Twitchが「性的コンテンツ配信」の規制を実質一部緩和。基準明確化・棲み分け強化のかわりに、服さえ着ていればよくなる

Image Credit: Morgpie on Twitch

Twitchは12月14日、同社の運営する配信プラットフォームのコミュニティガイドラインを改正、基準の明確化などを打ち出した。結果的に性的なテーマと分類される配信において許可されるコンテンツが増加し、いわゆるセクシー配信の制限が一部緩和される変更となっている。緩和の背景には、Twitchで最近流行を見せている“トップレス配信”にまつわる議論があったと見られる。


Twitchはコミュニティガイドラインにて、Twitchのサービスで許容される行為と許容されない行為の枠組みを定めている。コミュニティガイドラインに違反したユーザーが発見された場合、コンテンツの削除、警告、アカウントの利用停止などのペナルティ措置がとられる。

今回のコミュニティガイドライン変更では、従来の「露骨な性表現を含むコンテンツや性的なサービス」および「性的なものを示唆するコンテンツ」のふたつのポリシーが、「性的なコンテンツ」に関するポリシーに一本化された。

またポリシーの一本化に伴い、性的なものを示唆するコンテンツに関するポリシーのうち「コンテンツの分類に関するガイドライン」の文言に酷似していた部分が削除されているとのこと。同ガイドラインでは、コンテンツ分類ラベルを付ける必要があるコンテンツやトピックが定められている。

つまりTwitchにはコミュニティガイドラインで禁止されているコンテンツのほかに、コンテンツ分類ラベルを付ければ配信が許可されているコンテンツもあるわけだ。性的なコンテンツについては、従来はふたつのガイドライン上で酷似した文言があったため、明確に区別できるものではなく混乱を招いていたと判断され変更に至ったそうだ。


こうした変更によって、これまでTwitchで禁止されていたコンテンツの一部が、適切なコンテンツ分類ラベル付けを条件に配信できるようになるとされている。従来は禁止されていたもののコンテンツ分類ラベル付けを条件に新たに許可されたコンテンツは、以下のとおり:

ラベル付けを条件に新たに許可されたコンテンツ (旧禁止コンテンツ)
・完全着衣の状態でも「胸部・臀部・腰回りを意図的に強調する」コンテンツ: 何が禁止で何が許可されているのかをストリーマーが判断するのが難しく、配信に対するポリシー違反の判断も主観的になりやすいことが指摘されていました。また、これまでの性的なものを示唆するコンテンツに関するポリシーは、業界基準に合致しておらず、女性に見えるストリーマーにとっては不公平なペナルティが課せられる結果となっていました。

・女性に見える人物の完全に露出した胸部または性別を問わず完全に露出した性器や臀部の制作物 (描画・アニメーション・彫刻など): Twitchには盛んな活動を行っているアーティストコミュニティがあります。このポリシーは一部のストリーマーにとって過度に厳しいものであり、コンテンツの影響力を反映したものとは言えませんでした。

・女性に見える人物の胸部や、性別に関係なくすべての人物の臀部へのボディペイント: Twitchの服装のポリシーでは、すでに胸部や臀部へのボディペイントが許可されています。今回は、ポリシーの一貫性確保のための改正です。
脱衣または脱衣を示唆する動き (ストリップショーなど) を含むエロティックなダンス。

一般的なダンスに関する変更
・トゥワークやグラインド、ポールダンスといった一般的なダンスは、ラベル付けなしで配信できるようになります。これまで、一部のダンスについて禁止またはラベル付けを条件に許可されていました。状況に関わらずダンスをペナルティの対象とすることで、結婚パーティーでのトゥワークやエクササイズ教室でのポールダンスなどがポリシー違反とみなされてしまっていたことについての見直しです。今回の改正で状況が考慮されることになり、成人向けエンターテインメント施設内からの配信のみが禁止されることになりました。

また今回のコミュニティガイドライン変更に伴い、Twitchトップページに表示されるおすすめコンテンツの条件も改正。薬物・酩酊・過度の喫煙、暴力的で露骨な描写、ギャンブル、性的なテーマのうちひとつまたは複数のコンテンツ分類ラベルが付けられた配信は、トップページのおすすめ欄に表示されなくなるそうだ。コンテンツ分類ラベルが適用された配信は視聴者が見始める前に同意を取られる。しかし従来のトップページでは同意なく配信のサムネイル画像を目にしてしまう可能性があったため、条件改正がおこなわれたとのこと。

なお一連の変更の一因には、最近流行を見せている“トップレス配信”を巡る騒動があると見られる。Twitchでは昨今、Webカメラで乳首が映らないように胸部から上を映す女性配信者の雑談配信が増加を見せている。というのも、コミュニティガイドラインの「成人の裸体」についてのポリシーでは、子どもに授乳している場合を除き女性が乳首が露出した状態で乳房を見せることが禁止されている。裏を返せば乳首が出ていなければガイドラインに反していないため、抜け道的に性的なテーマの配信がおこなわれていたわけだ。

一方で先日、ダンスやホットバスなどのセクシー配信などで人気を博していたMorgpie氏がトップレス配信(配信時のクリップ、閲覧には留意されたい)をおこなってアカウント停止となったことが報告された。ちなみに問題となったトップレス配信は、収益をすべて国境なき医師団に寄付するチャリティー配信とされていた。


アカウント利用停止の理由はTwitch側から明かされなかったようで、Morgpie氏はトップレス配信はTwitchの定めるポリシーには違反していないと主張している(Dexerto)。なおコミュニティガイドライン上では「実際に服を脱ぐまたは脱衣を示唆する動きを伴う、ストリップショーをはじめとするエロティックなダンス」が禁止されている。そのため同氏が配信内でおこなったダンスなどがコミュニティガイドラインに抵触すると判断された可能性はある。

いずれにせよトップレス配信の流行やMorgpie氏のアカウント利用停止などもあり、Twitch上で禁止される性的コンテンツの範囲に関心が寄せられる状況にあったわけだ。またTwitchの今回の発表によると、性的コンテンツに関わる従来のポリシーには、ポリシーそのものが分かりにくく、また配信内容がどのように解釈されるのかもわからないといったストリーマーからの指摘も継続して寄せられていたそうだ。

そうした状況を受けて、今回コミュニティガイドラインが改正されたかたちだろう。コンテンツ分類ラベル付けによる棲み分けの徹底を条件に、性的テーマのコンテンツの配信可能範囲が拡大されている。トップレス配信含め、実質的にセクシー配信の制限が緩和されたと見られる。一方でトップページのおすすめ表示条件の改正により、コンテンツ分類ラベルを用いた一般的な配信と成人向けテーマ配信の棲み分けも強化されている。

なお適切なコンテンツ分類ラベルが使用されていない配信には、ストリーマーへの警告と共にTwitch側によりラベルが適用される仕組みとなっている。複数回にわたってコンテンツ分類ラベルを適用せず配信をおこなうストリーマーに対しては、一時的に配信への強制ラベル付けがおこなわれるものの、アカウント利用停止のペナルティが課されることはないそうだ。