カナダ軍は『ポケモンGO』に困り、軍人たちにゲームのプレイを命じていた。数年前の内部文章にて混乱ぶりが明かされる


カナダ公共放送CBCは2019年12月31日、カナダ国防総省(Department of National Defence)より入手した書類の中で、カナダ軍が『ポケモンGO』にとにかく手を焼いていたことを明らかにした。『ポケモンGO』といえば、ゲーム『ポケットモンスター』をテーマとした位置情報ゲーム。実際の地図を模したゲームにポケモンが現れ、その場所まで歩いて捕獲しにいくARタイトルだ。リリース当初より人気が爆発に、私有地や施設に侵入するユーザーが跡を絶たず、問題視されていた。カナダ軍とて、例外ではなかったようだ。

今から3年以上前となる2016年7月6日に、『ポケモンGO』は北米にてリリースされた。その直後からカナダ軍の敷地内に侵入する人々が続出したという。ピカチュウを追ってノースベイ空軍基地の内部まで入り込んできたふたり組を代表に、ポケモンを追いかけて軍の敷地に迷い込む人々が殺到していたそうだ。

このトラブルは軍内部では好奇と混乱をもって問題視されていたといい、ポケモンを「未知なる電子生物」として調査していたそうだ。471ページにもわたる調査書の中で、軍人たちの悩みが記されている。Jeff Monaghan少佐は「フォート・フロンテナック(陸軍士官養成の場でもある要塞)が、どうやらポケモンジムとポケストップになっているようだが、正直いってそれが何なのかさっぱりわからない。アドバイスをくれないか。」とこぼす。Richard Raymond中佐は「なにやら流行りまくっているゲームがあるらしい。それは人々をデジタルにキャッシュされた場所に移動させ、ポイントを稼ぐそうじゃないか。」と興味津々。

Image Credit : CBC / Department of National Defence

すぐにカナダ軍は動き、「軍の敷地内で、ゲームランドマークと未知なる電子生物が発見されている」と硬めの文書にて情報を組織内で共有。敷地内に入ってくる人々に対策を講じたそうだ。しかしながら、『ポケモンGO』ユーザーの進撃は終わらない。その後も関連した施設には人が押し寄せていた。ボーデン基地では、戦車にのぼる子供たちや「わが子に勝たないといけない」と入ってくる男なども確認されていた。またオンタリオ州のボーデン軍事博物館まわりには人が集まっているといい、軍事ショップに怪しげな人々がいるとグリーンウッド基地から報告があがっていた。実際のところは同施設にポケストップが設置されていたことが原因。人だかりは『ポケモンGO』ユーザーによるものだったそうだ。

当時組織内はかなり混乱していたようで、ついには軍がブリティッシュコロンビア州の隊員3名以上に、「『ポケモンGO』をプレイしポケストップなどゲーム内のインフラについて調査する」という任務を課していたとも。実際の隊員たちの手記も確認されている。ネガティブな被害が生じることから、開発元のNianticにポケストップの削除を要請する隊員。施設に関連するポケストップの削除を要請しながらも、公共施設の活性化を見据えて新たなジムへのポケストップの設置を進言する隊員まで手記内容はさまざま。後者の隊員は『ポケモンGO』を単なる迷惑なゲームと捉えるのではなく、人生を豊かにしえる有用なツールであると見解を示していたようだ。

Image Credit : CBC / Department of National Defence

一連の内部の混乱は、あくまでゲームが配信された2016年直後の様子。同施設内のポケストップは削除され、設置ガイドラインは厳しくなり、ゲーム内の警告表示も強化されている。しかしながら、いちデジタルゲームである『ポケモンGO』に、軍内部が混乱していたという事実は、なかなか興味深くもある。ちなみにCBCが入手した文書は、開示請求によって正規に入手したもの。リリース直後からカナダ国防総省には請求していたそうだが、3年半以上かかりCBCのもとに届いた。通常は60日以内に反応するというのが規則のようだが、カナダ国防総省の承認プロセスおよび組織の再編を理由に、大幅に時間を要したと説明されている。最終的には、2020年に入り軍内の微笑ましい狼狽えぶりが世界に共有されることとなった。

なお『ポケモンGO』では現在タマゴマラソンが開催中。タマゴを孵化することによって、ほしのすなやふしぎなアメ、イッシュのいしなどボーナスアイテムが手に入るイベント。期間中は、とんがり帽子をかぶったラッタやピカチュウ、ピチュー、ケムッソ、ソーナンスがタマゴ/レイド/道中にて手に入る。くれぐれも、軍や警察署だけでなく他人の敷地内に入ることのないように注意されたし。