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先日実施した、Nintendo Switchインディーゲーム開発者によるゲーム紹介コンペティションの1位に輝いた作品を、あらためてピックアップする本企画。今回は『Dead Cells』を紹介する。

フランスに拠点を置くインディースタジオMotion Twinが手がけた『Dead Cells』は、死ねば最初からやり直しとなるリプレイ性の高いローグライト要素と、広大なマップを探索しながら進むメトロイドヴァニア要素を組み合わせた、“ローグヴァニア”なるジャンルを名乗る2Dアクションゲームだ。国内ではNintendo Switchに加え、PC/PlayStation 4向けにも発売中。ゲーム内は日本語表示に対応している。

『Dead Cells』の主人公は、投獄され首をはねられた囚人の成れの果て、醜い細胞の塊だ。牢獄にて行き倒れた戦士の死体の身体を乗っ取り、倒されれば別の身体に乗り換えて何度でも立ち上がる。その舞台となるのは、とある王国が存在する孤島。ボスステージを含め計17のステージがあり、牢獄から森や下水道へと抜け、いくつかあるルートにて塁壁や漁村、墓所、時計塔などを経て、王のいる城を目指す。この島では、かつては人間が普通に暮らしていたようだが、何らかの出来事によって今はモンスターが徘徊している。敵を倒しながらおぞましい地獄のような世界を探索し、次のステージへの扉を探すのだ。新たな能力を得ることで、それまでは進めなかったステージへのルートも拓けていく。

主人公には武器スロットとスキルスロットがそれぞれ2つあり、武器スロットには剣や槍などの近接武器、弓などの遠距離武器、そして盾を装備可能。一方のスキルスロットには、グレネードやタレット、トラップ、その他さまざまな効果を発揮するスキルをセットできる。組み合わせは自由なため、オーソドックスに武器と盾を装備しても良いし、異なる性能の武器を同時に装備し、防御はドッジロールでの回避など立ち回りでカバーする手もある。武器には、敵への直接ダメージに強みを持つものもあれば、状態異常を引き起こしてその継続ダメージをメインとするものなどさまざまなタイプがあり、盾も単に防御やパリイできるだけでなく個性的な性能を持つものが登場する。

武器やスキルは、倒した敵がドロップしたり、特定の部屋にて発見できる設計図を入手し、敵を倒して獲得できるセルを消費することで新たなものをアンロックでき、以降はショップで購入するなどステージ内で入手可能。本作では、死ぬとすべてを失い最初からやり直しとなるが、こうしたアンロック状況だけは引き継がれるため、何度も挑戦しながらお気に入りの武器やスキルを見つけていくと良いだろう。

アンロックした武器・スキルなどは、スタート地点にあるフラスコに入れられていく
同じ装備でも、補正効果によって性能はガラリと変わる

本作の大きな特徴としては、ランダム性の高さが挙げられる。まず、ステージの構造は自動生成により毎プレイ組み替えられる。ステージでは敵を倒してセルやお金を稼ぎ、武器・スキルを入手したり強化していくため、どこに何があるというのが一定でないということは、自ずと探索を進める動機となるだろう。初期装備や、ショップを含めステージ内で入手できるアイテムもランダムで、欲しいものが必ず入手できるとは限らない。

また、すべての武器・スキルには、攻撃力などの基本ステータスや各々の特殊性能に加え、さまざまな補正効果が複数付く。たとえば敵への状態異常ダメージが増加したり、弓矢に貫通性能が付いたり、あるいは凍結やスタンの効果が延びたり、攻撃力が上がる代わりに防御力が下がるものなど非常に多くの項目があり、これもまたランダムで付加される。ステージ間ではお金を消費して補正効果を変更することが可能だが、こちらもランダム。長くプレイしていると、プレイスタイルに合わせて補正効果にも好みが生まれてくるだろうが、すべて思い通りの装備を整えられることはまずない。

こういった装備のランダム性が存在することで、プレイヤーはアドバンテージを最大限に得ようと毎回プレイスタイルを調整することになるだろう。これにより何度も挑戦する中でも新鮮さが保たれ、それがまたリプレイ性につながるという好循環が生まれているのだ。

ステージ内で発見できる隠し部屋などでは、本作の世界観に関する情報を得ることができ、この世界で何があったのか謎は深まっていく

本作は、ステージでは数多くの敵やトラップが登場するように、難易度の高い作品だ。加えて上述したような装備のランダム性があるため、最終的にはプレイヤー自身のスキルが物を言う。それぞれの敵の攻撃パターンや弱点を学べば、ドッジロールで敵の背後に回ったり、複数の敵に囲まれ不利な状況なら一旦退くなど、落ち着いて対処できるようになるだろう。また、敵は攻撃する際にビジュアルや音でその予備動作を知らせる仕様になっており、パリイして反撃を狙えるチャンスも多い。バトルは非常に歯ごたえあるが、理不尽さは極力排除されている。

また、本作のゲームプレイは同ジャンルの中では比較的ペースが速く、スムーズな操作性も相まって、流れるようなアクションが気持ち良い作品でもある。プレイヤーの操作スキルがダイレクトに反映されるとも言い換えられ、プレイを重ねるうちに自らの成長を実感できるはず。最初は苦労していたステージや難易度でも、次第に新たな武器を試してみるような余裕も生まれてくることだろう。多様なプレイスタイルを許容する点は本作の大きな魅力のひとつ。上手くなればなるほど、本作の奥深さに触れることになるはずだ。

ところで先日弊誌にて掲載した、開発元Motion TwinのBenjamin Laulan氏による本作の紹介では、同氏がタイトルに付けた「ボスのいない労働者協働体」について説明がなかったため、意味がよく分からなかった方もいたかもしれない。実はMotion Twinには社長はおらず、スタッフ全員がフラットな立場という珍しいスタイルで運営されている。作品に対して誰もが同じだけの発言権を持ち、出来上がった作品においてその貢献度の違いを具体的に計ることはほぼ不可能なため、給料も全員同じだという(関連記事)。こういった職場環境から、Laulan氏はあのように表現したのだ。

その少数精鋭のMotion Twinでは、現在本作の大型アップデートを開発中。新ステージなどのコンテンツの追加が見込まれるほか、ゲームプレイの仕様にもかなり手が入れられる予定で、現在Steam版にてベータテストがおこなわれている。近く各プラットフォームにて正式にリリースされるだろう。

『Dead Cells』は、Nintendo Switch/PS4/Steam(Windows/Mac/Linux)向けに販売中。価格は、いずれも2480円となっている。

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