Twitch、「画面内スポンサー表示」の制限・禁止を“やっぱりやめる”と発表。猛反発を受けてユーザーに歩み寄る

 

ライブ動画配信サービスのTwitchは6月8日、「ブランドコンテンツに関するガイドライン」を更新した。先日設けられたスポンサー広告などの制限・禁止事項について改訂する内容となっている。

Twitchにおけるブランドコンテンツとは、ストリーマーが収益や商品、サービスの受け取りなどの対価を得て、製品やサービスを登場させて制作されたコンテンツとされている。つまり、配信内でスポンサー製品を宣伝したり、カメラに映る背景となる場所に製品を展示したり、スポンサーのロゴを配信画面にオーバーレイ表示したりする場合が該当するだろう。

ブランドコンテンツに関するガイドラインは現地時間6月6日に更新され、新たにスポンサー広告などの制限・禁止事項が設けられた。新設された制限・禁止事項では、配信中画面におけるスポンサーロゴのオーバーレイ表示については、画面全体サイズの3%に限定。またストリーマーはライブ配信画面に直接ビデオ広告やバナー広告、音声広告などを挿入・焼き付け(burned in)できなくなるとされていた。


こうした変更点については、ストリーマーやゲームイベント運営者からの批判が渦巻く状況に。Twitchフォロワー数340万人以上を誇るAsmongold氏などストリーマーたちからは「ほかの配信プラットフォームへの移行を検討すべき状況」との意見も散見された。これを受けてTwitch公式Twitterアカウントが謝罪を投稿し、“狙いどおりではない内容であった”としてガイドラインを改訂することを伝えていた(関連記事)。

そして本日、Twitch公式Twitterアカウントはブランドコンテンツに関するガイドラインを改訂したことを伝えている。弊誌で改訂前のガイドラインと比較したところ、英語版ガイドラインでは上記のような制限・禁止事項の多くが削除されていることが確認できた。ただしタバコやタバコ関連製品、医療施設および医療製品、政治的なコンテンツなどの宣伝については、改訂前に引き続き禁止事項となっている。


また改訂前のガイドラインにてよくある質問(Frequently Asked Questions)に記載されていた、広告の挿入・焼き付けに関するQ&Aも削除されている。少なくとも“改訂後のガイドライン内”では、批判を受けたライブ配信画面内のスポンサー広告に関する制限・禁止事項がひと通りなくなっているようだ。なお日本語版ガイドラインでは本稿執筆時点では改訂が反映されていないと見られる。

Twitchは改訂を伝える声明において、改訂前のガイドラインはストリーマーがスポンサーから収益を得る仕組みに悪影響を与えてしまう内容であったと説明。ストリーマーの成長と収入獲得にはスポンサーシップが不可欠であり、(今後)スポンサーとの直接的な関係構築を妨げることはないと伝えている。

一方で、Twitchの利用規約(Terms of Service)の記載に懸念を示すユーザーもいる。問題となっているのは、利用規約内の「12. Advertisements」における本稿執筆時点での記載。ここでは、ユーザーがあらかじめ用意された広告(ビデオ広告、ディスプレイ広告またはバナー広告、音声広告を含む)をライブ配信画面に自ら挿入または埋め込むこと、およびサードパーティにそうした広告の挿入・埋め込みを許可することが禁止される場合があるとされている。

弊誌で確認する限り「12. Advertisements」などの記載は、現地時間6月6日のブランドコンテンツに関するガイドライン更新時に追加された内容と見られる。つまり、改訂前のブランドコンテンツに関するガイドラインにおける制限・禁止事項にあわせて追加された利用規約が、改訂後も依然として残っている可能性があるわけだ。ユーザーの懸念を払しょくするためには、こうした記載も今後調整する必要があるだろう。

なおTwitchでは、視聴者向けに流れる公式広告が存在する。一方ストリーマー自身が用意するブランドコンテンツは、Twitch側が基本的に関与していない広告となる。Twitchが関与していない以上、公式広告と違ってTwitch側への収益は発生していないのだろう。ブランドコンテンツに厳しい制限が設けられていた改訂前のガイドラインに対しては、Twitch側が関与できない広告を排除して収益を独占する方針の現れではないかと推測し批判するユーザーも散見された。

またTwitchでは、ブランドコンテンツに関するガイドラインとあわせて「同時配信に関するガイドライン」も更新。これまではアフィリエイトプログラムに登録し、配信を収益化しているユーザーのみが、Twitch以外のライブ配信サイトとの同時配信を禁止されていた。一方で更新後はすべてのユーザーが同時配信禁止となっている。こうした動きも、Twitchがストリーマーのとれる選択肢を狭め、自社の収益を最大化させようとしているのではないか、とのユーザー懸念を強めさせていた要因のひとつだろう。

いずれにせよ、少なくとも「ブランドコンテンツに関するガイドライン」については今回改訂された。スポンサー広告に関する制限・禁止事項の多くが同ガイドラインから削除されている。またTwitchは声明においてコミュニティとの協力のもと同サービスでの最高の体験を作りたいとの方針を強調。そのためにTwitch側がおこなう変更やその意図を明確にする姿勢であると伝えており、今回の変更についてもユーザーの意見を募っている。ブランドコンテンツに関するガイドラインは改訂前と同じく7月1日から施行予定であり、今後ユーザーのフィードバックを受けてさらに調整されていく可能性もありそうだ。