“「時間」概念を利用したゲームは名作が多い”説を考えてみる。『どうぶつの森』『シェンムー』『YU-NO』『ガンパレ』種類はかなり多彩で分類できそう

「時間の概念を利用したゲーム」はさまざまなタイトルがあり、その種類もさまざまだ。そんな“時間を操る”ゲームについて、今回は考えてみよう。

こんにちは。ゲームデザイナーのヌヌヌだ。普段はゲーム会社でゲームデザインの仕事をしている。その傍らで寄稿するコラムである。今回で10回目の記事となる。編集部から「時間の概念をうまく利用したゲームは面白いものが多い」といわれ、そのお題を考えよう。ということで、今回の記事では「ゲームと時間」の関係性に注目してみる。

ところで、読者諸君は今日もゲームをプレイしただろうか?
プレイしたのは1時間かもしれないが、実際にはそれより長く感じた?
スマホを起動して、ゲームのデイリークエストを消化した?
ゲームの中の制限時間内にモンスターを倒すことはできた?
ゲームの中で天候の変化や時間の変化を感じた?

ゲームは「時間を操るメディア」といってもいい。
先ほど質問したように、時間といっても関わり方は様々だ。ゲームの外と中、長期的と短期的、ルールなのか演出なのか。

何気なく遊んでいるゲームだが、実は「時間をコントロール」することでプレイヤーの欲求を刺激したり、気持ちを盛り上げたり、没入感を深めたりしている。面白いゲームは時間のコントロールがうまい……という見方もできるかもしれない。

今回の記事ではゲームが時間をどのように扱っているのか、またどのような種類があるのかについて注目してみた。記事を読んで、よりゲームを楽しめるようになってくれたら幸いだ。では、始めよう。

『どうぶつの森』が描き出す現実とのシンクロ

『あつまれ どうぶつの森』

2001年に発売された初代『どうぶつの森』から最新作の『あつまれ どうぶつの森』に至るまで、本シリーズは内蔵時計による「ゲーム内時間と現実の時間のシンクロ」を実現してきた。

現実が春になればゲーム内も春になり、現実が夜になればゲーム内も夜になる。このシンクロによりプレイヤーは季節の変化や時間帯の変化を楽しむことができる。単に景色が変化するだけではなく、釣れる魚や採集できる虫が変わるなど、コンプリート欲を刺激し「常にゲームを起動したくなる」仕組みになっている。

四季の移り変わりとともに春ならイースター、夏は花火大会、秋はハロウィンといったように様々なイベントが開催される。イベントがあれば友人と集まって盛り上がったり、写真を撮ってネットにアップしたりと、話題性を提供できる。『どうぶつの森』から他のゲームへ手を伸ばしていた既存プレイヤーを久しぶりに呼び戻す機会を生み出している。

『どうぶつの森』は「現実時間とのシンクロ」を巧妙に扱い、ゲームへの愛着を深めたり「なんとなく起動したくなる」仕組みをふんだんに盛り込んでいるタイトルだ。

RPGに現実とのシンクロを盛り込んだ『天外魔境ZERO』

やや古い事例になるが、スーパーファミコンにも内臓時計を使ったタイトルがある。それが1995年発売の『天外魔境ZERO』だ。ゲームの舞台はジパングという架空の土地になっているが、日本を模したイベントがいくつも開催される。例えば1月は「正月祭り」が開催され、7月は「七夕祭り」が開催される。その他各地の神社では時折祭りが開催されたり、特定の曜日・時間帯でしか開かない店があったり、召喚獣の卵を育てる遊びなんてものもある。

RPGはストーリードリブン(物語駆動)で先へ先へと進行する構造なため、過ぎた場所を再訪させる仕組みと融合させるのは困難だが、面白さを追求するチャレンジがあったことは記しておきたい。

ついついアプリを起動したくなる?『おさわり探偵 なめこ栽培キット』

かつて国内で大人気だったアプリがあった。それが『おさわり探偵 なめこ栽培キット』だ。NintendoDSで展開されていた『おさわり探偵 小沢里奈』 に登場した助手キャラの「なめこ」を主役に据えたスピンオフタイトルで、最初は宣伝用の無料アプリだったが、2011年8月の配信開始から3か月後の11月には累計200万弱ダウンロードされている。

2009年の『サンシャイン牧場』を始めとして「起動していない間もゲーム内でリソースを得る・成長する」ジャンルが人気を博していたが、よりカジュアルに、より自己満足に振り切ったのが本作だ。(いまでいういわゆる「放置ゲーム」である)

本作の遊び方を軽く説明しよう。画面上には「なめこの原木」が置いてあり、そこに「なめこフード」を振りかけたあと「加湿器」や「照明器」といった装置を起動させる。時間が経つと「なめこ」が生えてくるので、画面を指で撫でて収穫していく……それだけだ。それだけではあるが、特定の条件でしか出現しない「レアなめこ」の存在や、設備のグレードアップ、図鑑のコンプを目指す設計などモチベーションを維持するための仕組みが随所に仕込まれている。なにより、カップラーメンが出来上がるのを待つ如く、ちょっとした隙間時間になめこを収穫する行為自体が妙に中毒性があり、ハマるプレイヤーが続出した。

現在のスマホアプリからすれば牧歌的なゲームデザインが許された時代のタイトルだが、古いタイトルと侮るなかれ。同様のゲームデザインを採用したHit-Pointによる2014年に配信されたアプリ『ねこあつめ』や、モチーフチェンジ版として2017年に配信開始した『旅カエル』が中国のAppStoreで2週間にわたりトップに君臨するなど、こうした「のんびり遊べる放置ゲーム」はまだまだ開拓の余地があるような気がしてならない。

『ねこあつめ』

手に入れたのに開けられない!?『クラッシュロワイヤル』の時間経過宝箱

現実時間を利用した仕組みとして筆者が抜群に上手いと思ったのが『クラッシュロワイヤル』の宝箱だ。対戦相手とのバトルに勝利すると宝箱を得られるが、開けるには「時間」がかかる。開けるのに苦労するという意味ではなく「3時間後に開錠される」といった現実の待ち時間が設定されている。

目の前に報酬がある、しかも宝箱という「何が入っているか分からない」ワクワクする存在を前にして待つのは苦しい。しかもストック(所持)できる宝箱の数には制限があり、ストック枠が埋まった後はバトルに勝利しても宝箱を見過ごすはめになる。そのうえ宝箱を捨てる仕組みはないので、レアリティの低い宝箱の存在は邪魔ですらある。「時間よ、早く過ぎてくれ」と願いながら待つことになるわけだ。

待ち時間の苦しみから逃れる方法が「課金」だ。お金を払って宝箱を瞬時にアンロックする。宝箱によっては「12時間」も待つ必要があるが、お金さえ払えば簡単に苦しみから解放される。このように、現実の時間を使えばプレイヤーの欲求を刺激することができる。

お察しの通り、これまで紹介してきた事例は「現実の時間」をゲームデザインに盛り込んでいる。ゲームと時間の関係で言えば、カテゴリは「現実時間」と呼ぶのが良いだろう。「現実時間」は「誰でもルールが分かる」ことと「強制力が強く抗えない」のが特徴だ。「誰でも分かる」から普段ゲームをやらないプレイヤーでもなんとなくルールが理解できるし、世界観に馴染むことができる。「強制力の強さ」は逆に言えば「ゲーム側で強制力を緩和・打開する」術を用意すればプレイヤーを喜ばせることができる。ここに課金圧の仕組みがあるわけだが、なにも課金に限定する必要はない。「時間の省略」はある種快楽なので、もっと別の仕組みで試してみてもいいはずだ。

「ゲーム内時間」の仕掛け

ここまでは「現実時間」に注目してきた。ここからは「ゲームの中の時間」、「ゲーム内時間」に注目していこう。

「勝手にゲームが進行する」牧場系ゲーム

ゲームは能動的なメディアであり、プレイヤーの行動によって進行する。言い換えれば、プレイヤーが行動するまでは硬直した世界でもある。ここに「ゲーム内時間」、つまりゲーム側が勝手に進行する仕組みを導入することで、まるでゲームの世界が本物のように感じられるリアリティが生まれる。「思い通りにいかない」のは面白いのだ。

「ゲーム内時間」をうまく導入した事例としては『牧場物語』が有名だろう。『スターデューバレー』をはじめとした「牧場系ゲーム」の始祖的存在だ。

『牧場物語 Let’s!風のグランドバザール』

『牧場物語』は1日の活動時間が決まっている中で、農作業や買い物、街の人々との交流などを自由気ままに過ごすゲームだ。とはいえ目標を決めたら効率を考えてプレイする必要がある。時間が持つ「ままならない制限」と向き合いながら、どのように攻略するか頭を悩ませるプレイスタイルだ。

『シムシティ』などの都市建設シミュレーションゲームにも言えるが「ゲーム内時間」はゆっくりと進行する恒常的な時間制限であり、それと同時に「種を蒔く」「工場の建設開始」など、プレイヤー自身がスタートタイミングを決められる育成時間でもある。ゆるやかな焦りを生むことも、やがて実がなる期待感も得られる「ゲームを面白くする」仕組みなのだ。

そこに別の現実がある『シェンムー』

鈴木裕氏がディレクターを務めたドリームキャストの名作『シェンムー』をご存じだろうか。このゲームでは現実の5分程度がゲーム内での1時間に相当し、朝から晩まで1日が自然と過ぎ去っていく。さらに日付の概念も導入されており、12月からゲームを開始し、翌年の4月までにクリアしなければゲームオーバーとなる。

『シェンムー3』

リアルに(感じられる)時間の流れが直接的にゲームの面白さに寄与するとは断言できないが、「その世界の実在感」においては抜群の効果を発揮する。

ゲームとは、悪い言い方をすれば「所詮は絵空事」なのであって、うまい嘘をつき続けなければプレイヤーの没入感を削ぎ、ゲームからの離脱を促してしまう。嘘はどういう瞬間にばれてしまうのか。それは「NPCたちの機械的な反応」であったり「世界のハリボテ感」が垣間見えた時だ。

『シェンムー』は架空世界に限りなくリアリティのある時間の流れを導入し、さらにNPCたちの生活に妄執ともいえる「生活スケジュール」を盛り込むことで、ゲームの世界にいるだけで楽しい「実在感のある嘘の空間」を作り出すことに成功した。プレイヤーはあたかも『シェンムー』の世界が「もうひとつの現実」であるかのように認識したことで、後年になってもノスタルジックな語りを止めることはできなくなっている。

『シェンムー3』

『シェンムー』が追求した架空世界への憧れは、他のゲームにも引き継がれている。「1日の生活スケジュール」はスクウェア・エニックスの『ラジアータ ストーリーズ』に見られるし、NPCたちのリアルな生活やリアクションは『レッド・デッド・リデンプション2』に影響を与えた可能性がある。直接的な影響ではないものの『NTE』や『ANANTA』といった中国開発の都市ゲーが『GTA』の影響を受けていることを考えると、これらタイトルは『シェンムー』の子孫と言えなくもない、かもしれない。

アリの社会を発展させたら時間要素が盛り込まれた『ガンパレード・マーチ』

『シェンムー』が「現実のリアルな再現」を目指してリアルタイムに経過する時間を採用したのに対し、「人間社会の再現」のために時間要素を採用したのが『ガンパレード・マーチ』だ。

制作者の芝村裕吏氏はかねてからAIを用いたゲーム内での社会のシミュレーションに興味を持って取り組んでいた。昨今の生成AIではなく、自律的な個体が群れることで社会を構成し、互いに影響を与えながら変化し続ける……箱庭的世界の構築を目指していた。自前の研究で「カレル1」と呼ばれる「アリ」程度の思考AIシステムを構築し、よりゲーム化しやすいように「時間」の概念を導入し「カレル2」を作り出した。その実践投入作が『ガンパレード・マーチ』だった。

『高機動幻想ガンパレード・マーチ』
『高機動幻想ガンパレード・マーチ』

『ガンパレード・マーチ』はゲームであると同時にシミュレーターだ。膨大な数のパラメーターが用意され、日常・バトル・ダンジョンの活動サイクルと絡み合いながら変化を続けていく。随所にプレイヤーの「選択」機会を挿入しながらも、「時間」の概念がままならない「コントロール不可」の状況を作り出し、「カオスの中で抗い続ける」ゲームプレイを生み出している。ゲームの攻略要素は「あらかじめ与えられた課題(シナリオ)」だけでなく、絶え間なく変動する世界そのものでもある。それゆえゲームプレイは「それぞれのプレイヤー個別の体験」になり、他のゲームでは得られない強烈な記憶を植え付ける。

「現実時間」の項でも述べたが、時間が持つ機能の1つが「強制力」だ。リアルタイムに変化し続ける「大きな流れ」がある種プレッシャーとなってプレイヤーに選択を迫る。サーフィンで波を乗りこなすかの如く、無限に湧き出る課題に身を任せるのにはまってしまえば唯一無二のゲーム体験を提供してくれる。

デフォルメされた青春『ときめきメモリアル』

さて、ここまでは現実にしろ架空にしろ「リアルタイムに流れる時間」を利用・採用しているゲームについて紹介してきた。ここからは「非リアルタイム」な時間を扱っているゲームを紹介していく。

『ときめきメモリアル』は架空の私立高校の3年間を体験する恋愛シミュレーションゲームだ。「恋愛」と冠することから分かるように、ゲームの軸は学業や部活動ではなく「意中の相手との恋愛」に据えられている。注目すべきは3年間をどのように描くかだ。

『シェンムー』のように3年間をリアルタイムな時間経過で描くと、プレイ時間が途方もない。そのため『ときめきメモリアル』は1週間単位でゲームが進行する。週の始めに「文系」や「理系」といったカテゴリを選ぶと、そのまま週末まで軽い演出と共に一気に予定が実行される。このあたりは『プリンセスメーカー』と同様だ。こうした時間のデフォルメにより、おおよそ1か月を10分から20分程度で消化できる。仮に20分かかるとすると、1年は12か月なので240分、ゲーム全体は3年間だから720分、つまり12時間もあれば1周クリアできることになる。12時間が多いか少ないかの判断は読者にお任せするとして、リアルタイムよりは現実的に消化可能な時間だろう。

『ときめきメモリアル forever with you エモーショナル』

『ときめきメモリアル』のような「人生の一部を切り取るゲーム」を作る際はいかに時間経過をデフォルメするかが重要になる。もちろん、3年間の時間短縮が『ときめきメモリアル』の目標ではない。時間が高速で過ぎ去る分、要所では体育祭や修学旅行など、青春には欠かせないイベントも凝縮して用意されている。

そして何より『ときめきメモリアル』の青春は一度きりでは味わいつくせない。数多くのヒロインと恋仲になるためには何周も遊ぶ必要がある。だからこそ3年間をいかに短縮し、密度を上げ、それでいて何度も楽しめるかが考えられている。

激動の1年間を描く『ペルソナ』シリーズとその他のゲーム

『ときめきメモリアル』が高校生活の3年間を描いていたのに対し、『ペルソナ3』以降の『ペルソナ』シリーズは高校生活の1年間を描く。リアルタイムではなく、1日を昼夜の2つの時間に区切り、1行動で時間経過することで時間のデフォルメを図っている。

ゲームプレイのうち、自身の人間力を高めたり仲間や友人と仲を深めたりする点は『ときめきメモリアル』に似ているが、加えてダンジョン攻略とバトルが組み込まれている。1日を昼夜区分で短縮した代わりに、1日の密度を上げているわけだ。

『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』

このように、期間と時間の区切り方はそのゲームが描きたいこと、伝えたいことによって変わる。『ときめきメモリアル』は高校生活全体を描くために3年間だし、『ペルソナ』シリーズは激動の1年間を描こうとしている。

他のタイトルもいくつか挙げてみよう。恋愛アドベンチャーゲームの金字塔である『同級生2』は冬休みの1週間が舞台となっている。期間が短いので、1行動につきゲーム内時間で15分程度しか経過せず、かなり濃厚な毎日を過ごすことができる。『プリンセスメーカー2』は元勇者の主人公が娘を10歳から18歳まで育て上げるゲームだ。『ときめきメモリアル』よりも長い期間なため、月単位で行動を決め、かつ時間経過は1週間強がコミカルな演出とともにスムーズに進む。

こうした「ゲーム内時間」を扱ったゲームは数多く存在する。一定の期間での成長物語を描こうとするなら必須のフォーマットだからだ。今回紹介したゲーム以外にも『火山の娘』や『まじかる☆プリンセス』、それに『マリーのアトリエ 〜ザールブルグの錬金術士〜』『マナケミア 〜学園の錬金術士たち〜』 などなど枚挙にいとまがない。テーマに即したゲームプレイ期間と時間の区切りかたに注目すると、各ゲームの個性や開発者たちの選択結果をより深く知ることができる。

『火山の娘』

「繰り返し」を活用するゲームたち

『シェンムー』に代表される「リアルタイム」なゲームも『ときめきメモリアル』のような「非リアルタイム」なゲームも、どちらも時間を止めることも巻き戻すこともできない。過ぎ去る時間を貴重なリソースとして扱うことで、1つ1つの選択を重要だと感じさせるためだ。

しかし、ゲームは現実ではない。時間すらも自由に扱うことができる。巻き戻すことも、何度もやり直すことだってできる。

次は時間の「繰り返し」をゲームプレイの軸に据えたゲームを見ていこう。

選択肢によって世界が変わる『弟切草』

今では当たり前のようにアドベンチャーゲームに組み込まれている「選択肢による物語の分岐」だが「繰り返し何度も遊ぶ」ことを自覚的に搭載したのが『弟切草』だ。『弟切草』は選択肢によるマルチエンド、つまり失敗のないエンディングを搭載したことでも知られるが、ゲームデザインの観点では「繰り返しを前提とした」ことで生まれたプレイスタイルだと考えられる。

スーパーファミコンのゲーム価格はちょうど現在の大作タイトルと同程度である。『弟切草』も8,800円と決して安いとは言えない値段だった。「サウンドノベル」という、言わば読む小説で8,800円分のボリュームを作るのは難しい。しかし、繰り返しを利用すればゲームボリュームを増やすことができる。(これは水増しとは異なる考え方だと補足しておく)

『弟切草』

たとえば1プレイ3時間で終わるとして、これを約9,000円のプレイボリュームに近づけるには何回の繰り返しを用意すればいいのか。まったくの皮算用だが、3時間が500円の価値だとすると、18回の繰り返しを用意すればいい。となると、18個のエンディングを用意すればボリュームについては保障できる。別の言い方をすれば18本のゲームが入っているようなものだが、1本のゲームで18本を切り替える方法として「選択肢」がある。

……と、いい加減な妄想ではあるが、選択肢とマルチエンドのアイデアの裏に「価格に見合ったボリュームの創出」も脳を刺激する課題として、開発者の中にあったのではないかと思う。

「時間」の話に戻すと『弟切草』は「繰り返しを前提としたゲームプレイ」を一般化した。ゲームオーバーになって最初からやり直すのは失敗だが『弟切草』にゲームオーバーはない。ゲームには「クリアかゲームオーバーの2つの結末しかない」こと、「繰り返すのはペナルティであること」を否定したゲームデザインはその後のゲーム業界に大きな影響を与えたと考える。(なお、あくまでテレビゲームというメディアの話であって、先行事例としてゲームブックに同じような仕組みがあるかもしれない)

フローチャートを可視化した『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』

『弟切草』が生んだマルチエンドを更に推し進めたのが『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』今作だ。(以後『YU-NO』と記載)

マルチエンドの弱点は「全ての選択肢・すべてのエンディングを見たか分からない」ことだ。既存選択肢をグレーにする、達成率を表示するなど対策はあるものの「どこに未選択の選択肢があるか」は目に見えない。

『YU-NO』はゲーム開始直後から「フローチャート」、つまり「物語の展開可能性の分岐ツリー」をいつでも確認できるようにしている。プレイヤーは物語を読み進めると同時に、フローチャートを埋めていくゲームプレイを楽しむことができる。あたかも洞窟探検のように、別のルートを発見した際は物語展開の意外性だけでなく、発見と到達の喜びを味わうことができるわけだ。

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』

『YU-NO』が優れていた点はフローチャートの可視化だけではない。『弟切草』はマルチエンドではあるが一方通行でもあった。既存ルートに入った場合は失敗であり、その後の展開は見知ったものになってしまう。『YU-NO』は「いつでも好きな時間に戻れる」時間跳躍の仕組みが搭載されており(しかも跳躍アイテムは有限)、既存ルートに入ったと分かった瞬間に直前の選択肢に戻ったり、分岐が隠れていそうな怪しい時間まで戻ることができた。

『弟切草』の「繰り返しを前提としたゲームプレイ」をゲームの根幹に据え、より楽しめるシステムとして発展させたこと、またその仕組みを世界観と一致させた『YU-NO』は『シェンムー』と同じく偉大なタイトルだ。

繰り返しを利用したゲームたち

『弟切草』や『YU-NO』から発展した、あるいは影響を受けたと思われるタイトルは数多い。有名なところでは『シュタインズ・ゲート』や『Detroit: Become Human』がある。『レイジングループ』や『グノーシア』も同様に「繰り返し」を前提としている。(これらは「ループもの」というジャンルで括ったほうが正確かもしれないが)

『STEINS;GATE RE:BOOT』
『Detroit: Become Human』

その他、『8番出口』や『Undertale』も繰り返しを利用したゲームと捉えることができる。「繰り返し」は世界に対する認識を積み重ねて重層化することができるうえに「何度も似た体験を繰り返す」ことで世界への理解を深めて愛着を湧かせることができる仕組みだ。

『8番出口』
『Undertale』

今回の記事ではゲームと時間の関係について様々な具体例とともに語ってみた。

この他に「ヒットストップ」や「バレットタイム」など、時間をゲームに盛り込んだ事例はまだまだある。ゲームを遊んでいて「面白い」と感じた時、その裏に「上手い時間の使い方」が潜んでいないか気にしてみると、ゲーム開発者の仕込んだ狙いがわかって一層楽しめるだろう。

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ゲームデザイン星人ヌヌヌ
ゲームデザイン星人ヌヌヌ

ゲームという惑星に降り立ってからというもの四六時中ゲームデザインについて考えているナゾの宇宙人。今日も「ヌヌヌ」と何か考えているらしい。

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