Nintendo SwitchのJoy-Conドリフト対策が施されたとして、一部で注目集める。しかし勘違いの可能性高し


任天堂は7月16日、Nintendo Switch向け『ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD』の発売に合わせて、特別デザインのJoy-Con「ゼルダの伝説 スカイウォードソード エディション」を発売した。そしてこのJoy-Conについて、いわゆる“Joy-Conドリフト”への対策が施されているのではないかとして、にわかに注目が集まっているようだ。


TwitterユーザーのChicken Noodle Gamer氏は7月26日、「ゼルダの伝説 スカイウォードソード エディション」のJoy-Conを分解した画像を投稿。その内部には、これまでほかのJoy-Conでは見たことのないパーツが存在するとし、任天堂はJoy-Conの最大の問題にこっそり対策を施したようだとコメントした。

Joy-Conの“最大の問題”とは、Joy-Conドリフトのことだろう。ユーザーがスティックに触れていないにもかかわらず、勝手に入力操作がおこなわれる不具合のこと。ポインタがフラフラと漂流(Drift)するような挙動をみせることからドリフトと呼ばれている。この投稿は、本稿執筆時点で900件以上のリツイートと4000件以上のいいねが集まっており、また著名YouTubeチャンネルGameXplainも話題として取り上げるなど、多くの注目が集まっている。

そして追加されたパーツというのは、2本の細いラバーシートのようなもののようだ。ちょうどアナログスティックパーツの裏側に位置する部分に貼られている。ただ結論からいうと、これが新たに施されたJoy-Conドリフト対策というのは、勘違いである可能性が高そうである。

Image Credit: iFixit


実はこのJoy-Con内部のラバーシートは、以前のモデルでも確認されている。上に掲載した修理業者iFixitの分解画像でも、同じような細いシートが貼られていることが分かる。また、筆者も自前の右Joy-Con(2017年3月購入)を分解してみたところ、同様のシートを確認できた。すべてのJoy-Conに存在するのかどうかは分からないが、右のJoy-Conにだけシートが貼られている模様である。そのため、このシートがJoy-Conドリフト対策である可能性は低いだろう。

では、なぜこれほど大きな注目が集まったのかというと、Joy-Con内部は普段見慣れないものいうことがまず挙げられるだろう。そこに新たなパーツが追加されたと聞いて、任天堂がついにJoy-Conドリフトを改善させたとして沸き立ったようだ。また、最近一部で話題になった、ユーザー独自のJoy-Conドリフト修理法にも関係している。

その修理法とは、アナログスティックパーツの裏側に1mm厚ほどの紙片を配置するというもの。YouTuberのVK氏は以下の映像にて、長時間の操作によってわずかに緩んだパーツ筐体を、紙片によって物理的に押し返し歪みを補正することで、Joy-Conドリフトが改善すると主張している。上述のラバーシートが、ちょうどその紙片にあたる役割を果たすのではないかと考えられ、任天堂が同じ手法を採用したと受け止められたわけだ。


Joy-Conにおいてドリフト現象は最大の問題という主張に異論はないだろう。Nintendo Switchの発売以来多くのユーザーがJoy-Conドリフトに悩まされている。一部の国では集団訴訟にも発展し、任天堂は海外では保証期間内かどうかにかかわらず無償修理を受け付けるなどの対応を実施。また、同社代表取締役社⻑の古川俊太郎氏が昨年6月の定時株主総会の場にて、「お客様にご迷惑をおかけしていることをお詫び申しあげます」と謝罪したことも話題となった。

今回「ゼルダの伝説 スカイウォードソード エディション」のJoy-Conにて発見されたラバーシートは、Joy-Conドリフト対策である可能性は極めて低そうであり、引き続き根本的な改善が望まれる。ちなみに英国任天堂によると、今年10月に発売されるNintendo Switch(有機ELモデル)同梱のJoy-Conは、現在販売されているものと同じ仕様とのこと(関連記事)。もちろん、内部的なデザインが変更される可能性はあり、発売と同時にユーザーによる検証がおこなわれることだろう。

なお、Joy-Conを分解すると製品保証が切れたり、任天堂による修理が断られる場合があるため注意してほしい。