『BIOHAZARD 7』体験版のデータ解析からあの人物の名前が、シリーズの愛されキャラ再来はあり得るか

 

カプコンは19日、サバイバルホラー最新作『BIOHAZARD 7 resident evil』(英題:RESIDENT EVIL 7 biohazard)の体験版「Beginning Hour」を、PC向けにSteamで配信した。その実行ファイルのデータ解析から、シリーズを通して物語の根幹を担ってきたある人物の名前が浮上し、一部ではストーリーに再び登場するのではないかともささやかれている。もちろん、体験版に含まれたデータが全て本編に反映されるわけではなく、該当ファイルがメインストーリーで使用されるものとも限らない。シリーズ屈指の人気キャラクターが再び登場する可能性をめぐって、フォーラムサイトを中心に飛び交う推測を紐解いていく。以下、『バイオハザード』シリーズのネタバレを多分に含んだ内容であることを、あらかじめ注記しておく。

 

※本稿は『バイオハザード』シリーズのネタバレを大量に含みます。特に『BIOHAZARD 5』を未プレイのユーザーは閲覧しないことを推奨します。

 

実行ファイルに含まれたストリング情報

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一人称視点で描かれるのはシリーズ初

『BIOHAZARD 7 resident evil』は、2017年1月26日にカプコンからPlayStation 4/Xbox One/Microsoft Windows向けに発売予定のサバイバルホラーゲーム。シリーズ生誕20周年を記念する作品であり、VR元年と言われる今年からいよいよ解禁されたPlayStation VRにも完全対応している。また、新生バイオハザードと銘打たれているように、従来のカメラワークを一新してアイソレートビューという一人称視点のゲームデザインを採用。ゲームエンジンには、本作のために新たに開発された「REエンジン」が使われている。今年6月の「E3 2016」にて正式発表された直後、PlayStation 4向けに体験版「Beginning Hour」の配信がスタート。今月19日にいよいよPC版のデモがSteamで配信されたばかりだ。

体験版のデータ解析から判明したある人物の名前とは、何を隠そう長年シリーズを影で支え続けてきた悪役キャラクター、「アルバート・ウェスカー」(以下、後述する設定上の理由によりウェスカーではなくアルバートと呼称)のことである。アルバートは1996年の初代『BIO HAZARD』で主人公たちが所属する特殊部隊「S.T.A.R.S.」の隊長として登場して以来、幾度となく安否不明の結末が描かれながらも、常にストーリーの根幹を担う黒幕として暗躍してきた重要人物だ。しかし、2009年に発売されたナンバリング第5作『BIOHAZARD 5』のラストでついに壮大な最期を迎えている。それまでいかなる窮地に追い込まれても超人的な身体能力で復活を遂げてきたアルバートだったが、後にカプコンの担当プロデューサーも彼が完全に死亡した事実を認めている。

フォーラムサイトRedditに寄せられた情報によると、PC版デモの実行ファイルをデータ解析した結果から、“LastBossAlbert”を含んだ複数のストリング(プログラミングでデータ型やクラス、クラスの値、変数、インスタンスなどを参照する文字列のこと)が見つかっている。この情報からアルバートがラスボスとして登場するのではないかとの見方もあるが、NeoGAFに報告された“AlbertWeapon”“AlbertDamageCount”“isDamagedByAlbert”といったストリングから、おそらく武器データに関する情報である可能性が高い。その証拠に“Handgun_Albert”“Shotgun_Albert”という特定の武器に関する記述もある。考えられる一つの可能性は、過去作でアルバートが使用したハンドガン「サムライエッジ」とソーンオフショットガン「ハイドラ」の再登場だろう。

このほか、マルチエンディングの可能性を示唆するストリングや、各チャプターの名称と思しき単語、弾薬の属性を変更する機能、ゲームプレイにおける特定のメカニズムなど、データの断片から多くのコンテンツに関する情報が読み取られている。また、別のスレッドでも「チェーンソー」や「バーナー」を含む武器の種類や、「ゴースト」「ジャック」「ゾーイ」といったNPCを参照するデータ、果ては7つのボーナスDLCという初回予約特典と思われる記述まで報告されている。ちなみに、この内“Eveline NecroToxin”は新たなウィルスの名称ではないかとの見方が強い。これらの情報の多くがゲーム本編の内容に直接関係していることは間違いないだろうが、おそらく「アルバート・ウェスカー」という男が再びメインストーリーに登場する可能性は低いと考えるのが妥当である。

 

アルバート・ウェスカーという男

アルバートという単語がこれほどまでに脚光を浴びる背景には、20年にわたって紡がれてきた「アルバート・ウェスカー」という男の生き様がある。表向きはラクーンシティ警察署特殊部門「S.T.A.R.S.」の部隊長にして、同アルファチームを率いるリーダーとして登場した彼だが、元々はウィルス開発や生物兵器の研究で世界を震撼させた巨大企業アンブレラの科学者だった。その際に幹部養成所で知り合った「ウィリアム・バーキン」と共謀して、アンブレラグループ総帥の「オズウェル・E・スペンサー」と対立関係にあった同所責任者「ジェームズ・マーカス」博士を殺害。バーキンがマーカスの研究を引き継ぎ、アルバートは諜報部へ転属した後に、上層部の手引で警察組織に潜入したという経緯がある。

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『BIOHAZARD 5』のアルバート・ウェスカー

実はこの男、ただの人間ではない。始祖ウィルスを使って新人類を生み出すためにスペンサーが進めていた「ウェスカー計画」における13番目のサンプルである。この計画は、世界中の有能な両親から生まれた子供たちを実験体として集め、英才教育を施すことで特定分野のスペシャリストに育て上げ、最後に改良型のウィルスを投与することで超人化させるというもの。被験体には全員ウェスカーというラストネームが授けられる。根っからのシリーズファンが「アルバート・ウェスカー」をあえてアルバートと呼ぶのはこのためである。しかし、アルバート以外のウェスカーは大半がウィルス投与に耐えきれず死亡。最後のウェスカーとなったアルバート自身も、スペンサーを自ら殺害する直前まで自分が被検体であることは知らなかった。

人生の大半をスペンサーの手のひらで踊らされていたにも関わらず、アルバートの行動は常に野心に満ちており、危険な魅力にあふれたダークヒーローとしての人気がある。死亡を偽装したライバル組織「Host Capture Force」(通称H.C.F.)への転身(初代およびバイオハザード0)、同組織のエージェント「エイダ・ウォン」と共闘してのG-ウィルス奪取(BIOHAZARD 2)、ウィリアムの娘「シェリー・バートン」の身柄確保と天才科学者「アレクシア・アシュフォード」のTベロニカウィルスのサンプル確保(バイオハザード CODE:Veronica)、アンブレラのコーカサス研究所から強奪した機密データによる同社裁判の全面敗訴(バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ)、スペインのロス・イルミナドス教団が研究していた寄生体プラーガのサンプル回収(biohazard 4)など、アルバートは常にストーリーの根幹で暗躍してきた。

自分以外の人間を道具としてしか扱わず、利用価値がなくなれば平然と切り捨てる冷酷非情な人物だが、悪党の中の悪党として多くのシリーズファンから愛され続けている。『バイオハザード CODE:Veronica』『biohazard 4』『バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ』『BIOHAZARD 5』では一部ゲームモードでプレイアブルキャラクターとしても登場。サングラスが似合う危ない香りと、人間離れした肉体美で常に見るものを魅了してくれる。ちなみに、小説「バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ」の中では、B.O.W.(Bionic Organic Weaponの略、T-ウィルスで生み出された生体兵器)を意のままに操る描写があった。実写映画の「Resident Evil」シリーズでは、原作と大きく異なる印象から理想のウェスカー像とは言い難いが、悪人面と人間とは思えない最低な人物像は忠実に再現している。余談になるが、格闘ゲーム『MARVEL VS. CAPCOM 3 Fate of Two Worlds』にもカプコン勢として参戦を果たした。ここまで愛されたキャラクターだけに、最新作に名前だけでも登場したとしても何ら不思議ではない。