『Counter-Strike 2』の革新的要素を紐解く。「伝統のスモーク」変化でプロ大興奮、謎技術「サブティックシステム」の凄みなど

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Valveは3月23日、『Counter-Strike 2』(以下、『CS2』)を2023年夏にリリースすると発表。一部の『Counter-Strike: Global Offensive』(以下、『CS:GO』)プレイヤーを対象とした限定テストを同日より開始した。

*『Counter-Strike』シリーズ公式Twitterのツイート

本作リリースに関するニュースはこちらの記事でお知らせしていた。本稿では、現在実施されている限定テストの内容や、『CS2』に盛り込まれる予定の新要素などについて、より深掘りして紹介していく。


限定テストのアクセス方法

まずはテストへのアクセス方法について。Valve は今回の『CS2』限定テストに関するQ&Aを公開している。それによると、今回の限定テストは Valve が選出したプレイヤーのみに限定しているとのこと。選出方法については、Valve 公式サーバーでの最近の『CS:GO』のプレイ時間、トラストファクター(『CS:GO』のマッチメイキングシステムの一部で、優良なユーザーであるかどうかを決めるゲーム内部の数値)、Steam アカウントの状態(VAC禁止の経歴など)、および『CS2』開発チームが重要視するその他の要素に基づいておこなわれているとのこと。

なお、実際に限定テストに選出されたかどうかは、『CS:GO』のメインメニューにて確認できるようだ。『CS:GO』をプレイしたことがある読者は、もしかしたら限定テストに当選しているかもしれない。是非起動して確かめてみてほしい。また、限定テストの対象プレイヤーは今後段階的に増やされていくとのこと。限定テストに参加したいプレイヤーは、招待が来ていないか今後もチェックするとよいだろう。なお、公式Twitterアカウントからはテストに関連する詐欺への注意喚起もおこなわれている。


限定テストの内容と高まる期待

限定テストの内容として、現在はマップ「Dust 2」のデスマッチとランクなし対戦マッチメイキングがプレイ可能であるようだ。 なお、ほかのゲームモードやマップおよび機能については、限定テストの今後のアップデートで追加予定とのこと。

今回の限定テストに参加している『CS:GO』のプロプレイヤーやストリーマーも散見される。そうしたプレイヤーらの『CS2』プレイ配信は多くの視聴者を集めており、本作への高い注目度もうかがえる。たとえば、元『CS:GO』プロプレイヤーで現在はストリーマーの smooya 氏は、自身のTwitchチャンネルにて限定テストの様子を配信し、一時は同時接続の視聴者数が19万人にものぼったと報告。非常に多くのプレイヤーが『CS2』のリリースに注目していることが分かる。


ダイナミックに変化するスモークグレネード

それでは、いよいよ『CS2』の新要素について見ていこう。まずは、大きなアップデートが入った「スモークグレネード」について。『CS2』における「スモークグレネード」は、ゲーム内の環境に応じてさまざまな変化を見せる。たとえば、展開されたスモークは弾丸やHEグレネードで煙を吹き飛ばすことが可能となる。スモークは初代『Counter-Strike』から『CS:GO』に至るまで、外部からの影響を受けず、効果範囲の視界を一定時間遮り続ける仕様が基本となっていた。初作から20年以上にわたって守られてきた伝統が変化する、本シリーズの戦術にパラダイムシフトをもたらすであろう大きな変化となっている。

このアップデートされたスモークを利用した綺麗な連続キルの様子が、元『CS:GO』プロプレイヤーで現在はアナリスト兼キャスターの n0thing 氏によるプレイ動画に収められている。同氏のツイートに添えられた動画は、防衛側に回った n0thing 氏のチームが、マップ「Dust 2」のミッドから攻撃側に詰めていく場面から始まる。Aトンネル前の敵との射線を一旦切るよう、スモークを構えて投げる n0thing 氏。そして、展開されたスモークに向かってすぐにHEグレネードを投げている。

従来の『CS:GO』であれば、スモークの中に入っている敵を1キルするのが限界だったかもしれない。しかし、放り投げられたHEグレネードの爆風によってスモークが吹き飛び、スモークの向こうにいるAトンネル前の敵2人を視認。敵は意表を突かれたのか、これに対応できず、n0thing 氏はAK-47のフルバーストで見事に連続3キルを達成した。

さらに面白いことに、一度吹き飛んだスモークは、少しすると再び元に戻る仕様となっている。 n0thing 氏はこれを利用してスモークに入り込んで、自分の姿を隠している。その後、スモークを通り抜けた際にすれ違ったスモーク内の敵をキル。残念ながら最後の敵プレイヤーとの撃ち合いに負けてしまったものの、ダイナミックに変化するスモークを見事に使いこなしており、見ていて気持ちのいいプレイである。なお、本動画は『Counter-Strike』シリーズ公式Twitterアカウントに「これができるのは『CS2』だけ」というコメントとともに引用リツイートされている。

スモークに加わったアップデートはこれだけではない。『CS2』におけるスモークは従来より自然に広がるようになり、煙は空間を埋めるようになる。たとえば、開いている扉や壊れた窓から外に広がり、煙は階段を上下に移動する。

*マップ「Overpass」Aサイト階段上に展開されているスモーク

また、スモークのグラフィックにもアップデートが入っている。マップ内の照明システムと連携することで、煙に対する光の当たり具合が変化し、よりリアルな煙を実現している。

*照明と連携して変化する煙のグラフィック




スモークのアップデートに対するさまざまな反応

今回のスモークのアップデートに対して、『CS:GO』界の著名人からさまざまな反応が返ってきている。たとえば、海外のプロeスポーツチーム Natus Vincere に所属する『CS:GO』プロプレイヤーの s1mple 氏による反応がある。ESL Pro League – Season 17(『CS:GO』のeスポーツリーグの1つ)の試合終了後、s1mple 氏がキャスターのSPUNJ氏に『CS2』のテストプレイ中の映像を見せてもらったときの反応を撮った動画が公開されている。空間に自然に広がるスモーク、そして弾丸やHEグレネードの爆風で吹き飛ぶスモークを見て、s1mple 氏は「すごい……実際にこれを(ゲーム内で)試したのか?信じられない」と興奮しながら驚いている様子を見せた。SPUNJ氏が肯定すると、s1mple 氏は近くにいた同じチームメイトの b1t 氏を呼び、SPUNJ氏はわざわざ席を立って「大事だから来い!」とb1t氏を誘導している。スモークのアップデートに対して好意的な反応の一例だ。

一方で、懸念を示す反応もある。元『CS:GO』のプロプレイヤーで現在はストリーマーの shroud 氏は、今回のスモークのアップデートに対する初見の反応として「気に入らない」ときっぱり。ただし「HEグレネードの部分はクールだと思うが、弾丸の部分はそうは思わない」と、一部に否定的な見解を示している。その理由としては「HEグレネードはスモークに対する対抗手段となり、それはクールだと思うが、弾丸でそれが出来てしまうのは、すべての武器でスモークに対抗できるということになりスモークが意味を失う」との旨を述べている。ただ、同氏もスモークの変化には興奮を示している。スモークは今後さまざまなフィードバックを受けて調整されていくことだろう。


マルチ対戦FPSの常識覆す、サブティック更新システム

対戦FPSゲームをプレイしたことがある読者は「ティックレート(Tick Rate)」という単語を耳にしたことがあるかもしれない。ティックレートとは簡単にいうと、ゲームのサーバーがプレイヤー入力や状態の変化を処理する頻度のことであり、主にヘルツ(Hz)によってあらわされる。つまり、この数値が高いほど毎秒のサーバー処理頻度がこまめになる。ひいては、サーバーはプレイヤーからの入力を素早く反映することが可能となるので、より直感的なゲームプレイを実現できるようになるわけだ。

『CS:GO』の Valve 公式サーバーではティックレートは64ヘルツに固定されているが、サードパーティー製の対戦プラットフォームや公式の大会で使用されるサーバーでは128ヘルツのものがほとんどである。サーバーのティックレートが低いと、プレイヤー側が行動してからサーバーにその入力が認識されるまでのわずかな間に、一見うまくいったように見える射撃がターゲットから外れてしまう、という問題が生じやすくなる。それだけではなく、サーバーのティックレートの違いによってキャラクターコントロールのやりやすさが変わったり、スモークグレネードなどのジャンプ投げの軌道が微妙に変化するなどの問題も生じていた。この仕様は多くのサーバー設計に共通しており、シューターを中心とするさまざまなマルチプレイ対戦アクションにおける課題でもあった。

今回の『CS2』では、まったく新しいサブティック更新システムを採用。これにより、上記のようなティックレートと入力の時差から生じる問題は発生しないという。ティックレートに依存するのではなく、サーバーはプレイヤーが何らかのアクションを行った正確な時間を認識することが可能になるということだ。実際に語られた通りの挙動であれば、今までのマルチプレイ対戦ゲームの課題を覆すような、先進的な技術となっている。




よりリアルになったマップグラフィック

『CS2』では、従来の『CS:GO』で実装されていたマップのグラフィックなどにアップデートが入る。本作では、対象マップによってアップグレード内容を3つに区分。「Dust 2」といった伝統的なマップは「タッチストーンマップ」とされ、マップの全体的な構造には一切手を加えず、照明やキャラクターの視認性が改善されるという。「Nuke」のようなマップは「アップグレードマップ」とされ、Source 2 エンジンのライティングシステムを盛り込み。背景やオブジェクトのビジュアルなどが新しくなる部分もあるようだ。そして「Overpass」といったマップは、「フルオーバーホールマップ」として、一から完全に再構築されるとのこと。また、Source 2 ツールを用いたワークショップマップの作成もより簡単になるという。

*マップ「Overpass」Aロングの比較画像。マップが全体的に明るくなったほか、看板などのビジュアルが新しくなっている。




引き継いで使える『CS:GO』のスキン

『CS:GO』が人気のゲームであり続ける要素の一つに、トレードが可能なナイフや武器スキンのシステムがある。公式Webサイトの発表によると、『CS:GO』で手に入れたスキンはすべて『CS2』にそのまま引き継がれるとのこと。なお、ゲームエンジンのアップデートに伴い、全てのアイテムに Source 2 のマテリアルと照明が適用され、武器スキンはすべて高解像度モデルにアップグレードされるそうだ。


大幅に進化したUI

『CS2』ではUIが全面的に変わる。これは単にビジュアルが変化しただけではなく、試合中の重要なゲームステータスが分かるようになる要素も含まれる。

たとえば、プレイヤーが足音を鳴らすと、画面左上に表示されるミニマップには足音が聞こえる範囲が白色の円で表示される。この仕様は従来の『CS:GO』には無かった。熟練のプレイヤーは足音が聞こえる範囲を大体把握しており、足音を消して歩くか鳴らしながら走るかは自身の経験を頼りに使い分けていた。今回のアップデートにより、初心者にも足音の範囲が視覚的に分かりやすくなり、新規プレイヤーが上達しやすくなったといえよう。ストリーマーの smooya 氏が、限定テストに参加した配信の開始早々にその仕様に気づいて驚きの声をあげている。

*ミニマップ内の白い円は、音の聞こえる範囲を示している
Image Credit: kisembernagybot896 on Reddit


また、従来の『CS:GO』には無かったキルエフェクトにも注目したい。『CS2』では試合中のゲーム画面下に小さなバーが表示され、そのラウンドでプレイヤーが獲得したキル数をカウントするようになっている。最終的に敵5人全員キル(エース)を達成すると、まるでプレイヤーを祝福するかのようにバー全体が光るようになっている。なお、shroud氏は自身の Twitch 配信にて「これは『VALORANT』を参考にしたアイデアなのではないか」と意見を述べている。

*キルエフェクト




進化した高精度オーディオ

サウンド面にもアップデートが入るようだ。公式Webサイトの説明によると、サウンドが物理的な環境をより正確に反映し、よりはっきりとゲームの状況を表現できるように再構築されているとのこと。この詳細の一部がわかる配信が、先日 HLTV Confirmedという Twitch 番組にておこなわれていた。前述の有名キャスター SPUNJ 氏が『CS2』のサウンドがどのように変化したのかテストプレイしながら解説している。彼の説明によると、『CS2』では「地面にドロップする物すべてで違う音が出る」という。つまり、C4を落としたか、グレネードを落としたか、ピストルを落としたか、AK-47を落としたかが、従来よりもサウンドで区別しやすくなるようだ。これは特にプロレベルでは戦術的なゲームプレイに繋がる要素であるといえよう。


さいごに

以上、『Counter-Strike 2』における新要素を、各方面の反応を交えながら紹介してきた。まだ限定テストの段階ではあるものの、現在までに公開されている情報だけでも興奮するものが多く、リリースが待ち遠しくなる内容ばかりであった。

Counter-Strike 2』は、PC(Steam)向けに今年の夏にリリース予定。『CS:GO』をアップグレードするかたちとのことで、基本プレイ無料配信になると見られる。

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