日本語版『League of Legends』(以下、LoL)を始め、ターンベースMOBA『Atlas Reactor』(参考記事)、FPS-MOBA『Battleborn』がスタートした今年。弊誌でMOBA要素を評価したFPS『Overwatch』も加え、「2016年はMOBAの年」と称してもいいだろう―― いや、ちょっと待ってほしい。何か忘れていないか? そう、宇宙と戦艦だ。そして、この両方を満たすうってつけのMOBAが『Fractured Space』である。30種を越える宇宙戦艦の5on5バトルで、クールなストラテジーとホットなアクション、そして息を飲む迫力の映像美を体験しよう。

本作最大の特徴はプレイヤーが操作する宇宙戦艦だ。そのサイズは全長1kmを超える。強大だが鈍重で、敵の攻撃を見てから回避することはできない。よって、味方との連携や障害物をいかした位置取りと、長距離狙撃や同一箇所への精密射撃といった照準精度で敵と競い合うことになる。ストラテジー面はシンプルで、敵ベースまでのルートは2本。タワーもミニオンもない。底が浅そうな印象を受けるかもしれないが、アクション面の協力プレイで強烈なチームワークを体験できる。「敵よりもうまく当て続ける」独自のゲーム設計と、映像スペクタクルの完璧な合致が、本作最大の魅力だ。

review-fractured-space-001『Fractured Space』
開発元: Edge Case Games
発売日: 2016年9月22日
価格: 基本無料(課金コンテンツ: スキン、アンロック、ゲーム内通貨)
プラットフォーム: Windows(Steam

 

まず基本無料ゲームで気になる「実際の料金」を紹介しておこう。最初から使える戦艦は数種類。オンラインプレイを通じて得るクレジット、またはリアルマネーで購入する通貨「プラチナ」で戦艦をアンロックすることができる。安い戦艦は性能が安定した万能艦で、高い戦艦は扱いづらいが型にハマれば強い特化型。安い戦艦はマッチ十数回分のクレジットで購入できるが、高いものはマッチ百回分以上はかかるため、お徳用セット「アルマダパック」(39.99ドル)でアンロックするのが手っ取り早い。有料の強い戦艦が勝つPay-to-Win制に見えるかもしれないが、カジュアルマッチはチーム間の力量差がでないようにマッチメイクされ、有料コンテンツが勝利に直結するわけではない(ただしランクマッチは10月末時点で未実装)。ゲームを気に入ってから有料コンテンツを購入するか検討すればよいだろう。本作はアクションゲームとしてもユニークで、安い戦艦を操作するだけでも十分楽しいのだ。

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対策を知らない高額戦艦にやられた時は「Pay-to-Win!」と叫びたくなるが、公式YouTubeチャンネルの戦艦紹介で学び、プレイを通じて覚えれば、安い戦艦でも11連勝できる。最初から使える戦艦でも、ゼロデス15キルを達成できるので、安心してやりこんでほしい。

 

宇宙戦艦MOBAって、何?

『Fractured Space』はアクションMOBAの一派だ。今年発売のFPS-MOBA『Battleborn』や、去年サービス開始のTPS-MOBA『Smite』同様、MOBA要素を追加したチームバトル制アクションゲームである。例にあげた2作、さらに『Atlas Reactor』や『LoL』、そして『Overwatch』も、いかに敵の攻撃を回避するかが重要なポイントの1つだ。それに対し、『Fractured Space』は逆転の発想で「狙って撃つ」に特化している。公式サイトにて本作は“動的なシューターと強烈な戦略の融合”とも紹介されており、本稿ではそのゲームプレイを「宇宙戦艦MOBA」と名付けたい。

ゲーム画面。通常時は三人称視点で、画面下部の宇宙戦艦を操作する。フライトシムとちがいロールはなく、上下移動でも船首が若干傾くだけ。船体は水平を維持し、カメラの上下が逆になることはない。
ゲーム画面。通常時は三人称視点で、画面下部の宇宙戦艦を操作する。フライトシムとちがいロールはなく、上下移動でも船首が若干傾くだけ。船体は水平を維持し、カメラの上下が逆になることはない。

既存のゲームで例えるなら、『Fractured Space』はMOBAルールで戦う宇宙版『World of Warships』といったところだ。プレイヤーはヒーローではなく宇宙戦艦の艦長となり、5隻vs5隻で質量弾やビーム、ミサイルや艦載機が飛び交う大戦争を繰り広げる。視点は三人称。キーボードで自艦の移動旋回とスキル使用を、マウスでカメラ移動、照準、主砲副砲を操作する。TPSの操作系だが、他の作品に登場するような人間サイズのキャラクターと比較すれば、戦艦は身体のスケールがまったく違う。全長が軽量級でも1km弱、重量級なら2kmを超えるゆえ、軽やかなフットワークは望めない。

人間サイズのキャラクターなら初速から最高速ゆえ、至近距離でも運頼みのランダム回避で敵のエイムを避けられるかもしれない。だが、宇宙戦艦はスケールゆえの重量が慣性となり、動き出すまでがとても遅いのだ。その分、船体は丈夫で一撃死はない。
人間サイズのキャラクターなら初速から最高速ゆえ、至近距離でも運頼みのランダム回避で敵のエイムを避けられるかもしれない。だが、宇宙戦艦はスケールゆえの重量が慣性となり、動き出すまでがとても遅いのだ。その分、船体は丈夫で一撃死はない。
無料戦艦、USR製Pioneer。惑星開拓の任務を終えた入植船は、移民者を守る強固な装甲とペイロードをもって打撃戦艦と化した。高DPSの主砲は偏差射撃を要するがAoE属性で扱いやすい。規格外の射程24kmを有する副砲グラビティニュークは長距離からの初撃を可能とする。だが、この戦艦の真価は武器ではない。スキル「デテクトセクター」でセクター内の敵艦位置、そして作戦を暴く偵察能力だ。Pioneerは本作のプレイフィールを象徴している。
無料戦艦、USR製Pioneer。惑星開拓の任務を終えた入植船は、移民者を守る強固な装甲とペイロードをもって打撃戦艦と化した。高DPSの主砲は偏差射撃を要するがAoE属性で扱いやすい。規格外の射程24kmを有する副砲グラビティニュークは長距離からの初撃を可能とする。だが、この戦艦の真価は武器ではない。スキル「デテクトセクター」でセクター内の敵艦位置、そして作戦を暴く偵察能力だ。Pioneerは本作のプレイフィールを象徴している。

戦艦の動きは遅いが、武器の弾速も即着のビームを除けばやや遅い。平均的な性能の主砲では射程限界15kmの着弾に約1秒かかる。ここで「狙って撃つ」の出番だ。敵艦の移動先を狙う偏差射撃でダメージレースに撃ち勝つことができる。一人称視点となりズームも可能になるスナイパーモードに切り替えれば偏差射撃を狙いやすい。また、自機の移動中は集弾性が下がり弾は大きくばらけてしまうが、スナイパーモード時はそれを打ち消してあまりあるほど集弾性が上昇するため、精密射撃と(敵の偏差射撃を狂わせる程度の)回避行動を両立できる。

画像左:通常時のTPSモード。画面右:スナイパーモード。画面左では豆粒のよう敵艦も画面右のように拡大でき、偏差射撃にかかせない敵の移動方向すなわち船首の向きがわかる。集弾性は「画面に対する照準枠の大きさ」で決まるため、スナイパーモードは集弾性が高い。至近距離でないかぎり、どの距離でもスナイパーモードで攻撃すべし。
画像左:通常時のTPSモード。画面右:スナイパーモード。画面左では豆粒のよう敵艦も画面右のように拡大でき、偏差射撃にかかせない敵の移動方向すなわち船首の向きがわかる。集弾性は「画面に対する照準枠の大きさ」で決まるため、スナイパーモードは集弾性が高い。至近距離でないかぎり、どの距離でもスナイパーモードで攻撃すべし。

ただし、攻撃に有用なスナイパーモードには大きな弱点がある。スコープを覗き込みながら戦うようなもので、周囲の状況が確認できなくなるのだ。小惑星群を主戦場とするため、スナイパーモードだと障害物にぶつかって身動きが取れなくなることがしばしばある。また視界が狭くなる分、他の敵艦や味方艦の位置といった戦況の把握も難しくなる。障害物に隠れて火線から逃れる、敵味方の位置を把握する、といった「立ち回り」にTPSモードは欠がかせない。スナイパーモードで偏差射撃し、TPSモードで鈍重な動きをおぎなうよう位置取りする。つまり既存のアクションMOBAで見られた動体視力や反射神経とは別種のプレイヤースキル、「狙って撃つ」と「立ち回り」を競い合うのが、宇宙戦艦MOBAの核だ。

操作レイアウト。ゲームパッド未対応であり、使用するキーの多さに圧倒されるが、WASDで戦艦を動かしマウスで攻撃すると考えればすぐに慣れる。キーボードのロックオンとフラックは使用頻度が高いので、マウスのサイドボタンにアサインすることを強く勧める。ロックオンで敵艦種とその距離を調べ、ミサイル接近音に反応してフラックできるようになれば、生存力があがる。
操作レイアウト。ゲームパッド未対応であり、使用するキーの多さに圧倒されるが、WASDで戦艦を動かしマウスで攻撃すると考えればすぐに慣れる。キーボードのターゲット(ロックオン)とポイントディフェンス(対空)は使用頻度が高いので、マウスのサイドボタンにアサインすることを強く勧める。ロックオンで敵艦種とその距離を調べ、ミサイル接近音に反応して対空できるようになれば、生存力があがる。

 

 

シンプルだが白熱のゲームルール

MOBAの醍醐味は、敵味方各々の思惑で戦況が刻々と変化する、ダイナミックなゲームメイクだ。奇襲で多対一の状況を作りキルを取るGangbang(通称、ギャング)とその予知対策は主たる例である。味方の作戦を通し、敵の作戦をくじくことで、試合の要点を積み重ねて勝利に近づく。では、『Fractured Space』の鈍重な宇宙戦艦で目まぐるしく戦況をかき回せるのか? もちろん、ルールにその工夫がある。推奨ゲームモードのコンクエストは、見事なチューニングでチーム戦のエッセンスを抽出している。

コンクエストのマップ。青色・中央下側のエリアは自チームのホームベース。左右の縦長エリアがレーンとなる小惑星群のアルファ・ベータセクターになる。レーン端の前線ステーションを取れば敵ベースのセクターへジャンプできる。中央の正方形エリアであるガンマセクターは後述。
コンクエストのマップ。青色・中央下側のエリアは自チームのホームベース。左右の縦長エリアがレーンとなる小惑星群のアルファ・ベータセクターになる。レーン端の前線ステーションを取れば敵ベースのセクターへジャンプできる。中央の正方形エリアであるガンマセクターは後述。
無料戦艦、TDS製Sentinel。軍事メーカー製造ゆえ、他社と違い設計に純粋な軍事目的がある高速戦艦だ。主砲はロックオン対象へと放たれる誘導弾で、回避に専念しながらでも確実にダメージを与える。総合火力こそ低いが、それをおぎなって余りあるのが速力だ。スキル「ブースト」中の機動力は軽量級を上回り、鉱山のキャプチャー、レーンチェンジ後の戦線参加で大いに役立つ。もちろん逃げ足もだ。Sentinelでゲームルールの把握、そしてゲームメイクを学ぼう。
無料戦艦、TDS製Sentinel。軍事メーカー製造ゆえ、他社と違い設計に純粋な軍事目的がある高速戦艦だ。主砲はロックオン対象へと放たれる誘導弾で、回避に専念しながらでも確実にダメージを与える。総合火力こそ低いが、それをおぎなって余りあるのが速力だ。スキル「ブースト」中の機動力は軽量級を上回り、鉱山のキャプチャー、レーンチェンジ後の戦線参加で大いに役立つ。もちろん逃げ足もだ。Sentinelでゲームルールの把握、そしてゲームメイクを学ぼう。

まずはマップだ。マップは地続きではなく5つのセクターに分かれている。各セクターへはジャンプ(ワープ)で移動し、ジャンプのクールタイムは15秒と非常に短い。ジャンプ先を選べるセクタージャンプと別に自陣へ戻るホームベースジャンプもあり、この2つを組み合わせると一瞬でレーンをチェンジすることが可能となる。そのレーンだが、敵ベースとホームベースをつなぐレーンはアルファセクター・ベータセクターの2本しかない。5on5ゆえ、両方のレーンを進軍する艦数には最初から数量差が生まれる。戦艦のロールはアタッカー、ディフェンダー、サポートの3種だが、同じロールでも武器やスキルの威力や射程、HPや速力に違いがあり、一対一でも戦況が膠着することは少ない。つまり基本的には数量差をぶつけるゲームである。多勢相手に粘り通せたなら、別レーンの味方が数量差で活躍し、さらにレーンチェンジで救援にかけつけ手痛いカウンターを食らわせることもできる。

ジャンプはクールダウンが短く便利だが、準備中に被ダメージが跳ねあがるので、交戦中の撤退に使うのはきわめて危険だ。周囲に敵影がなくとも、敵チームのステルス艦が隠れていたり、狙撃艦に狙われていたりしているかもしれない。
ジャンプはクールダウンが短く便利だが、準備中に被ダメージが跳ねあがるので、交戦中の撤退に使うのはきわめて危険だ。周囲に敵影がなくとも、敵チームのステルス艦が隠れていたり、狙撃艦に狙われていたりしているかもしれない。

レーン数だけでなく、レーン管理とそれに伴うレベルアップも一般的なMOBAと比べると変わっている。レーンにミニオンやタワーがなく、プレイヤー自身が戦線となる。大味なデザインに思えるかもしれないが、『Fractured Space』には“チーム共有のレベル”が存在しており、これによって駆け引きが生み出されている。チームレベルに要する経験点「リソース」は、敵艦のキルと、レーン中に3つある鉱山から得る。即時に大量リソースを得るキルはゲーム序盤のチームレベルに直結し、中盤以降は鉱山から得る毎秒リソースの差がチームレベルの差を作る。鉱山の奪い合いで戦闘が始まるため、実質、鉱山が戦線になると考えてよい。さらに独特なのは、プレイヤーのレベルは自動的にチームレベルへとは引き上げられず、ホームベースや各レーンの前線ステーションにタッチするかリスポン時に機体がアップグレードされ、レベルアップするという点だ。チームレベルがあがっても、プレイヤーのレベルが低いままでは戦線を維持できない。レベルアップとHP回復のため前線ステーションへジャンプで戻る行程が、レーンチェンジを狙う機会を兼ねている。

レベル1に必要なリソースは1000ポイントで、ファーストキルは500ポイント。序盤の流れを作る一撃だ。このリソースで画面上に表示されたチームレベルは上昇したが、画面左の各プレイヤーは、キルにかかわった者も含めレベルゼロのままである。レベルアップの恩恵を受けるべく前線ステーションに戻り、さらにレーンチェンジを考えよう。
レベル1に必要なリソースは1000ポイントで、ファーストキルは500ポイント。序盤の流れを作る一撃だ。このリソースで画面上に表示されたチームレベルは上昇したが、画面左の各プレイヤーは、キルにかかわった者も含めレベルゼロのままである。レベルアップの恩恵を受けるべく前線ステーションに戻り、さらにレーンチェンジを考えよう。
惑星を採掘する巨大ステーションが浮かぶガンマセクター。倒す必要がある『LoL』のドラゴンやバロンとちがい、キャプチャーするだけで効果を得られる。
惑星を採掘する巨大ステーションが浮かぶガンマセクター。倒す必要がある『LoL』のドラゴンやバロンとちがい、キャプチャーするだけで効果を得られる。

レーンチェンジで数量差をつくり、キル数や鉱山の占有時間でレベル差を作る。こうしたゲーム展開の進捗度合いを量るのが、敵味方入り乱れる大乱戦のガンマバトルだ。試合開始から7分ごとに、マップ中央にあるガンマセクターの巨大ステーションがキャプチャー可能となり、これを得たチームの生存プレイヤーは全性能が一定時間強化される。特にキャプチャーレート2倍ボーナスが大きい。鉱山を取って戦線を押すだけでなく、敵ベースへのジャンプをふせいでいる前線ステーションのキャプチャーも狙えるようになる。ガンマバトルは、ゲーム進捗といえるレベル差を量るだけでなく、乱戦の勝利に欠かせない「アクションのチームワーク」を量る、ゲーム展開の注目ポイントだ。

もちろん、易々とキャプチャーを許してもらえない。ガンマセクター中央の巨大ステーションをめぐる立体的な乱戦は混沌と砲火のるつぼだ。艦数とチームワークが勝敗を分けるゆえ、ガンマバトル前のデスは可能な限り避けるべし。アナウンスは60秒前からはじまり、両チームに緊張が走る。
もちろん、易々とキャプチャーを許してもらえない。ガンマセクター中央の巨大ステーションをめぐる立体的な乱戦は混沌と砲火のるつぼだ。艦数とチームワークが勝敗を分けるゆえ、ガンマバトル前のデスは可能な限り避けるべし。アナウンスは60秒前からはじまり、両チームに緊張が走る。

 

アクションが強烈なチームプレイを約束する

ミニオンもタワーもない。レーンも2本しかない。『LoL』におけるドラゴンやバロンのスティールもできない。MOBA要素をチーム戦の数量差に絞ってまとめてはいるが、『Fractured Space』のストラテジー面は意外性が少なく、MOBAジャンルのファンはシンプルすぎる設計にプレイする前から「飽きる」と考えるかもしれない。それは、本作がアクションゲームであること、そして新機軸の宇宙戦艦MOBAであることを見落とした早計だ。本作は宇宙戦艦のプレイフィールをアクション面の協力プレイに昇華している。

無料戦艦、Zarek製Venturer。小惑星採掘船の鉱業技術を船殻破壊に軍事転用した支援戦艦である。主砲は低威力だが即着のレーザー。素早い敵艦も逃さない。だが、この艦の真価は戦闘支援能力だ。副砲アーマーブレイカーは1発でアーマーを破壊できダメージ効率を大幅に引き上げる。他にも、周囲味方艦HPの回復や、ダメージ吸収ブイの設置で、自身とともに味方を支え続ける。チーム戦を実感したいならVenturerだ。
無料戦艦、Zarek製Venturer。小惑星採掘船の鉱業技術を船殻破壊に軍事転用した支援戦艦である。主砲は低威力だが即着のレーザー。素早い敵艦も逃さない。だが、この艦の真価は戦闘支援能力だ。副砲アーマーブレイカーは1発でアーマーを破壊できダメージ効率を大幅に引き上げる。他にも、周囲味方艦HPの回復や、ダメージ吸収ブイの設置で、自身とともに味方を支え続ける。チーム戦を実感したいならVenturerだ。

宇宙戦艦は見てから回避こそできないが、だからといって防御ができないワケではない。移動に緩急をつけて偏差射撃をかわす技術もあるが、より直接的な防御行動がある。外殻となるアーマーを使いこなせばダメージコントロールができるのだ。船首、後尾、側面と上下の計6ブロックにアーマーがあり、破損ブロックへの被弾はダメージが2倍に跳ね上がる。これは、アーマーが大ダメージをふせぐと考えて差し支えない。交戦中は破損ブロックを隠すよう旋回、移動し、アーマーを使い切る防御行動が肝要となる。ここでチームワークの出番だ。味方と攻撃箇所をあわせることでアーマーを破壊し、さらにダメージ2倍の相乗効果を得られるのだ。数量差だけでなく、同じ箇所を狙う意志が、連携を越えた一体感を強固なものとする。

上部アーマーが破損した図。燃えている箇所への被弾はダメージ2倍だ。他ブロックはまだ破損していないので、上部を隠すよう占位すれば被害を押さえられる。交戦中はつねに旋回・移動し、同じ面を見せ続けないよう気を配ろう。
上部アーマーが破損した図。燃えている箇所への被弾はダメージ2倍だ。他ブロックはまだ破損していないので、上部を隠すよう位置取れば被害を押さえられる。交戦中はつねに旋回・移動し、同じ面を見せ続けないよう気を配ろう。

アーマー破壊を狙った精密射撃や、敵のダメージコントロールを許さない位置取りといったアクション面のチームワークは、やがて大きなうねりとなる。チームレベルが上昇すると、デス時のリスポン時間が長くなるのだ。ゲーム展開に応じたリスポン時間の延長は多くのゲームが採用しており、これがおよぼす多大な影響はいうまでもない。前線ステーションを奪われホームベースへの攻撃が始まると、防衛に戦力を割かれてレーンの支配を失い、鉱山数でチームレベル差がさらに広がっていく。当然、逆の構図もあり、ホームベースを襲撃する敵をチームワークで手際よく撃退すれば、前線ステーションを奪回し、レーンの支配を挽回できる。

ホームベースは巨大な「C」状。リング部には防衛砲台があるものの、高レベルの戦艦を撃退できるほどの火力はない。防衛側はベースでHPを回復しながら戦えるので有利だが、攻撃側は合計キャプチャーレートが防御側を上回れば占拠率を稼げる。防衛側は最低でも同数を要しなければならず、その分レーンが手薄になる。
ホームベースは巨大な「C」状。リング部には防衛砲台があるものの、高レベルの戦艦を撃退できるほどの火力はない。防衛側はベースでHPを回復しながら戦えるので有利だが、攻撃側は合計キャプチャーレートが防御側を上回れば占拠率を稼げる。防衛側は最低でも同数を要しなければならず、その分レーンが手薄になる。

両チームともに巧みなゲームメイクで試合が拮抗したときは、ゲーム終盤、3回目以降のガンマバトル「ガンマ3」が勝敗を分ける。ガンマ3をキャプチャーできれば、前線ステーションをキャプチャーせずとも敵ベースへのジャンプが可能となる効果が手に入るのだ。ガンマバトルに余力を残して勝利すれば、そのまま敵ベースの襲撃を狙える。勝利に直結するガンマ3は必然的に全員参加の大乱戦となり、アクションゲームらしい「戦闘での決着」が試合終了時のカタルシスをもたらしている。

ガンマ3を取ると前線ステーションを無視してベースアタックできる。さらに、ガンマバトルに勝利した直後なら、相手チームはすでに死亡しておりリスポン中であると考えられるため、数量差もある。ゲームメイクで劣勢時は、レベル差をつけられないよう耐えつつガンマ3の逆転に賭けよう。
ガンマ3を取ると前線ステーションを無視してベースアタックできる。さらに、ガンマバトルに勝利した直後なら、相手チームはすでに死亡しておりリスポン中であると考えられるため、数量差もある。ゲームメイクで劣勢時は、レベル差をつけられないよう耐えつつガンマ3の逆転に賭けよう。

『Fractured Space』は、戦艦や弾速の遅さをもってアクション面のチームワークを強調した希有なマルチプレイゲームだ。ただ当てるを越えた「正確に当て続ける」でダメージレースに撃ち勝つ独特なプレイ体験。それは、長射程の武器と強固な船体をもつがゆえに鈍重で、スナイパーモードとTPSモードを駆使し照準と位置取りを競う、宇宙戦艦という背景につながっている。宇宙戦艦なくして本作のプレイ体験は成立しない。文字通り宇宙戦艦MOBAなのだ。

 

映像技術とゲーム設計の完璧な一致

これまで意図的に避けてきたが、『Fractured Space』最大の魅力は、独自性強いアクションMOBAに十分な説得力をもたせた豪華な映像体験にある。ディティールは驚くほど細かく、等身大ではない別種の戦いだということが一目でわかる。もちろん、力作のモデルやテクスチャだけがスケール感の演出ではない。アーマー破損時は各所に火の手があがり。撃破された戦艦はごうごうと燃えはぜシルエットを崩していく(爆発時、付近にダメージと衝撃をあたえる)。こうした、戦場に華を添えるエフェクトの細かさを対比とし、全長1km超の戦艦という背景に実体感をあたえている。ならば、動きが遅いのも納得できよう。

F2キーでUIを非表示にしたスクリーンショット。これはゲーム中の画面である。筆者のミドルクラスゲーミングPCでもこの品質だ。宇宙ゲーム業界トップの『EVE Online』や『Elite Dangerous』ほどではないが、本作の映像美は「正確に当て続ける」ゲーム設計と相補関係にあり、風景にとどまらない。
F2キーでUIを非表示にしたスクリーンショット。これはゲーム中の画面である。筆者のミドルクラスゲーミングPCでもこの品質だ。宇宙ゲーム業界トップの『EVE Online』や『Elite Dangerous』ほどではないが、本作の映像美は「正確に当て続ける」ゲーム設計と相補関係にあり、風景にとどまらない。

うれしいのは、目視索敵や狙撃、破損ブロックへの精密射撃に用いるスナイパーモードで戦艦を凝視する機会が非常に多いことだ。被写体やカメラ位置となる戦艦が高速移動することもないので、砲火や爆発といった映像スペクタクルが画面を鮮やかに彩り続ける。よく見て、狙って、撃つゲームなのだから、見た目の楽しさがそのままプレイ体験につながるというワケだ。プレイ中の画面がそのままヴィヴィッドな映像作品になるWatchabilityで、映像体験とプレイ体験を強固に結びつけた。『Fractured Space』は宇宙戦艦MOBAというニッチな枠を越え、映像技術とゲーム設計の融合におけるマイルストーンに到達している。

デス時のカメラワークが輪をかけて素晴らしい。開発元Edge Case Gamesは、日本人メカデザイナーを起用し注目を集めた『Strike Suit ZERO』のコアスタッフ。宇宙ゲームのベテラン開発者による、ツボを押さえた演出だ。
デス時のカメラワークが輪をかけて素晴らしい。開発元Edge Case Gamesは、日本人メカデザイナーを起用し注目を集めた『Strike Suit ZERO』のコアスタッフ。宇宙ゲームのベテラン開発者による、ツボを押さえた演出だ。

新しいプレイフィールのMOBAを遊びたい。迫力ある映像体験と白熱のチームワークを同時に楽しみたい。今すぐ宇宙戦艦の艦長になりたい。そうしたゲーマーなら本作はマストバイだ。いや、基本無料ゲームなのだからマストプレイというべきか。しかし、あえてケチをつけるなら、MOBAなら必ず問われるe-Sportsとしての公平性が『Fractured Space』には欠けている。その最たるものが自主性に委ねられたチーム構成だ。『LoL』でおなじみのPick/Banではなく、ゲーム中に戦艦の変更もできないため、ゲーム開始時点で勝敗が傾いているような試合もある。試合の過程にエンジョイするゲーマーなら問題ないが、試合の結果に人生をささげているゲーマーは物足りなく感じるだろう。実装予定のランクマッチでチーム編成に高度な戦略と駆け引きが加われば、真の輝きを放つに違いない。

グッドハンティング、キャプテン!
グッドハンティング、キャプテン!

 

総評

避けるではなく当てるに焦点をおいたプレイフィール。スケールの違いを描き切った映像美。この2点を高度なレベルで融合した本作は、類似作がないオンリーワンに到達した。プレイ体験に不満点はないが、マッチメイクやチーム編成で公平性がゆらいでおりe-Sports体験に影を落とす。とはいえ、本作に比肩するゲームの発売予定はしばらくなく、宇宙戦艦MOBAというただひとつの玉座に君臨しつづけるだろう。宇宙戦艦の艦長になりたいなら、コールドスリープで未来を待つ必要はない。『Fractured Space』なら基本無料だ。

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