PS5『SAROS』レビュー。荒削りの原石は磨き抜かれた宝石へ。「防御」が最大の「攻撃」になる、弾幕ローグライトシューター

『SAROS』は前作『Returnal』をより遊びやすく、より多くの人へ届けるためのゲームとなっている。

筆者は『Returnal』というゲームが好きだった。ひりつくような射撃体験。闇夜を切り裂く弾幕と光線の軌跡。これらを描画可能な、発売して間もないPlayStation 5のハード性能に対しても驚いたものだ。しかし人に勧めることができる作品ではなかった。たとえるなら荒削りな原石だった。

あれから5年。『SAROS』は、同開発スタジオが手がけた前作『Returnal』をより遊びやすく、より多くの人へ届けるためのゲームとなっている。ローグライト・サバイバルシューターとして、プレイヤーに提供したい体験の方向性を明確にし、それに合わせてすべての体験、要素が美しく構成されている。非常に完成度が高い作品である。荒削りの原石は磨き抜かれた宝石に仕上がったのだ。

『SAROS』は、『ALIENATION』や『Returnal』を手がけたHousemarqueによる、3D弾幕シューティングアクションゲームだ。対応プラットフォームはPlayStation 5。発売日は4月30日となっている。

本作の舞台となるのは、日蝕現象と地形の変貌を特徴とした異星「カルコサ」。主人公であるアルジュン・デヴラジは、星の奥に秘められた真実を追い求め、怪物たちとの戦いを制してゆく。なお、本稿ではネタバレに配慮するため、ストーリーに関する言及は行っていない。

※本稿はソニー・インタラクティブエンタテインメントから提供されたレビュー用コード(PS5版)でのプレイにもとづき執筆している。


ストイックな努力が必要だった『Returnal』時代

では、本作の内容に言及する前に、前作『Returnal』について簡単に説明しておこう。『Returnal』は、弾幕を使った高難易度な3Dシューティングとローグライトな形式を融合させた作品である。主人公が持つ快適かつ高速で動ける能力と、ランダムで入手可能な装備品を組み合わせ、いわゆるアーケードゲームのようにステージを次々と連続でクリアしていくゲームだ。3Dで描画される巨大な弾幕の圧迫感をプレイスキルで乗り越えていく体験は間違いなく最新ハードの性能でしか成し得ないものであった。中年女性を主人公に据え、ギーガーやズジスワフ・ベクシンスキーの影響を受けたであろう、コズミックホラーなビジュアルを通じ展開される独特な物語体験も話題を呼んだ。

それでいて、全体的に荒削りかつストイックな内容でもあった。筆者が考えるローグライトの面白さは「ランダム性を乗りこなす自分を通じた充実感」だと思っている。ただ、『Returnal』はその面白さに到達するまで大変だった。取捨選択のガイドラインが存在しないため、そもそも何がラッキーなのかを理解するところから始まり、その上で、武器と装備のランダムな組み合わせに当たり外れがあった。ゲームを破壊するレベルの「幸運」と同時に、プレイヤーのテクニックで補いきれない「不運」があった。自分は不運で死んでいるのか、プレイスキル不足で死んでいるのか本当に分かりづらかった。

1プレイに時間がかかるため、高速移動の能力があるにも関わらず、エリアの隅っこに隠れながらチマチマ攻撃する機会が生まれてしまうことが多々あった。1ミスの重さが大きすぎるのだ。その上で、ゲームオーバー時に残るものはほとんどない。とにかく自分の中で上達ポイントを「探し」、プレイスキルを高め、サバイバルスキルを磨いていく必要があった。発売されて間もなかったPlayStation 5の性能を分かりやすく活かしつつ、独自性のある体験を提供するシステムを搭載していながら、人を選ぶ作品になってしまっていたのが『Returnal』であった。


弾幕ローグライトシューターは、より遊びやすく、より洗練された体験へ

こうした前作の課題を認識していたのか、開発陣が『SAROS』に施したのはユーザーに提供する体験の明瞭化である。面白さの頂点への道を綺麗に舗装したのだ。ランダムドロップした武器を使って戦うゲームでありながら、ランダム性に依存しない成長要素を体験の軸に据えるという転換を行うことで、スムーズなトライアル・アンド・エラーの提供と、「ランダム性を乗りこなす自分を通じた充実感」を通じたゲームクリアの喜び、達成感を明瞭なものにしている。

では、本作におけるランダム性に依存しない成長要素とは何か。それは新システム「バリア」を中心とした弾幕に対する干渉技術である。本作のアクションはランダムで入手する武器ではなく、最初から備わっているバリアやパリィを使った弾幕への干渉を中心に組み立てられているため、自分のプレイスキルがどの段階にあるのか非常に分かりやすい。バリアやパリィで弾幕を上手くさばけるようになれば生き残ることができ、敵も倒せるという設計になっている。

具体的には、敵が放つ弾幕の「色」に応じて、プレイヤーが適切なアクションをとる必要がある。青色はバリアで吸収。リソースを回復し、大技「パワーウェポン」で相手に攻撃できるようになる。赤色はパリィで弾き返す。黄色は基本、避けるしかない(バリアで受けると体力の最大値が減る)。特に青色の弾を吸収することで放つパワーウェポンは非常に強力であるため、敵の弾幕の中に青色を見つけ次第、バリアをまとって突入。そうして、「吸収⇢放出のサイクル」を高速で回していくのが本作における基本的な敵への対処方法だ(パワーウェポン自体は銃撃を当て続けることでも打てるようになるが、弾幕を吸収して放つほうが圧倒的に効率が良い)。

そうなるとさまざまな疑問が生まれる。たとえば、武器の存在意義はどうなのか。武器を使って自分から攻撃することで、敵の攻撃に依存している「吸収→放出というサイクル」の穴を埋めるのは理解できるが、それ以上の意義はあるのか。本作はオートロックがデフォルトで備わっているため、トリガーを引き続けていれば自動的に弾が当たる。エイムの必要も無いなら、武器に種類があり、ランダムドロップする意義がないのではないのか。

これらの疑問には回答がある。本作における武器は性能を十全に発揮できる有効射程が各々異なっているという点で意義がある。たとえば、ショットガンを効果的に使うには敵に可能な限り接近する必要があるが、バリアやパリィを使うには弾を見分けるためにある程度、離れていたほうが良い。サブマシンガンのレンジを活かすには敵から離れていたほうが良いが、バリアやパリィを使うには、弾がある程度密集しているところをまとめて吸収したいため、それなりに距離を詰めたい。さらに言えば、パワーウェポンもまた複数種存在し、ランダムドロップする=その時々で有効射程が異なる。

つまり、武器と、バリアと、パワーウェポン。それぞれの有効射程をプレイヤーは往復し続けることになる。『Returnal』時代の「エリアの隅に留まる戦法」は過去になった。武器とパワーウェポンの射程はランダムで変化する。バリアの有効距離は敵によって異なる。敵の攻撃が来たらバリア等で対処しに向かい、止んだら動いて銃撃する。リソースが溜まったら動いてパワーウェポンを放つ。プレイヤーを取り巻く環境は不可思議に変化するが、プレイヤーに求められる技能は弾幕を捌いて活用するための距離調整や立ち回りの技術という点で一貫している。この技能を極限まで発揮することになるのがボス戦だ。ボスは残りの体力ごとにどんな攻撃をするか決まっているため、ショットガン用、サブマシンガン用、といった装備ごとに異なる距離調整、立ち回りを覚えてしまえば簡単に攻略できる。逆に言うと、覚えられなければ攻略は難しい。知識が蓄積したその果てに、苦戦したボス戦が見慣れた散歩道の一部になったときの感慨はひとしおだ。

要するに、本作は武器がランダムドロップするシューティングゲームではあるが、プレイヤーに求められるのは武器自体の性能ではなく、武器ごとに異なる性能を発揮するためのキャラクター操作能力であることを、デフォルトで備わっている「バリア」「パリィ」を通じて強調している。「バリア」「パリィ」を活かさなければ敵の撃破が非常に厳しいことを通じて、運でゲームがクリア可能になっているわけではなく、鍛えたプレイスキルを通じてクリアできている=「ランダム性を乗りこなしている」ことがプレイヤーに分かりやすく伝わるようになっているのだ。

そして、この仕組みを根のように支えているのが、ゲームオーバーになっても恒久的なステータスアップグレードに繋がるスキルツリーや、敵を倒すほどドロップする武器の強さが上がる「熟練度」、ノーダメージを維持するほどキャラクターが強化される「アドレナリン」、武器の性能を向上させるオプションやパッシブ効果をもたらすアーティファクト、難易度を調整できる「カルコサ・モディファイア」といった、比較的簡単に効力を実感できるプレイヤー強化のシステム群である。プレイスキル上達には時間がかかる中、即効性のあるこれらの施策は、プレイヤーが面白さの頂きに登るまでに遭遇する、険しい道行きをモチベーション維持という形で助けつつ、スキル上達の面白さを損ねるほどではない、絶妙な立ち位置をキープしている。

練度上達までのモチベーション維持という点において、好きなステージから始められる仕様や周回のたびに展開していくストーリーの存在はもちろん、筆者としては本作におけるアートスタイルも加えたい。まずゲームをしていて必ず遭遇する弾幕そのものが美しい。銃撃のエフェクトと相まって、プレイのたびに特等席から花火大会が観られる。鬱屈した背景美術の中で映える弾幕は視認性という点においても非常に大いに効果的だ。

背景美術とステージ構成そのものに関しても素晴らしい。ステージごとに大きくアートスタイルや登場するギミックが変化していくため、上述した即効性のある仕組みと相乗効果を発揮するかたちで、達成感をもたらしてくれる。本作では「日喰」状態によってステージが難化/報酬が豪華になるが、アートスタイルやBGMもまた劇的に変化する。頑強かつ神秘的、未来的な空間から、ロバート・W・チェンバースの著作「黄衣の王」を彷彿とさせる、おぞましく深淵に満ちた世界に変貌する。報酬の誘惑に負けない恐怖感を煽り、プレイヤーに取捨選択の悩ましさと挑戦のモチベーションを提供する。


磨き上げるうえで削ぎ落とされたもの

ここまで『SAROS』の優れた点について語ってきた本稿ではあるが、本作にも明確な欠点は存在する。いや、欠点というより、原石を磨く上で削ぎ落とされていった欠片、可能性と表現する方が正しい。以下の内容はここまで筆者が作品に対して言及した意見を裏返したものになる。

『SAROS』はあらゆるランダム要素を、練度上達の引き立て役にすることで前作から進化を遂げた作品ではあるが、ゆえにランダム要素を通じた上振れの面白さは主役からサポーターに変わり、それを通じたドラマチックな体験は鳴りを潜めている。ランダム要素である数々の武器は操作バリエーションの1つに収まり、装備品でビルドを組み上げる体験は、スキルツリーの存在を通じて薄まっている。

『Returnal』時代にあった勝ち筋の不明瞭さを通じたゲームオーバーに対する緊張感、スリルは、『SAROS』において乏しい。キャラクターの操作精度以上に不安を覚える要素はそうそうない。さらに言えば、本作は優れた再現性および、好きなステージから始められる仕様によって、プレイを途中で諦めてしまうリスクを軽減した「ゲームをクリアさせる」ローグライトゲームになっていると言える。

そのうえで何故、本作がプレイスキル偏重の形式を採用したのかと言えば、先述したように「人を選ぶ」「ハードコアゲーマー向け」という評価を受けた『Returnal』の反省を活かし、商品としても表現としても、過去作から続くセールスポイント……ハード性能を活かした弾幕やモデリングの描画、没入感のある操作体験をより多くの層へ届ける狙いがあるのだと思われる。また、「ゲームをクリアさせる」本作のデザインはクリアまでの時間が予測できないローグライトジャンルにおいて、可処分時間の争奪戦にある現代の世相に符号したものと表現できる。ローグライトという人気ジャンルと、プレイ時間を取らない(筆者はエンディングに到達するまで約27時間かかった)ことを両立するものである。リプレイ性はランダムで訪れるドラマチックな体験の代わりに、難易度調整のシステムによって担保されている。

総じて、『SAROS』は『Returnal』時代に不明瞭だったゲームの勝ち筋を「バリア」を中心とした戦闘スタイルを通じて明瞭化。ローグライトなゲームとして、ランダム要素に満ちた環境ながらも、プレイスキル偏重のスタイルをゲームの中で一貫させることで、「ランダム性を乗りこなす自分を通じた充実感」と、過去作からの特徴であるハード性能を活かした弾幕やモデリングの描画、没入感のある操作体験をより多くの人へ届けるためのゲームになっている。

また、ローグライトでありながら時間をとらず、安定して最後までクリアできる……この形式は間違いなくジャンルがもつ懐の大きさゆえに成立しているものであり、現代的なゲームデザインの1つとも言えるだろう。荒削りだった原石は、役目を果たすべく磨き上げられた結果、一級の宝石に仕上がったのだ。

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

記事本文: 316