『ファークライ6』GOTYエディション発売、しかし「GOTY受賞してないのでは 」と即ツッコミ食らう

 

ユービーアイソフトは10月6日、『ファークライ6』ゲームオブザイヤーエディションを発売した。対応プラットフォームはPC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S。本編所有者向けには、ゲームオブザイヤー・アップグレードパスも販売されている。

しかし本作は、弊誌の確認した範囲では、どのメディア・団体でもゲームオブザイヤー/Game of the Year(以下、GOTY)またはそれに相当する賞を受賞していない。そうした、誤認を招きうるエディション名には、疑問を感じるメディアやユーザーも存在するようである。TechSpotが伝えている。


『ファークライ6』は、2004年から続くオープンワールドFPS『ファークライ(Far Cry)』シリーズの最新作。舞台となるのは、カリブ海の中心に位置する熱帯の島国ヤーラだ。何十年にもおよぶ経済制裁により国家は財政的な打撃を受け、社会は貧困によって分断。権力の座についたアントン・カスティロは、かつての栄光を取り戻すため独裁を敷いている。そして国中で暴動が起こり始めるなか、主人公ダニー・ロハスは革命に参加し圧政に抵抗する。

本作は10月7日に発売後1周年を迎えた。記念日に先がけ、10月6日には本作のゲームオブザイヤーエディションが発売。これまでにリリースされたDLCなどをまとめて盛り込み、海外向け価格は約120ドル、国内向けには1万5840円(Xbox向けには1万5900円)となる。お高めの値段は同エディションに含まれるデラックスエディションとシーズンパスをちょうど合計した価格であり、そこに後日配信予定の追加コンテンツ「狭間の世界」が付属。計算上はややお得となるわけだ。

そして、同エディションを“ゲームオブザイヤー”エディションとする商品名には、疑義を唱える見方もある。海外メディアTechSpotにて ライターのCal Jeffrey氏は、本作がどのアワード・媒体でもGOTYを受賞していないと指摘。ゲームオブザイヤーエディションという名称のもとに、同作が高額で販売されていることに疑問を呈している。


Jeffrey氏によれば、『ファークライ6』をGOTYにノミネートした媒体はNAVGTR(National Academy of Video Game Trade Reviewers)のみ。同団体のGOTYにおいて本作は、『DEATHLOOP』に敗れ受賞を逃している。そのほかの団体・媒体において本作は、BAFTA(British Academy of Film and Television Arts)のゲーム部門にてBest Music、The Game Awardsの3部門などにノミネートされたものの、いずれも受賞ならず。同氏の確認した限りでは、本作のアワード受賞は、NAVGTRにおけるGraphics, Technical部門のみとなるようだ。また、こうした受賞歴については弊誌でも確認。いずれにせよ本作は、Jeffrey氏や弊誌が確認した範囲において、どの団体・媒体からもGOTYを受賞していないようである。

そして、Jeffrey氏はゲームオブザイヤーエディションの価格にもツッコミ。デラックスエディションおよびシーズンパスでの収録コンテンツは、そもそもとして定価に見合った内容になっていないとの見解を示している。また、すべてがセットになるゲームオブザイヤーエディションでは、プレイヤーの好みに合わせてDLCをチョイスするなどの選択肢もなくなる。「狭間の世界」については価格が現時点で不明な点なため、同エディションのお得さが変動する可能性はある。しかし、GOTY受賞実績がない様子の本作のゲームオブザイヤーエディションは、GOTYの名を使っての“まとめ売り”や売上増加を狙う手法ではないか、というのが同氏の見方のようだ。


なおJeffrey氏は、『ファークライ6』について「悪いゲームではない(not a bad game)」ともコメント。あくまでも、定価に対するコンテンツ内容の価値、そしてメディアや団体からGOTYを受賞していないタイトルが、自らゲームオブザイヤーエディションを名乗ることを問題点として指摘しているようだ。

“自称GOTY”なゲームオブザイヤーエディションを販売しているゲームは、本作のほかにも存在する。過去にもそうしたゲームの存在がユーザーから時おり指摘されてきた。そしてゲームオブザイヤーエディションといえば、今回の『ファークライ6』と同じく、リリースされたDLCなどがまとめて収録されるケースも多い。GOTYエディションとは名ばかりの「ほぼすべてのDLCを含むエディション」であると指摘するユーザーもかねてより存在するようである。

そして、メディア・団体からGOTYを受賞したタイトルが記念として出す「本当のゲームオブザイヤーエディション」も当然存在する。そうしたGOTYエディションでは、お得で求めやすい価格に設定される傾向もある。また、ユーザー側のイメージとしてもゲームオブザイヤーエディションといえば「受賞作品が、記念でお得に買える」といった印象があるだろう。そうしたなか、GOTYを受賞していない『ファークライ6』が、強気の価格設定でゲームオブザイヤーエディションをリリースする違和感は強いだろう。

団体・メディアのGOTYを受賞しているとは限らないゲームオブザイヤーエディションの存在。「ゲームオブザイヤー」との言葉が必ずしも受賞を示すわけではないとはいえ、誤解を招くのは確か。その誇大広告にも受け取れるネーミングには批判的な見方もあるようだ。GOTY受賞の有無で作品の面白さが変わるわけではないものの、名称として疑問は残るだろう。