Valveが『CS:GO』の新モード「Danger Zone」内で、『Portal』新作の存在を示唆。巧みにファンの心をもてあそぶ


Valveは12月6日、Steamで配信中のFPS『Counter-Strike: Global Offensive』(以下、CS:GO)を基本プレイ無料化し、さらに新ゲームモード「Danger Zone」を導入した。Danger Zoneは、最大16人(ソロ)もしくは18人(デュオ・トリプル)のプレイヤーが、最後のひとりになるまで戦うバトルロイヤルモードだ(関連記事)。現時点では、「Blacksite」と呼ばれる小規模マップにて同モードをプレイできるが、このマップ内で発見されたあるものが、Valveの『Portal』シリーズの新作の登場を示唆しているのではないかと海外にて話題となり、海外メディアGameRantなどが報じている。

Image Credit: DANNYonPC

Blacksiteマップは数多くのエリアによって成り立っており、ゲーム開始時には任意のエリアを選択してそこに降下する。そのエリアのひとつ「Tourist」にはモーテルのような建物が存在し、各部屋には番号が振られているのだが、どういうわけか「3号室」だけはドアが板で塞がれ、部屋番号のプレートは剥がれ地面に落ちている。かつて同社共同設立者のGabe Newell氏が、長らく期待され、数々の噂が浮上するも登場する気配を見せない『Half-Life 3』に関連して「3という数字は口にしてはならない(The number 3 must not be said)」と述べたことを思い起こさせる状況である。

この3号室のドアは開かないが、実は隣の2号室の中から回り込む形で簡単に3号室側に入ることが可能。その部屋には複数のブラウン管モニタとPCキーボードが置かれたデスクが存在していた。そして、そのデスクの前に立ってしばし待つと、電子音のメロディーに続いて女性らしき声が再生され始める。しかし、女性はそれぞれ無関係な英単語を羅列するだけで、直接意味をなすようには聞こえない。ここからファンによる解読が始まる。

ファンはまず最初の「papa、golf、papa、whiskey、five、zero」は、頭文字と数字から「PGPW50」と判断し、「PGPが50ワードある」と読み解く。PGP(Pretty Good Privacy)とは暗号技術のひとつで、これを活かして考案された、英単語によって16進数を伝達するPGP Word Listというものが存在する。確かに、3号室にて再生される英単語は、PGP Word Listで使われているものと合致する。たとえば「eating、hydrolic、keyboard、atlantic」は、「54、74、7A、0E」に変換することができる。しかし、これだけではまだ意味不明である。

そこで、冒頭の「PGPW50」の次に再生された「sierra、mike、sierra、seven、five、seven」にファンは注目する。例に倣い「SMS757」と読み替え、最初の「SMS7」の部分は携帯のSMSに使用される文字コード「GSM 7-bit」、これが57文字あると判断。GSM 7-bitを用いると、先ほどの「54、74、7A、0E」は「This」に変換され、ようやく意味のある文字となった。そして、読み上げられた英単語すべてを変換すると、「This was a triumph. I’m making a note here: HUGE SUCCESS.」という文章を表現していたことが明らかになった。

この「This was a triumph. I’m making a note here: HUGE SUCCESS.」は、Valveのパズルアクションゲーム『Portal』のエンディング曲「Still Alive」の歌い出しの歌詞と同じ。日本語版では「よくやりましたね。個人ファイルに書いておきましょう。「大成功」と」と訳されている。これを「3号室」にて聞くことができるということは、未発表のシリーズ新作『Portal 3』の登場を示唆しているのではないかとファンはざわめき立つことになる。

Valveはこれまでにも、ゲーム内にヒントを仕込み、プレイヤーらがその謎を解き明かすことで発表物が明らかになるARG(Alternate Reality Game)的なキャンペーンを実施したことがある。かつては『Portal』においても、アップデートにより追加したラジオを使って『Portal 2』の発表を示唆したこともあった。さらに続編の『Portal 3』の存在が、同じくARGキャンペーンにて明らかになっても不思議ではない。

『Portal 3』への期待は膨らむ一方であったが、Valveは本日12月10日、『CS:GO』の公式Twitterアカウントを通じて、この「3号室」にまつわる謎を解いたプレイヤーらに祝意を述べると同時に、製品の発表を示すものではないとコメントし、ARGではなく『Portal』に絡めた単なるイースターエッグだったと種明かし。わざわざ「3号室」に仕込むという巧妙な仕掛けにより高まった、ユーザーの期待を砕いた。ちなみに『CS:GO』のDanger Zoneでは、『Half-Life 2: Episode Two』に登場した、「3つの木」が描かれたWhite Forestのロゴ看板なども発見でき、随所にイースターエッグが仕込まれているようだ。

新作を期待したファンの落胆は計り知れないが、Valveは複数の未発表の新作の開発に取り組んでいることが今年5月に明らかになっている(関連記事)。その中に『Portal 3』が含まれているのかどうかは分からないが、今回のイースターエッグは、Valveが同シリーズのファンのことを忘れていない証だと言えるだろう。希望を捨てず待ち続けたいところである。