日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit PUNCH」が5月22日~24日に、京都市勧業館「みやこめっせ」にて開催された。会場にはDouble Fine Productionsが手がける『Kiln』および『Keeper』が出展されており、本稿では開発者へのインタビューをお届けする。

『Kiln』は、“陶芸”をテーマにしたオンライン対戦ゲームだ。プレイヤーはろくろを回しながら、粘土から好みの形を作り、色や装飾を加えてオリジナルの陶器を作り上げる。その陶器をアーマーとして身にまとい、4対4のバトルに臨むのだ。戦いながら水を集め、お互いの陣地にある窯の炎を消すことが目標となっており、陶器のサイズや形状によって運べる水の容量や体力、技や足の速さなどが変化する仕組みが特徴となっている。

弊誌は「BitSummit PUNCH」の会場にて、そんな本作の開発者へインタビューをおこなう機会に恵まれた。陶芸するだけでなく、作った陶器で戦うというコンセプトはどのように生まれたのか。プロジェクトリードのBrand氏にお話を聞いた。

自分だけの“形”を作って戦わせたかった

――自己紹介をお願いします。

Derek Brand(以下、Brand)氏:
『Kiln』のプロジェクトリードのDerek Brandです。Double Fineには15年ほど在籍しており、元々はコンセプトアーティストとして仕事を始めました。

――Kiln』はPCSteam/Microsoft Store/PS5/Xbox Series X|Sにリリースされ、ゲームパスにも対応しています。手ごたえはいかがですか?

Brand氏:
ゲームパスの感触がすごくいいですね。「ちょっと試してみよう」という人たちがたくさんプレイしてくれるので、このゲームにとっていい影響となっています。

――本作は「陶芸と4対4のPvPアクションという異色の組み合わせですが、どこから発想を得たのでしょうか?

Brand氏:
コンセプトアーティストだったこともあり、自分が作ったキャラクターで戦えるゲームを作りたい気持ちがありました。3D空間でコントローラーを使ってキャラクターを作ることを考えた時に、陶芸がぴったりだと思ったんです。実際に制作チームでも陶芸体験をやってみて、のめり込んでしまいました(笑) そういう経緯もあって陶芸にはとても思い入れがあり、ゲーム内の要素としても重要なものとなっています。

――なるほど、自分で形作ったもので戦いたかったんですね。

Brand氏:
そうです。また、創造と破壊というのも重要なテーマになっています。

――戦うというコンセプトだけなら、1対1のPvPやプログラムされた敵と戦うPvEもできそうですが、『Kiln』はなぜ4対4のチーム対戦になったのでしょうか?

Brand氏:
プロトタイプもいくつか作ってみたのですが、いろんな経験を踏まえて4対4という形式に落ち着きました。友達やほかのプレイヤーが作った陶芸をたくさん見ることができるといった理由が大きいですね。

――2週間でゲームを作る社内イベント「Amnesia Fortnight 2017」で制作された『Kiln』が元になっていると聞きました。その頃からコンセプトはほとんど同じですか?

Brand氏:
水を集めて窯の火を消すというゲーム性はほとんど同じです。思い返してみると、想像以上に変わってなくて私自身驚いてます。ただ、作った形が意味を成すというコンセプトなど細かなシステムは変わってますね。

――精霊が陶器に宿って戦うという設定はどこから生まれましたか?

Brand氏:
Double Fineが手がけて2016年に発売された『Headlander』という作品があります。これは頭がいろんな体を乗っ取ることで、アクションの内容が変化するメトロイドヴァニアです。このゲームがあったので、飛んでいるモノが何かを乗っ取るというアイデアが自然と生まれました。「体は入れ物にする」というコンセプトもあったため、そこから精霊が陶器を乗っ取って戦うというかたちになりました。

陶芸らしさをシンプルに再現

――陶芸未経験でも直感的に作れるうえに、本当に陶芸している感覚があり驚きました。しかも1スティックと1ボタンのシンプル操作で思い通りに形を作れる。陶芸をここまでシンプルなクリエイトツールとして落とし込むまでに、苦労した点はありますか?

Brand氏:
すごくいろんなパターンを試して大変でした。最初は陶芸シミュレーターとも言えるような本格的なツールで、形を作るのがちょっと難しい仕組みだったんです。しかし、作るのが難しすぎると体験として面白くない。陶芸のパワーファンタジーとして、誰でも簡単に作りたいものを作れることを目指したときに、シンプルさを追求して今のかたちになりました。

――焼き入れ前の装飾で、釉薬(色の液体)に陶器を浸した部分だけ色が付くというのも実際に作っている感覚があり面白かったです。

Brand氏:
陶芸スタジオで体験したときに、実際に液体に浸して色を付けていたので、それを再現しています。これももっと難しい手触りにすることはできるのですが、陶芸を再現したうえで難しくなく、何層も色が塗れるようなものにしたかったので、現在のシンプルな仕組みとなっています。

――『Kiln』のペイントはよくあペイントツールと触り心地が大きく異なりますが、実装するのは難しくなかったですか?

Brand氏:
横にして浸すと器の中の半分だけ色が付き、逆さにして浸すと器の中すべてに色が付くなど、内部的な計算やプログラミングは難しい設計になっています。そのあたりは頭のいいプログラマーがやってくれました(笑)

――全24種もの攻撃セットはどのように決まっていったのでしょう?

Brand氏:
基本コンセプトとして「Your Shape Matters」(あなたの形が意味を成す)というものがあります。お皿のように薄くても、花瓶のように細長くても、その形に合わせて動くようになります。そこから、この形ならどういう技を繰り出すのか、形から見出せる技をリードアニメーターのMiyuki(Miyuki Richardson氏)が作ってくれました(笑)

例えば、陶器はサイズによって移動速度が変わりますし、大きい器は粘土の厚みが薄くなるので最大体力が下がります。3段階の大きさと8種の形状によって、パラメーターや通常攻撃や技が変化するようにしています。

――大きな器だと通常攻撃で衝撃波が出たりしますよね。サイズや形の組み合わせもさまざまですが、バランス調整は難しくなかったですか?

Brand氏:
大変でしたが形を活かしたアイデアを重視しています。ただ、いろいろと試した中で、大中小の違いを広げるために、大きいものは衝撃波が出る、中くらいのものはバランスよく、小さいものは素早くという特徴を際立たせています。

――個人的にジャンプ攻撃の使いどころが難しく感じました。おすすめの使い方があれば教えてください。

Brand氏:
ジャンプ攻撃は自分よりも小さい相手をノックバックすることができます。なので、大きい器のときにジャンプ攻撃すれば相手を蹴散らすことができておすすめです。

今年後半には新展開も

――今後のアップデートの予定を教えてください。

Brand氏:
これまでのアップデートで、現在『Kiln』にはマップが6つ収録されていますが、さらに1つのマップが追加される予定です。

――チーム戦以外のゲームモードの追加予定はありますか?

Brand氏:
現在はチーム戦の「Quench(消火)」モードを楽しんでもらうことに注力しているので、しばらくはこのモードのアップデートを続けていく予定です。これ以外のモードについても予定はありますので、今年の後半を楽しみにしていてください。

――本作『Kiln』は賑やかなマルチプレイゲームですよね。その半年前に発売された『Keeper』は言葉のない静かな作品となっていて、言わば真逆のゲームだと思います。お互いに意識することはありましたか?

Brand氏:
ほぼ同時期に開発していたので多少意識する部分はありましたが、スタジオの風土の中で影響を与えあっていたという程度です。お互いに意識して何かが変わったということはなく、やりたいことに真摯に向き合った結果として本作が生まれています。

―― 最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。

Brand氏:
みなさんがどんなものを作るのかを見るのが楽しみなので、作った陶器はたくさんシェアしてほしいですね。プレイヤーごとに異なる陶器になるというのが醍醐味なので、みなさんもほかのプレイヤーの陶器を見て楽しんでもらえればと思います。また、コミュニティが重要なので、本作がどういうゲームになってほしいのか、フィードバックをいただけたら嬉しいです。たくさん楽しんでください。

――ありがとうございました。

『Kiln』は、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されている。

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