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『Path of Exile』にはデータマイナーをだます“偽データ”まで仕込んでいた、でも当時のボスいわく「かなり時間の無駄だった」。解析されまくる時代で、秘密を守る苦労
『Path of Exile』を手がけてきたChris Wilson氏は、自身のYouTubeチャンネルにて「データマイニング」に対する見解と対策を紹介している。

ハクスラARPG『Path of Exile』を手がけてきたChris Wilson氏は、自身のYouTubeチャンネルにて「データマイニング」に対する見解と対策を紹介している。そのなかには、“おとり”アセットをデータ内に組み込むなど、ユニークな対応もあったようだ。しかしこの対策には問題もあったとし、一筋縄ではいかないデータマイニングへの対応について伝えている。
『Path of Exile』および『Path of Exile 2』は、Grinding Gear Gamesが手がけるハクスラアクションRPGだ。第1作は2013年にリリースされ、以降シリーズを通して高い人気を誇ってきた作品だ。プレイヤーは秘密と危険が眠る暗黒の大陸レイクラストを舞台に、さまざまな強化要素を活かしてビルドを構築し、強敵との戦いに挑んでいく。

Wilson氏はそんなGrinding Gear GamesでかつてCEOを務めていた人物だ。同氏は自身のYouTubeチャンネルにてゲーム開発にまつわるさまざまな動画を投稿しており、今回は「データマイニング」の現状と対策を語った動画を投稿している。
まず同氏は、ユーザー間でも賛否あるデータマイニングについて、合法かどうかは行為者の地域次第だとしたうえで、仮に規制があったとしても、“秘密”が守られるわけではないと指摘。そのうえで、データマイニングは必ずしもネガティブな側面だけではなく、開発者にとっても有益な点があると述べている。データマイニングによって、プレイヤーはゲームに関する最新情報を大量に入手できるようになる一方、運営側にとっても、必要な情報をすべて発信し続ける手間を減らすことができると説明。特にキャラクタービルドを育成していくタイプのゲームでは、双方にメリットがあるだろうと主張している。
また、未発表のアイデアがユーザーに発見された場合でも、その反応を観察することで、どのコンテンツに関心が集まっているのか秘密裏にテストすることが可能だとしている。もし不評だった場合は、「まだ開発中だった」と説明して改善すればいいと、開発者目線での利点を語った。
一方で、データマイニングにはネガティブな側面も多く存在することをWilson氏は指摘している。最大の問題は、プレイヤーたちの“発見”をデータマイニングが台無しにしてしまうことだと同氏は述べる。開発者が望んでいるのは、ソーシャルメディアでプレイヤーたちの“発見”報告が長く続いていくことであり、パッチ配信からわずか5分後にすべての情報が明らかにされることではないと懸念を表明した。ゲームが用意していたはずのサプライズをデータマイニングがネタバレしてしまうことで、ライブ型サービスならではのワクワク感が失われてしまうことを同氏は危惧している。
データマイニングへの対策いろいろ
こうしたデータマイニングの弊害に対処するため、Wilson氏はいくつかの対策を挙げている。クライアント側でゲームを実行する以上、被害を完全に阻止するのは非常に困難だとしたうえで、被害を最小限に抑える方法はいくつかあると語った。

まず同氏は、製品版のビルドには将来のコンテンツを含めないのが理想的だと説明。未公開の作業データはバージョン管理システムで切り離しておき、そのアップデートで必要なデータだけをマージすべきだとしている。さらに、こうした作業を自動化できれば、データの混入リスクをいっそう減らせるだろうと述べている。
一方で、こうした方法では「アップデートには含まれるが、データマイニングではなくプレイヤーに自然な形で見つけてもらいたい要素」には対応することができない。そうしたデータについては、ファイル名やディレクトリの場所を難読化したり、ミスリードさせたりすることで対応する開発者もいるそうだが、データそのものが存在している以上、プレイヤーはすぐに見つけ出してしまうだろうと同氏は指摘する。
そこでWilson氏が実際におこなっていた対策として、“おとり”アセットを用意する方法があるそうだ。本物のデータと一緒にダミーの追加データを配信パッチに紛れ込ませることで、データマイナーはどれが本物か判断できなくなる。からかい(trolling)としては非常に有用だったと同氏は振り返りながらも、“おとり”データの作成に費やした時間については、かなり無駄な作業だったと述べている。
ちなみに、NetEase Gamesが手がける『マーベル・ライバルズ』においては、開発チームがデータマイニングを見越して、偽の情報を仕込んでいるのではないかといった疑惑が一部ユーザーの中で広がっていた。しかし、開発者らは単に制作過程のデータがコード上に残ってしまっているだけとし、「そんなことに時間を費やすよりは実際のゲーム開発に時間を使いたい」とコメントしていた(関連記事)。このようにデータマイナー対策としてデータ内に“おとり”があるのではないかと噂されるゲームはほかにもあったが、データマイニング対策として意図的におこなうとなると、やはり手間のかかる作業のようだ。

こうしたことから、Wilson氏は対策としてデータの暗号化を推奨している。Steamにおけるゲーム配信の仕組みのように、まず暗号化されたデータを配布し、後日に復号キーを配布すれば、リリース日までデータマイニングを完全に阻止することができると語った。この方法ではデータマイニングを公開日まで遅らせる効果しかないものの、この技術をさらに発展させれば、プレイヤーが実際にそのコンテンツに触れる瞬間までデータを隠し続けることが可能になるはずだと語る。
具体的には、秘匿したいコンテンツにプレイヤーが初めて遭遇したタイミングで、それを解読する復号キーをクライアントに送信することで、スムーズに暗号化されたデータを表示させることができるという。この方法はオンラインゲームでしか実装できないものの、プレイヤーによる「自然な形での発見」を守ることができる。同様の効果はゲームデータを必要なタイミングでサーバーからダウンロードする方式でも得られるが、 その都度データを取得する分、表示に遅延が発生する懸念がある。一方、復号キーだけを送ってローカルの暗号データを解読させる方式なら、データそのものを都度ダウンロードする必要はなくなるわけだ。もっとも同氏は、この手法を実際に採用しているゲームはまだ見たことがないとも語っており、現時点ではあくまで理論上の構想にとどまっているようだ。
またWilson氏は、こうした技術的なアプローチ以外にも、ゲーム会社とコミュニティとの関係を良好にすることで、データマイニングをめぐる対立を和らげることができる可能性もあるとしている。運営側がゲームの仕様やパッチノートの変更内容を正確に公開していれば、プレイヤー側がわざわざデータを解析する必要はなくなると指摘し、ネタバレを避けたいプレイヤーに対しては、コミュニティ掲示板などでネタバレ表記を推奨することで対応できるだろうと述べている。

同氏は、開発者にとって重要なのは、プレイヤーがファイルの中身を見ることができるかどうかではなく、「中身を見たときに何を見つけるか」という点にあると総括している。それは本当に秘密にする必要がある情報なのか、どれほどの期間隠しておくべきなのか、そしてそのサプライズは守る労力に見合った価値が本当にあるのか、それを見極める判断力が開発者には求められるのだと語った。
開発者の意図していない情報も公開してしまうデータマイニングについては、リーク者をBAN処分にするなど厳しい対応を取る運営も珍しくない。近頃はデータマイナーを煽るようなコードを意図して挿入するなど、開発側もデータマイニングされることを前提とした行動を取るケースも見られる(関連記事1、関連記事2)。一方で、今回のWilson氏の動画では、データマイニングによるメリットに触れつつ、データマイニングをおこなう人々のユーザー心理にも踏み込んで対応策を提案している点が興味深い。
データマイニングをめぐってはWilson氏がいう通り、法的な扱いが地域によって異なるうえ、ネタバレや著作物の再配布といった倫理的な問題も絡む。技術的な対策だけではなく、こうしたルールやコミュニティ上の線引きをどう定めていくかも課題となりそうだ。
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