パブリッシャーのPQubeとBeep Japanは10月17日、台湾のインディースタジオ18Light Gameが開発を手がける『ナノアポスル』の日本語版を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch。
『ナノアポスル』は、見下ろし型のボスラッシュゲームだ。本作は、難しいが理不尽さやストレスを感じにくい点が魅力の高難易度アクションである。主人公となるのは、とある実験により生物兵器として生まれた少女アニータ。アニータは、戦地で使用される他の生物兵器と戦うために造られた兵器であるようだ。本作の物語は、記憶を失ったアニータが謎の研究施設で目を覚ますところから始まる。
目を覚ましたアニータの身体には、人工知能によって駆動する戦闘用ナノマシン「アポスル」が埋め込まれていた。アポスルは、その使用者であるアニータと意識をリンクさせることによって、戦闘時に彼女の身体をコントロールする。プレイヤーは、アポスルと合一したアニータを操作することで生物兵器との戦いに挑むことになる。
収容少女アニータとウェニーによる脱出劇
チュートリアル用のステージをクリアすると、アニータのもとにもう一人の少女ウェニーが現れる。彼女はアニータと同様、研究施設での実験の中で開発された生物兵器だ。ウェニーは長い間この研究施設に収容されていたようで、情報収集能力に長けているとのこと。アニータは、そんな彼女の協力を得つつ施設からの脱出を目指していくことになる。
記憶が確かではないこともあってか不安そうな表情を浮かべるアニータに対し、ウェニーは気さくに話しかける。すると最初は心細そうにしていたアニータも、ウェニーのおかげで気持ちが少し楽になったようだ。やがて、明るい表情を見せるようになる。ほかの兵器と戦わなければいけないという過酷な状況の中ではありながら、戦いの合間に繰り広げられるウェニーとの会話には和まされる。また、するすると動く二人のドット絵が大変かわいらしい。
本作のストーリーは、アニータがボス敵を倒していくことによって進行する。次々と立ちはだかる強敵を撃破しながら、アニータたちは研究施設からの脱出を目指す。その一方で、荒れ果てた戦場を舞台に、兵士の青年ホレイスを中心とした物語が同時進行。アニータたち生物兵器と深く関係した戦争の様子が描かれる。二つのストーリーのつながりがゲームの動機づけとなっているのだろう。
感染と吸収、パリィと回避で切り抜ける
戦闘用ナノマシンであるアポスルと共生するアニータは、多彩な攻撃手段を用いることができる。バトルの基本となるのは、シンプルな斬撃アクションである軽攻撃だ。軽攻撃は、どんな状況でも繰り出せる近接攻撃である。この軽攻撃を敵に何度もヒットさせると、やがてアニータにエネルギーがたまっていく。そのエネルギーを消費すれば、遠距離攻撃である射撃を行うことが可能だ。
本作の戦闘に特徴的な要素として、「感染」と「吸収」がある。前述の射撃を命中させると、敵のHPゲージの上に感染スタックが出現。敵を感染状態にすることができる。その状態で相手に軽攻撃を当て続けると、スタックを消費することで吸収攻撃が発動する。攻撃に成功したときの水色のエフェクトが爽やかで気持ちのよい技だ。
吸収攻撃は敵に大ダメージを与えるだけでなく、アニータのHPを回復してくれる。粘り強く攻撃を続けることが、自身の身を守ることにもつながるというわけだ。なお、バトルには回復アイテムを持ち込むことができるが、その個数には限りがある。戦闘時間が長くなるほど、感染と吸収のテクニックの重要性が高まっていくといえるだろう。
また、敵の攻撃を当たる直前に弾くことでパリィが可能。近接・遠距離を問わず発動し、攻撃を反射することができる。さらにパリィに成功すると、敵の弱点であるコアが出現する。コアを攻撃することにより、大ダメージを与えて敵をスタンさせることができる。スタン中の敵は攻撃も移動もすることがないから、安心して相手をひたすら攻撃し続けることが可能だ。敵のコアが出現した瞬間を逃さず攻撃することが、戦闘のコツであることは間違いない。パリィの判定はそれほどシビアではないため、積極的に狙っていくとよいだろう。慣れてくると、テンポよくバトルを進めることができる。
しかし敵が繰り出す攻撃の中には、パリィできない強力なものもある。レーザー攻撃や衝撃波などは、弾くことができない技の例だ。そのような攻撃の前触れとして敵の頭上に「!」の警告が出たら、ダッシュにより攻撃を回避することが必要になる。またダッシュ中、アニータは一時的に無敵効果を得る。そのため狭いところで追い詰められたときでも、敵の攻撃が当たる寸前でダッシュすれば攻撃を無効化することが可能だ。敵がパリィできない強力な攻撃をしかけてくる際は、直前に必ずその警告が表示されるので、回避のタイミングは非常にわかりやすい。回避のコツをつかむようになってからは、戦闘がかなり楽になった。
本作のバトルでは、敵の攻撃モーションにそれぞれ特徴があり、相手の動きが読めないということがない。次どのような攻撃が繰り出されるのか明白だから、挑戦を続けていると手が自然とパリィや回避すべきタイミングを覚えていく。だから、勝つことができないストレスがたまるより先に操作に馴染めてしまうのだ。どんな強敵であってもいずれはしっかりと反撃に転じることができるから、難しいステージでも挑戦のしがいがある。
アニータが戦うことになる生物兵器は、どれも強敵ばかりだ。無慈悲な兵器らしく、容赦のない攻撃を絶えず浴びせてくる。その上、それぞれのボス敵には第2形態が存在。第2形態の敵はより獰猛な姿へと見た目を変え、連続攻撃の回数や攻撃パターンが増加したり、ステージはより狭くなったりといった変貌を遂げる。さまざまな攻撃手段を、状況に応じて巧みに使い分けることが求められる。
スキルは自分好みにカスタマイズ
本作では、スキルポイントを使用して新たなスキルを習得することによって、アニータの戦闘能力を強化できる。習得するスキルに決まった順番などはなく、プレイヤーはスキルツリーを自分好みにカスタマイズしていくことになる。さらに、スキルツリーはいつでもリセットできるから、あとから何度でもスキルポイントを振り直すことが可能だ。各スキルにはさまざまなメリットがあるが、強力な効果を持つものにはデメリットが存在することもある。自分の戦闘スタイルに合わせてうまく組み合わせることで、効率よくバトルを進めることができるだろう。
スキルポイントは、主に各ステージに設定されたチャレンジをクリアすることによって獲得できる。チャレンジは一つのステージにつき複数用意されており、それぞれがかなり歯ごたえのある内容になっている。たとえば「ダメージを受けずに勝利する」といったチャレンジがあり、これを達成するためには、ボス敵の攻撃を数分間にわたって受け流し続けながらバトルを進めていかなければならない。ゲーム序盤では非常に難しい課題だろう。他方、「第2形態に6回進む」というような、ステージに何度も挑むことによって達成できる課題も存在する。つまり、敗北を繰り返しているうちにおのずと条件を達成していることもあるというわけだ。自分の挑戦の記録がスキルポイントとして還元されると、努力が報われたように感じてうれしい。このシステムのおかげで、バトルへの意欲もかき立てられる。
新たなスキルを試したいときや実戦前にウォーミングアップをしたいときは、専用のステージで訓練を行うことも可能だ。訓練用ステージには、「障害物コース」と「敵クラスター排除」の2種類が存在。前者ではタイムアタック、後者ではバトルの実力を磨くことができるようになっている。これらのステージにも、それぞれチャレンジが設定されている。クリアすることでスキルポイントを得て、アニータを強化しよう。
簡単に終えられない最初のボス戦
チュートリアル用のステージである戦闘適応性テストを終えたアニータの前に、最初のボス敵としてバーサーカーが立ちはだかる。バーサーカーは、赤と黒を中心とした配色と両手に持った大きな斧が特徴の生物兵器だ。いかにも禍々しい気配の敵である。
バーサーカーは、両手の斧による近接攻撃を連続で繰り出してくるほか、ときには斧を投げつけることによって攻撃してくる。さらに、ジャンプによる範囲攻撃やレーザー照射など、遠距離攻撃にも抜かりがない。パワータイプらしい見た目に反して、多様な攻撃手段を持つ敵だ。最初のボス敵であるにもかかわらず、第2形態への変化を備えていることにも注意が必要である。
ステージはシンプルかつ狭めに設計されているため、回避とパリィが戦闘の要となってくる。それらのアクションはチュートリアル用のステージで十分に練習することができたものの、いざ実戦に臨んでみると、絶え間なく繰り出される攻撃に圧倒された。序盤はバーサーカーの猛攻にまるで歯が立たず、最初の敵ながら何度も敗北を喫する事となった。
しかし、だんだんと敵の攻撃モーションを覚えることでパリィの成功回数が増えてきたり、ダメージを受ける回数が減ってきたりと、トライするたび上達してきていることがわかる。ステージに挑戦すればするほど相手を追い詰められるようになっているので、敵がどれだけ強く思えても、何度死のうとたびたび挑戦したくなる。
また、戦闘中のエフェクトが爽快だから、ストレスがたまるどころかリフレッシュ効果があるように感じた。さらに先述のとおり、ステージに設定されたチャレンジの目録には努力した分だけその記録が蓄積されていく。惜しいところで負けてしまったとしても、その挑戦は決して無駄にはならないのだ。実力の伸びを実感できることや挑戦の記録が残ることへの安心感がモチベーションとなり、夢中でゲームを続けることができた。何十回とトライしたのち、ついにバーサーカーを撃破。苦労した分、とどめを刺したときの達成感はひとしおだ。
おわりに
本作は高難易度アクションゲームであるが、理不尽な難しさを感じにくい。敵の動きに特徴があるからパリィや回避のタイミングがわかりやすく、挑戦を続けるほどそれらを使いこなせるように成長していく。操作に慣れれば、強敵相手でも有利に立ち回ることが十分可能だ。また、スキルを自由に付け替えることができるから、自分に合ったかたちでバトルを進めることができる。さらに、ステージに挑むたびに実力の伸びを実感することができるため、負けた悔しさと次への期待から何度も挑戦してしまう。ストーリーの中で戦うことになるボス敵にはそれぞれ度重なる苦戦を強いられることになったが、そのことに対するストレスはまったくなかった。本作では、ゲームを続けるほど爽快感あるバトルが楽しめるようになっていくからだ。スリルあるバトルを続けたのち、撃破できた瞬間の大きな充実感を味わいたい方におすすめの作品だ。
『ナノアポスル』は、PC(Steam)/Nintendo Switch向けに配信中。