どちらかというと『ソルトアンドサンクチュアリ』が近い。探索よりも戦闘を重視したゲームデザインになっている。
主人公であるリリィは自身では攻撃手段を持たないため、不死の騎士たちの力を「スキル」という形で使用することができる。要するに攻撃手段の代わりに召喚を使って剣をふるったり、弓を放ったりできる。
ゲームは当然進行と共に困難さを増していく。しかし、リリィは攻撃手段を持たない。ではどうやって強くなればいいのか?そう、このゲームはボスである不死の騎士たちを倒すことで、その力を獲得していく。ボス自体が報酬になっているわけだ。
ボスは強力だが、倒せばその力を手に入れることができる。『エンダーリリーズ』の探索欲求は「先に進みたい」だけでなく「ボスの力を手に入れて強くなりたい」も混ざっている。さらにボスとの闘いも苛烈で何度も挑戦を強いる手に汗握るバランスになっており、それもまた報酬だ。いわばメトロイドヴァニアの探索にソウルライクの戦闘が重なり、さらに『ロックマン』のようなボス武器獲得システムも加わった「よくばりセット」それが『エンダーリリーズ』だ。
まとめると、ボスの守護という役割に対して、撃破から報酬獲得までの距離が遠い例が『スーパーメトロイド』だとすると、距離を限りなく近くしたのが『エンダーリリーズ』だと言えよう。
さて、ここまではボスの「役割」や「使い方」を見てきた。ようやく「面白いボス」の秘密に迫ることができる。
なぜボスの役割について考えてきたのか。ゲームデザインの考え方の1つに「プレイヤーに提供したい体験から逆算して作るものを考えていく」という型がある。抽象的な内容から具体的な内容へ詳細を詰めていく。ボスの役割を「門番」と定め、それが提供する体験が「プレイヤーの進行を阻み、突破したいと思える存在」と定義すれば、ではどのようなボスを作ろうか?と考えていけるわけだ。
本記事の最初に「ボスとは何か?」を問うてみた。今は「門番である」という答えを持っている。では「ボスの特徴とは?」という問いはどうだろう。役割を定めていない場合は「強い」という答えになるかもしれない。しかし、正しい答えは「門番である、だから強い」になる。ボスの強さはボスを門番にするための手段でしかない。極論を言えば、別に強くなくてもいいのだ。「強い」と感じられればいい。
いかがだっただろうか。次回は、ゲームデザイナーとして個人的に面白かったボスを具体的に掘り下げていく予定だ。
この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。






