『バイオハザード コード:ベロニカ』の非公式リメイクが、カプコンからの要請を受けて開発中止になったとの報告

『バイオハザード コード:ベロニカ ~完全版~』

バイオハザード コード:ベロニカ』の非公式リメイクを手がけていた開発者グループは12月25日、カプコンからの要請を受けてプロジェクトを中止したと発表した。同グループは、リメイク版『バイオハザード』の非公式リメイクも同時に手がけていたが、こちらも中止したとのこと。

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『バイオハザード コード:ベロニカ』は、カプコンが開発し2000年に発売されたサバイバルホラーゲーム。ラクーンシティ消滅から3か月後の世界を舞台に、『バイオハザード2』にも登場したクレア・レッドフィールドが、行方不明の兄クリスを探すためアンブレラのパリ研究所ビルに潜入。しかし彼女は拘束され、絶海の孤島ロック・フォート島に収監されてしまう。本作は、追加シーンなどが導入された完全版ものちに発売されている。

今回開発中止となった同作の非公式リメイク作品は、アルゼンチン在住の3人の開発者によって手がけられていた。Unityを用いてリメイクし、現代的なビジュアルにアップグレード。また、新たな移動アニメーションや、ゾンビの噛みつきアクション、『バイオハザード RE:3』風の緊急回避アクションなどを追加する計画もあったという。そして、3章に分けての無料リリースを目指して、まずは今年12月に早期アクセスとして3〜4時間分のボリュームのビルドが公開される予定となっていた。しかしその前に、カプコンから開発中止要請が届いたようだ。

開発者のひとりであるBriins Croft氏の説明によると、カプコンの2つの部署からメールで連絡を受けたとのこと。最初に連絡があった部署からは、非公式リメイクで使用している3Dモデルやアニメーションの出自について質問され、非常に柔らかい物腰だったという。そして何度かやり取りをしたあと、カプコン側から開発を中止するように求められたそうだ。その後同社の別の部署からも連絡があり、米国の法律について淡々と説明され、改めて開発中止を要求されたとのこと。これを受けて、非公式リメイクプロジェクトの中止が決定され、公に発表された。

非公式リメイク版『バイオハザード コード:ベロニカ』のスクリーンショット


非公式リメイクプロジェクトの中止を受けて、ファンからは惜しむ声も聞かれる。というのも、『バイオハザード』シリーズの初期作品は近年いくつかリメイク・リマスターされてきたが、『バイオハザード コード:ベロニカ』にはそうした機会がここのところなかった。そのため非公式とはいえ、同プロジェクトに期待を寄せていたファンが多かったようだ。

一方で、開発中止という結果となったことに驚きはないとする意見も多くみられる。その理由のひとつに挙げられているのは、開発チームがファンからの寄付を受け付けていたこと。他社のコンテンツを勝手に利用して利益を得ていたかたちとなり、権利者であるカプコンが見過ごすはずがないという見方だ。

また非公式リメイク版が、カプコンの公式リメイク作品のアセットを流用していたことが問題視されたのだろう、という意見もある。前出のCroft氏の説明の中では、カプコンは同社が制作したモデルおよびアニメーションを非公式リメイクに使用することはできないと伝えてきたと述べられている。また、同氏は今後のプロジェクトではカプコンが権利をもつアセットは使わないと強調した。つまり、アセット流用があったのは事実のようだ。加えて、同社の登録商標である「Resident Evil(バイオハザードの英題)」をプロジェクト名に使用していたことについても、同社が不利益を被ることに繋がり問題であるとの指摘があったとのこと。

仮に寄付を受け付けず、完全無料で作品を配布する計画だったとしても、こうした権利侵害のうえで制作されたとなれば、遅かれ早かれプロジェクトは中止されることになっただろう。そもそも、『バイオハザード』シリーズの知財権がカプコンに帰属する以上は、プロジェクトの存続は同社の判断次第だ。現在は削除された同プロジェクトの公式サイトでも、カプコンからの要請があれば即座に開発中止すると記載されていたため、スタッフらも覚悟のうえであったようだ。

*非公式リメイク版『バイオハザード コード:ベロニカ』のゲームプレイ映像

『バイオハザード コード:ベロニカ』および『バイオハザード』の非公式リメイクプロジェクトは中止となったが、ファンはすでに同プロジェクトの開発者らの今後に注目している模様である。というのも、『バイオハザード』シリーズとその非公式リメイクには、開発停止後に展開を見せたある前例があるためだ。

イタリアのデベロッパーInvader Studiosはかつて、『バイオハザード2』の非公式リメイク作品『Resident Evil 2 Reborn』を手がけるも、カプコンの要請により開発中止。その後、開発を通じて得た技術をもとにしたオリジナル作品『Daymare: 1998』をリリースした。同作は、『バイオハザード2』の影響を取り入れながら、独自の要素も導入された作品。当時、同スタジオのスタッフがカプコンの大阪本社に招待され、手厚いもてなしを受けたことも話題となった(関連記事)。

このケースと同じように、今回の非公式リメイクプロジェクトのスタッフらが、『バイオハザード コード:ベロニカ』風のオリジナル作品の開発へと舵を切ることをファンは期待しているわけだ。なお前出のCroft氏は、非公式リメイク開発で学んだことを活かして自分たち自身のゲームを制作すべく、すでに始動していると語る。ただ、それが『バイオハザード コード:ベロニカ』の影響を受けた内容になるのかどうかについては明かされていない。

また、非公式リメイクプロジェクトに対し中止要請を出したということは、カプコン自らが『バイオハザード コード:ベロニカ』のリメイク版を手がける計画があるためではないかと期待するファンもみられる。ちなみに、カプコンのプロデューサー平林良章氏は今年10月、同作のリメイク版開発については特に計画はないとし、機会があれば開発するかもしれないとだけ述べている(Noisy Pixel)。

なお『バイオハザード』シリーズにおいては、オンライン専用ゲーム『バイオハザード RE:バース』が現在運営中。そして、平林氏が手がける『バイオハザード4』のリメイク版『バイオハザード RE:4』が、2023年3月24日に発売予定となっている。