Steamにて一部アダルトゲームが「児童の性的搾取」を理由に配信却下。設定上18歳以上のキャラクターでも、未成年に見えればアウトか

Steamにて、未成年者もしくは未成年者を彷彿とさせるキャラクターを対象とした性的描写が含まれるゲームについて、児童の性的搾取を理由にSteamストアでの販売が却下され始めた。その現状を海外メディアのKotakuDualShockersが伝えている。

Steamを運営するValveは2018年9月まで、過激な性描写を含む作品の配信は許しておらず、配信済みの作品であっても、後日ポルノコンテンツの削除要請が出されるケースがあった。ゲームの配信プラットフォームとして、アダルトコンテンツの扱いについて一定の基準を設けていたわけであるが、Valveは今年6月にSteam運営方針の変更を発表。荒らしや違法行為を除くあらゆるコンテンツを原則的に容認する旨を公表した。

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そして同年9月、Steamにコンテンツのフィルタリング機能が導入され、それまで性的描写が原因で配信が差し止められていたゲームの配信が続々と開始された。先述した新しい運営方針が適用され始めたわけだ。これにより、少なくとも海外の多くの地域においては、モザイク無しの局部表現を含め、アダルトゲームの多くがValveによる規制を受けることなく配信できるようになった(関連記事)。もちろん、国別の制限を考慮する必要はあり、モザイク抜きの無修正タイトルに関しては、日本を含む一部地域で販売不可となった事例も報告されている(関連記事)。

『Cross Love』

このようにValveは原則としてアダルトゲームの配信を容認したわけだが、先述したように荒らし行為や違法行為といった例外項目も設けている。新方針が適用された9月には、Valveが考える荒らし行為に該当したと思わしき179タイトルがSteamストア上から削除(関連記事)。Valveが定義した荒らしとは、ゲームという体裁をギリギリ保っているものの、99.9%の人が「良い」とは言わない粗悪品を指す。

今回ストア上から削除されたと報告されているのは、そうした「荒らし行為」を理由とした削除とは趣旨が異なる。審査に落ちたと報告されているのは、未成年者もしくは未成年者を彷彿とさせるキャラクターの恋愛や性的シーンが含まれているアダルトゲームである。今年11月、itch.io/Nutakuにてリリースされたビジュアルノベル『Cross Love XCHARX Episode 1』がその一例である。同作は女装男子のロマンスが描かれる18禁ビジュアルノベルだ。

 

設定上は18歳以上のキャラクター

同作では、オープニング時の注意書きだけでなく、ゲーム内での描写を通じて全ての登場人物が18歳以上であることを繰り返し明示していると、販売元のTop Hat Studiosは伝えている。また単なる規制対策としてキャラクターの年齢を明示しているのではなく、自らのアイデンティティに悩む若者たちの成長を描くという、作品のストーリーやテーマを膨らませるために18歳という年齢設定にしているとも、上述したKotakuに伝えている。

日本国内においては漫画・アニメは児童ポルノ禁止法の規制対象外。とはいえ国外では未成年者もしくは未成年者に見える2次元キャラクターの性的描写については厳しい目で見られており、多くの国にて、国家・州レベルでの法的規制や民間団体による自主規制が設けられている。そうした背景もあり、モザイク抜きの局部表現に原則OKを出したValveでも、未成年者の性的描写に関しては慎重な姿勢を保っているのではないだろうか。

一方Top Hat Studiosは、法的規制云々の前に、そもそもSteam上では既に、18歳未満であると明示されたキャラクターや、18歳未満にしか見えないキャラクターの性的描写を含むアダルトコンテンツが複数販売されていると指摘している。それらの作品との線引きが曖昧であり、本当のところはキャラクターの年齢というより、「女装男子のアダルトゲーム」という点で審査に引っかかったのではないかと同スタジオは推測している。ただ、最終的に今回のValveの対応について最も腹を立てているのは、児童搾取という深刻な却下理由を叩きつけながらも、相互コミュニケーションを図ってくれなかったこと。また却下された後に全年齢対象版による再審査依頼を行ったものの、審査を受け付けてもらえなかったことだと述べている。

他の事例としては、カトリック系の学校を舞台としたビジュアルノベル『Hello Goodbye』、近親同士のロマンスを描く『Imolicious』、ネコ娘が主人公のダンジョン探索ゲーム『MaoMao Discovery Team』(国内タイトル『マウマウ探検隊』。DLSiteにて配信済み)といったアダルトゲームについて、それぞれの開発元が、同様の理由によりSteamの審査で却下されたと報告している。いずれの開発元も審査却下後までValveとのコミュニケーションを試みているものの、一向に返答がないとSNSやSteamフォーラムを通じて語っている。

 

性的描写抜きでもNGとなったケース有り

なお補足として、『Hello Goodbye』に関しては、Steamの審査に出されたSteam版はアダルト表現を抜いた全年齢対象版であったとのこと。そもそも性的表現は含まれていない。『Imolicious』に関しては、他プラットフォームでの配信を引き続き検討しており、例えばNutakuからは、リリースにあたり舞台設定を高校から大学に変更するといった条件が出されているとのことだ。Steam以外でも年齢に関する自主的なコンプライアンスチェックが行われているものの、その水準はSteamの方が厳しいことがうかがえる。

こうした学園系のアダルトゲームは、登場人物の年齢設定は18歳以上であると、ゲーム内のどこかで表記しているケースが多い。上述したタイトルも例外ではない。少なくともSteamでは、年齢設定だけを見て未成年者の性的描写か、そうでないかを判別しているわけではないのだろう。審査に落ちたタイトルには学園モノが多いこともあり、年齢だけでなく、キャラクターの見た目や舞台設定などから総合的に判断していると思われる。

ゲームの配信にあたり、どのような審査基準を設けるのかは、各配信プラットフォームの自由。今回審査に落ちた開発者が指摘しているのは、その基準が不明瞭であることや、基準を満たすために何を修正すべきなのかコミュニケーションを取れないことである。原則として全てのコンテンツを許容すると公言したValveであるが、どこまでの表現であればリリースが許されるのか、アダルトゲームにおいては、いまだ線引きが曖昧な点が残っていることに変わりはない。アダルトゲームの販売元としては、itch.io、Nutaku、Fakku、JASTなど配信先の候補は複数存在する。とはいえ、巨大なプレイヤーベースを抱えるSteamで販売できないというのは、同プラットフォームでの配信を想定して開発を進めていた場合には痛手となり得る。

先述したTop Hat Studiosは、今後Steam向けには、学園モノの新作を開発・販売しない意向であると伝えている(該当ツイート)。エピソード分割配信を予定していた『Cross Love XCHARX Episode 1』に関しても、Steamでの配信が許されないとなれば、今後のシリーズ作品の開発続行は経済的理由により難しく、エピソード2以降はキャンセルになる可能性が高いという(PatreonやKickstarterのサポートを通じてシリーズを続行させることは検討しているとのこと)。

2次元キャラクターを児童ポルノとして規制すべきか、というのは世界的に見てセンシティブなトピック。Valveとしても、そう気軽に自社の審査基準を公にすることはできないと予想される。SteamがPCゲームの有力な配信先である限り、Valveとアダルトゲームの開発者による審査基準の探り合いは続くのだろう。

余談ながら、先日Epic Gamesがオープンしたゲーム配信プラットフォームEpic Games Storeでは、成人向けゲームについては制限対象になるとアナウンスされている(Ars Technica)。同プラットフォームは、今回Steamの審査に引っかかったようなアダルトゲームの開発者にとっての救世主にはならなさそうだ。

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