ゲームに“アラビア語”を実装した開発者、「二度とやらない」とブチまける。魅惑の“4億人市場”、待つのは難題地獄

あるユーザーが海外掲示板Redditに投稿した「作っているゲームにアラビア語を絶対に実装するな」と呼びかける文章が話題となっている。

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あるユーザーが海外掲示板Redditに投稿した「作っているゲームにアラビア語を絶対に実装するな」と呼びかける文章が話題となっている。複数の理由と後悔の念が語られており、多くの議論が巻き起こっている。

今回話題となっているのは、海外掲示板Redditでインディーゲーム開発についての話題が投稿されるサブレディットr/IndieDevの、「DO NOT Implement Arabic in Your Game」という投稿である。投稿者のWorriedAssociate7029氏は、自身のゲームを実際にアラビア語対応した際に、さまざまなトラブルに見舞われたことを告白。同じ失敗をして欲しくないと呼びかけている。最後は疲れがにじみ出るような簡潔な表現で「Anyway, I did it. Not again(とにかく、やりきった。二度とやらない)」と締めくくっている。

アラビア語への対応を決めた当初、WorriedAssociate7029氏はさほど難しいことだとは考えていなかったようだ。アラビア語は右から左へ向けて書かれる言語だが、同氏はユーザーインターフェースを反転させれば問題ないと考えたのだ。実際にやってみたところ、テキストを右から左へ読む形式に対応させる必要もあったとのことだが、なんとかバグも修正して対応を完了したとのこと。

ところがその後、新たな問題が次々と生じることとなった。まず、文化的・宗教的に問題がある表現が含まれていないか、すべてのテキストを見直して調整しなければならないことに気がついたのだという。WorriedAssociate7029氏の開発していたゲームはシンプルなパズルゲームで、投稿内の返信で確認できるスクリーンショットからは、六角形の『マインスイーパー』のような作品であることがうかがえる。そのため画像や膨大なストーリーなどのチェックは必要なかったとしているものの、それでも大変であることには変わりなかったようだ。

また、単にアラビア語と言っても、実際にはさまざまな形が存在する。アラビア語は大まかに、フォーマルな書き言葉として公式なスピーチやニュースなどに用いられるフスハー(標準アラビア語)と、各地で使われる話し言葉アーンミーヤに分類される。そのアーンミーヤにも、モロッコなどで話されるマグリブ方言、エジプトで話されるエジプト方言など、地域によってさまざまな種類があるのだ。アラビア語をよく知らない開発者自身が翻訳作業をするのはもちろん、翻訳者であっても適切に翻訳をこなすことは困難を極めるのだろう。

さらに、文字が読みやすいようにするタイポグラフィや、アラビア語で一般的に用いられる数字への対応(普段目にする123などはアラビア数字と呼ばれるが、アラビア語で主に使われているのはインド数字である)、ユーザーからの文字入力への対応、収益化など、WorriedAssociate7029氏は多くの作業に追われることとなり、睡眠時間を奪われることになったという。一度始めたからには最後までやり遂げようとの思いで作業を続行したものの、今では後悔しているとして今回の投稿に至ったわけだ。

ところで、昨今アラビア語話者を多く抱える地域はゲーム市場として急速に拡大していることが報じられている(GamesIndustry.biz)。中東(Middle East)と北アフリカ(North Africa)の頭文字を取って「MENA」として注目されており、特にエジプト・サウジアラビア・アラブ首長国連邦の3か国は「MENA-3」として熱い視線を注がれている。そんな状況を踏まえてか、多くのゲーム賞を獲得したRPG『Clair Obscur: Expedition 33』など、MENAに向けて新たにアラビア語に対応するタイトルも増えている。WorriedAssociate7029氏も、そうした状況を踏まえてアラビア語への対応に踏み切ったのであろう。

*アラビア語設定の『Clair Obscur: Expedition 33』

同氏の投稿には多くの返信が寄せられているが、その中にアラビア語を第1言語だとするユーザーからのこんなコメントがある。かいつまんで翻訳すると「ストーリーを重視するようなアラビア語圏のプレイヤーの多くは英語を読みこなすことができる。英語が読めない層は、そもそもテキストを読むことに関心がないことがほとんどだ。つまりアラビア語に翻訳する労力に見合うことはない」といった内容だ。実際にアラビア語圏では、英語やフランス語を話す人々も一定数存在することが知られている。

ただし、2024年8月にNiko Partnersが発表したレポートでは、当時時点で世界には4億2000万人のアラビア語話者がおり、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などを含む湾岸協力理事会(GCC)の加盟国では、半数以上のゲーマーがアラビア語にローカライズされたテキストや音声を好むことが報告されていた。アラビア語翻訳にも、一定の需要が存在するのだろう。

ゲーム販売・配信プラットフォームのSteamは現時点ではアラビア語のUIに対応しておらず、先日にはアラビア語への対応を望むユーザーの投稿もおこなわれている。なお、2026年6月にはSteamのクライアントアプリがベータ版としてマレー語に対応するなど、新たな言語に対応する動きも確認されている。今後アラビア語にも対応するかどうかは不透明ながら、多くの話者がいるアラビア語への対応はゲーム開発者にとって課題の一つとなりそうだ。

アラビア語への対応は、言語としての難しさだけでなく、右から左へ表記する形式へのプログラム的な対応の難しさや、文化的・宗教的な難しさも絡む、大変な作業である。とはいえ、アラビア語への対応は多くの英語を習得していないプレイヤーに、新たなゲームに触れる機会を作ることにもなる。今後のMENAのゲーム市場の動向や、アラビア語への対応状況がどうなっていくのか、引き続き注目したい。

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Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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