『バイオハザード RE:4』の「黄色のペンキ誘導いる・いらない」議論が白熱しすぎてネットミーム化。その黄色のハシゴは過剰か適切か

 
Image Credit: feydemon on X

バイオハザード RE:4』では、プレイヤーがインタラクトできる一部オブジェクトが分かりやすいように黄色いペイントが施されている。この点についてわかりやすいというユーザーと雰囲気にそぐわないといった不満を述べるユーザーに割れ、議論を巻き起こしているようだ。この議論は本作の登場以来続けられてきた様子で、ネットミームとして認識されるほどの広がりを見せている。


『バイオハザード RE:4』は、2005年に発売されたサバイバルホラーゲーム『バイオハザード4』を原作としたリメイク作品だ。オリジナル版での方向性を活かしつつ、ストーリーを再構成。ゲームプレイにおいては、ナイフでのパリィといった新アクションなど、新たな要素も複数追加されている。グラフィックもRE ENGINEにより最新のビジュアルで再構築されており、キャラのモデルも一新された。また本作に向けては9月21日、オリジナル版の「the another order」モードをリメイクしたDLC「セパレート ウェイズ」が発売された。

本編・DLCにおけるさまざまな変更点が注目されるなか、作中オブジェクトの「黄色いペイント」がユーザーや開発者を巻き込んで議論を呼び起こしている。ネットミームと認識されるほどの広がりを見せているようで、Know Your Memeでは「Yellow Paint Game Design Debate」として紹介されている。なお直近での大きな議論の発端となったのはXユーザーのfeydemon氏の10月2日の投稿だ。同氏は「セパレート ウェイズ」内のある梯子を画像と共に紹介。「梯子を登ったり箱を壊したりできることは自明であり、黄色いペイントは必要ない」との持論を述べている。

Image Credit: Know Your Meme

『バイオハザード RE:4』では村の各地に黄色く塗りたくられた木箱や樽が登場。攻撃すると壊すことが可能で、中からアイテムを入手できる可能性がある。また上記の画像のように一部の梯子や窓などについても黄色いペイントが施されている。これらに黄色いペイントが施されている舞台設定上の理由は特にないと見られ、単純にプレイヤーが進むべき道やアイテムを見つけやすくするためのゲームデザイン上の工夫といえるだろう。

しかし先述のfeydemon氏に限らず、『バイオハザード RE:4』のデモ版配信時点から一部ユーザーは「黄色いペイント不要論」を唱えていた。明るい黄色の物体が本作の暗い雰囲気のステージにそぐわない点などが理由として挙げられた。そうしたユーザーによる需要からか、PC版では黄色いペイントを削除する非公式Modまで登場している。開発者からプレイヤーへの思いやりと見られる黄色いペイントながら、一部ユーザーからは拒絶されているわけだ。


一方、「黄色いペイント不要論」に対しては、開発者目線で反論を述べるユーザーも存在。さらに黄色いペイントへの否定的な反応を見た(本作とは別の)ゲーム開発者が、ゲームデザインの難しさを説明する様子も見られる。たとえば人気FPS『DUSK』などを手がける開発者David Szymanski氏は、黄色いペイントのようなデザインが採用される背景にはさまざまな原因があり、良し悪しでは論じることのできない複雑な問題だとしている。

David氏は、ステージがより詳細でリアルになったり、複雑なオブジェクトが増えたりすると、プレイヤーをさりげなく誘導することが困難になると説明。そうした状況下で開発者たちは、基本的にプレイヤーが攻略に詰まらないように、より慎重な方法をとるとの見解を述べている。つまりできるだけ多くのプレイヤーがゲームをスムーズに進められるように、さりげなさよりも目立つことを優先した施策がとられているのだろう。


そのほかにもさまざまな開発者が「黄色いペイント不要論」を引き金にプレイヤーを誘導する難しさを吐露している。過去にプレイテストを実施した際の経験からプレイヤーがどこで手詰まりするか、またどんな問題を引き起こすかは予測不可能といった見解を明かす開発者も存在。一部プレイヤーから目立ちすぎる誘導が批判される傍ら、控えめな誘導では役に立たない可能性もある点は開発者にとってジレンマとなっている様子だ。中には議論の“解決策”として、ヤケクソじみた量の誘導を盛り込んだジョーク画像を作る開発者も見られる。

*過剰な説明をするジョーク画像。『エルデンリング』のゴテゴテUI画像ミーム(関連記事)を彷彿とさせる

人気作『バイオハザード RE:4』をトピックにさまざまなプレイヤー・開発者からの意見が投じられたことからか、議論は大きな広がりを見せることに。先述のとおりネットミームとして認識されるほどバイラル化するに至った。「プレイヤーが明確な誘導に気づかない」といったケースで引き合いに出される話題となった様子だ。

*『Marvel’s Spider-Man 2』のプレイ時に画面上の丁寧な説明にまったく気付かないストリーマーを紹介するクリップ

ちなみにオリジナル版『バイオハザード4』においては、樽や木箱、梯子などに黄色いペイントは施されていなかった。オリジナル版においてはプレイヤーが干渉できる動的なオブジェクトと、背景として配置された静的なオブジェクトの見分けが比較的容易であった。ライティングの違いなどでインタラクトできることが分かりやすく、黄色いペイントのような工夫も不要と判断されていたのかもしれない。

対して『バイオハザード RE:4』ではRE ENGINEでリメイクされたことにより、各ステージはより高精細なグラフィックで再構築されている。あまりに精巧であるがゆえに細かな違いだけではインタラクト可能なオブジェクトが分かりにくいといった判断から、各所に黄色いペイントが施されたのかもしれない。あるいは、現代的な遊びやすさからの配慮で塗られた可能性もある。いずれにせよ、プレイヤーへの誘導もしくは配慮を意図しているだろう。

『バイオハザード RE:4』に限らず、各作品の開発者側はあらゆるプレイヤーを想定して、テストプレイを重ねながら最後まで遊んでもらうための工夫を取り入れている(関連記事)。一方では、誘導がくどいといった不満を述べるプレイヤーも一部見られる。今回バイラル化した「黄色いペイント不要論」はゲーム開発者とプレイヤーの双方から共感、あるいは意見を呼ぶトピックになったと見られ、非常に興味深い。