『Last Day of June』配信開始。亡くなった恋人を救うため過去にさかのぼる水墨画タッチの3Dアドベンチャー


パブリッシャー505 Gamesは8月31日、3Dアドベンチャー『Last Day of June』の配信を開始した。対象プラットフォームはWindows(Steam)および海外PlayStation 4。販売価格は1980円で、9月15日までのプロモーション期間中は10%オフの1782円で購入できる。また同期間中に購入すると、特典として『Brothers – A Tale of Two Sons』が無料で手に入る。いずれも日本語字幕・インターフェースに対応した作品だ。

本作は小さな村に住むカップル、恥ずかしがり屋のカール(Carl)と明るい恋人ジューン(June)に起きた悲劇からはじまる、喪失と受容の物語。交通事故によりジューンが亡くなり、同乗していたカールも半身不随となり車椅子生活を余儀なくされる。妻の死から立ち直れずにいたカールは憂鬱な日々を過ごしていたが、ジューンが画室に残した肖像画の力により、彼女と過ごした最後の1日を、事故に関わった人々の視点を通じて追体験しはじめる。

カールが追体験するのは、事故に関わった村人たちの行動である。具体的には、ひとりぼっちの少年、カールに想いを寄せる女性、村内を飛び回る鳥を執拗に追い回す男性、そして杖をついたおじいさんの4人だ。まず少年が近所の犬と遊んでいる最中、ボールが道路に転がってしまい、飛び出てきた少年を避けるかたちでカールの車がクラッシュする。事故の原因を取り除くため、ボールではなく、おじいさんと一緒に凧を揚げて遊ぶよう誘導するのが最初のゴールである。

だがそうすると、村の女性がトラックの荷台に詰めていた荷物の落下防止用ロープが、凧の糸がわりに使われてしまう。結果としてトラックの運転中に荷物が落下し、新たな事故の原因が生まれる。このように誰か一人の行動を変えても、別の形で事故が再発してしまう。なんとか事故を逃れようと最後の1日を繰り返すカール。はたして彼は運命に抗い、愛する者を救うことができるのだろうか。

ゲームプレイとしては、キャラクターたちが暮らす村の中を移動し、少年の場合はボール、村の女性ならダンボール箱といったように各人物に固有のアイテムを使ってパズルを解き、事故を起こさないよう導いていく。通路を塞いでいるオブジェクトをボールで破壊してから、他のキャラクターに切り替えて先に進むといった具合に、キャラクター間を何度も行き来することになる。互いの行動が新たな事故要因を誘発しないよう注意が必要だ。また収集要素として村に落ちている思い出の欠片を集めることで、登場人物は皆、なにかしらの喪失感を抱えて生きているということが見えてくる。

開発を担当したのはイタリアのインディーデベロッパー「Ovosonico」。PlayStation Vita用タイトル『Murasaki Baby』を手がけたスタジオであり、ディレクターのMassimo Guarini氏はグラスホッパー・マニファクチュア開発の『Shadows of the Damned』にてディレクションを務めたことでも知られている。本作はGuarini氏が、ミュージシャンであるSteven Wilson氏(Porcupine Tree、Storm Corrosion等で活動)のシングル曲「Drive Home」および同曲のミュージックビデオから着想を得て開発をスタートさせたプロジェクトである。

亡くなった恋人を蘇らせようとする否認からはじまり、どれだけ過去を塗り替えようとあがいても救いきれない怒りと、どうしようもない抑うつ。取引を経て至る受容といったように、2時間から3時間の短いプレイ時間の中で「喪失の5段階モデル」を丁寧に踏んでいる。そしてその一つ一つを、言葉や表情を使わず映像演出や音楽の力で表現しているのが『Last Day of June』だ。原作を知る人には結末が見えてしまうのではないかと懸念するかもしれないが、その点は心配ない。喪失と受容というテーマはそのままに、「Drive Home」を知る人であっても物語の見方を一転させてくれるような展開が待っている。