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田舎暮らしシム『復興しよう!温泉町』を遊ぶと、“存在しない夏休み”の記憶が増えていく。精米までできるやたら生々しい田舎が体験できる、プレイテストが本日より開催
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HARRISONWORLDは、饼饼 Studioが手がける経営シミュレーション『復興しよう!温泉町』を配信予定だ。本作についてはこのたび、新たなゲーム映像が公開されたほか、インディーゲームイベント「BitSummit」への出展も予定されている。また現在、SteamではPlaytestが期間限定で公開中だ。
今回筆者は、本作のデモ版を先行プレイする機会に恵まれた。そこで味わったのは、日本の田舎町を描く解像度の高さによって、自分の記憶とゲーム内の体験が少しずつ混ざっていくような不思議な感覚だった。実際には経験していないはずの出来事まで、なぜか懐かしく感じる。本稿では、そんな“存在しないはずの思い出”を生み出す本作の田舎描写を、デモ版のプレイ内容とともにお届けしていく。なおデモ版のため、製品版とは一部仕様が異なる可能性がある点には留意されたい。

『復興しよう!温泉町』は、中国の個人デベロッパー饼饼 Studioが手がける経営シミュレーションだ。対応プラットフォームはPC(Steam)。ゲーム内は日本語表示に対応しており、日本語吹き替えにも対応予定。本作の舞台となるのは、山あいにひっそりとたたずむ町「温泉町」。主人公は転勤する母に付き添ってこの町を訪れ、通信基地局づくりを手伝うことになる。インターネットもつながらないこの土地で、人々との出会いや豊かな自然に触れながら、少しだけ不思議なひと夏を過ごしていくのだ。
デモ版のプレイに入る前に、ひとつ前提を置いておきたい。筆者はそこそこの田舎出身者である。市の総人口は10万人に届かず、夜になれば人の声よりもカエルの鳴き声のほうがよく聞こえる土地で生まれ育った。とはいえ、少し車を走らせればチェーンの飲食店も大型スーパーもゲームセンターもある。インターネットも問題なくつながる。今回プレイする『復興しよう!温泉町』に登場するような、山あいの深い田舎町とはかなり違う環境だ。そのため、プレイ前はいくら田舎が舞台といえど、「自分の田舎を思い出すような体験」にはならないだろうと思っていた。

そうしてプレイを開始すると、田舎の家らしく扉が開け放たれた、古い日本家屋の前にひとりの女性がたたずんでいた。ピンク髪の彼女が、どうやら本作の主人公らしい。ドットで描かれたキャラクターモデルはなんともかわいらしく、開始早々こちらの心をほぐしてくれる。
操作はWASDで移動、SPACEでジャンプ、SHIFTでダッシュといった馴染み深いもの。すぐに慣れたところで、右クリックでカメラを動かしてみると、思わず息をのんだ。眼前に広がっていたのは、どこまでも続く青い海と広い空、点在する淡い色の家屋、そして自然が作り出す一面の緑だった。シャッターの下りた家屋や屋根瓦、民家の窓にかかったすだれも見え、記号として整えられた田舎ではなく、人々の暮らしが息づく町として描かれている。本作は、いわゆるAAAタイトルのように写実的な美麗グラフィックで描かれているわけではない。それでも視界が開けた瞬間、たしかにこの世界へ引き込まれる感覚があった。もちろんここは筆者の地元ではないが、それでもなぜか地元に帰ってきたような錯覚が生まれたのだ。

我に返ってキャラクターを動かすと、この町の町長が話しかけてきた。なお本作の会話は一部ボイス付きとなっており、デモ版の時点では中国語ボイスが収録されているが、ストアページによると、今後は日本語吹き替えにも対応予定とのこと。また本作は日本を舞台にしていることもあり、作中に登場する看板や貼り紙の大半は日本語で書かれている。加えて家屋や道路、小さな屋根付きのバス乗り場、道ばたで存在感を放つスズムシ。そうした田舎でよく見る要素が積み重なることで、いわゆる“なんちゃって日本”ではなく、日本のどこかに実在しそうな田舎町が見えてくるのだ。

その後、町長や友人の田中、歩美との会話を通じて、主人公の名前が「杏子」であることが分かった。今日は神社で夜市が開かれ、花火も上がる大事な日らしい。その準備のため、杏子はいくつかの手伝いを頼まれることになる。いきなりやることは多いが、特に時間制限があるわけではなさそうだ。せっかくなので、ゆっくり散歩しながら町を回ろうと思っていたが、どうやらバスでも移動できるという。小さなバス停で待っていると、やがてバスとともに、金髪の長いリーゼントを窓からなびかせた運転手が現れた。杏子に「YOUNG LADY~」と声をかける姿には不安もよぎるが、バス自体のかわいらしい色使いと丸みのある形に心をほだされ、バスで目的地へ向かうことにした。

移動先も、これまたのどかな場所だった。ここではサブクエストとして、まず釣りを体験できた。操作はかなりシンプルで、釣り竿を投げ、魚がヒットしたら、タイミングの合うポイントでFキーを押せば釣り上げられる。いきなり友人の田中に釣り勝負を挑まれたものの、操作が簡単なこともあり難なく勝利。悔しがる田中をしり目に、周囲を散策してみることにした。
道端にはトンボやテントウムシがおり、虫網で捕まえることができる。こちらも操作は簡単だが、ドット絵で描かれた虫たちはかわいさとリアリティのちょうど中間のような愛らしさがある。虫取り網を振っていると、幼少期に父親と近くの山へ行き、カブトムシやクワガタを探した記憶がふとよみがえった。見つかるのはカブトムシのメスやカナブンばかりだったが、当時はそれだけで楽しかった気がする。なぜ今まで忘れていたのか分からないが、次に実家へ帰ったら昔の話をしてみようと思った。このゲームを遊んでいると、不思議と昔の思い出がよみがえってくる。

続いて小さな畑へ向かうと、歩美とおばあちゃんがいた。ここでは野菜の収穫ができるほか、収穫した野菜はおばあちゃんが買い取ってくれるという。野菜の苗などのアイテムも購入できるようだ。釣った魚や収穫した野菜を売ればお金を獲得でき、道中にあった自動販売機などで買い物もできる。
釣り、虫捕り、野菜の収穫。ここまでは、田舎暮らしを描くゲームとしては王道の遊びといえるだろう。しかし本作は、そこからさらに一歩踏み込んでいた。町を象徴するようにそびえる風車小屋に入ると、稲を精米したり、米ぬかに変えたりできるのである。釣った魚を売る、野菜を収穫する、虫を捕まえる。そこまでは想像できても、まさか精米まで用意されているとは思わなかった。田舎暮らしを題材としたゲームは数あれど、米ぬかづくりに触れている作品はそう多くないだろう。ほかのどこでもなく、日本の田舎が舞台なのだと感じられた要素だった。
今回のデモ版では、精米した米や米ぬかをどう使うのかまでは明らかにされなかった。ただ、田舎暮らしを“おだやかなスローライフ”だけで済ませず、そこでおこなわれる作業の細部まで拾おうとする気概は強く感じられた。細かな手触りが再現されているからこそ本当は経験していない記憶まで、昔あったことのように感じるのかもしれない。そうして町のあちこちで生活の営みに触れているうちに、夜市で使う花火の準備も進んでいく。町長にも声をかけていると、やがて日が暮れていった。

そして、ついに夜市が始まった。神社へ向かうと境内にはさまざまな出店が並んでいる。ただし、規模は大きすぎない。派手な祭りというより、町の人たちが集まって開く夏祭りといった趣だ。筆者の幼少期に地元で開かれていた祭りも、ちょうどこのくらいの規模だったことを思い出し、じんわりと懐かしさが広がっていく。
しかも、屋台まわりのこだわりがとにかく強い。金魚すくいの屋台には「すくえなくても1ひきあげるよ」といった手書きの張り紙があり、射的の屋台には「高価な景品は後日の発送になる場合があります」といった注意書きまで貼られている。華やかな祭りの記号として屋台が置かれているのではなく、地元の人が実際に運営していそうな生活感が描かれているのだ。
夜市では、出店で遊ぶことでポイントを獲得できるようだ。集めたポイントは、抽選に使えるという。となれば、まず挑みたいのは射的のミニゲームである。射的の棚には、大小さまざまな景品が並んでいた。ラインナップも実にノスタルジックで、どこかで見たことのある駄菓子群をはじめ、エアガンや携帯型ゲーム機らしき景品まで置かれている。子供のころ、ついエアガンやゲーム機を狙うものの、どう考えても落ちず、結局しょんぼりしながら駄菓子をもらったことを思い出す。

これは当時の記憶を塗り替えるチャンスかもしれない。そう思い、さっそく挑戦してみることにした。本作の射的では弾が7発用意されており、しかも最後の一発は強力な弾になっている。くわえて、景品にヒットするだけでも得点が入るという温情設計である。結果として、大物を含めて複数の景品に弾を当て、ポイントを稼ぐことができた。とはいえ、最初は練習のようなもの。もう一度やろうとしたところ、初回だけ無料で2回目からは1000円かかるらしい。ここで熱くなると夜市より先に財布の中身が終わってしまいそうだったため、今回は見逃しておいてやることにした。

石段を登ると、食べ物系の屋台がいくつも並んでいた。かき氷、たこ焼き、お好み焼き、わたがし。思わず「これだよこれ!」と言いたくなる、夏祭りの定番がそろっている。最近は地元の祭りでもおしゃれな屋台を見かけることが増えたが、筆者が子供のころはこうしたラインナップが常連だった。さっそくかき氷を買い、続いてたこ焼きも買おうと屋台を覗いてみる。すると、どうやら店員さんが出払っているらしい。しかも店先には「誰か代わりに屋台をやってくれませんか?」という、なかなか思い切りのいい張り紙があるではないか。地元の祭りらしいゆるさ、と言えばいいのだろうか。店番不在のたこ焼き屋台を、通りすがりのお客に任せようとしているわけだ。とはいえ、たこ焼きなら、筆者はたこ焼き機で何度か焼いたことがある。これも人助けである。売上の50%が報酬としてもらえるからではなく、あくまで人助けとして屋台に立つことにした。

このたこ焼き作りのミニゲームが、思いのほか本格的だった。工程はかなり細かく用意されており、鉄板に油を敷くところから始まる。その後、生地を流し込み、タコを入れ、さらに生地をくわえる。焼き上がりを見ながらひっくり返していく必要もあり、やることはなかなか多い。しかも、これをお客さんが待っている状態でこなすことになるのだから大変だ。とはいえ、ヒントのとおり開店前に作り置きしておくことで、なんとか客をさばくことができた。屋台の裏側に入り、祭りを楽しむ側ではなく運営する側に回る。この小さな立場の変化も、町の一員になっていく感覚につながっているのだろう。報酬を受け取りホクホクしていると、今度は友人の田中から呼び出される。

田中は定食屋で働いているらしい。しかし、町長が花火の準備中に店の電気系統を壊してしまい、このままでは出前ができないという。そこで杏子の一声により、出前ではなく客を店に招く形式に変更。杏子と田中で、店を切り盛りすることになった。ここでもミニゲームが始まる。客が注文した料理に合わせて、冷蔵庫から具材を選び、田中に調理を任せる。料理が完成したら、客席まで運ぶという配膳ゲームだ。デモ版で確認できたメニューは「トマト煮込み豆腐」と「焼き魚海苔丼」の二品のみ。どちらも食べたことはないが、トマトや魚がこの町の名産なのだろうか?字面だけで食欲をそそられ、実際に足を運んでみたくなる。
手伝いのお駄賃を受け取ったところで、一日が終了。自宅に戻ると、田中や歩美たちから明日も遊ぼうと声をかけられる。そういえば子供のころは、わざわざ予定をきっちり決めなくても、「明日どこ行く」「明後日はなにする」といった話を友達としていた気がする。ただ、杏子には友達に言えていないことがあるようだ。最後に「結局、最後まで言えなかった……。」という寂しげで謎めいた一言を残し、デモ版の体験は終了した。

以上が、『復興しよう!温泉町』のデモ版をプレイした記録である。本作を遊んで印象的だったのは、日本の田舎町を描く“解像度の高さ”だ。青い海や広い空、野山に囲まれた家屋といった分かりやすい風景だけでなく、シャッターの下りたくたびれた建物、昔ながらの屋根瓦、小さな屋根付きのバス停、民家のすだれまで、生活の端々にあるものが細かく拾われている。
くわえて、釣りや虫捕り、野菜の収穫といった王道の遊びに加え、精米や米ぬかづくり、夜市の手伝い、定食屋の配膳まで体験できる。田舎を“自然が豊かな場所”として見せるだけでなく、そこで人が暮らし、働き、支えあっている部分まで遊びとして落とし込まれているのだ。だからこそ温泉町は、どこかにありそうな田舎町として立ち上がってくるのだろう。
その結果として、本作を遊んでいると「在りし日の思い出」と「存在しないはずの思い出」が混ざっていく。夏祭りの縁日や野山に囲まれた家屋、耳に入ってくる鳥の声などは、筆者が地元で過ごした記憶と重なる部分がある。一方で、友人と釣りをしたり、野菜を収穫したり、厨房を切り盛りした記憶は筆者には存在しない。冒頭で述べたように筆者の生まれ育った町ともかなり様相は異なる。あくまでゲーム内で体験した出来事のはずだ。それでも、暮らしの細部が丁寧に描かれているからこそ、それらが本当にあったことのように感じられる。
もちろん、デモ版で体験できたのは本作の一部にすぎない。ゲーム説明によると、本作では町長としてもプレイすることができ、町長と杏子どちらで一日をすごすかを選んで遊ぶことになるのだという。責任ある大人の町長の視点から見る温泉町は、子どもの杏子から見る町とはまた違った姿を見せることだろう。それでも、デモ版の中でここまで“なかったはずの懐かしさ”を生み出せるのであれば、製品版で温泉町に戻ったとき、どれほど深くこの町に入り込めるのか。そう考えると、今から楽しみでならない。

なお本作は、京都で開催されるインディーゲームイベント「BitSummit」への出展を予定している。あわせて新たなゲーム映像も公開されており、Steamでは期間限定のPlaytestも実施中だ。のどかで少し不思議な夏の思い出に浸りたい方は、この機会にPlaytestへ参加してみてはいかがだろうか。
『復興しよう!温泉町』はPC(Steam)向けに配信予定だ。
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