『マインクラフト』の「NFT禁止」発表が波紋呼ぶ。Epic Games CEOは無干渉を表明するなど、出揃い始める各社の対NFT方針


Epic GamesのCEO・Tim Sweeney氏は7月22日、NFTなどを盛り込んだゲームを許容する姿勢をTwitter上で示した。その発端となったのは、先日『マインクラフト』開発元が伝えた「NFT禁止」の方針だ。


NFT(Non Fungible Token・非代替性トークン)とは、改竄や複製が不可能なデジタル証明書(トークン)の作成や取引を、ブロックチェーン技術を活用しておこなうもの。NFTに画像など鑑賞可能なデータを紐づけた「NFTアート」や、ゲーム内のアイテムに対してデジタル証明書を紐づけることも可能。ゲーム企業によるNFT分野への展開も最近ではしばしば見られ、最近ではコナミデジタルエンタテイメントがNFTアートの販売に乗り出していた(関連記事)。

一方で、その投機的性質からNFTを利用する悪質な事業者も出現。権利者に無断で、あるいは十分な説明がないまま著作物が「NFT化」されるケースや、詐欺行為が疑われるケースも複数発生している。例として、先月には海外NFT業者が「キャプテン翼」のNFTアートを発表するも、作者の高橋陽一氏らが「無許可・違法である」としてファンに注意喚起を促した一幕もあった(関連記事)。NFT自体は単なる技術である一方、騒動の種になることもしばしば。そのため、一般的に「NFTは怪しい」といったイメージが定着しつつあるのが現状だ。

なお、上述の海外NFT業者については、別の事業者に無効な「キャプテン翼」の権利を与えられた、いわば“被害者”であったことが発覚。権利元である株式会社TSUBASA代表の岩本氏が、改めて正式な権利交渉中であることを伝えている

そうしたNFTについて7月20日、『マインクラフト』開発元であるMojangがとある声明を出した。ずばり「『マインクラフト』とNFTの統合を認めない」とする内容だ。こちらの声明のなかでMojangは、『マインクラフト』におけるコンテンツは、コミュニティの誰でもアクセス可能である必要があるとコメント。NFTに紐付くことで限られた人しかアクセスできないようなコンテンツ実装について「ガイドラインおよび『マインクラフト』の精神に反する」とし、同作内コンテンツとNFTの紐づけを広く禁ずる旨を告知している。

『マインクラフト』関連では、今年はじめに同作の非公式NFTプロジェクト「Blockverse」が多額詐欺の疑いをかけられた騒動があった。当時のレートで約1億5000万円相当の売上直後に、公式サイトなどが消失したのだ。Mojangの声明の背景には、こうした行為への抑止などの狙いもあるのだろう(関連記事)。

上述のMojangによる声明は、SNS上でも話題となった。Twitterにてこのトピックに言及したとあるユーザーが、Epic Gamesおよび同社CEO・Tim Sweeney氏に対してリプライ。NFTに対する見解を聞くとともに、「NFTを盛り込んだようなゲームを、Epic Gamesストアから締め出してほしい」との旨を伝えている。そして、Epic GamesのCEOであるTim Sweeney氏が反応したのである。

Sweeney氏は質問に対し、「開発者らはどのようにゲームを作るのか、自由な決定権をもつべき」とコメント。また、ユーザーも遊ぶ作品を自由に選ぶ権利があるとしている。そして「ストアやOSメーカーなどはその見解を他者に押し付けるべきではない」とも口にしている。つまり、プラットフォーム側が、NFTの実装や利用を禁ずる措置を取るべきではないとの見解だ。これはあくまでもSweeney氏個人としての意見ではあるものの、Epic Gamesストアなどの方針にも色濃く反映されると考えてよいだろう。

Sweeney氏の返答は、ユーザーの「ストアからNFTゲームを締め出してほしい」との意見に対するものであり、Mojangの措置に直接言及したわけではない。また、プラットフォームであるEpic Gamesストアと、基本は単一のゲームである『マインクラフト』では、NFTへの対応も違ってくるだろう。しかし、ゲーム企業大手のNFTに対する方針が立て続けに表明されたのは興味深い点だ。また、コミュニティの関心事でもあるNFTをどう扱うかを、はっきりさせるべき時流も訪れているのだろう。

また、Steamについては公式に「暗号通貨またはNFTの発行や交換を許可するブロックチェーン技術に基づいて構築されたアプリケーション」のSteam上での公開を禁じている。Epic GamesストアとSteamで、NFTに対する態度は対照的といえる。とはいえ、NFTやブロックチェーン自体は単なる技術であり、今後どう発展していくかは未知数。各社はどのようにその可能性とリスクを見極め、どのような態度を取っていくのだろうか。