剣戟対戦アクション『Blade Symphony』基本プレイ無料化により、多くの低評価レビューが投下される。売り切りゲームを無料化する難しさ


ゲームスタジオPuny Humanは3月8日、これまでSteamで売り切り型のゲームとして販売していた『Blade Symphony』を基本プレイ無料化した。ゲームメカニックの複雑さやお金の問題などを含め、さまざまな理由で基本プレイ無料化はしたくはなかったとしながら、手に取りやすくし少しでもゲームの寿命を長くするために、今回の決断に至ったという。さまざまな葛藤の末に下した決断であることを強調しているが、この発表以来、Steamストアページでは多くの不評レビューが投下されている。

『Blade Symphony』は、オンラインマルチプレイ対応の剣戟対戦格闘ゲーム。グラディエイターのようなPhalanx、侍に近いJudgement、忍者スタイルのRyoku、アサシンを彷彿とさせるPure、足技を使うチャンピオンのVanguardからキャラクターを選び、戦いに繰り出す。タイマンや2vs2やサンドボックス型のフリーフォーオール形式などさまざまなモードをまじえて剣術を競うのだ。なおゲームは日本語に対応している。

『Blade Symphony』はSteamでもやや珍しい剣戟対戦ゲームとして親しまれていたが、正式リリース日が2014年ということもあり、Free Weekend実施時にプレイヤーを伸ばすものの定着せず、2018年初頭からは月別平均同時接続プレイヤー数が1桁という状態が続いていた(Steam Charts)。そうした経緯もあり、寿命を延ばすために基本プレイ無料がはかられたのだろう。

ただし、単に基本プレイ無料にするというだけでなく、方針転換をきっかけに大規模なアップデートが実施された。レベルチェーンが上昇すれば、既存アイテムもしくは追加された48種類のアイテムが少しずつ手に入る。これらのアイテムは売買や交換が可能だ。さらに、パフォーマンス問題を改善するためにアセットストリーミングを改善。duel_castleについては、いちから再構築。そして既存のゲーム購入者向けに感謝を述べ、ほかでは手に入らない10種類の特別装備を準備。既存購入者向けの特典もしっかりと用意されている。

しかしながら、基本プレイ無料化した3月8日より不評レビューが急増。70%の好評により「ほぼ好評」だった評価は賛否両論へと変化した。基本プレイ無料化されてから投じられた不評の数は、171。こうした事態をEurogamerなどのメディアが報じていた。基本プレイ無料化にともない、不評を投じるプレイヤーが出てきた。こうした経緯を考えれば、「以前購入したプレイヤーが不満をもった」という結論を導き出しやすいだろう。しかしながら、実際のところそれが不評の主な理由ではない。

実際に購入者の不満を数えてみたところ、ゲームの販売形態が変わってから寄せられた「売り切り版購入者(Steamでの購入)」の不評レビューは38件。期間中寄せられた不評レビュー171件のうちの22%となる。プレイ時間20時間を超えるプレイヤーが不満を漏らす声もあるが、基本プレイ無料発表するニュースのコメント欄では、むしろプレイヤーの増加を喜ぶ声や開発元を支持する声が多く見受けられる。そして基本プレイ無料後も、購入者から23件の好評レビューが寄せられている。

では低評価の主な発信者は誰なのかというと、そのほとんどが新規プレイヤーだ。本作に古さを感じるという声や、不具合が多いという声、サーバーやプレイヤー数への不満、ゲーム内容についての不満などが綴られている。単純に、ゲーム内容について批判されているわけだ。基本プレイ無料ゲームのクオリティが上がっている今、2008年から開発され2014年に正式リリースされた『Blade Symphony』について、昨今のタイトルと比較して低評価をつけるというのは、理解できない話ではない。

既存タイトルの基本プレイ無料化については、『EVOLVE』や『Battleborn』を代表にうまくいっていない事例がほとんど。Puny Humanは、起死回生ではなくはじめから延命措置だと示唆しているので、大きなプレイヤー数の増加は期待していないとみられる。とはいえ、ファンに愛されながら徐々に規模を縮小してきたタイトルが、新規ユーザーを招き入れたことで多くの不評レビューを投下されてしまったという結果は、喜ばしい事態ではないだろう。きれいなまま幕切れしかけていたゲームが、新しいユーザーを迎えることでそのゲームの評価自体が再び揺らぎだすというシナリオは、スタジオも予想できていなかったかもしれない。

先月には『King Arthur’s Gold』も、プレイヤー数拡充のための基本プレイ無料を導入すると発表していた。基本プレイ無料化はプレイヤー数の増加につながる可能性もあるが、あくまで短期的なパターンが多く、デメリットも多い劇薬だ。そして成功例もほとんどない。基本プレイ無料化を決断する上では、こうしたデメリットを重々に理解しておく必要がありそうだ。