「うまく作れないゲームに時間をかけても仕方ないから、さっさと新作に取りかかった方がいい」。とあるインディーゲーム開発者が語る、ビジネスとしてのゲーム開発サイクル

『The Falconeer』を手がけたTomas Sala氏はポッドキャストにて個人ゲーム開発者に向けてメッセージを送った。ビジネスとしてゲームを制作する際の、同氏なりの見解を述べている。

インディーゲームの中には、チームやスタジオでの制作ではなく、個人でゲームを手がける開発者もいる。『The Falconeer』を手がけたTomas Sala氏はポッドキャストにて、そうした個人開発者に向け、ビジネスとしてゲームを制作するのであれば、タイトルの長期開発を諦めて次作に進むことや、開発にあまり時間をかけすぎるべきではない、というような見解を述べている。海外メディアGamesRadar+などが報じている。

Tomas Sala氏はオランダ・アムステルダムに拠点を置くゲーム開発者だ。Sala氏はMuppetpuppetなる名前で、『The Elder Scrolls V: Skyrim』にクエストやダンジョンなどを追加するMod「Moonpath to Elsweyr」を生み出した人物として知られている。またゲーム開発者としてはウォーバードに乗るファルコン使いとして空中戦を繰り広げるオープンワールド・シューティングゲーム『The Falconeer』を手がけている。2024年3月には、同作の世界設定を引き継いだ『Bulwark Evolution: Falconeer Chronicles』をリリース。いずれも高い評価を獲得しており、ゲーム開発において実績のある人物だ。


今回Sala氏は、ゲーム開発者のThomas Brush氏がYouTube上で展開するポッドキャストに出演。動画では両者がゲーム業界の現状や、ゲームを個人で開発することなどについて話しあうものとなっている。

Sala氏はゲームを作り上げるスパンに言及。同氏は制作にあたってはゲームを2年以内に完成させてしまうことを目標としているとし、6、7年かけるのはバカバカしい(that’s just dumb)と自身の見解を述べている。またゲーム制作において、ゲーム制作者は愛とエネルギーを注ぎ込んでいるがゆえにプロジェクトを継続させるが、もし「ビジネスとしてゲーム制作をしている」のであれば、出来の良くないゲーム(turd)は早く手放してそれを教訓とし、先に進むべきだとした。ゲーム開発でお金を得て生活していくにあたって、“固執すること”は良くないと警鐘を鳴らしたかたちだ。

しかしながらその教訓も、方法次第ではまったく活きないという。Sala氏は短期間でゲームを制作する催しである「ゲームジャム」文化に触れ、「数か月ごとにとにかく何か新しいものを作らなければいけない」という考え方には否定的な意見を示した。ゲームを作り上げることそのものを目標とするのではなく、オリジナルのゲームを作り上げた際には、うまくいった理由とそうでなかった理由を分析すべきだとしている。

『The Falconeer』


Sala氏は具体的な例として「シティビルダーを制作している」という状況を挙げた。ゲームジャムで新たにシティビルダーを作ってうまくいかず、次にマルチプレイFPSを作るのでは、前回の失敗が活きず、学んだすべての教訓を捨ててしまうことになるという。ゲーム制作では方針を立て、教訓が活かせるような「戦略」を兼ね備えた開発をおこなっていくべきとする考え方だ。Sala氏がゲーム制作において完成までの目標期間を設定しているのも、「まずリリースしてみて、フィードバックをおこない、次のゲームに活かす」というサイクルを徹底しているからなのかもしれない。そうした戦略的なサイクルを機能させるための適切な開発期間が、同氏いわく2年以内であるということなのだろう。

もちろんゲーム制作というのは単にお金を獲得するだけが目的ではないだろう。アイデアやメッセージを形にすることが目的となることもあるかもしれない。とはいえ、個人ゲーム開発者として今回、Tomas Sala氏がビジネスとしてのゲーム開発において、同業者への“現実に即した”アドバイスを贈ったことは興味深い。なお動画ではSteamやYouTubeといったプラットフォームとの付き合い方や個人でゲームを開発することについてのSala氏自身の体験を踏まえた苦労やメリットなどが語られている。興味のある方は、動画(英語)を視聴してみるのもいいだろう。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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