Steamの高評価ゲーム開発者、「購入者の21%も返金申請していた」と悲鳴。“クリア済みなのに返金”の濫用めぐり、議論白熱中

購入者の21%、5万5000件にものぼる返金リクエストを受けたとする開発者の投稿が波紋を呼んでいる。

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あるインディーゲームの個人開発者がX上で、自作ゲームが90%好評であるにもかかわらず購入者の21%、5万5000件にものぼる返金リクエストを受けたと投稿し、波紋を呼んでいる。想定されたクリア時間より早く、Steamの返金が可能な2時間以内にゲームをクリアするプレイヤーが多かったことも原因とみられ、開発者は「こんなことはあってはならない」との嘆きをポストしている。

ここで問題になっているゲームは『パドルパドルパドる』だ。本作は、協力プレイ可能なアクションゲームで「残酷なまでにイライラさせられる協力型ボート・アドベンチャー」を謳っている。2人の漕ぎ手が乗ったゴムボートで、漕ぎ手は一人一本のパドル(櫂)を操作。一本ずつパドルを操作する協力プレイか、一人で両方のパドルを操作するシングルプレイでプレイ可能。ボートは溶岩やトゲなどに囲まれた地形を踏破しなくてはならず、思い通りにならない操作に苦心しながらステージに挑戦していくゲームだ。

本作はSteamで2025年7月25日に発売され、ユーザーレビューは本稿執筆時点で1381件、うち89%が好評の「非常に好評」ステータスを獲得。数百万人の登録者を誇る著名ストリーマーによってプレイされるなど、“配信ウケ”するゲームプレイが人気を呼んでいた(関連記事)。

その一方で、本作は21%ものユーザーによる返金リクエストを受けているという。Steamには、ゲームのプレイ時間が2時間未満で、購入から2週間以内であれば基本的にゲームの返金を受けられる仕組みがある。本作の通常時の販売価格は499円。本作はセール時に最大40%オフで販売されていたため、実際の額はこれより小さくなると思われるが、通常価格から単純計算すると、5万5000件の返金は約2700万円分に相当する。

Zoroarts氏は、本作の体験版でプレイ可能な部分が40分、その他の部分が3時間半で、計4時間程度のプレイ時間となると見積もっていたという。しかし、実際には想定より早くゲームをクリアするプレイヤーが多く、Steamの返金申請が可能な2時間以内にクリアして返金するプレイヤーが多かったようだ。本作のユーザーレビューでも、クリア時間を書いているものではシングルプレイで1時間半程度としているものが多くみられる。今回、Zoroarts氏がXで取り上げたレビューでは、本作を「素晴らしいゲーム」としながらも、「1時間40分でクリア(返金済み)」と、レビュー上で返金したことを堂々と書いており、開発者として苦言を呈したくなったようだ。

ValveがSteamにおける返金について定めている内容によれば、返金はゲームを無料で試すためのシステムではないため、濫用と判断した場合には返品リクエストを受け付けない場合があるとしている。ただ、返品条件を満たしていれば理由を問わずに返品リクエストが可能であるとされており、どこからが濫用にあたるのかはサポート側の判断次第となっている。

Zoroarts氏の投稿には、国内外のゲーム開発者が返信および引用リポストをおこなうなど、多くの反応が寄せられている。Zoroarts氏が遭遇した状況に共感を示しつつ、前述したSteamの返金ルールを踏まえた、返金制度の運用の難しさに言及するユーザーも散見される。ゲームをクリアまで遊び、好評レビューを投じたうえで返金をおこなうといった行為については、ユーザーのモラルを問う声も上がっている。なかには、ゲームのボリュームや価格に応じて返品可能な期間を調整するといった、システムの改善をおこなってはどうかというアイデアも登場。Steamの返金制度について、開発者間で議論が改めて活発化するきっかけにもなっているようだ。

なお類似のトピックとして、過去にはX上で『未解決事件は終わらせないといけないから』の開発者であるSOMI氏が、同作を“称賛”する返金済みレビューを紹介したことが話題になった(関連記事)。SOMI氏は同作への返金済みレビューについては不快に思ったり深刻に考えたりはしていないとはしつつも、ゲームを全編遊んだユーザーが返金できるシステムについては、開発者やゲームの品質に影響を与える可能性があると説明。「たとえばある映画の上映時間が1時間半であり、2時間に満たなかったことでユーザーがチケットを払い戻すようなシステムがあったとして、誰も同様の短さの映画を作りたくはならないだろう」と伝えていた。そしてユーザー側の権利を守ることは重要ながら、消費者側のモラルにのみ依存するシステムには改善の余地があるのではないかとコメントしていた。

Steamの返金制度自体は、ユーザーにとってはさまざまな理由での購入の失敗を取り戻せる仕組みだ。一方で、今回のケースではゲームをクリアまで楽しんでいながら返金を利用する、制度の本来の目的から外れた利用もおこなわれている状況が具体的な数値とともに報告された。開発者がクリアまでの時間を3時間半と想定していたという点を見るに、クリアまで遊んでから返金されないようなボリューム感も意識されていたのかもしれない。ただユーザーのクリアまでの時間を正確に予測するには難しさもあるようで、プレイタイムが短い作品において返金制度が濫用されうる点について、ユーザー側のモラルの問題だけでなく、制度設計上の課題も改めて浮き彫りとなった事例と言えそうだ。

『パドルパドルパドる』はPC(Steam)で配信中だ。

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Hiroyuki Furukawa
Hiroyuki Furukawa

好きなゲームがマイナーと言われると喜ぶ天邪鬼なゲーマー。アーケードゲームも嗜み、ゲームセンターにもひっそりと出没する。

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