『ディビジョン』シリーズ新作『ディビジョン ハートランド』開発中止。基本プレイ無料PvEvP脱出サバイバルを目指すも、延期を経て頓挫


Ubisoftは日本時間5月16日、2023年および第4四半期の決算報告をおこなった。決算報告の中では、以前より開発中とされていた『The Division(ディビジョン)』シリーズ新作である、『The Division Heartland(ディビジョン ハートランド)』の開発中止が発表された。

『The Division(ディビジョン)』は、Ubisoft傘下のMassive Entertainmentが手がけるマルチプレイオンラインRPGシリーズ。2016年発売の第1作目は、パンデミックによって荒廃したオープンワールドのニューヨークを舞台に、プレイヤーは自律部隊ディビジョンのエージェントとして、地域の秩序を取り戻すため戦った。そして2019年発売の続編『The Division 2(ディビジョン2)』では舞台をワシントンD.C.に移し、さまざまな敵勢力の脅威に立ち向かう。


そして2021年に発表され、『The Division』シリーズの新作として展開される予定だったのが『The Division Heartland』だ。開発を担当していたのは、Ubisoft傘下のRed Storm Entertainment。同スタジオは『レインボーシックス』『ファークライ』といったシリーズ作品を手がけたり、『ディビジョン2』にて開発サポートをおこなったりしていた。

『The Division Heartland』は基本プレイ無料のPvEvPサバイバルアクションシューターとして2021年5月に発表。探索を経て装備や物資を持ち帰る、脱出要素も用意される見込みであった。もともと2022年までにリリースが予定されていたものの、延期となっていた。そんな同作が今回Ubisoftの決算報告にて開発中止となることが明かされたかたちだ。

Ubisoftは日本時間5月16日に決算報告を実施。そのなかでは、投資の選択性を高めるために、リソースを再分配しているとした。その結果『The Division Heartland』の開発中止に繋がったようだ。なお同作の開発リソースは、『XDefiant(エックスディファイアント)』や『レインボーシックス』シリーズなどのタイトルに分配されるようだ。

なおUbisoftは、コスト削減計画が軌道に乗っていると強調。事業の合理化と進化していく市場トレンドへの適応のための取り組みの一環で、パブリッシングチームを中心とした組織再編をおこなっているとしている。こうした再編を経て、2024年3月末では従業員総数は1万9011人となり、約1年半で1700人以上の従業員を削減したという。開発中止や組織再編といったコストカットにより、前年同期比でおよそ1億5000万ユーロ(約252億円)のコストが削減できた、と発表している。


なお『The Division』シリーズとしては2023年9月に『The Division 3(ディビジョン3)』の開発が始動したことが、正式に発表されていた。また2024年内にはモバイル向けにマルチプレイヤーTPS『The Division Resurgence(ディビジョン リサージェンス)』がリリースされる予定となっている。そうした別のシリーズ展開もあり、『The Division Heartland』は開発中止に至ったのだろう。

今回のUbisoftの発表のように、業界では新作タイトルの開発が中止され、人気シリーズのさらなる展開や、目玉となるタイトルへの“選択と集中”がおこわれるケースもみられる状況だ。たとえばElectronic Artsでは、2月28日に約670人規模のレイオフを発表し、「スター・ウォーズ」新作FPSの開発を中止することを発表していた(関連記事)。ほかにもTake-Two Interactiveは組織構造の合理化や既存の経費のベースを削減するためなどとして、複数プロジェクトを約200億円かけて中止したとの発表もあった(関連記事)。多くのゲーム会社で事業の合理化が進められており、より高い採算性を見込めるゲームに注力されている傾向もあるようだ。